「ミキサーを使った一歩上行くニコ生/YouTuber向けPCを作る」Impress連動企画(前編)

生配信のクオリティを上げたい欲望に・・・

2015-08-04

こんにちは。
Windows10や多数の新製品の発売などを控え、てんやわんやの職人3号です。

前回、DAWソフト「Cubase 8」に最適なパソコンということでリリースしてからはや2か月が経ってしまいました。
Impress様との記事連動企画「第5弾」となる今回は、とても盛んになっている「動画配信」をテーマに、実況動画配信や、Webアップロード用の動画編集に最適なパソコンについて考察することとなりました。

「動画配信」といえば、ニコニコ動画、Youtubeへの動画のアップロードや、ニコニコ生放送(通称:ニコ生)、twitch、UStreamへの「実況動画配信」など様々な手法があります。
放送の内容も「ゲームのプレイ実況動画配信」、「VOCALOIDで作曲」、「うたってみた」、「演奏してみた」、「おどってみた」などなど、たくさんのジャンルがあります。

そんなタイミングで前回取り上げましたCubaseオーディオインターフェイスでお世話になったヤマハミュージックジャパン様より「インターネット配信向けの新製品を出すのですが、いかがでしょうか?」といったご案内をいただきました。
情報をいただいてみると、手軽に高音質な配信が行えそうな製品で、ある程度音質にもこだわりたい「演奏してみた」「うたってみた」系にピッタリな予感!
ヤマハ様の快諾もいただき、今回は「うたってみた」系の動画配信にフォーカスしてこだわりパソコンを考察していくことになりました。

生放送にピッタリなオーディオインターフェース!

早速ヤマハミュージックジャパン様に製品をお借りしてみたところ、なんと!「AG03-MIKU」こと「ミクミキサー」が同梱されているではないですか!

製品情報はこちら(公式ページ):AG03-MIKU

このミキサーは、インターネット配信にターゲットして設計され、初めてミキサーを触るような人でも簡単に操作できるよう、細やかな配慮がなされた製品です。
なんといっても、白黒を基調としたカッコイイ系の男の子好みなデザインではなく、老若男女問わずに人気の高い「VOCALOID」の「初音ミク」をモチーフとした、エメラルドグリーンの優しい配色となっているのが特徴的です。
この「AG03-MIKU」の特徴や、「動画配信」をするにあたっての利点について、オーディオライターの藤本健氏に詳しくお話を聞くことができました。

ミキサーを使った一歩上行くニコ生/YouTuber向けPCを作る【前編】

藤本氏のBlog「藤本健の“DTMステーション”」においても紹介されていました。
初音ミクモデルも誕生、小さなミキサーAG03/AG06が超高機能だった!
話題の初音ミク・ミキサー、AG03をさっそく使ってみた!

藤本氏によると、
■AG03という型番にも関わらず実質合計7chの入力を持つ
■USB接続で24bit/192kHzに対応するオーディオインターフェースである
■ワンボタンで操作できるエフェクタや、ループバック機能をもっている
といった特徴があるとのことです。

まさに「うたってみた」「演奏してみた」系の動画配信に最適なオーディオインターフェースですね!お話を聞いているだけでもそのコストパフォーマンスの高さに、思わず自分も欲しくなってきました。

やはりポイントは省スペース?

まず、【前編】お話の中で、2種類の方向性のスペックを持ったパソコンが考えられます。
■動画編集は考えない「ニコ生専用」ベース機種
■最低限の動画編集に耐えられるスペックを持った上位機種

さらに「うたってみた」系の動画配信をするにあたって、重要と予想されるポイントをまとめると
1.音質が良いこと
2.配信が途切れないこと
3.机周りはシンプルであること
この3つが考えられます。

音質

演奏や歌声を聴かせるためには、まず配信する『音質』がこだわるポイントとなります。
音を「聞く」だけではなく、「録音」して「流す」といった場合は、ハードウェア的にもここに一工夫が必要になると考えられます。
一般的なパソコン本体に内蔵されるサウンド機能では、音の出力はよくても、あまり入力については考慮されていないものが多く、動画配信を見ていても音が聞き取りづらかったり、ノイズだらけだったりと問題点が山積みです。
こうした音周りの問題点は、音を専門で処理する外付けのオーディオインターフェース、もしくは内蔵のサウンドカードを搭載することで解決が可能です。

これは、先述の通り、ヤマハの「AG03-MIKU」を使用することで解決です!

配信が途切れない

せっかく音が良くても、配信が途切れてしまっていては意味がありません。
これは、パソコンの性能の問題、もしくは、生放送中である場合はインターネット回線の問題が考えられます。インターネット回線については有線接続にすることで、通信の延滞やノイズによる接続の不安定さを解消することができます。
また、インターネット回線もWiMAXやEMOBILEなどの無線サービスではなく一般的なインターネットサービスへの変更をご検討ください。

パソコン自体の問題については、まずCPUの処理性能の不足が考えられます。
ニコニコ生放送の場合、「Niconico Live Encoder」(以下NLE)を使用する方法がありますが、このNLEの動作推奨環境を確認すると、
■OS:WindowsXP SP3, Windows Vista SP2,Windows7 SP1  以上
■メモリ:2GB以上
■CPU:Core2Duo 2.40GHz以上
■Internet Exploler用のFlashPlayerがインストールされている
■.NET Framework 3.5がインストールされている
■DirectX 9以上に対応している
となっています。
<参照>NLEを利用して簡単に高画質配信を楽しもう!:公式ページ

この中で、最も重要な要素になると考えられるCPUは、Core2 Duo 2.40GHz以上となっています。この動作クロックですと、“Core2 Duo E6600”相当となりますので、現状のCore iシリーズのCPUであれば、まず間違いなく問題ない性能を持っていることになります。 藤本氏も、Core i3のマシンを使った実況配信でも余裕があったとの事でしたので、Core i3やCore i5クラスを候補とします。
そして、これらのCPUが動画編集においても、フルHDクラスの動画であれば、十分なパフォーマンスを発揮することができるかどうかを検証していきます。

そして、Celeronや、Atomクラスですが、これらのCPUにより省電力性も高まります。そしてなにより、コストを大きく抑えることができます。動画編集は考えない「ニコ生専用」として使用するのであれば、かなりコストパフォーマンスの高いパソコンとして使用することができます。「ニコ生専用」マシンとして耐えうるだけの性能を持つのか、この点は実機を用意し検証していきたいと思います。

メモリについても、上記の推奨環境を見る限り4GB搭載で問題は無いでしょう。ただし、動画編集を行うといった使い方も考えられるため、上位機種については8GBを搭載することを検討します。

ストレージは、SSDを採用とします。以前、「4K動画をネイティブ編集できる PC を考える」でも検証した通り、SSDによる動画編集時の快適性の向上は大きくなるため、SSDを候補とします。

デスク周りはシンプルに

これまでの、「メーカーさん、こんなPC作ってください!」の記事の中でも、小型であることを望む声は多くありました。また、ヤマハミュージックジャパン様にお話しをお伺いさせていただいた際も、Surfaceなどのような小型パソコンを使用し、VOCALOIDによる作曲を行う「ボカロP」の方から「机周りはシンプルであること」を望まれる声が多いとの事でした。

「うたってみた」や「演奏してみた」といった放送をされる方の机周りには、演奏するための機材や、歌声を録音するための機材が多数配置される方が多いのではないのでしょうか。
また、モニタスピーカーを配置し、本格的な音楽制作環境を持つ方もいらっしゃるかと思います。

今後より本格的な配信に向けて機材をそろえたりすることを想定し、今回は、手のひらサイズの超小型パソコン「NUC」を選択肢の一つとして加えたいと思います。

スムーズな配信への最適解を求めて

以上の考察に基づき、パソコンのスペックを作成していきますが、音質/画質へのこだわりと、かかる費用(パソコン代その他)とのバランスをどのように取っていくか、が重要になってくると思います。
コストを抑えるためにはCeleronクラスの構成にできるのがベストなのですが、編集作業に耐えるかどうか、と合わせてCeleronのスペックで品質をどこまで保てるか、については実際に試してみないとわからないところがあります。

これらの考察を元に構成を確定させ、プロである藤本氏に実際に配信など試していただきながら、パソコン実験工房としての後編では、動作確認を行った上で最適な環境を求めていきます。

執筆:パソコン工房 職人3号