Webアナリストの小川卓さんが、GA4の導入や移行で直面する疑問(12問)に答えます(GA4連載第13回)。

ITトレンド最終更新日: 20230530

小川卓さんのGA4連載 第13回 GA4移行で直面する12の疑問に答える

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国内Webアナリストの第一人者である小川卓さんが執筆する、Google Analytics 4(以下GA4)連載の第13回。今回は、前バージョンのユニバーサルアナリティクス(以下旧GA)の計測停止が2023年6月30日に迫る中、いよいよ「GA4導入待ったなし!」の中で出てくる12の疑問について、それぞれ解説します。

※Google アナリティクスは随時、機能追加やレポート画面のレイアウト変更などが行われます。本内容は2023年5月末時点に基づきます。

旧GAの計測停止とGA4の導入状況

2023年6月30日いっぱいで旧GAが計測を停止する前に、すでに多くの企業がGA4の導入を進めています。2023年4月末時点では、ブログ「SEM Technology」を運営する、データ解析エンジニア(株式会社プリンシプル)の山田良太氏の調査によると、GA4の導入率は63.9%(※1)で、旧GAの導入率(約80%)に近づいてきています。

※1
“上場企業のGA4導入状況調査レポート”.SEM Technology.2023.
https://lookerstudio.google.com/u/0/reporting/059d01fa-b39f-419c-9455-40fba8aa5899?s=uB_6zDCcZOo

GA4の導入が進むにつれて、筆者のもとには、GA4の利活用に関する質問を今まで以上にいただく状態です。そこで今回は、GA4でよくいただく質問を12問にまとめ、それらの回答内容を公開します。GA4導入時の理解促進になるだけでなく、他のみなさんに教える際の参考にしてください。

GA4に関する、そもそもの疑問を解消しよう!

Q1:旧GAとGA4は何が違う? 移行するメリットは何?

Answer(以下A) GA4への移行のメリットはいろいろな解説が可能ですが、特に押さえてほしい点が2つあります。

1 旧GAが終了するので、今後もWebサイトの状況を把握し続けたいなら、代わりのアクセス解析ツールの導入が必須です。(これまで旧GAを導入していれば、なおのこと)1番現実的な代替ツールがGA4になるでしょう。

2 GA4では、旧GAに比べて使える機能が確実に増えていますが、その恩恵を受けられるのは、現時点だとある程度旧GAを使っていた企業のみです。一方で今後は、あまりGA4を使っていない企業でも役立つ機能の登場に期待したいです(例えば、機械学習による自動分析など)。

これら2点以外の細かなメリットの内容は、普段から旧GAを使っている人でないと理解されにくいと考えています。まずは上記2点の理解から始めましょう。

Q2:GA4以外のアクセス解析ツールの選択肢はありますか?

A 今までどれくらいアクセス解析ツールを利用してきたかにもよりますが、GA4が1番目の選択肢になることは間違いありません。理由は、今後も利用者が多そうだ、という状況があること。それはイコールで関連情報やセミナー、書籍などが多く用意されて、学習がしやすいからです。採用や転職などを考えても、GA4が「押さえておきたいスキルセット」として世の中に受け入れられている状況があります。

GA4以外の無料解析ツールの第1候補は、マイクロソフト社が出している、アクセス解析可能なヒートマップツール「Microsoft Clarity」を挙げます。アクセス解析ツールとしての機能はGA4ほどではありませんが、無料でヒートマップを使えるのが大きなメリットです。

“Microsoft Clarity – Free Heatmaps & Session Recordings”.Microsoft Clarity.2023.
https://clarity.microsoft.com/

GA4の導入や設定について

Q3:旧GAを導入済みの場合、GA4は自動で導入されますか?

A Google側で旧GAを作成済み、かつGA4未作成の場合は自動で作成するというアナウンスが出ており、一部Webサイトでは開始しているようです(2023年5月時点)。旧GAの管理画面で、「Google アナリティクス4プロパティ(基本設定)を自動作成する」がON(オン)になっていると、自動作成の対象となります。

参考までに、下はデモアカウントを通じての旧GAの管理画面になります。

ただし、以下の2点を特に注意してください。

1 gtag.js形式で導入していない場合(=Google Tag Managerを利用しているか、gtag.js形式より古い形式を利用している場合)、GA4の計測は自動で開始されません。

2 移行できても、すべての設定が移行されるわけではなく、移行できない項目もあります。そのため基本的には自動作成を利用せず、自ら新規作成することを推奨します。

さらに詳しく知りたいユーザーは、仕様や移行内容に関する筆者の以下のコンテンツをご覧ください。
“UAからGA4のプロパティが自動作成される件に関して Google Analytics 4ガイド”.Google Analytics 4ガイド.2023.
https://www.ga4.guide/ga4-auto-create/

Q4:旧GAの数値をGA4に引き継げないのでしょうか?

A それぞれのツールの仕組みが違うため、データの引き継ぎなどは一切行うことができません。GA4で1から計測開始となるため、例えば新規ユーザーとリピートユーザーに関しても、GA4では全員が新規ユーザーからのスタートになります。

Q5:旧GAのデータをバックアップする方法を知りたいです。

A どれくらい過去データを使うかにもよりますが、大きく分けて4つの方法があります。

1 旧GAから自分で指定したレポートをダウンロードしておく

2 外部のデータバックアップツールを利用する
参考:Analytics Backup by QA(https://ga-backup.com/)

3 Looker Studio(Googleがリリースするダッシュボードやレポート作成のためのBIツール)などでレポートを作成しておく
参考:Looker Studio
https://cloud.google.com/looker-studio

4 (有償版を利用している場合は)BigQueryに集計前のデータを保存しておく

難易度が1番低いのが1です。1番難しいのは4ですが、より細かいデータを取得できます。2023年7月1日以降、計測停止ながら旧GAの画面で数値を見られるのは2024年7月1日まで可能です。

Q6:GA4導入時、必ず行っておきたい初期設定の内容は何ですか?

A 管理画面でいくつかの設定(例えば、プロパティのアクセス管理でユーザーによって閲覧や編集権限を設定したり、データ保持期間を変更したりするなど)とコンバージョン設定は必ず行いましょう。多くの内容が設定した日からの反映になりますので、GA4を導入後、速やかな設定をおすすめします。

初期設定に関する詳細は、筆者のWebサイトの以下のページをご覧ください。
“初期設定-Google Analytics 4 ガイド”.Google Analytics 4 ガイド.2022.
https://www.ga4.guide/measure-flow/initial-setting/

コンバージョンの設定に関しては、本連載の第7回をご覧ください。
“小川卓さんのGA4連載 第7回「コンバージョン」を設定しよう | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2022.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/66439

旧GAとGA4の比較

Q7:旧GAとGA4の数値は、どれくらいズレますか?

A ズレる幅は、指標によって大きく変わります。基本的な指標(ページビュー数・セッション数・ユーザー数)などは、若干定義に違いがあるものの約±5%に収まります。滞在時間などは、旧GAと比べてカウントの仕方が大きく変わったため、数値のズレが数十%程度おき、比較自体に意味がありません。

両者の数値のズレについては、本連載第12回で取り上げています。詳細は以下をご覧ください。
“小川卓さんのGA4連載 第12回 UAとGA4、同じ指標で生じる数値のズレについて | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2023.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/78289

Q8:想定以上に数値がズレる場合、何が原因ですか?

A 押さえておきたいポイントは3つです。

1つ目は、ページごとの数値を確認して、片方のツールでしかデータが取れていないページ、もしくは数値の差異が大きいページがあるかを把握しましょう。旧GAかGA4どちらかのタグが入っていない可能性や、フィルタで計測除外などを行っている可能性があります。

2つ目は、全ページでズレていて、かつページビュー数が2倍程度のズレがある場合、片方のツールで二重計測している可能性が非常に高いです。

3つ目は、全体的にズレている場合(ただし、ズレが2倍程度とは限らない)や、曜日によってズレがある場合などは、初期設定まわりの可能性があります。社内IPアドレス除外の設定の違いや、計測対象流入元の除外、開発環境でのデータ計測有無などをチェックして、どちらかで設定できている(or設定できていない)かを確認します。

これらを整理すれば、両者の数値のズレがある程度近寄ってきそうです。それでも生じるズレは、仕様によるズレの可能性が高いです。

筆者の以下の記事では、定義が違う指標について、その仕様とあわせてまとめています。参考にしてみてください。

“UAとGA4の計測定義の違い-Google Analytics 4 ガイド”.Google Analytics 4 ガイド.2022.
https://www.ga4.guide/what-is-ga4/ua-ga4-definition/

Q9:旧GAと違い、GA4では「レポート」や「探索」、Looker Studioなど、さまざまな方法でデータを閲覧できます。どのように使い分ければいいのでしょうか?

A 1つ目の「レポート」は、健康診断の項目と似ており、Webサイトの基本的な数値をWebサイト全体あるいは内訳(ページ単位、流入単位、デバイス単位)などでチェックできます。GA4側で最初から表やグラフが用意されており、すぐに数値を見ることができるため、レポートで出せる数値はそのまま利用しましょう。

レポートに関する詳細は、本連載第2回をご覧ください。
“小川卓さんのGA4連載 第2回 レポート機能について | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2021.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/54904

2つ目の「探索」は、より細かい分析をするための機能です。ユーザー行動の遷移を確認でき、データを自由に分割できるセグメント機能などが利用可能です。レポートで得られた気づきを深掘りするには、「探索」レポートを使うといいでしょう。

「探索」の使い方は、本連載第3回をご覧ください。
“小川卓さんのGA4連載 第3回 「探索」機能について | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2021.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/57185

「セグメント」の使い方は、本連載第5回をご覧ください。
“小川卓さんのGA4連載 第5回 「セグメント」機能について | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2022.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/62316

最後のLooker Studioは、以下の3点のメリットがあります。

1 GA4より自由に表やグラフを作成できる

2 GA4の権限を持っていないユーザーも数値を確認できる

3 GA4以外のデータをつないでレポートを作成できる

デメリットは、利用できる項目が制限されていること。また、あくまで集計結果を確認できるだけで、分析などを行いにくい点も挙げられます。

下は、筆者が提供するLooker Studioのサンプル画面です。

以上を踏まえて、基本的な数値チェックは「レポート」を、分析は「探索」で、より多くの関係者たちにWebサイトの現況の数値を知ってもらいたい場合は「Looker Studio」、と使い分けるといいでしょう。

Q10:旧GAの計測停止で、タグなどは外すべきですか?

A 2023年5月末時点では正式にアナウンスは出ていませんが、タグを入れておいてもWebサイトの表示などには影響がないと考えられます。仮にタグがあったままでも、データは2023年7月1日以降、入ってこないことに変わりないからです。

ただし、Google Tag ManagerなどでGA関連の設定を多数行っている場合、タグの放置で、意味のないデータ通信を行い続けることにもなります。その場合、計測停止や該当タグの削除など、タイミングを見て行うのが適切でしょう。

GA4の利活用について

Q11:GA4はどのように学んでいけばいいですか?

A 旧GAユーザーの場合、1番の学習方法が「今まで旧GAで出していたレポートや数値を、どうやってGA4で出せるか」を再現することです。どのレポートを使えばよいか、どういう制限があるのか、数値のズレがどれくらいなのかを確認しましょう。

基本的な学習には、筆者の以下のコンテンツが参考になるでしょう。

NEXMAGのGA4連載
“Google Analytics 4 | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2023.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/tag/google-analytics-4

筆者が運営しているWebサイト「ga4.guide」
“Google Analytics 4 ガイド-アクセス解析ツール「Google Analytics 4」の実装・設定・活用のための情報サイト”.Google Analytics 4 ガイド.2023.
https://www.ga4.guide/

旧GAもGA4も、アクセス解析であることに変わりません。ただし、GA4になって操作方法や指標などの変更点が多いのも確かです。業務を進めながら、必要に応じてその都度操作を覚えていくといいでしょう。

まだGA4でデータが蓄積されていないけれどGA4を使ってみたいユーザーは、GA4のデモアカウントを活用して学習するのも可能です。
“[GA4] デモアカウント – アナリティクス ヘルプ”.アナリティクス ヘルプ.2023.
https://support.google.com/analytics/answer/6367342

Q12:使い方がわからない時、どうするとよいですか?

A 公式ではGA4のヘルプサイトやコミュニティが用意されています。コミュニティでは質問も可能です(ただし、回答が約束されるものではありません)。

GA4のヘルプサイトは以下になります。

“アナリティクス ヘルプ”.アナリティクス ヘルプ.2023.
https://support.google.com/analytics

GA4の開発者向けヘルプサイトは以下です。

“Google アナリティクス – Google for Developers”.Google for Developers.
https://developers.google.com/analytics

公式ヘルプコミュニティも用意されています。

“Google アナリティクス コミュニティ”.Google アナリティクス コミュニティ.2023.
https://support.google.com/analytics/community

他にも、有志が行っているコミュニティもあります。以下にいくつか挙げておきます。

GA4のDiscordグループ
“Discord”.Discord.
https://discord.gg/H48gPszEuP

FacebookのGA4コミュニティ(英語)
“Google Analytics 4 community(GA4) | Facebook”.Facebook.
https://www.facebook.com/groups/222427283409187

プログラミング技術などのナレッジコミュニティ「Stack Overflow(スタック・オーバーフロー)」によるGA4コミュニティ(技術者向け・英語)
“Questions tagged [google-analytics] – Stack Overflow”.Stack Overflow.2023.
https://stackoverflow.com/questions/tagged/google-analytics

本格的なGA4活用時代が、2023年7月1日から始まります。改めて、今回の記事やNEXMAGでのGA4連載を確認しながら、みなさんには円滑なGA4の利活用を進めていただきたいです!

ライタープロフィール 小川卓

Webアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパンなどで勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてWeb解析の啓発・浸透に従事。株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。

https://www.takuogawa.com/

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