次世代のGoogle Analyticsである、Google Analytics 4(以下「GA4」)が2020年10月に正式リリースされました。ここでは、Webアナリストとして活動し、GAを解説する各種著作を複数手がける、HAPPY ANALYTICSの小川卓さんが今回のGA4リリースの背景と旧バージョンの違いについて解説します。

ITトレンド最終更新日: 20201120

新登場Google Analytics 4解説。旧バージョンとの違いは?

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次世代のGoogle Analyticsである、Google Analytics 4(以下「GA4」)が2020年10月に正式リリースされました。ここでは、Webアナリストとして活動し、GAを解説する各種著作を複数手がける、HAPPY ANALYTICSの小川卓さんが今回のGA4リリースの背景と旧バージョンの違いについて解説します。

新たにGoogle Analytics 4が登場した背景

Google Analytics(GA)は、2005年にリリースされたGoogle社が提供する無料アクセス解析ツールです。今回のGA4は、15年の歴史の中で最も大きく変化しています。今回のリリースに伴い、計測の考え方やレポート画面が大きく変わっています。

詳細は後述しますが、最初にGA4のレポート画面をご覧ください。

※ GA4は随時、機能追加やレポート画面の変更などが行われることから、これ以降は2020年11月上旬時点の情報に基づき、解説を進めます。

まずはGA4登場の背景を見ていきましょう。旧GAでは、計測の基本単位が「ページ」でした。ページが表示されると、GAにさまざまなデータが送られます。

上は任意の「ページ」のプロパティ画面です。ご覧いただくと、どのページURLが開かれたか(dlの値)のほかにも、ページのタイトル(dtの値)、画面サイズ(srの値)などが表示されています。

GAには「ページ」を軸にした、さまざまな指標(計測項目)が存在します。代表的な指標が「直帰率(1ページだけ見て帰ってしまう割合)」「平均閲覧ページ数(1回の訪問で平均何ページ見たか)」「ページの滞在時間(次のページの表示時刻 – 今のページの表示時刻)」といった具合です。

しかし「ページ」単位でデータを見ることは、2015年あたりまではまだよかったものの、2020年現在だと適していない状況へと変わっています。例えば、以下のような状況には、適切なユーザー行動の理解ができません。

1 アプリなど「ページ」の概念が存在しない場合
2 動画など「ページ」内で完結するもの(1分の視聴と30分の視聴を同じ1ページビュー扱いでいいのか?)
3 「ページ」を開いただけの場合と、スクロールなどで最後まで見た場合(同じ1ページビュー扱いでいいのか?)
4 「ページの切り替えがない」タイプのページ内のインタラクションが可能なWebサイトやサービス(ゲームなど)

旧バージョンの対応の限界とは?

1〜4に対応するために、これまでのGAでは「イベント(ユーザーが何か行動をした時にデータを送る)」「カスタムディメンション(ログイン情報などページ表示時にデータを付加して送る)」など、さまざまな機能拡張が行われました。

しかし、そうなるとGAへの理解がどんどん難しくなっていきました。Google側でのデータ保持が大変になっていったのも容易に想像がつきます。

そこで改めて整理しなおして、現代のデータ取得や分析環境に合わせた刷新がGA4です。その変化に応じて、レポート画面も大幅に変更されました。冒頭で触れた通り、今回ほどガラッと変わったのは初めてです。

Google Analytics 4と旧Google Analyticsとの違い

新たなGA4と旧バージョンの違いを、ここでは4つの観点から紹介します。

1 計測の形式が変更

GA4では、計測の形式がすべて「イベント」という形式になりました。PV(ページビュー)もすべて「イベント」として計測されます。GA4(GA v2)と旧GA(GA v1)との対応表は以下の通りです。

GA4で送られているデータ例をご覧ください。

GA4では、PVも「Event」の一種(Event Name = page_viewの箇所)として計測されています。従来まではさまざまな計測方式が混在していましたが、GA4からはすべてイベントにまとまりました。

イベントに統一されることで、Google側にもGAユーザー側にもそれぞれで多数のメリットが生まれます。

<Google側のメリット>
・さまざまな設定や実装方式を覚える必要がない
(ただし、従来版ユーザーは覚え直しが必要です)
・レポート画面もメニュー数を減らせるため、わかりやすくなる
(ただし、従来版ユーザーは覚え直しが必要です)
・自動で取得可能なデータが増える
(例:スクロール・ファイルダウンロード・外部リンククリックなど)

もちろん、新たな設定方法を理解する必要はありますが、これから新規にGA4を使うユーザーにとっては旧GAよりわかりやすくなった、と筆者は考えています。

2 Google シグナルとの連携強化

「Google シグナル」とは、Googleサービスでの利用者行動を元に「クロスデバイスでユーザーを特定する」機能、もしくは「属性情報などを該当ユーザーに紐づける」機能のことです。

旧GAでも、Googleが保持しているユーザーごとの情報で「年代」「性別」などのレポートは確認できました。GA4では、Google シグナルとの連携がより強化されたことで、以下のようなレポートがGA4の分析機能で確認可能となります。

GA4では、デバイス横断での利用人数などを確認できます。例えば、「モバイルとデスクトップ」両方を使っているユーザーが「991人」いることがわかります。従来までは、デバイスが違うと別ユーザーとして認識されていましたが、GA4ではGoogleアカウントのログインIDを元に、デバイスが違っても同じユーザーとしての認識が一部可能になりました(ただし、Googleアカウントにログインしていて、かつ広告最適化を許可するユーザーのみになります)。つまり、Webサイト側で会員IDなどがなくても、一部はデバイス横断で紐づけ可能となります。

3 「生データ」の利用が可能に

旧GAでは、集計された結果を表やグラフで見る形式で、「集計前の状態」のデータ取得を行えませんでした。「集計前の状態」とは、1PVやイベントごとに1行ずつログが記録された形式です(「生データ状態」とも言います)。もっと細かく分析を行いたい、他の分析ツール(TableauやPowerBIなどのBIツール)にデータを取り込んで活用したい場合だと、正直、現実的ではありませんでした。

その点はこれまでだと、GAの有償版「Google Analytics 360」を利用すれば可能でしたが、コスト負担で手が届かない企業、利用者がほとんどだと思います。GA4になると、この生データ取得機能が無償で搭載されています。

GA4で取得されたデータを「BigQuery」と呼ばれる、Googleが提供しているクラウドデータウェアハウスに保管も可能です(GA4とBigQueryの画面上だけの設定で完了)。保管データは、SQL文書を書けば取得可能です。

上はBigQueryの画面で、日ごとのPV数を出したサンプルです。こういった集計をした状態でデータ取得が可能で、1行=1イベントで生データを出せます。

なお、データ保存と取得に関しては以下の料金がかかりますが、大半のWebサイトなら無料の範囲内に収まるでしょう。

_データ保存は、毎月10GBまで無料(以降$0.020/GB)
_データ取得は、毎月1TBまで無料(以降$5/TB)

※ 最新の料金は以下のWebページをご確認ください。

“BigQuery”.Google Cloud.
https://cloud.google.com/bigquery/pricing/?hl=ja

4 レポート画面が大きく刷新

レポートのメニュー名や表示される表・グラフなどが大きく変わりました。新旧で、最初に表示される「レポート」画面を確認すると一目瞭然です。

上が旧GA、下がGA4の確認画面です。大きな変化の1つが左ペインのメニューでしょう。レポートの表示内容なども変わっています。中でも着目したい変化が「集計のレポート」と「分析用の機能」が分かれたことです。旧GAはこれら2つが混然としていたため、「集計された結果は見ているけれど、分析や改善には活かせない」という話を、GAを導入するWebサイト担当者たちから筆者はよく聞いてきました。

改めてGA4のメニューを見てみましょう。

「ホーム」から「イベント」の「すべてのイベント」までは「集計結果」を見ることが主目的のレポート群です。例えば、流入元の内訳を見たいなら「集客」、滞在時間や閲覧ページ数を見たいなら「エンゲージメント」、成果の達成回数を見たいなら「コンバージョン」といった具合です。これらは旧GAと同じような考え方です。

しかし、ここに新たに「探索」内にある「分析」という機能が追加されました。さまざまなデータを掛け合わせたり、ページ間の移動を見たりなど、データを深堀りして気づきを発見する場合はこの機能を利用します。

「分析」機能では、以下のようなレポートが作成可能です。

主要なイベント間の遷移率レポート

継続率を図るためのコホート分析

一人ずつの動きを追うためのユーザーエクスプローラー

旧GAからGA4に移行するべきか?

ここまでGA4リリースの背景や主な変更点を紹介しましたが、2020年11月時点では、まだまだWeb上での解説記事は少なく、書籍なども刊行されていません(いずれ筆者も書かねば、と思っています)。2021年にかけて、今後もさまざまなレポートや機能、設定が出てくることが想定されます。

最後に、2020年11月時点でのGA4への移行について、現状の筆者の考えを以下の2点にまとめました。

1 旧GAとGA4との並行での計測が可能です。とりあえずGA4もデータ計測だけは行っておく(始めておけば、本格的にGA4へと乗り換える際に過去データがある状態で開始できて便利)

2 これから新規のWebサイトをGAで計測する場合、得られる情報量の観点から現状はGA4ではなく旧GAを利用する(かつ、必要に応じて並行計測する)

つまり、「GA4だけで計測している状態はまだ早い」という考えです。1年後に改めてGA4への移行について質問されれば回答は変わるかもしれませんが、現状は引き続き旧GAをメインで使うことをオススメします。幸い、2020年11月時点で旧GAに関してサービス停止などのアナウンスはされていません。また、今までの傾向から推察するに、停止がアナウンスされても数年の猶予が設定されると予測されます。

一方で、ここ数年でGA4がこれからのアクセス解析のスタンダードになることも間違いなく、今の段階から触って損はありません。ぜひ本記事を読んで興味を持った方は、チャレンジしてみてください!

ライタープロフィール 小川卓

Webアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパンなどで勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてWeb解析の啓発・浸透に従事。株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。

https://www.takuogawa.com/

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