

どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現在活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはイラストレーターのイマイヤスフミさんです。テキストの挿絵から企業のキャラクターデザイン、遊園地の園内マップまで幅広い分野で活躍されているイマイさん。もともとはグラフィックデザイナーだったそうですが、どんなきっかけでイラストレーターに転身したのでしょうか?
イマイさんが携わった作品
イマイさんオリジナルのキャラクター『HOARDERS STREET』。アメコミ風のイラストで描かれたキャラクターには、それぞれ個性的なプロフィールが! かわいい女の子から、フライドポテト、ロックバンドのボーカリストまで96人のキャラクターがいます。
世界の偉人の名言シリーズ。アメコミ風のイラストに、著名な人やキャラクターの名言、格言を、オリジナルのキャラクターがつぶやいています。ちょっと哀愁のあるシチュエーションと、色の数を抑えた落ち着いたトーンがクールです。
個展がきっかけで専属イラストレーターに
イマイさんは子どもの頃、どんな大人になりたかったですか?
高校生になるまでは将来の職業について、はっきりとしたビジョンはなかったと思います。ただ幼少期から絵を描くことや工作、運動が得意だった事もあり「何かしらそれらを活かせれる職業につけたらいいな」とざっくりとだけ考えていました。
美術大学に進学したそうですが、何がきっかけだったのですか?
結局将来について特に何もビジョンがないまま普通高校に進学したのですが、美術の先生に呼び出され「君は美術部に入って美大を目指しなさい」と強く勧められたんです。そこから“絵を描く”ということにスイッチが入り、美術部に入部し3年間油絵を勉強、高校3年の夏からは京都の美大受験対策の教室に通い、デッサンの勉強をしました。デッサンの勉強が功を奏して、大阪芸術大学でデザイン学科グラフィックコースに進学しました。
美大時代はどんな学生でしたか?
美術大学に進学出来た事で一安心したのですが、当時の大阪芸大の授業はかなり厳しく…。1週間に2~3個の課題を提出するのですが、年間で1~2個提出物を出し損ねると留年すると言われていたので、課題提出するために毎回徹夜で、必死に課題をこなしていました。大学生活の4年間はひたすら課題を提出するという、今考えると人生で一番しんどい時期でした。
辛い4年間だったんですね…。そこからどんな経緯でイラストレーターに?
大学卒業後は大阪のデザイン会社に就職し、グラフィックデザイナーを目指していました。同じ時期『パラッパラッパー』というゲームのキャラクターデザイナーとしてロドニー・グリーンブラッドさんが注目されました。日本中でブレイクしているのを見て、イラストレーターやキャラクターデザイナーという存在を知り、イラストレーターを意識するようになりました。
今のお仕事を始めたきっかけを教えてください。
グラフィックデザイナーになって4年ほど経ち、後輩デザイナーとイラスト二人展を開催しました。その期間中、偶然ギャラリーに来られていたイラストレーションエージェンシーの代表の方に「イラストレーターとしてやってみてはどうか?」と声を掛けて頂きイラストレーターに転職する決意をしました。その後はそのエージェンシーと専属契約作家として20年、現在も色々な仕事をさせて頂いています。
クライアントの期待値120%を目指す!
イマイさんの代表作を教えてください
20年という長いキャリアの中で代表作を選ぶのは難しいですが、海外からの問い合わせで嬉しかったのは海外の企業からの仕事でした。某大手企業展覧会用のメインビジュアルの制作でしたが実際の現場に行ってみると会場で使用されていたのは勿論、横幅約30mのビルボード、その日の新聞の1面、週刊誌の表紙や広告など幅広く展開され使用されていたのには驚きの連続でした!
特にターニングポイントになった仕事があれば教えてください。
直接的な仕事ではないのですが…。20年間近くイラストレーターとして活動してきて、本来やりたかったキャラクターの仕事が思っている以上に少ないことに気がつきました。自分の中で「キャラクターの仕事をもっとしたい」という意識が高まり、2019年から意識的にオリジナルキャラクターを描くようにしています。1年間で100体ほど描きましたが今後も時間を作ってオリジナルキャラクターを描いていこうと思っています。
その活動から得られたことはありますか?
ひたすらオリジナルキャラクターを描き続ける事で、当然ですが描き上げる速度が早くなりました。またキャラクターにとって重要な名前や性格、動きやポーズなどのアイデアの引き出しも多くなったと思います。さらに描いたものは実績という形で財産になり、そのまま仕事のプレゼンに活かせるので仕事が決まりやすくなった気がします。フリーのイラストレーターは自発的に発信する事の重要性を改めて感じています。
仕事で失敗をしたことはありますか?
先出のエージェンシーの担当者がスケジュール管理をするので今まで大きな失敗はありません。ただ制作については自分一人で制作するので、複数の仕事の締め切りが重なってしまった時は冷や汗をかきながら数日の徹夜で間に合わせるという事はよくあります…。作家はクオリティだけでなく時間厳守も求められます。1度失敗をするだけでもクライアントやエージェントからの信頼を失ってしまうのでそこはかなり注意しています。
仕事をしていて、一番感動する瞬間はどんな時ですか?
実際に印刷されたものやウェブなどで使用されているのを見た時に達成感を感じます。自分が描いたイラストが街の本屋に並び、駅貼りポスターやビルボードで使用され、グッズになったものを見ると感動しますし、少しは人の役に立てている事が誇らしくもあります。最近特に嬉しく感じているのは、メインビジュアルや園内マップを描かせて頂いている遊園地内を自分の子供と一緒に歩く時です。将来、良い思い出として残ってくれればと思っています。
事をするうえで、もっとも大切にしていることは何ですか?
フリーランスになってからですがクライアントの期待度120%を毎回目指しています。制作費を頂いているからにはクライアントに失望させたくないですし、期待以上のものを描く事で次回に繋がります。また実績として残る事で他のコンペなどに活用も出来ますので、どんな仕事も手は抜かない事を心掛けています。また作品データはジャンル別にして、自分のサイトやSNSに掲載します。これは発信と共に自分の作品スタイルの方向性を確認するのに役立っています。
鉛筆で描くとキャラクターが生きる!?
今使っているソフトウェアや周辺機器を教えてください。
イラストの制作についてはAdobe Illustratorを使用、加工する場合や手書き風に作る場合はAdobe Photoshopを使用しています。仕事の対応力やデータの扱いやすさと作品の性質上、仕事の案件はIllustratorで納品する事が多いです。周辺機器は下描きをスキャンするスキャナーと確認用のプリンターを使っています。ペンタブレットも持っていますが、作業はマウスに手が馴染んでいるのでイラストはほぼマウスで描いています。
イマイさんだけの裏技があれば教えてください!
特に裏技というわけではないのですが、僕はアイデア出しやラフ描きは鉛筆ホルダー(三菱鉛筆ユニホルダー)もしくはシャープペンを使っています。モニターに直接描くという人も多いと思いますが、鉛筆で描くと線がイキイキする気がします。イラストレーターやキャラクターデザイナーを目指すなら、基本は紙と鉛筆で沢山描くことが個人的には良いと思っています。
描き続けることで成長できる
イマイさんにとって“クリエイティブ仕事道”とはなんですか?
イラストとキャラクターを常に描き続けるという事でしょうか。受注の仕事は勿論ですが自分から発信を続ける事で、クリエイターとしての鮮度が保たれると考えますし、必要な事であると考えています。僕自身、自分から発信しなかった時期があるのですが、その時期は比例して仕事が減ってしまっていた気がします。少しずつでも作り続ける事で常に頭をアイドリング状態にしておく事も必要だと思います。
クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!
プロのイラストレーターを目指している方にメッセージを送ります。画力やセンスだけでなく、バランス感覚、表現力、観察力、対応力、オリジナリティなどプロのイラストレーターになるために必要な要素は沢山あります。最初は足りないものがあると思いますがそれらは描き続ける事で補えるものばかりです。努力を惜しまず頑張りましょう!
イマイさん、ありがとうございました!
描き続ければ成長できる
20年のキャリアであっても、成長するために描き続けるイマイさん。クライアントからいただく仕事には120%の力で臨み、自分自身の腕を磨く姿はクリエーターの鑑と言っても過言ではありません。そのクリエーター哲学は、イラストレーターだけに限らずどんな仕事にも共通する内容でした!
クリエイタープロフィール
イマイヤスフミさん
イラストレーター
1972年大阪府生まれ。大阪芸術大学デザイン学科卒。大阪芸大を卒業後、グラフィックデザイナーを経てイラストレーターに転身。イラストを中心にロゴの制作・グラフィッククデザインを手掛ける。2006年より有限会社ヴィジョントラックの専属イラストレーターとして活動

[ネクスマグ] 編集部
パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。