Webアナリストの小川卓さんが、UA(旧GA)とGA4の同じ指標を比較し、数値がどれほどズレるかを解説します(GA4連載第12回)。

ITトレンド最終更新日: 20230404

小川卓さんのGA4連載 第12回 UAとGA4、同じ指標で生じる数値のズレについて

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国内Webアナリストの第一人者である小川卓さんが執筆する、Google Analytics 4(以下GA4)連載の第12回。今回は、前バージョンのユニバーサルアナリティクス(以下旧GA)とGA4を比較しながら、実際に出てくる数値にどのようなズレが出てくるかを検証し、解説します。

※Google アナリティクスは随時、機能追加やレポート画面のレイアウト変更などが行われます。本内容は2023年3月末時点に基づきます。

旧GAとGA4では、出てくる数値がズレる!?

第9回〜第11回の連載を通して、旧GAとGA4における指標の定義の違いを紹介してきました。ユーザー数やセッション数、コンバージョン数などのカウント方法が、両者のツールでは違うためです。

今回は2つのWebサイトをピックアップし、旧GAとGA4でそれぞれ解析した時、どれくらい数値がズレるのか? 理由や今後の運用方法について紹介します。

用意した各Webサイトの揃えられる条件は、旧GAとGA4のツール間で同じとなるように設定や実装を行いました。旧GAとGA4を併用しているユーザーが、両者の数値を比較する際の参考として、ぜひご覧ください。

【検証1】BtoBサイト(CV=問い合わせページの閲覧)の場合

1つ目に紹介するのは、BtoBサイトで、特定の業態向けの高額な機材を販売しているWebサイトです。オンラインで直接商品は購入できないため、コンバージョン(以下CV)は「問い合わせページの閲覧」としています。広告などの出稿は行っていません。

それでは数値を見てみましょう。

UA(旧GA) GA4 一致率
ユーザー 24,285 22,960 95%
セッション 28,772 30,562 106%
ユーザーあたりセッション 1.18 1.33 112%
PV数 67,379 65,072 97%
ページ/セッション 2.34 2.13 91%
平均セッション時間 0:06:32 0:00:52 13%
直帰率 57.5% 48.3% 84%
デスクトップユーザー 17,746 17,657 99%
モバイルユーザー 6,125 5,135 84%
タブレットユーザー 135 126 93%
検索流入セッション 12,982 11,968 92%
直接流入セッション 12,504 12,420 99%
他サイト流入セッション 1,651 1,598 97%
TopページPV 4,543 4,434 98%
サービスページPV 1,390 1,423 102%
問い合わせページCV 362 412 114%

※2023年2月のデータより

1 ユーザー/セッション/ページビュー関連の差異は気にせずに

まず上から見ていくと、ユーザー/セッション/ページビュー関連の指標は、大きくずれていません。GA4の方がユーザー数は微減、セッション数が微増となっています。

GA4でユーザーがやや少なめに出るのは、ユーザーを識別するための識別子に「Google シグナル」の利用の有無でも変わってきます。Google シグナルとは、Googleサービスを軸にクロスデバイスでユーザーを特定する機能のことです。Google シグナルを利用している場合、同一ユーザーの特定がしやすくなるため、若干数値が少なめに出るようです。

このあたりの数値は、日が違ってもズレが一定だったため、利用上は問題ないでしょう。

2 「平均セッション時間」や「直帰率」が減少する理由

「平均セッション時間」に関しては、大きくGA4で数値が減少しています。旧GAでは平均セッション時間は「直帰していない訪問」のみ利用されますが、GA4の場合、すべての訪問の滞在時間を利用している、かつ、ウインドウが前面に出ていた時間のみを計測するため、大きな差が発生しています。平均セッション時間は、旧GAとGA4で比較ができない指標の代表例です。筆者の私見は「GA4のほうが、より正確な数値を出している」と考えています。

直帰率も、過去の連載で触れたように定義が異なるため、GA4のほうが必ず小さく出ます。これも日ごとにチェックして、旧GAと比べて逆転減少などが起きていないかを念のために確認しておきましょう。

※直帰率の定義について確認したいユーザーは、以下が参考になります。
“小川卓さんのGA4連載 第9回「直帰率」を正しく理解する | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2022.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/71194

デバイスの特定に関しては、モバイルユーザーがGA4では少なめに出ています。デバイス判定ルールが旧GAとGA4で違うのかもしれません。さらに筆者が深掘りして確認すると、Safariを使っているiPhoneの数値が少なめに出ていました。

3 CVがGA4では高めに出る

最後に問い合わせページのCV数を見ると、ここでは14%ほどGA4が高めに出ています。これは、過去の連載(第11回)でも触れたようにCVのカウント方法の違いが要因と考えられます。

1回の訪問で複数回該当ページを見た場合、旧GAではCVが1回でも、GA4ではその回数分をカウント。例えば、1回の訪問で3回見た場合、旧GAなら1回、GAだと3回とカウントします。そのため、多くのWebサイトではGA4のほうがCV数は高く出る傾向があります。こちらも日ごとに数値を確認し、同じ傾向が続くなら正しい挙動として判断していいでしょう。

※コンバージョンの定義について確認したいユーザーは、以下が参考になります。
“小川卓さんのGA4(Google Analytics 4)連載 第11回 基本的な指標「滞在時間」「コンバージョン」を理解する | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2022.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/76247#section07

【検証2】ECサイト(CV=購入完了ページ)の場合

2つ目に紹介するのは、平均購入単価12,000円前後の商品を販売しているアパレル関係のECサイトです。本サイトでは、ディスプレイ広告などの広告も行っています。CVは、ECサイトなので「商品購入完了ページ」となります。

それでは数値を見てみましょう。

UA(旧GA) GA4 一致率
ユーザー 18,008 17,781 99%
セッション 23,004 25,535 111%
ユーザーあたりセッション 1.28 1.44 112%
PV数 49,746 52,398 105%
ページ/セッション 2.2 2.1 95%
平均セッション時間 0:01:42 0:01:07 66%
直帰率 63.60% 27.94% 44%
デスクトップユーザー 971 994 102%
モバイルユーザー 16,939 16,737 99%
タブレットユーザー 64 62 97%
検索流入セッション 14,517 15,061 104%
直接流入セッション 2,655 2,684 101%
他サイト流入セッション 395 501 127%
ディスプレイセッション 4,300 4,271 99%
Topページ 7,583 7,726 102%
人気商品ページ 4,836 5,021 104%
人気ブログページ 2,701 2,701 100%
カートページ 505 507 100%
購入CV 130 134 103%
購入人数 124 130 105%
収益 ¥1,689,521 ¥1,745,231 103%
セッションCV率 0.57% 0.52% 93%

※2023年2月のデータより

1 セッション関連がGA4だとやや高めに計測

こちらのWebサイトでも、セッション数は旧GAと比べてGA4が若干高めに出ています。セッションの定義上では、むしろGA4の方がセッション数は減る傾向にあるので、違和感を覚える部分です。細かい原因までは把握できていませんが、ボット除外ルールの違いなどが考えられるかもしれません。

2 「平均セッション時間」や「直帰率」は、やはり大きく減少

「平均セッション時間」と「直帰率」に関しては【検証1】のBtoBサイトで触れた内容と同じです。定義の違いにより、GA4になると平均セッション時間が短く、直帰率が小さくなる傾向がこちらにも出ています。筆者は、他にもさまざまなWebサイトを比較していますが、これら2つの指標はすべてのWebサイトで同じ現象が起きています。

3 流入元の分類は、分類ルールの違いに着目

流入元の分類に関しても、若干のズレが発生しています。こちらは、GA4と旧GAでの流入元の分類ルールが若干違うことが原因です。GA4の分類ルールは、Googleが用意するヘルプページに詳しく記載されています。興味のあるユーザーはあわせて確認しておくといいでしょう。

“[GA4] デフォルト チャネル グループ – アナリティクス ヘルプ”.Googleヘルプ.2022.
https://support.google.com/analytics/answer/9756891?hl=ja

参照いただくとわかりますが、旧GAと比べてGA4は、より細かく分類されます。また、Googleが認定している「検索サイト」「ソーシャルのサイト」などのリストも公開されています。こちらに関しても旧GAと分類ルールが違うと想定されます。

そして、これらの定義に関しては随時アップデートされることが想定されるため、ある日を境にチャネルグループの分類が変わる可能性もあります。

4 購買関連指標は大きなズレはなし

最後に購買周りについて、このECサイトでは大きな数値のズレを確認できませんでした。ただ、筆者は他のECサイトでズレの発生を見たことがあります。みなさんのECサイトでそうしたことがあれば、デバイスや流入元などと掛け合わせて確認し、どこに差があるのかを突き止めておくといいでしょう。

【まとめ】旧GAとGA4の数値ズレで押さえておきたいポイント

設定項目(例:除外IPアドレス、計測範囲など)がある程度一致している前提の場合でも、旧GAとGA4を比較すると数値が一致しません。

今回は2つWebサイトを一緒に参照してきましたが、他にも筆者が約20のWebサイトを比較したところ、一般的には以下の傾向を見出しています。

1 ユーザー、セッション、PVに関しては、旧GAとGA4を比べて、おおよそ±10%程度に収まります。これを超える場合はURLごとに確認して、実装や設定ミスがないかを確認しましょう。

2 平均セッション時間は、GA4の方が小さくなるケースがほとんどです(仕様上、1ページ閲覧を長くしている人が多い場合なら、そうとは限りません)。いずれにせよ、比較しても意味がない指標です。

3 直帰率は、GA4が(定義の都合上)必ず小さくなります。どれくらい小さくなるかはWebサイトによって大きく変わるため、こちらも比較はしないほうがいいでしょう。

4 流入元チャネルに関しては、大きくズレる傾向が見られました。自然検索・ソーシャル・リファラー・直接流入はWebサイトによっては数十%も変わることがあります。どのような集客構成になっているかで大きく変わるため、詳細をチェックするためには「参照元/メディア」などで、「より細かい単位で比較して、原因を特定すること」をオススメします。

5 コンバージョンに関しては、ほとんどの場合、GA4の方がカウント方式の違いで高く計測されます。ズレ幅に関しては、セッションで1回しかアクセスしないような問い合わせ完了ページやセミナー申込みページなどはズレが小さく、複数回アクセスするような一覧や詳細、カートページをCVに設定している場合はズレが大きくなります。数十%増~数倍増になるケースもあります。

6 それ以外の項目は、±10%くらいで落ち着くことが多いです。これを超えている場合は、やはり実装や設定を改めて確認してみるといいでしょう。

旧GAとGA4を同期間で比較できるのは、2023年6月末までのデータです。ぜひそれまでに、1度チェックを行い、両者で設定の違いなどがあれば、それまでに対応について整理しておきましょう!

ライタープロフィール 小川卓

Webアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパンなどで勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてWeb解析の啓発・浸透に従事。株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。

https://www.takuogawa.com/

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