5,000万画素超時代を見据えたLightroom向けPCを作る Impress連動企画(後編)
CPUの性能とメモリの容量が重要だと判明、そして検証機が完成!
2015-11-20
こんにちは。職人3号です。
Impressとのコラボ企画【メーカーさん、こんなPC作ってください!】の第6弾「5,000万画素超時代を見据えたLightroom向けPCを作る」の後編がスタート!後編では前編から引き続き、検証をガンガン進めていきたいと思います。
検証!検証!そしてまた検証!
前編の検証の結果、SSDとHDDでは期待したほどの明確な差は現れませんでした。しかし、逆にそれならば、SSDとHDDのハイブリッド構造をとるSSHDを使えば、速度の速いSSDと容量の多いHDDの両方の良いとこ取りで、バランスの良い結果を期待できるのではないか?といった意見が出てきました。
非常に気になります!速い、大きい、コスパが良い。
というわけで、さっそく、SSHD「Seagate ST2000DX001」を取り寄せ検証を行ってみました!詳しい仕様については公式ページをご確認ください。
前編で作成した検証機を引き続き用いて、HDDをSSHDへと換装して同じテスト条件のもと検証を行っていきます。
気になるSSHDの結果は?
カタログ読み込みの時間と、ピクセル等倍表示にかかる時間の結果はこうなりました。
縦軸は「カタログ格納先/データ格納先」を表します。
横軸は「秒」となります。グラフが短いほど速いということです。
読み込みは、僅かにですが、早くはなっているようです。ですが、ピクセル等倍表示にかかる時間はHDDより0.1秒遅い結果となりました。
僅かでもSSHDの効果はあるようですが、結局HDDとの差も大きくはなくコスト面で不利となるため今回の本体への採用は見送りとなりました。
前編記事の結果と、今回の結果をまとめると、下記となります。
■ストレージのまとめ
・SSDやM.2 SSDの効果は劇的と言えるほどではないが、HDDより速い
・SSDのNVMe規格や、SSDのRAID 0構成の効果も薄い
・カタログファイルや、元のRAWデータをSSDに格納する方がより速い
・SSHDはHDDに比べるとやや速いが、SSDには届かないため容量と速度がどうしても欲しい場合は考慮する価値はある
よって、カタログ用・データ用と個別にSSDを用意することが最適解なのではないか?という結果となりました。
それでは何が体感速度に対して効果的に影響するのか。引き続きCPUとメモリ、グラフィックカードについて検証していきます。
Lightroomのカタログ作成や等倍表示プレビューにはCPUコア数が効くのか、クロックが効くのか
まずは、CPUのコア数を増減させて比較検討していきます。
検証構成は同じ環境を引き続き使用し、CPUの設定をBIOSより変更してテストを行います。
さらに今回はコア数の違いの比較のために、Extreme Editionの最上位となるCPU Core i7-5960X(8コア16スレッド)の環境も用意して比較します。※詳しい構成は記事の最後に記載します。
Core i7-6700Kは標準の4コア8スレッド、Hyper-Threadingを無効化し、4コア4スレッド、2コア2スレッドの環境としました。
Core i7-5960Xは標準の8コア16スレッド、Hyper-Threadingを無効化し、8コア8スレッドの環境としました。
動作クロックは、Turbo BoostやIntel Speed step technologyを無効化し6700Kでは4.0GHz、5960Xでは3.0GHzで固定とします。
カタログデータおよび、RAWデータはともにSSDに格納し、3000枚を読み込みさせたときのデータを計測します。
それでは結果を見てみましょう。
縦軸は「物理コア数/スレッド数」を表します。
横軸は「秒」となります。グラフが短いほど速いということです。
結果をみると、今回のテストである「カタログへの読み込み時間」および「ピクセル等倍表示の時間」には、コア数は4コア以上であれば大きくパフォーマンスに影響しないことがわかります。
さらに、6700Kの倍のコア数をもつ5960Xであっても、カタログの読み込み時間において明らかに遅いことがわかります。
ピクセル等倍表示の時間では差はあまり無く、それでもわずかに6700Kが速い結果となっています。
6700Kと5960Xの差としてコア数以外に考えられるのがSkylake-SとHaswell-Eのアーキテクチャの違いと動作クロックになります。
これはひょっとして、動作クロックが影響するのでは…?期待できそうな予感がします。
今度は、コア数を固定し、動作クロックを変化させてみます。
Core i7-6700Kは標準の4.0GHzから4.5GHzにオーバークロックした環境としました。
Core i7-5960Xは標準の3.0GHzから3.9GHzにオーバークロックした環境としました。
Turbo boostとSpeed step technologyはいずれも無効化してあります。
コア数はいずれも標準とし、Hyper-Threadingも有効な状態としました。
カタログデータおよび、RAWデータはともにSSDに格納し、3000枚を読み込みさせたときのデータを計測します。
それでは期待を胸に結果をみてみましょう。
縦軸は「動作クロック」を表します。
横軸は「秒」となります。グラフが短いほど速いということです。
結果は明白。明らかに速度が向上しました。
6700Kを0.5Ghz程オーバークロックすることで、カタログへの読み込み時間が約1分、5960Xは0.9GHz程オーバークロックすることで約2分半もの時間短縮となっています。0.2秒~0.3秒と僅かずつであるもののピクセル等倍表示の時間も短縮傾向にあり、動作クロックがこれらのパフォーマンスを向上させることが分かりました。
■CPUのまとめ
・「カタログの読み込み時間」「ピクセル等倍表示の時間」においては、動作クロックが最も効果をもつ
・「カタログの読み込み時間」においてはHyper-Threadingの効果は薄い
・4コア以上のCPUの搭載が望ましい
・「RAW現像処理」においてはコア数が多いほうが最も効果が高い結果となっている
DOS/V POWER REPORT 10月号より。各プラットフォームにおけるLightroom現像ベンチマーク結果
よって、CPUは、4コアかつ“動作クロックの速い”Core i5が最適解なのではないかとの結果となりました。標準状態の動作クロックではCore i7の方が高速であるため、最高の環境を目指す場合はCore i7も選択のひとつとなります。しかし、Core i5をオーバークロックしての使用の場合、場面によってはCore i7を越えうる快適性を手に入れることができるかもしれません。
今回はCore i5をオーバークロックした場合の検証を行えませんでしたが、後ほど追加で検証を実施してみたいとおもいます。
少なくとも4コア以上の環境であれば、「カタログの読み込み時間」「ピクセル等倍表示の時間」においての操作にコア数の影響は少ないと考えられますが、同じSkylakeアーキテクチャで4コア以上のものは現在では入手できないのでこれ以上は分かりません。アーキテクチャが異なるものの、Haswellである5960Xと6700Kの動作クロックを合わせることでコア数による比較がある程度できると考えられます。
今回は時間の関係上、このテストは行っておりませんが、機会があれば再試してみたいところではあります。
次はメモリの効果を調べてみたいと思います。
メモリの効果は?容量?速度?
今度はCPUを標準状態に固定し、メモリの容量、速度を変化させて確認してみたいと思います。
メモリはDDR4-2133 8GB×2枚で合計16GBを搭載しています。
これにさらに8GBを2枚追加し合計32GBとしてみます。
また、標準の動作クロックである2133をBIOSから変更し、2400のオーバークロック状態および、ダウンクロックの1600の状態に変更し検証してみます。
CPUでの検証同様、カタログデータおよび、RAWデータはともにSSDに格納し、3000枚を読み込みさせたときのデータを計測します。
結果は以下のようになりました。
縦軸は「メモリの動作クロックとメモリ容量」を表します。
横軸は「秒」となります。グラフが短いほど速いということです。
メモリの容量、動作クロック共に、カタログの読み込み時間にはほぼ影響がありませんでした。一方で、ピクセル等倍表示時間においては、クロックを下げた場合に時間が伸びていることから、クロックの低下は影響があると言えそうです。とはいってもオーバークロックの場合の2400では差がついていませんでした。さらに動作クロックの高いメモリを用意することでもしかするともっと早くなるのかもしれませんが、今回の結果では、影響はありませんでした。
さらに、メモリの容量についてですが、32GBの搭載をしてみましたが、カタログにRAWデータを10000枚読み込んだ状態でもシステムの消費を含め最大でも5.8GBとなっていました。その後、RAW現像・編集作業を行ってみましたが、これ以上大きく増えることはありませんでした。よってメモリ容量も最低限8GBあれば良いとの結論となりますが、Photoshopを用いた作業や、RAW現像処理中に別作業などを行うことも考慮し、16GBの搭載が最適であるとの判断となりました。
■メモリまとめ
・メモリの動作クロック、容量はともに「カタログの読み込み時間」「ピクセル等倍表示の時間」において影響はほぼ無し
・メモリ容量についても、Lightroom単体で5.8GB程度までの消費となるがPhotoshopなどの他ソフトウェアの使用も考慮し8GB~16GB程度の搭載が最適である
グラフィックカードは?
グラフィックカードについては、Impress前編記事にてAdobe栃谷様にお話をおうかがいした際に、現在のところRAW現像モジュールのみに使用されるとの事でした。
そこでGPUの使用率を監視するツールとしてOpen Hardware Monitorを用いて、GPUコアの使用率、動作クロックを表示し動作させてみました。
グラフィックカードは推奨されるものとしてGeForce GTX 760以上との表記がありましたが果たして動作はするのか確認してみます。現在の最新パーツですと、GeForce GTX 960が後継機となるのでGTX 960を用意、さらに下位のモデルとしてGTX 750Tiを比較対象として動作させてみます。
テストでは、RAW現像モジュールにデータを表示し、ホワイトバランスのバーを左右に素早く振り、プレビュー画面がスムーズに追従するかを“目視”で確認しました。同時にGPUの使用率を確認し、どの程度使用されているか、どの程度クロックが変化したかを確認します。
その結果、GeForce GTX 960でもGTX 750 Tiでも操作感に差は感じられず、いずれのGPUでもGPUコア使用率が100%まで到達することはありませんでした。さらにGTX 750 Tiでは動作クロックが最大値まで稀に上昇していましたがGTX 960では1段階上がったのみであとは最低値を維持している状態でした。
この結果より、グラフィックカードはGeForce GTX 750 Tiでも十分であると判断しましたが、やはり最終的な部分は、実際に澤村様に作業をして確認してからと考えます。
■※Core i7-6700K(Skylake)内蔵グラフィックIntel HD Graphics 530のLightroomにおける動作について
推奨するグラフィックとしてさらにIntelのオンボードグラフィックもリストに含まれていました。そこで、Core i7-6700Kの内蔵グラフィック・Intel HD Graphics 530でも十分なパフォーマンスを発揮できるであろうと予想し、グラフィックカードを取り外した状態で試してみたところ、RAW現像モジュールの作業画面が青一色に…。
Intelに問い合わせたところ、現在ドライバの問題でこうした現象になるとのことです。修正ドライバのリリースまでお待ちくださいとのことでした。今後ドライバが改善され次第、SkylakeのCPU内蔵グラフィックでもLightroomが動作可能になると思われます。
今回はこうした経緯もあり、CPU内蔵グラフィックによるモデルのリリースは行うことができませんでした。
構成が無事決定!
以上の検証結果より、構成を下記のように決定しました。
用途や、扱う写真の枚数に応じてグレードを選べるよう、エントリー、スタンダード、ハイエンドの3機種をラインナップしました。
モデル | Sen-S2AM-A10K-DZW-DevelopRAW [Windows 10 Home] |
Sen-S19R-i5K-NXW-DevelopRAW [Windows 10 Home] |
Sen-S19R-i7K-NXZ-DevelopRAW [Windows 10 Home] |
---|---|---|---|
AMD APUを搭載した、コストパフォーマンス重視のエントリーモデル。 強力な内蔵グラフィックでLightroomでの編集作業も快適! | Core i5とGTX 750 Tiを搭載した、バランス重視のスタンダードモデル。 Lightroomでの素早いプレビュー、原寸表示の画像も快適に操作可能! | Core i7とGTX 750 Tiを搭載し、SSD3基搭載のプロフェッショナルモデル。選別、編集、RAW現像処理まですべてが快適に動作! | |
OS | Windows 10 Home 64ビット | ||
液晶モニタ | 別売りです | ||
CPU | A10-7870K APU (3.9-4.1GHz/4コア/4MBキャッシュ/TDP95W) | インテルR Core i5-6600K プロセッサー (3.5-3.9GHz/4コア/4スレッド/6MBキャッシュ/TDP91W) | インテルR Core i7-6700K プロセッサー (4.0-4.2GHz/4コア/8スレッド/8MBキャッシュ/TDP91W) |
チップセット | AMD® A78 チップセット | インテルR Z170 Express チップセット | |
メモリ | DDR3L-1600 4GB×2(計8GB) | DDR4-2133 8GB×2(デュアルチャンネル/計16GB) | |
SSD1 (OS用) |
120GB 2.5インチ Serial-ATA SSD | 256GB PLEXTOR® SSD M6e(M.2 2280/M.2 PCI Express2.0) | |
SSD2 (カタログ用) |
250GB 2.5インチ Serial-ATA SSD | ||
SSD3 |
オプション(別売) カスタマイズ画面でお選び頂けます。 | 500GB 2.5インチ Serial-ATA SSD | |
HDD | 1TB 3.5インチ Serial-ATA HDD | 2TB 3.5インチ Serial-ATA HDD | |
光学ドライブ | 24倍速DVDスーパーマルチドライブ | ||
グラフィックス | AMD® Radeon R7 Graphics (APU統合グラフィックス) |
NVIDIAR GeForce GTX 750 Ti 2GB GDDR5 | |
オプション |
- | オプション(別売) カスタマイズ画面でお選び頂けます。 | HDDダイレクトリムーバブルケース |
ケース | 【吸音シート前面+左右側面装備・静音設計】
ミニタワーMicroATXケース [CoolerMaster Silencio 352] |
【吸音シート前面+左右側面装備・静音設計】
ミドルタワーATXケース [CoolerMaster Silencio 452] |
|
電源 | 500W 80PLUS SILVER認証 ATX電源 |
ポイント①
CPUの動作クロックが、「カタログへの読み込み時間」や、「ピクセル等倍表示時間」などの操作に体感速度として影響するため、グレードに応じてCPUがランクアップ、最上位のハイエンドモデルでは最もCPU動作クロックの速いCore i7-6700Kを搭載しました。
ポイント②
ストレージ部分は、OS用、カタログ用、データ用と3つのドライブを用意し、それぞれSSDを割り当てしました。検証の結果から、SSDのRAID構成やSSHDなどの効果は薄いため、“SSDを単体で”搭載しコストを極力抑えつつもCPUと合わせた最大限のパフォーマンスの向上にこだわりました。
HDDは、データの保存用として搭載、さらに外部にデータを移せるようリムーバブルケースをオプション化しました。最上位機種には標準で搭載しています。
また、ケースにはSDカードスロットが標準で搭載されていますので、デジタルカメラとのデータの最低限のやりとりができようになっています。またUSB3.0端子をフロントに備えていますので、高速なカードリーダーを接続することができます。
ポイント③
グラフィックは、テストの結果からIntel HD Graphics 530の使用を見送り、GeForce GTX 750Tiを搭載しました。こちらは、澤村氏に使用感をレビューしていただき、最終的にGeForce GTX 960にするかどうかの判断をしたいとおもいます。
ポイント④
メモリは最低限の16GBを標準搭載としました。エントリーモデルは8GBとしていますが、必要に応じてアップグレードをしていただければと思います。
検証機は澤村氏の元へ…
今回は様々なパターンでの検証をおこない、ストレージが予想以上に効果が少なかったことや、CPUの動作クロックが非常に操作性に影響を与えるなどの事実が分かってきました。
今回の検証結果をもとに最終的な構成が決まり、いつもの通り、職人6号に製造をお願いしました。
完成した検証機は果たして、プロの写真家である澤村氏にとっても十分な性能を発揮してくれるのか?! さらにオーバークロックという方法で快適性が増すのか?実際に検証していただきました!
執筆:パソコン工房 職人3号
Core i7-5960Xテスト環境
iiyama AEX-RawProcess-X99-TEST02 | |
---|---|
CPU | Core i7-5960X | コア/スレッド数 | 8コア/16スレッド | 動作クロック | 3.0-3.5GHz |
CPUクーラー | 標準クーラー |
メインメモリ | DDR4-2133 16GB(4GB×4) ※クアッドチャンネル | マザーボード | インテル X99チップセット |
OS用ストレージ | 256GB M.2 SSD |
カタログ用ストレージ | 240GB (120GB SSD×2) RAID 0 |
データ用ストレージ | 480GB (240GB SSD×2) RAID 0 |
データ用ストレージ | 1TB 7200rpm HDD |
VGA | GeForce GTX 960 |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
ケース | ミドルタワー |
電源 | 500W |
OS | Windows 10 Home 64bit |
キーボード | 標準付属キーボード |
マウス | 標準付属マウス |
モニタ | オプション |
セカンドモニタ | オプション |