GA4連載の第9回は「直帰率」について、Webアナリストの小川卓さんが解説します。

ITトレンド最終更新日: 20220923

小川卓さんのGA4連載 第9回「直帰率」を正しく理解する

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国内Webアナリストの第一人者である小川卓さんが執筆する、Google Analytics 4(以下GA4)連載の第9回。今回は、アクセス解析やWebマーケティングに携わるユーザーならなじみ深く、代表的な指標の1つである「直帰率」について解説します。

※Google アナリティクスは随時、機能追加やレポート画面のレイアウト変更などが行われます。本内容は2022年9月末時点に基づきます。

これまでの「直帰率」の意味

「直帰率」は、従来のGA(ユニバーサルアナリティクス)とGA4では、同じ用語が利用されていながら、意味が変わりました。そこで今回は、「なぜ直帰率の意味が変化したか」についてと、GA4で生まれた指標「エンゲージメント率」について解説します。

GAをはじめとする多くのアクセス解析ツールで、「直帰率」が利用されています。例えば、下のGA(ユニバーサルアナリティクス)のデータを見ると、右から2列目に表示されているのが流入元ごとの直帰率です。

Adobe Analyticsを見ると、ランディングページごとの直帰率が表示されています。

直帰率は、以下の計算式で算出されています。

直帰率 = 直帰数(※1) ÷ 流入数(※2)

※1 直帰数=1ページだけ見て、Webサイトを離脱した数
※2 流入数=該当サイトへの流入回数

例えば、検索エンジンからの流入数が500件、そのうち200件がWebサイトを1ページしか見ずに離脱した場合、直帰数=200となり、

直帰率=200÷500=40%

と、この場合の直帰率は40%です。この定義を理解しているユーザーは多いでしょう。しかし、GA4で直帰率の定義が変わりました。

GA4での直帰率の定義は、

直帰率 = 1 − エンゲージメント率

となります。

GA4「エンゲージメント率」の定義について

GA4における新たな「直帰率」を理解するためには、あわせて「エンゲージメント率」を理解する必要があります。GA4では、新たに「エンゲージのあったセッション数」と「エンゲージメント率」という指標が登場しました。

以下は、GA4の「集客」のレポート画面です。左から4列目が「エンゲージのあったセッション数」、1番右側の列が「エンゲージメント率」となっています。

エンゲージメント率は、

エンゲージメント率 = エンゲージメントのあったセッション数 ÷ セッション数

として計算されており、セッション数が分母となります。

それでは、「エンゲージメントのあったセッション」とは何を意味するのでしょうか? 判定される方法は3種類あり、いずれか1つでも満たせばOKです。

(1)Webサイトに来訪してから10秒以上(※)経過した
(2)2ページ以上閲覧した
(3)コンバージョンとして設定した行動が実行された

となります。

※10秒の部分は、管理画面の「セッションのタイムアウトを調整する」で設定を変更できます。

「セッションのタイムアウトを調整する」方法

管理画面の「セッションのタイムアウトを調整する」へと遷移するには、まずUI左下の「管理」(歯車アイコン)をクリックし、「プロパティ」より設定を行いたいストリーム(「データストリーム」)を選びましょう。

遷移後、「Googleタグ」の「タグ設定を行う」をクリック。

遷移後の「設定」欄から「セッションのタイムアウトを調整する」をクリックすると、該当箇所にたどりつきます。
項目が隠れている場合は「すべて表示」をクリックして表示させてください。

改めて以下の「セッションのタイムアウトを調整する」をご覧ください。

ここで指定する時間は、ページが画面の前面に出ている状態を指します。つまり、別のウィンドウで隠されていたり、別タブを開いて該当ページを見ていなかったり、最小化している場合などは、エンゲージメント時間の対象としてはカウントされません。

エンゲージメント率と直帰率の関係

「エンゲージメント」という指標は、「訪問時にWebサイトと接点を持ってくれた」ということを意味します。つまりエンゲージメント率は、パーセンテージが高いほど「良いページ」という判断が可能です。

前述の通り、GA4の直帰率はエンゲージメント率を元に計算されています。従って、エンゲージメント率と直帰率を同じ表に入れると以下のとおりです。

「エンゲージメント率 + 直帰率」が100%になっています。

つまり、GA4における直帰率は、前述した3つの条件のいずれかを満たしていない場合、直帰として取り扱います。3つの条件をもう1度復習しておきましょう。

(1)Webサイトに来訪してから10秒以上(※)経過した
(2)2ページ以上閲覧した
(3)コンバージョンとして設定した行動が実行された

※ 「10秒」の設定は任意に変更可能

よって(1)〜(3)のいずれかを満たせば、「直帰」にはなりません。

なぜ直帰率の定義を変えて、エンゲージメント率が生まれたのか?

ここからは筆者の推測も含みます。従来までの直帰率は、わかりやすい指標ではあったものの、ユーザーの行動を理解する上では不適切な側面もありました。

例えば、

A 5秒間ページを見た後に離脱した

B コンテンツをしっかり読んで、動画も再生して20分閲覧した後、離脱した

これまでの直帰率の考え方では、AとBはどちらも同じ「直帰」扱いになってしまいます。しかし、実際はそれぞれの訪問について、ページ内に紹介されている内容の理解度合いは大きく違うでしょう。

良いようにも悪いようにも捉えられる従来の定義ではイマイチ、という判断がGoogleであったのかもしれません。そこで1ページしか閲覧していなくても、ある程度ページを見ていた場合は価値があるセッション、という判断で生まれたのが「エンゲージメント」という考え方です。

GA4の直帰率は、従来のGA(ユニバーサルアナリティクス)とは定義や考え方が違います。慣れは必要ですが、以前と比べると新たなGA4の考え方のほうがいいだろうと筆者は考えています。みなさんはどう思いますか? 

第10回の予告

今回取り上げた「直帰率」は、GAからGA4へと移行するにあたって、もっとも影響を受けた指標の1つです。ぜひ新しい考え方を覚えておきましょう。

次回(第10回)は、GAでもGA4でも利用されている他の指標の中にも、直帰率のように定義が変わった指標がいくつかありますので紹介します。

GAとGA4で数値がずれる要因の1つになりますので、正しく理解をしておく必要があります。次回もお楽しみに!

ライタープロフィール 小川卓

Webアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパンなどで勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてWeb解析の啓発・浸透に従事。株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。

https://www.takuogawa.com/

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