トランジスタ・スタジオ 秋元純一氏インタビュー | ファー表現・流体シミュレーション向けパソコン

  • AMD Ryzen 9/Threadripper
    OSの選定でメニーコアCPUを極限まで使いこなす

    最大32コア/64スレッドを搭載し、メニーコア時代の旗手とされるAMD Ryzenシリーズ。大量の物理演算を行うHoudiniと相性が良いとされるCPUだ。もっとも、その実力を極限まで使いこなすうえで、OSの選定が鍵を握ることは、あまり知られていない。パソコン工房の機材協力のもと、トランジスタ・スタジオに違いを検証してもらった。

    株式会社トランジスタ・スタジオ 取締役副社長 秋元純一氏

    株式会社トランジスタ・スタジオ 取締役副社長
    秋元純一氏

    2006年に株式会社トランジスタ・スタジオに入社。専門学校時代よりHoudiniを使用し続け、現在CGWORLD.jpにて「Houdini Cook Book」を連載中
    株式会社トランジスタ・スタジオ

    Windows 10とCentOS 8でここまで作業時間が変わった

    「WindowsとLinuxで、ここまで違うのかと愕然としました」。トランジスタ・スタジオ、秋元純一氏は検証を終えてこのように語った。

    『NHKスペシャル選 人体 神秘の巨大ネットワーク』シリーズのオープニングなど、ハイエンドなCG映像の制作で知られる同社。取締役副社長の秋元氏は本紙連載「Houdini Cook Book」をはじめ、Houdiniの伝道師としても知られる存在だ。同社のHoudiniチームは秋元氏以下4名で、秋元氏がHoudiniならではの特殊な表現、他3名がエフェクトなどの量産を担当。これにゼネラリストのディレクターが1名加わる。共有データは社内サーバ上におき、シミュレーションはクライアント側で行うスタイルだ。

    そのためPCのスペックは社内サーバ側が優先され、クライアントPCはサーバPCが「枯れてきた」ころにGPUを増加して使用するのが一般的。「安定性よりもコストパフォーマンス・速度感・更新頻度を重視する」という機材選定も、秋元氏みずからが保守運用にかかわっているためだ。PCの多くも秋元氏が自作したもので、個人的にOSのマルチブートなども試してきた。「もっとも機材まわりについては、自作PC好きの若手が入社したので、徐々に世代交替を進めています」。

    これに対して機材協力を行ったパソコン工房側では、32コア/64スレッドのメニーコアを誇るRyzen Threadripperと、12コア/24スレッドとコア数には劣るものの、3.8ー4.6GHzとより高速なクロック数を持つRyzen 9という、2種類のCPUを搭載したモデルを提供。これらにLinuxディストリビューションの一つであるCentOS 8をインストールし、Houdiniによるシミュレーション時間を計測した。また、Threadripper搭載モデルではWindows10のインストールも行い、作業時間が比較された。

    OSなしモデルの導入で理想の環境を整備する

    本検証のデータは、2019年11月に開催された「CGWORLD2019 クリエイティブカンファレンス」の講演「Houdini Distribute Simulation」でも使用された、波のCGだ。驚くことにCentOS8ではWindows 10に比べて、20%強の時間短縮に成功している。Mantraを使用したレンダリングだけで見れば、40%以上の時間短縮がみられた。「シミュレーション時間だけでなく、ファイルI/Oの速度差も大きいのではないでしょうか。Houdiniでは大量のキャッシュが作成されるため、作業時間の40%がファルI/Oに費やされる印象です。Windows 10では折角の高速なSSDも活かしきれないと思いました」

    一方でRyzen9搭載モデルのコストパフォーマンスの良さが際だっている点も見逃せないという。検証項目のうち、Surface Mesh以外で同等か、それを凌駕するスコアを出しているからだ。もっとも、これにはHoudini側がメニーコアを活かしきれていない事情もある。Ryzen 9側が24個のスレッドをまんべんなく使い切っているのに対して、Threadripper搭載モデルでは使用頻度にばらつきがあるからだ。もっとも、本件についてはHoudiniの開発元のSideFX 社と AMD 社が共同で、より高いスケール性を達成するために議論が続いている。今後の対応に期待したいと秋元氏は語った。

    検証の最後に秋元氏は「実はCPUとGPUを同じメーカーで揃えなければ性能が低下する、という思い込みがあった」とあかした。しかし、今回の検証でそうした誤解は払拭されたという。「ただし、社内でCPUが異なるPCが混在すると、トラブルが発生した際に対応が複雑になります。せっかく導入するなら、ある程度の台数をまとめて切り替えたいですね」。これに対してパソコン工房側も「大手PCベンダーと異なり、弊社ではOSなしモデルもお選びいただけます」と返答。用途に合わせて最適な一台を提供できるとまとめた。

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