「入門者からプロまで使えるマンガ家向けPCを創る」Impress連動企画(前編)

マンガ家向けパソコンを創る

2015-2-2

こんにちは。職人3号です。
Impressとのコラボ企画【メーカーさん、こんな PC 作ってください!】も第3弾となりました。
今回のお題は「入門者からプロまで使えるマンガ家向けPCを創る」です。
プロのマンガ家の意見を元にデジタル環境でのマンガ制作に必要なパソコンスペックについて考えます。

それでは最適なパソコンを創るためにまずはアレコレ考えていきます。

マンガ家向けパソコンを創る

ハードウェア(パソコン本体や、ペンタブレット、モニタなど)の進化とマンガ制作専用ソフトの登場により、マンガ制作現場はどのようになっているかという事を、 プロのマンガ家である北上諭志氏に詳しく聞く事ができました。
入門者からプロまで使えるマンガ家向けPCを創る【前編】

制作効率の向上や消耗品のコスト削減のみではなく遠隔地と連携しての制作チーム構築も実現していてデジタル環境のメリットがフル活用されています。

すごく勉強になりました!

更にスペシャルゲストも参加

北上さんは制作環境のメインとして「Comic Studio」をお使いとの事でしたので、制作会社のCELSYS(株式会社セルシス 以下セルシス)にソフトについてご意見を伺ったところ、 何と今回の企画に参加して頂ける事になりました。
強力な助っ人の参加で頼もしい限りです。

Comic Studio:デジタル漫画環境黎明期に発売され、今や多くの漫画家に愛用される漫画制作ソフト。

使用ソフトについて

プロの現場で「Comic Studio」の使用者はまだ多いとの事でしたが、セルシスさんのお話も聞いた結果、今回の企画では最新の「CLIP STUDIO PAINT」を使って検証を進める事としました。

「CLIP STUDIO PAINT」についてはこちら

CLIP STUDIO PAINT

CELSYS公式サイト:http://www.celsys.co.jp/
CLIP STUDIO公式サイト:http://www.clipstudio.net/
CLIP(ストア、講座、素材):https://www.clip-studio.com/clip_site/

パソコン実験工房のコンセプトですが、実績多数なものと新しいものがあるなら、基本的には新しいものを選びます。 セルシスさんにお話しを伺ったところでも「CLIP STUDIO PAINT」はソフト自体の機能強化は勿論の事、 マルチスレッド(マルチコアCPU)への更なる対応、大容量メモリへの対応といったハードウェアを生かすチューニングも行われています。
その話からもパソコン実験工房の職人一同は断然「CLIP STUDIO PAINT」推しとなりました。


マンガを描くためのパソコンを考える

Impress記事の【前編】ではプロの制作環境についてご紹介頂きました。
続いての
入門者からプロまで使えるマンガ家向けPCを創る【中編】
ではセルシスさんにも参加して頂いて、実際の制作環境について詰めていきました。
ハードウェアとしてのポイントは以下となります。

必要となるハードウェアについて
①パソコン本体
②ペンタブレット
③モニタ
④マウス、キーボード、スピーカー
⑤スキャナー、プリンター
⑥バックアップ関連ハードウェア(NAS、UPS)

①パソコン本体

■メモリ容量
まず、メモリが重要な要素であると考えられます。イラストやマンガを描く場合、描きこみの量にもよりますが、多くのメモリを消費していきます。 メモリの量が少ないと容量確保のためにHDDなどのストレージにスワッピング(データの退避)が発生し、パフォーマンスが下がってしまうことになります。

「CLIP STUDIO PAINT」は64ビット版のOSに標準で対応し、4GBを越える大容量のメモリを使用することができますので、OSは64ビット版であることはもちろん、 メモリを4枚以上積むことができるマザーボードに8GB以上しっかりと載せていくこととしますが、どこまでこのメモリを生かすことができるかを調べる必要があります。

■CPU性能
次にやはりCPU性能が重要になってきます。「CLIP STUDIO PAINT」は画面の描画処理にマルチコアの性能を生かすようなプログラムとなっているため、 2コア以上のマルチコアCPUが必要になります。CPUの性能が高いと画面のスクロールやペンの動きになめらかに追従させることができます。 また、フィルター処理などに動作クロックが有効であると考えられるためできる限り高いクロックのものが効率的な処理を実行できることになります。

2コア以上で動作クロックの高いところで、Core i3やCore i5が最適なCPUになると予想されます。もっとも、「CLIP STUDIO PAINT」がどこまで強力な処理能力をもつCoreシリーズのパワーを使い切るかは検証結果次第と言ったところで、 実はPentiumやCeleronなどの下位のグレードのCPUでも十分なパフォーマンスを発揮できる可能性もあります。ここを下げることで大幅なコストダウンを期待することができます。 一方で、Core i7などの最上位クラスはコストに見合うほど性能向上が無いと考えられます。

ただ、イラストを描く人の多くはゲームをしながら、音楽を聴きながら、資料を開きながら、動画をみながら等、イラストを描くことに加え別のことをする「~ながら作業」であることが一般的であると思いますし、 実際に北上さんからも「~ながら作業」に対応できるパソコンが良いというオーダーがありました。

クリエイティブな作業をする上ではリラックスする為のスペックマージンも大事ですよね。

これらの視点を元にCPUのコストパフォーマンスを見極めたいと思います。

■ストレージ
メモリの時と同様、描き込みの量にもよりますが、レイヤーと呼ばれる絵の階層が増えるとデータの容量が増え複雑化するため、読込や書込により時間がかかるようになります。 プロの現場ではページ単位で数多くのデータを扱うことが予想されるため、データの読込や書込の速度は重要なポイントとなるのではないのでしょうか。 SSDや7200rpmの高速な3.5インチHDDの搭載が必要になってくると考えられます。

■グラフィック
基本的にはCPUに搭載されている内蔵グラフィックの機能で十分であると考えられます。現行のCPU内蔵グラフィックであっても3Dオブジェクトの表示機能を搭載しており、 「CLIP STUDIO PAINT」の機能の一つである3Dレイヤーなどにも十分対応が可能です。OpenGLで描画されるため、ゲーム用途に使われるクラスの強力なグラフィックカードでなくても十分なパフォーマンスを発揮させることができると予想されます。 しかし、モデルデータが増えたときの負荷はどれほどのものになるのを調べる必要があります。また、プロのマンガ家がどれほどこの機能を使うかも気になります。 もっとも、グラフィックカードは上記のパーツに比べれば増設の難度も低いので足りなければ追加、といった考え方でも十分だと思われます。

■PCの形状
制作環境は室内という事で移動は考えなくても大丈夫で、静寂性も特に求めないしスペース的にも余裕はあるという事です。
つ・ま・り、普通のデスクトップPCで大丈夫なのです!!

前回の企画(「ラノベを快適に行うPCを考察」Impress 連動企画 (前編) 参照)では、 「コンパクト、静音、ハイパワー、デジタル出力へのコダワリ」という水と油を混ぜ合わせる要望で試行錯誤しましたが、今回はお言葉に甘えてケースやFAN類は普通のものを採用します。

これで価格をぐっと抑えられます。

②タブレット

次に②のペンタブレットは、WACOM製のものを採用します。2048レベルまでの筆圧検知を備えたプロ向け「Intuos Pro」と、1024レベルまでの筆圧検知を備えた「Intuos」の2製品群から選べるようにします。 プロ向けですので「Intuos Pro」としたいところですが、筆圧検知の違いが使い勝手としてどれほどの差がでるかは好みになると思われ、コストをより抑える目的で「Intuos」もラインナップに加えます。

③モニタ

③のモニタは、マンガ向けですので、基本的に白黒であれば色はあまり重要視されないためTNパネルを採用するモデルでも十分だと思われます。ですが、カラーページなど彩色が必要になることも予想できるため、 IPSパネルを採用するモデルもラインナップに加えます。また、マンガ・イラスト作成に当たり、資料を見ることや、「~ながら作業」に使用するため、デュアルディスプレイでの作業環境を想定しておきます。

⑤プリンター

北上さんの場合は紙の単行本で縮小された時のトーンの濃さや、全体的な白黒バランス等の確認用で使用されているとの事でした。
上記のような目的の為、モニタ共々カラーキャリブレーションを小まめに実施するという事はないそうです。

ちなみにカラーの場合は、基本出版社の方で色校、つまり色の見本を出してくれるのでそちらで、色の具合を確認するらしいです。

⑥バックアップ

残りのハードウェア④⑤⑥については、直接的にはマンガやイラストを描く点では関わらないため、必要最低限で考慮します。ただし⑥についてはプロ向けとして作成したデータを長期保存しておくことを考慮し、 データをパソコン本体の外にコピーを保存できる外付のHDDないしはNASなどで自動的にバックアップが取られるような機能を持つものを候補とします。


これらの考察を元にパソコン実験工房としての【後編】では実際に動作確認を行って最適な環境を求めていきます。



CLIP STUDIO PAINT 推奨パソコン
CLIP STUDIO PAINT 推奨パソコン


「入門者からプロまで使えるマンガ家向けPCを創る」Impress連動企画(後編)
「入門者からプロまで使えるマンガ家向けPCを創る」Impress連動企画(後編)

執筆:パソコン工房 職人3号