有限会社オレンジ VFXチーム 山本 健介氏が検証 | アニメ制作CGパート/エフェクト・シミュレーション処理向けパソコン
最大32コア/64スレッドを搭載し、メニーコア時代の旗手とされるAMD Ryzenシリーズ。今回はパソコン工房の機材協力の下、オレンジのVFXチームを率いる山本 健介氏に、Autodesk 3ds Maxの主要プラグインによるパフォーマンス検証を実施してもらった。
有限会社オレンジ VFXチーム
山本 健介氏
1994年、高校時代の同級生らと共にアクワイアを設立。同社にてゲームのCG制作に携わった後、1998年からフリーランスとなる。『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』(1999)を皮切りに、主に映画のVFX制作を行う。『ローレライ』(2005)以降、樋口真嗣監督作に多数参加。『進撃の巨人 ATTACK ONTITAN エンド オブ ザ ワールド』(2015)を最後に足場を変え、現在は有限会社オレンジにて『BEASTARS ビースターズ』(2019)などのアニメ案件で活躍中。IDOLiSH7『Mr.AFFECTiON』MVでは監督を務めた。
AMD Ryzen 9 / Threadripper搭載クリエイターPC 通常案件の10倍という超高負荷CGシミュレーションを徹底チェック
第3世代Ryzen 9搭載モデルが最も優良なパフォーマンスを発揮
2017年の登場以降、わずか2年で主要CPUの座に登り詰めたAMD Ryzenシリーズ。これまでもコストパフォーマンスやマルチスレッド性能の優秀さから販売数を伸ばしていたが、メニーコアが一般的になって久しい現代において最大32コアを誇るThreadripperや12コアのRyzen 9の需要がさらに高まっている。今回は有限会社オレンジにてVFXチームを率いる、山本 健介氏とパソコン工房の協力の下、第3世代Ryzen 9 3900X搭載の「アドバンスモデル」、第2世代Threadripper2990WX搭載マシンの「プロモデル」を使い、Autodesk 3ds Maxによるエフェクトシミュレーションならびにレンダリングに要する時間を計測。両モデルの使用感を聞いた。
検証機はアドバンスモデルがRyzen 9 3900X(3.8-4.6GHz/12コア24スレッド)、GeForceRTX 2080 Ti、メモリ64GBという構成で、プロモデルはRyzen Threadripper 2990WX(3.0-4.2GHz/32コア64スレッド)、TITAN RTXとなっている。比較対象となる山本氏が普段利用している業務用PCは、Intel Core i7-9700、GeForce RTX 2060、メモリ64GBというスペック。検証は、<1>FumeFXによる爆炎のエフェクト、<2>TVアニメ『BEASTARS ビースターズ』本編カットのシーンファイルを使ったtyFlowによるパーティクルエフェクト、<3>StokeMX 2による約2,000万という大ボリュームのパーティクルシミュレーションを実施。各々のシミュレーションやレンダリングに要した時間を計測しつつ、3ds Maxを操作する際のFPS値を検証した。結論としては、全ての検証で第3世代Ryzen 9搭載のアドバンスモデルが優良な結果を示した。
「Ryzen 9は、軽いシーンの方が全体的な動作が早い印象がありました。Ryzen 9もThreadripperも、普段使いよりも2割増しのパフォーマンスで使える感覚でしたし、AMD Ryzenシリーズが3ds Maxと各プラグインにも対応していることがわかりました。今回は個人的な興味もあって、普段の業務ではまず行わない、非常に大ボリュームの設定(※約10倍とのこと)で検証したのですが、むしろ通常業務程度の設定の方がRyzenシリーズのパフォーマンスを引き出せたかもしれません」(山本氏)。メニーコアをフルスペックで使用するためには、例えばリモート環境で作業を行う場合はネットワークを高速化する、コアあたりのメモリ割り当てを考えて大容量メモリを搭載するなど、相応の環境整備が必要である。そして、使用するDCCツール側の対応状況も関係してくる。その意味では、AMD Ryzenシリーズのメニーコアの真価は、今後さらに発揮されていくはずだ。そして何より嬉しいのは、今回の検証を通じてCPU、GPU共にメーカーのちがいを気にせず組み合わせて使うことができることを確認できたことだ。もちろんトラブルが発生した際の問い合わせの手間は増えるかもしれないが、数年前に比べてクロックのちがいやUSBの相性問題などは劇的に減っている。BTOでの選択肢が増えれば、最適なPC選びが捗るようになる。まもなく導入される新世代(第3世代)のThreadripperをはじめ、今後の展開にも期待せずにはいられない。