5,000万画素超時代を見据えたLightroom向けPCを作る Impress連動企画(前編)

Lightroomで快適な写真編集をしたい!

2015-11-16

どうも。職人3号です。
Impressとのコラボ企画【メーカーさん、こんなPC作ってください!】もなんと、第6弾となりました。
今回のお題は、ついに来ました「5,000万画素超時代を見据えたLightroom向けPCを作る」です。
Lightroom(ライトルーム)といえば、「Photoshop」(フォトショップ)や「Illustrator」(イラストレーター)でおなじみ、Adobe製の高機能な「RAW現像」ソフトウェアとなります。今回はLightroomと5000万画素にも到達するデジタルカメラで撮影した画像を使った場合でも、快適に動作するパソコンとはどのようなものかを探っていきます。

「RAW現像」とは?

さて、そもそもの「RAW」どはどういう意味なのか?
Adobe Creative Stationによりますと、

RAWデータとは、“RAW(「生」または「未加工」)”に近い状態で保存された、デジタル一眼カメラや コンパクトデジタルカメラの写真ファイル形式の一種です。
JPEG撮影のようにカメラによる色調補正処理を挟むことのない、撮影したそのままの状態である ため、調整次第で写真の雰囲気を柔軟に変化させることができます。
そのRAWデータの調整のことを銀塩カメラのフィルム現像に準えてRAW現像と呼び、それこそがデジタル写真の醍醐味のひとつといえます。

とのことです。
なるほど。音にたとえて言うと、無圧縮、原音データといったような意味のものなのですね。

ただ、非圧縮であるが故に情報量も多く、データも肥大化し5000万画素ともなるとそのデータ量はとても大きくなります。
今回の検証にあたり用意したサンプルデータでは、4240万画素のデータは1枚あたりおおよそ42MB程、2430万画素のデータで、1枚当たりおおよそ24MBとなっており、5000万画素ともなれば50MB程のデータになると予想されます。
例えば、5000万画素24ビット色の画像情報をビットマップイメージに換算した場合、ものすごく大雑把な計算をすると『24ビットはおおよそ3バイト』となりますので、50,000,000(画素) × 3(バイト) = 150,000,000バイト、つまりおおよそ150メガバイトもの情報量となるわけです。
実際にはRAWデータを扱いますので、この容量のファイルを扱うことはありませんが、5000万画素というデータの大きさのイメージはなんとなくつかめてきました。
高画素化に伴い大容量化していくRAW形式データを扱うためには、動画データ程では無いにせよストレージの速度が重要になってくる予感がします。

RAW現像ソフトAdobeLightroomとは?必要なハードウェアは?

Lightroomは、デジタル一眼レフカメラなどの高性能なデジタルカメラで写真を撮影する方に向けた、写真編集ソフトウェアです。
編集・現像だけでなく撮影した写真の管理や画像の変形、さらに不要な被写体を除去したり高度な画像編集を行うことができる「Photoshop」と連携できるなど、用途に合わせて柔軟な使用ができる特徴を持っています。
詳しくは公式ページ(Adobe Photoshop Lightroom CC)を参照ください。

Windows版での必要システム構成や、システムに関連するFAQを調べてみます。
Adobe Photoshop Lightroom ヘルプ / 必要システム構成
Adobe Photoshop Lightroom Help / GPU に関する FAQ(Photoshop Lightroom CC/6)
Adobe Photoshop Lightroom ヘルプ / パフォーマンスを最適化する

公式の資料より、ポイントとなる必要スペックをまとめると、

■CPU、OS含め64bit環境であること
■Windows 10に対応
■メモリは8GB以上を推奨(ただしPhotoshopなどを同時に立ち上げる場合)
■GPUは、OpenGL3.3、DirectX 10以上に対応するGPUであればよく、NVIDIAではGeForce GTX760~、AMDではRadeon R9 270~、IntelであればHD4400~が推奨されています
■SSD または高速ハードドライブ(特に、カタログとプレビュー用)

となります。

Windows版においては、コア数や動作クロックについてなどは触れられておらず、検証してみないとどの程度のスペックが必要となるのかが分かりません。
メモリ容量も8GB程度で良いとの事ですが、一般的には画像編集は重く、メモリを大量消費するイメージがあります。どれくらいの消費量なのかをいつもの通り調べていく必要がありそうです。
また、GPU(グラフィックカード)の搭載も推奨されており、どういったところの処理でどれくらいのパワーが必要になるのかを検証する必要があります。不要であればスペックを下げる事も検討できるため、価格を抑える上でのポイントになりそうです。
そしてやはり、今回のもっとも重要になると予想されるストレージですが、SSDが推奨されています。

これらの点を踏まえ、Impress前編記事にておこなったインタビューを交えて、実際にモデルの構成を考えていきます。

Lightroomに最適なパソコンを考える

Impress前編記事において、写真家の澤村様に実際のLightroomの使い方と作業のどの辺りに性能面での不足を感じているのかをお聞きしました。

性能的に問題となりそうなポイントをまとめると、

1) ピクセル等倍表示時にもたつきがある
2) Jpeg書出し中(素現像)は離席ないしは別の作業を行うも、かなり時間がかかる
3) 編集時にはスピードが要求されないため、仕上げ編集は特に不満がない。とはいえノートなどの非力なPCでもたつきがあり、その場合は編集を完全に行うことができない。

となるようです。

今回のインタビューでは構成が決まらなかったため、これらのポイントを解決できるであろうと予測される構成の決定と、その検証から行ってくこととなりました。
また、ターゲットとなる写真データの扱う量を「1000枚」、「3000枚」、「10000枚」としました。

まず、2) については
既に前編記事内にて現像スピードについての検証結果(DOS/V POWER REPORT 10月号より。各プラットフォームにおけるLightroom現像ベンチマーク結果)が提示されており、たいへん参考になる貴重なデータです。
テスト結果を見ると、CPUのコア数が大きく効いてくる傾向が見て取れます。8コア16スレッドのCore i7-5960Xが最も処理速度が速くなりますが、CPU単体の価格が10万円以上とコストパフォーマス面では不利となります。一方で、Core i7-6700Kであれば4コアあるにも関わらず、Core i7-5820Kの6コア相当の結果は出ており、こちらは逆に非常にコスト面で有利になってくることがわかります。また、Skylakeアーキテクチャの優秀さも感じさせます。
意外だったのは、AMD APU A10-7870Kが健闘しており、同じ4コアCPUであるCore i5-6600Kより高速な結果を見せています。APUであればCPU内蔵グラフィックの性能も高く、グラフィックカードを搭載しない環境において、非常に高いコストパフォーマンスを発揮すると予想されますので、こちらも注目候補の1つでしょう。

1) については
検証を実施する必要があります。CPUだけでなくGPUも処理に使用されるのか、CPUは、現像処理であればコア数が明らかに効いていますが、こちらも同様の結果となるのかなど、不明な点が多くあります。
そして何より、データの読み込み処理が影響しそうなシーンでは、ストレージの性能が大きく効いてくるのではないのかと予想できます。まずはストレージ性能から検証していきます。
SSDの搭載は必須となるでしょう。カタログファイルをSSDに保存することで少しでも早くなるとの噂もあるそうですので、カタログ用SSDを用意し、検証してます。
また他には「メモリを32GBも搭載すると良い」「メモリの動作クロックを上げると良い」などの口コミありましたので、これらも検証してみます。

3) については
Adobeの栃谷様の解説によるとGPUによる処理が大きく関わってくる部分となっており、澤村様の使用されている現在の環境でGPU(GeForce GTX 750)が搭載されていました。この環境であれば不満がほぼ無いとの事です。
とはいえ、Adobeの推奨するGPUはさらに上位のもの(GeForce GTX 760以上)となっていますので、GPUの動作状況を監視しつつどの程度差がでるのかを検証していきます。前述のとおり、不要であればコストを抑えるポイントにもなりえます。

以上を踏まえ、具体的な「試作マシン1号」の構成を作ります。

Lightroom向けパソコン「iiyama AEX-RawProcess-Z170-TEST01」を作成!

必要となる検証を踏まえて、試作機の構成を決定しました。

試作PC
※画像はイメージです。

iiyama AEX-RawProcess-Z170-TEST01
CPU Core i7-6700K 動作クロックの変更やコア数の変更が可能な「K」を搭載
コア/スレッド数 4コア/8スレッド
動作クロック 4.0-4.2GHz
CPUクーラー 標準クーラー
メインメモリ DDR4-2133 16GB(8GB×2)
※デュアルチャンネル
マザーボード インテル Z170チップセット CPUやメモリの動作クロックの変更が可能な「Z170」M.2の搭載も考慮し、SATAなどの排他が無いモデルを選定
OS用ストレージ 256GB M.2 SSD OS用途としてM.2 SSDを搭載
カタログ用ストレージ 240GB (120GB SSD×2) RAID 0 SSDだけでなくRAID 0構成とし速度を重視
データ用ストレージ 480GB (240GB SSD×2) RAID 0 カタログ用だけでなく作業中のRAWデータ格納用として
データ用ストレージ 1TB 7200rpm HDD 上記ストレージの比較対象として
VGA GeForce GTX 960 推奨環境にあわせ一旦GTX 960を搭載
光学ドライブ DVDスーパーマルチドライブ
ケース ミドルタワー
電源 500W
OS Windows 10 Home 64bit

ご覧の通り、ストレージを重視した試作マシンとなりました。
なお試作マシンは、職人6号にお願いして作成してもらいしました。
それでは、実際に検証していきます。果たして期待通りの効果はあるのか?!

検証開始!

まずはストレージの効果を調べるためにCPUをBIOS設定から4コア8スレッド(HT有効)、動作クロックを4.0GHzに固定しました。
メモリも標準のDDR4-2133 16GBとしています。
M.2 SSDは、PCIe×2接続のSSDを使用、シーケンシャルリード700MB/s程のものとなります。
SSDはSATA3接続のもの2台をRAID 0で構成し、シーケンシャルリード1000MB/s程のものとなります。
HDDはSATA3接続のものを使用、シーケンシャルリード100MB/s程のものとなります。

カタログ格納先とデータの格納先をそれぞれパターン化し、下記のようなシートに沿って9パターンのデータを取得します。
取得するデータは、シンプルに『カタログへの読み込みの時間』と、『ピクセル等倍表示にかかる時間』の2項目です。

カタログ格納先
M.2 SSD HDD
データ格納先 M.2
SSD
HDD

Lightroomでは処理時間の計測結果が出力できませんので、“目視”でストップウォッチを用いて測定します。
項目ごとに3回計測し平均値をとっておりますが、目視での測定のため1秒以下の誤差はご容赦ください。

使用したサンプルデータは、澤村様より提供いただきましたRAWデータと、職人2号の私物カメラを借りて職人3号が撮影したRAWデータを用います。

  • 澤村様提供:フルサイズ機Sony α7のRAWデータ (6024x4024、ARW形式、平均ファイルサイズ24.0MB)
  • 澤村様提供:高画素フルサイズ機Sony α7RIIのRAWデータ (8000x5320、ARW形式、平均ファイルサイズ41.0MB)
  • 澤村様提供:FUJIFILM APS-C機X-Pro1のRAWデータ (4952x3288、RAF形式、平均ファイルサイズ24.9MB)
  • 職人2号カメラ:Sony NEX-5RのRAWデータ (4912x3264、ARW形式、平均ファイルサイズ16.0MB)

合計50枚 → ファイルコピーを実施し1000枚、3000枚、10000枚のデータを用意しました。

ストレージ検証の結果は?!

まずは、カタログへの読み込みの時間です。

結果1

縦軸は「カタログ格納先/データ格納先」を表します。
横軸は「秒」となります。グラフが短いほど早いということです。
M.2/M.2の10000枚のデータが無いのは、M.2の容量不足の為、測定することができませんでした。

結果は、残念ながら、期待したほど効果がありません。
何度測定しても、測定条件を見直しても大きく結果に変化はありませんでした。
カタログへの読み込みは、1000枚程度であればHDDでもSSDでも差は無く、3000枚以上の読み込みを行うと初めてSSDによる恩恵を受けることができるようです。

続けて、ピクセル等倍表示にかかる時間です。

結果2

先ほどと同様、縦軸は「カタログ格納先/データ格納先」を表します。
横軸は「秒」となります。グラフが短いほど早いということです。

結果は、先ほどと同様、期待したほど効果がありません。
グラフでは大きく差があるように見えますが、単位は秒です。
非常に短時間となり、目視では難しい測定となりましたが、HDDとSSD(RAID0)の構成間の差はわずか0.2秒。
今回用意した構成では、とてもコストに見合うほどの明確な差にはなりえません。
とはいえ、数百枚と、この作業を行った場合、僅かずつでも時間は短縮されますので、この差にメリットを感じられるかどうかというところになるでしょう。

ストレージ検証のまとめ

結論として、『カタログへの読み込みの時間』と、『ピクセル等倍表示にかかる時間』の2項目においては、SSDとHDD間における差はわずかな性能向上に留まりました。
SSDを2台のRAID 0の構成でこの結果ですので、M.2 PCIe×4接続のSSDや、最新のNVMeに対応したSSDなども検討していましたが、コストに対して効果が薄いとの見解となりました。
職人たちでこの結果を議論する中で「容量と速度の両立を目指した、SSHDはどうだろう?」という意見が出ました。これはたしかに試してみる価値はありそうです。

ストレージの性能が効くはず!と意気込んで検証をしてみたものの、いきなり見込みが外れた格好となりました。
果たしてSSHDの効果は?CPUやメモリの効果は?…後編に続きます。

執筆:パソコン工房 職人3号


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【パソコン実験工房】Lightroom向けPCを作る (後編)
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