どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはイラストレーターの多田文彦さんです。

クリエイター最終更新日: 20220701

イラストレーター:様々な経験を通して、子供のころの夢だったイラストレーターに!

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはイラストレーターの多田文彦さんです。経済学部に進み、ドーナツショップのバイトを続けたという多田さんは、どんなきっかけでイラストレーターになったのでしょうか?そこには小学生の頃に夢見た「任天堂のおっちゃん」が関係していました。

多田さんが携わった作品

自主制作アニメの『アノナツココナツ』。9年間バイトしたドーナツショップを舞台にした15分のアニメーションです。

「散髪を好きになって欲しい」という思いから制作された理美容ヒーローのお話『ピースマンシリーズ』。自分自身の作風を改めて考えたり、子どもたちへの読み聞かせをしたりして、世界が広がったそう。

ルーツは方眼ノートに書き続けたドット絵

多田さんは子供の頃、どんな夢を描いていましたか?

小学校の卒業アルバムには「任天堂のおっちゃんになる」と書いていました。

ファミコンが全盛のころだったのでゲームを作りたかったんでしょうね。そういえば方眼ノートに『ゼルダの伝説』や『スーパーマリオ』のドット絵を描いて切り抜いてコマにしてゲームをつくって遊んでいました。当時はプログラマーとかデザイナーとか、さっぱりわかっていなかったですが…。

“任天堂のおっちゃん”を目指して、どんな学校へ進学しましたか?

卒業アルバムには「任天堂のおっちゃんになる」と書いていましたが、特に夢というのはなかった気がします。

小中高と地元の平凡な公立校に進みましたし、大学もとにかく入れそうな大学を選んで受験をしました。高校時代は理系コースだったのですが、受験科目に選択で数Iを選べる大阪産業大学経営学部に合格して進学することになりました。

経営学部なんですね!意外でした。多田さんは、どんな学生生活を送りましたか?

中学生のころはとにかく絵を描くことが大好きで大学ノートにマンガを描いていました。

『ゼルダの伝説』のような剣と魔法の冒険アドベンチャーものでしたね。タイトルはズバリ「ボーケン」…。なんのひねりもないタイトルでしたが、ノート6冊くらい描いて他のクラスの生徒とかも借りて読んでくれていました。

ですが高校に上がってからは一切絵を描かなくなりました。思春期だったんでしょうか…。絵ばっかり描いてることがかっこ悪く感じていたのかな(笑)。

幼少期はゲームを作りたかったという印象だったと思うのですが、なぜイラストレーターを目指すようになったでしょうか?

大学生の頃は典型的なダメ学生で、ろくに学校も行かずに毎日アルバイトしては深夜まで友達と遊んでいました。

高校3年生からドーナツ屋さんでアルバイトをしていたのですが、大学は遊んでいた報いでなかなか卒業できずに2年留年し、就活もしていなかったので卒業してもそのまましばらくバイトでドーナツを揚げていました。気づけば27歳になっていて「このままじゃいけないな」と就職しようと思った時に思い出したのが、昔大学ノートに描いていた絵のことだったんです。

そこからイラストレーターになったきっかけはなんですか?

最初はクリエイティブ系のことを学んだこともなければ働いた経験もないので「未経験OK」な風俗雑誌系を扱う会社で5年間経験を積みました。その後デザイン事務所へ転職し、グラフィックデザイナーとして主にDTPの仕事をしていました。その会社にはイラストレーターがおらず、カットイラストなどは外注で依頼をしていましたが、自分の担当案件では、前職での経験を活かしてデザインと共にIllustratorでイラストも描いていました。そこで自分のイラストでもデザインが通るようになってきて、「イラストでやっていけるのかも!」と思って独立しました。

アニメーション制作で気づいた新しい視点

多田さんの代表作を教えてください

自主制作アニメになってしまうのですが、昨年完成した「アノナツココナツ」です。

それまで3分〜5分の作品を中心に作ってきましたが、これは15分近い作品となり自分の中では最長作となります。この作品は学生時代から9年間アルバイトしていたドーナツ屋が舞台。2017年に閉店となってしまい、その時に「ここを舞台とした作品を作りたい!」と思い、ようやく形にすることができました。この作品を上映会で発表したきっかけでNEXCO西日本さまのTVCMのアニメーションも担当させていただけたのも、印象深いです。

多田さんにとってターニングポイントとなった作品はなんですか?

絵本のイラスト、デザインを担当した「ピースマン」シリーズの絵本です。

小学校時代からの理容師の友人が美容室や散髪が大好きな子どもを増やすために書いたヒーローのお話で、絵のタッチやデザインに関しては結構やりたいようにやらせてもらいました。

その仕事には、どんな“学び”がありましたか?

普段は家で仕事をしているので、こもりがちになり人と接点のない生活をしています。しかし「ピースマン」を描いたことで、実際に児童館や施設に絵本の読み聞かせ会に同行して喜ぶ子どもたちの姿を見られたのは大きかったです。それとともに結構自由に描かせてもらった仕事だったので、「自分のタッチって何だろう?自分の描きたい世界観って何だろう?」と、これ以降の仕事や作品にも大きな影響を及ぼしたと思います。

色んな新しい視点に気づけたんですね。逆に仕事で失敗をしたことはありますか?

仕事では最初に一度打ち合わせをしたあとはメールや電話でのやり取りが多いのですが、あるお客様とのやりとりで “様”を付けずにしばらくずっと呼び捨てでメールを送ってしまっていたことがあります…。その時はオデコが擦り切れるくらい謝りました(苦笑)。

それは冷や汗が止まりませんね…。多田さんが仕事で一番感動する瞬間はどんな時ですか?

お風呂に入っている時に煮詰まっていたアイデアが出てきたときです。

「自分はクリエイターに向いていないんじゃないか?」と悩むほどアイデア出しが下手くそなのですが、湯船に浸かっていると不思議とアイデアが出てきます。なので入る前に出したいアイデアのことを整理してからお風呂に向かいます。しかしなぜかこの方法は一日一度しか使用できません(笑)。

多田さんが仕事で大切にしている事を教えてください。

お客様の意向をよく汲み取ってから作業に入ることです。

「おまかせで」とか「自分でもよくわかんないから」とおっしゃる方でも、よくよく聞いていくと実は思い描いていたイメージだったり、ご自身でも気づかなかった理想だったりがあったりします。そういうことが掘り下げられたときは気持ちよく仕事ができることが多い気がします。

今はカスタマイズ、今後は乗り換えも検討

現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?

2.4 GHz 8コアIntel Core i9搭載の16インチノートブックです。

メモリ 32GB
ストレージ SSD 2TB SSD
モニター BenQ PD2720U 27インチ
モニター DELL S2722QC 27インチ
液晶タプレット Wacom Cintiq Pro16

PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。

基本的に同じモデルのPCを選びます。昔はメモリやHDDも好きなものを選べましたが、今は購入時にカスタマイズしないといけないのでどうしても高くなっちゃいますよね…。

なお、最近Blenderをさわり始めたのですが、搭載しているGPUがBlenderのGPUレンダリングに対応していなかったので、乗り換えも思案中です。

多田さんが普段使っている裏技はありますか?

集中力が続かないとき、ノイズキャンセリング付きイヤホンをはめて、音楽を一切流さず無音にすることで無理やり集中力を高めます。

おもしろいことを知れば、自然と夢中になれる

多田さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?

“考え続けること”です。

何にでも時間をかければいいってわけではありませんが、作りたいもの、興味のあるものについて考え続けた時間というのは創作にとってとても大事で尊いものだと思います。積極的にスグ行動できる方ではありませんが、考え続けておもしろいことが思い浮かべば自然と手は動くので。今日もお風呂で考えたいと思います。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

興味のあることには力を注ぎやすいと思うので、若いうちにいろいろなことを経験してそのなかで好きなこと、興味のあることがみつかったら深堀っていくとおもしろいことができるんじゃないかなと思います。

多田さん、ありがとうございました!

幼い頃の夢、それが本当にやりたいことなのかも!?

「任天堂のおっちゃん」になりたかった多田さん。そこから経営学部に進学し、フリーターを経て、イラストレーターの道に進みました。一見遠回りのようにも思えますが、さまざまな経験が作品に生きていることがわかります。また、小学生の頃にノートに綴ったゲームのドット絵が軸となったのでしょう。子どもの頃の夢、実は仕事のベースになるのかもしれません。

クリエイタープロフィール

多田文彦さん
イラストレーター
1974年京都生まれ。大阪産業大学経営学部卒。広告代理店・デザイン事務所勤務を経てイラストレーターとして2008年FMCイラスト工房の屋号で活動開始。

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG [ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる !」「みつかる!」記事を書いています。

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