

VR元年と呼ばれた2016年から早くも2年が経ち、VR向けのヘッドマウントディスプレイ(以降 HMD)の普及と共に、多くのアミューズメント施設などで身近にVR体験ができるようになりました。 また、家庭用ゲーム機に対応したVR HMDやスマートフォンに対応したVRゴーグルなど、様々な機能を持った商品が数多く発売され、HMDの性能も時を重ねるごとに進化を遂げてきました。 今回はHTCより今月発売された新型VRヘッドセット VIVE Pro アップグレードキットのレビューをお届けいたします。
VIVE史上最高の性能と機能を備えた「VIVE Pro」
2016年の4月に発売されたHTC VIVE(以降 VIVE)は、外部にエミッターを設置し、HMDのセンサーにより向きだけでなく位置をトラッキングし、部屋そのものを3D空間へと取り込む「ルームスケール」として開発され、そのトラッキング性能の高さから話題となりました。
それから約2年の月日が経ち、機能と性能の向上が図られたVIVEの上位機種としてVIVE Pro HMD(以降 VIVE Pro)が発売となります。ここからはVIVE Proの機能性とHMDのデザイン性についてご紹介していきます。
「VIVE Pro」と「VIVE」のスペックを比較・評価
VIVE Pro | VIVE | |
---|---|---|
スクリーン | デュアルAMOLED 3.5インチ(対角) | デュアルAMOLED 3.6インチ(対角) |
解像度 | 片目あたり 1440 x 1600 ピクセル(合計2880 x 1600ピクセル) | 片目あたり 1080 x 1200 ピクセル (合計 2160 x 1200 ピクセル) |
リフレッシュレート | 90 Hz | |
視野角 | 110 度 | |
オーディオ | ハイレゾ対応ヘッドセット | 外部接続 |
ハイレゾ対応ヘッドフォン(取り外し可能) | ||
高インピーダンスのヘッドフォンサポート | ||
入力 | 内蔵マイク | |
接続 | USB 3.0、DP 1.2、Bluetooth | HDMI、USB 2.0、3.5 mm ステレオヘッドフォン端子、電源、Bluetooth |
センサー | SteamVRトラッキング、Gセンサー、ジャイロスコープ、近接センサー、IPDセンサー | SteamVRトラッキング、Gセンサー、ジャイロスコープ、近接センサー |
「VIVE Pro」と「VIVE」のスペックを比較
解像度が2160 x 1200(448 ppi)から2880 x 1600(615 ppi)に向上し、ピクセル数が78%(ピクセル密度で37%)増加、より鮮明な映像が楽しめるとともにIPD(瞳孔間距離)センサーが導入されたことで、眼の中心とレンズの中心をしっかりと合わせ、より没入感の高いVR体験が可能となりました。また、VIVEでは別売だった「VIVE デラックス オーディオ ストラップ」の機能を統合し、進化させたVIVE Proのデザインは、「VIVE デラックス オーディオ ストラップ」を取付けたVIVEと比べても、HMD部分が軽量化されていて重さが均等に分散し、装着時の安定性が向上しています。
VIVE Proの位置をトラッキングするベースステーションとモーションコントローラは別売となりますので、「VIVE Pro HMD(アップグレードキット)」をご購入の際はご注意ください。従来のVIVEで使用していたベースステーションとモーションコントローラをそのままVIVE Proでも使用することができます。
VIVE Proの進化した機能
VIVE Proの特徴として、HMD前面に搭載された2基のカメラで、外の様子をワイヤーフレームのような表示でVRコンテンツに合成できる機能「シャペロン・テクノロジー」が採用されました。従来では1基だったカメラが2基になったため、奥行きが検知できるようになった点が大きな変化です。また、ハイレゾ対応の3D空間オーディオを実現するヘッドフォンは、ノイズキャンセリング機能を備え、コンパクトながら内蔵アンプによる迫力のあるサウンドが楽しめます。
VIVE ProはHMD前面にカメラが2基搭載
HMD下部にはノイズキャンセリング機能用のマイクとVIVE Proを装着している人の声を拾うマイクが2箇所設けられている
本体左側面にあるボタンは1回のクリックでSteamを呼び出し、2回のクリックでシャペロン・テクノロジーの切り替えが可能
ハイレゾ対応ヘッドフォンは前後左右の動きに加え、高さ、角度まで調整できるので耳穴の位置にしっかりと合わせることができるようだ
左側のヘッドフォンにはボリューム(音量)を調整するボタンが設けられている
右側のヘッドフォンにはマイクをミュート(消音)にするボタンが設けられている
最適化された装着感
VIVE Proの本体デザインは細部まで人間工学に基づいて設計され、重さを均等に分散し、重心位置が最適化され、激しい動きでも安定した装着感を実現しています。
VIVE ProのHMD部分の重さにより前方にかかる重心を均等に分散するため、後頭部の下にある支えが活かされている
ヘッドセットを顔にあて、ストラップを頭にスライドさせて高さの位置を調整
調節ダイヤルを時計回りに回すことでヘッドレストにあたる部分が前方に移動し、頭部にフィットする形に調整ができるようだ
HMD前面左下のボタンでヘッドセット内の空間を広げることが可能、眼鏡を着けた状態でも問題なく装着できるようだ ※VIVE Proを逆さにして撮影
HMD前面右下にレンズ間の左右の距離を調節できるIPDノブ
表面積を24%増やしたフェイスクッションと、花びらから発想を得た独自デザインのノーズパッドは外からの光の侵入を防ぎ、没入感を向上させている。VIVEよりも広くなっているため大きめの眼鏡を装着した状態でも快適にHMDを装着できる
「VIVE Pro」と「VIVE」を比べてみた
VIVE Proの化粧箱にはベースステーションとモーションコントローラが同梱されていない為、コンパクトな外装になっています。
VIVE ProはVIVEと比べ、標準で機能面と装着性に優れた仕様になっています。
VIVE Proの梱包物はHMD本体とリンクボックスのほか、ケーブル類のみのようだ
ベースステーションとモーションコントローラは別売りとなるのでご注意が必要だ
機能性の向上に加え、装着性にも優れたデザインに変更されている
VIVEでは別途ヘッドフォンが必要となっているが、VIVE Proでは高音質なヘッドフォンが標準装備
HMDに接続されているケーブルは頭頂部から頭部を支えるシャーシの脇に添う形となり、ケーブル周りがスッキリとしている
リンクボックスを比べてみた
PCとVIVE Proを接続するリンクボックスは大きさこそVIVEの物と変わりありませんが、PC側に接続する端子はHDMIが削除され、HMD側の端子も1つにまとめられたシンプルな接続方法に変更されました。
左:VIVE 右:VIVE Pro / リンクボックスの大きさはVIVEと変わりが見られないようだ
左:VIVE 右:VIVE Pro / PC側に繋ぐ端子はHDMIが削除され、DisplayPortのみに変更されている
左:VIVE 右:VIVE Pro / HMD側に繋ぐ端子は1つにまとめられ電源ボタン(青いボタン)が追加されている
左:VIVE 右:VIVE Pro / VIVEで採用されていた3-in-1ケーブルが1本化され、VIVE Proの接続はシンプルになっている
フェイスクッション等のお手入れ
VIVEと同様にフェイスクッションとストラップの取り外しが可能なことに加え、ヘッドレストにあたる部分のクッションも取り外してお手入れできます。
フェイスクッション・ストラップ・ヘッドレストにあたる部分のクッションは構造上、2つに別れている
VIVE Proはより鮮明で高画質な映像、さらにハイレゾ対応で迫力あるサウンドを実現
インテルのWiGigを活用したVIVE ワイヤレスアダプターも今後発売されるので、ケーブルを気にすること無く、より自由なVR体験が可能となる予定です。加えて、VIVE Proでは5×5mの『ルームスケーリング』を超える、ベースステーション2.0を設置したトラッキング2.0による10×10mの『ハウススケール』にも対応する予定となっていますので個人の利用はもちろん、イベントや展示会などでも活躍が見込めます。
VIVEの上位機にあたるVIVE Proは解像度の向上に伴い、より鮮明で高画質な映像と、標準で備わっているハイレゾ対応のヘッドフォンは3D空間サウンドの技術が導入され、高音質で迫力あるサウンドを実現。人間工学に基づいて設計されたVIVE Proのデザインは重さを均等に分散し、快適なVR体験を可能にしてくれます。
360度どこからみても凡人、職人番号ラッキー7!職人7号です。主に写真撮影、動画編集を担当。パソコン工房ECサイトのBTOPCや自作パーツ等ひろく手掛ける。店舗部門出身。