食器やアクセサリーなどの小物をどうしたら上手に撮れるか、アイテムごとの特徴合わせた撮影のコツをプロカメラマンの安藤さんに聞いてみました!

クリエイター最終更新日: 20190125

小物の魅力を引き出す撮影テクニック!

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家でいらなくなった食器やバッグ、アクセサリーを、オークションやフリマアプリに出品するときや、景品や記念にもらった小物をSNSにアップするときなど、どんな写真を撮影したらいいか悩みませんか?今回は小物を撮影するときのポイントを、陶器の器、グラス、アクセサリー、そしてバッグを持ち込んで、プロカメラマンの安藤さんに教えていただきました!

基本の光の使い方を覚えよう!

まずは基本的な光の使い方から。安藤さんによると、自然光で撮るときも、スタンドライトなどを使ってライティングを施すときも、光は左上から当てるのがポイントとのこと。
安藤さん「主に雑誌やチラシなどの紙媒体のデザインには『Zの法則』というものがあって、これは、左上から右へ、右から左下へ、そして左下から右へと、読む人の視線がZの文字を書くように流れることを表している。この法則は、写真にも影響があるんだ。左から右へ読むとき、写真に逆方向の右から左へのグラデーションが入っていると、人は違和感を感じてしまう」

試しに下図のように、左から右に読んでいく文字に対して、同じく左から右へ光が当たっている写真(下図上)と、文字とは逆に右から左へ光が当たっている写真(下図下)を準備して見比べてみると、確かに下の写真の方が、文字を読み進めていて違和感を感じます。
安藤さん「もちろん絶対ではないけれど、違和感なく自然に見てもらえることは、大切なことのひとつだと思うよ!」

下の方が読んでいて、つまずくような印象がある下の方が読んでいて、つまずくような印象がある

また、晴れの日などの強い自然光やスタンドライトで撮影するときには、レースカーテンやトレーシングペーパーを光と被写体の間に挟むと、光が柔らかくなるそうです。
安藤さん「緩やかな光のグラデーションを作ってあげることで、物のディテールを伝えることができるよ!」

取材の日は曇りでしたが、晴れた日の直射日光であればレースカーテンなどで光を柔らかくするのがポイント!取材の日は曇りでしたが、晴れた日の直射日光であればレースカーテンなどで
光を柔らかくするのがポイント!

そしてもうひとつのポイントは、余分な写り込みや色被りを防ぐために、セットしたライティング以外の室内の電気は消しておくことだそうです。
安藤さん「部屋は少し暗く感じるかもしれないけれど、被写体の暗い場所にカメラの照準を合わせて撮ると、全体的に写真を明るく調整してくれるから大丈夫!撮影した時に写真が全体的に暗いなと感じたら、明るい場所に照準が合っている可能性があるので気をつけて見てみよう」

2つの撮影方法

先ほども自然光とスタンドライトでのライティングの話が出ていましたが、
「自然光とライティングを用いたときに出る雰囲気の違いを最大限に活かすと、2つの方向性で表現できるんだ。撮影時の参考になるよう紹介しておくよ」と安藤さん。

まずは、自然光で撮影する場合。自然光は文字通り自然の光。つまり太陽の光を使って撮影する方法です。天気によって様々な変化がありますが、自然光で撮影すると、自分たちが普段目にしている物や風景に近い色の表現が可能です。
撮影する器などにテーブルの木目や周りのものが写り込んだりしてしまう場合には、部屋の電気を消して、自然光だけで撮影した方が、普段見ている風景や雰囲気の世界観を表現できます。
安藤さん「自然な光だからこそ、写り込むこともまた自然な状態と言えるね」

テーブルの木が写り込んだ器テーブルの木が写り込んだ器

また、自然光で撮影する時のポイントは、人物を撮影するときと同じように、被写界深度を浅く(F値を小さくする)し、背景をぼかすなどして奥行き感を出してあげることだそうです。
安藤さん「逆光ぎみに撮影してあげると、空間として奥の方が明るくなるから、手前の見せたい物の色が濃く(暗く)なることで、自然な世界観だとしても見せたい物に視線が集まるんだ!逆光で撮影するときには、明るい部分ではなく、暗い部分に照準を合わせて撮影しよう」

背景に強く黒い部分があるが、それでも奥が明るくぼけていることで手前の器が見えてくる背景に強く黒い部分があるが、それでも奥が明るくぼけていることで
手前の器が見えてくる

※人物の撮影についてはこちらの記事も参考にしてください
“プロカメラマン直伝!ここがポイント!初心者でも子供の写真を上手に撮影するテクニック[屋内編]”
https://www.pc-koubou.jp/magazine/12391

もうひとつが、スタンドライト等の照明や、白いボード等でセットを組んで撮影する方法。この方法だとカタログなどで見たことのあるような写真が撮れます。
安藤さん「セットを組んで撮影をすると器の形状や質感といった細かなディテールまで伝えることができるので、物の情報をきちんと伝えたい時にいいと思うよ。撮影の目的や表現したいこと、用意できるものを考慮して、ベストな選択をしてみよう!」

撮影

では、セットを組んで撮影する場合のポイントについて、アイテムごとに細かく見ていきましょう。

陶器の器や皿は写り込みを気にしよう!

まずは陶器の器から撮影してみます。陶器は写り込みを気にしてあげると、伝えるべき情報の精度も上がり、見た目にもきれいな写真になります。

ここで、写り込みの原理を理解しておきましょう。写り込むのは、被写体から見て黒い空間にある白いものや、白い空間にある黒いものです。
安藤さん「写り込みといっても鏡ではないので、原理を理解しておけば対処が可能だから参考にしてね」

黒い床の白いテープがしっかりと写り込んでいる。黒い床の白いテープがしっかりと写り込んでいる。

白いテーブルの黒いペンがしっかりと写り込んでいる。なるほど!白いテーブルの黒いペンがしっかりと写り込んでいる。なるほど!

写り込みの原理が理解できたら、台と壁の水平線が真っ直ぐになるよう気をつけながらどんどん撮影してみましょう。形状や深さを示唆できるよう、ボウル型の器は上部の輪が見えるように撮ったり、平たい皿は真俯瞰(真上)から撮影したりと、いろいろ試してみると楽しくなってきますよ!

撮影

グラスは逆光で撮影しよう!

次に、グラスを撮影してみましょう。まずは陶器の器と同じセッティングで撮影してみます。同じ条件で撮影すると、明るすぎてグラスの形が背景に溶け込んでしまいますね。そこで、絞り値(F値)を小さくし、光の量を調整して暗くしてみます。すると今度は、白いテーブルや壁がグレーになってしまいました。グラスは透明なので、暗くすると全体的に色が暗くなり、透明な部分もグレーになってしまいます。

左が陶器を撮影したときと同じ設定。グラスの縁が背景に溶けてしまっているので右のように明るさを調整するのだが…左が陶器を撮影したときと同じ設定。グラスの縁が背景に溶けてしまっているので
右のように明るさを調整するのだが…

そこで、プロが教えるポイント! ガラス類は逆光で撮影しましょう。逆光にすると、グラスの中にハイライト(最も明るい白色)が出てきます。これは厚みのある部分に出てくるため、単にガラス製品というだけでなく、ガラスの厚みも伝えることができます。
安藤さん「逆光ということは手前よりも奥が明るい状態なので、色も鮮やかに見え、グラスのカーブや厚みが影となって、輪郭がはっきりしてくるよ!」

撮影

ジュエリーはキラキラ感を最大限に!

続いて、ジュエリーを撮影します。
安藤さん「シルバーそのものには色がないんだ。光が反射することでキラキラ光る。横からの光ではキラキラ感が表現できないので、基本的に半逆光で撮影しよう!」

どの部分を光らせると一番きれいに見えるか検証しながら、最適な場所や角度を見つけるのがベストとのこと。
安藤さん「全体と一番見せたいパーツの詳細、両方を撮影しておくと、ディテールもしっかり伝えることができるね!」

左は横からの光、右が半逆光の光のとき左は横からの光、右が半逆光の光のとき

今回はネックレスを撮影してみました。
安藤さん「着用したイメージに近づけるために、ネックレスは吊るして撮影するのが一番いい方法だと思うよ。置いて撮影する場合は、細い筆などを使って、着用感をイメージしながら首の太さをある程度演出したり、根気よく形を整えることが必要になってくるからね…」
実際に置いて撮影をしてみましたが、確かに形を整えるのに苦労しました…。

しばらく現場が無言になりました…しばらく現場が無言になりました…

できあがり!できあがり!

バッグは使用感と機能が伝わるかがポイント!

最後に、バッグを撮影してみましょう。
安藤さん「バッグを撮影するときのポイントは使用感!肩掛けの場合は実際に掛けてみて、その状態を撮影すると、使ってみたときのイメージが伝わりやすいよね。ハンガーに掛けてしまうのもいいけれど、テグス(釣り糸などの透明な糸)で持ち手を吊るすのが一般的な撮影方法だよ!」
さっそくテグスで持ち手を吊るして撮影してみます。

安藤さんが持っているあたりをテグスで吊るして撮影すると…安藤さんが持っているあたりをテグスで吊るして撮影すると…

そこに手があるかのようですね!そこに手があるかのようですね!

テグスがなければ、バッグを置いて持ち手は折り畳んでもいいとのこと。ただし、持ち手の長さが想像できるように、持ち手全体が見える折りたたみ方をするのがポイントだそうです。
安藤さん「あとは、機能がわかる写真を押さえることができればOK!マチ(幅)がわかるような写真や、口を開けた状態の写真、正面・後ろ・横・底・中面と様々な角度から撮影しておこう!」

持ち手全体が見えるように折りたたむと長さも伝えられる持ち手全体が見えるように折りたたむと長さも伝えられる

まとめ

様々な小物を撮影してみたところで、あらためて安藤さんに撮影の際に大切にしたいポイントを伺いました。
安藤さん「物を見せる際にどんな写真を撮ればいいかは、どのように表現して伝えたいか、が前提になってくると思うよ。ただし、情報を伝えなければならないこともあるので、その物を使う人が何を知りたいのかを考えて、写真に切り取ることが大切だね!」

コツを掴むための近道は「とにかくたくさん撮影して楽しむ!」とのこと。上記のポイントを参考に、みなさんもいろいろな小物をどんどん撮影してみましょう!

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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