3Dモデリングの上達には、必要な事柄を正しく理解した上で、単純なものから複雑なものへと数をこなすことが大切です。3Dモデリングの基礎知識をまとめてみました。

クリエイター最終更新日: 20220531

3Dモデリングをはじめる前に知っておきたい基礎知識

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3Dプリンターや3Dスキャナーなどのデジタルファブリケーションの広がりと共に、3Dモデリングに挑戦したいという方が増えています。
統合型のソフトウェアや無償のアプリケーションが増えたことで、気軽に挑戦できるようになり、それに伴いソフトウェアの選び方やデータ形式の質問を受ける機会も増えています。

3Dモデリングの上達には、必要な事柄を正しく理解した上で、単純なものから複雑なものへと数をこなして行うことが大切です。
そこで、3Dモデリングの基礎知識をまとめてみました。

<使用ソフトウェア> Fusion360 / Blender / ZBrush

3Dモデリングについて

モデリングとは

モデリング(Modelig)は、模型(モデル)を組み立てることをいいます。
3Dモデリングは、3次元グラフィックスで、立体物データを形成、計算する技術・機能を意味します。

2Dと3D

2D(two dimensions / 2次元)は、縦・横をXY座標で表します。
JPGやPNGなどの画像ファイル等の2Dデータが一般的です。
3D(three dimensions / 3次元)は、縦・横・奥行きをXYZの座標で表します。

3Dモデリングは、仮想の3D空間でおこなわれます。
ここでは3D空間を1つのボックスとして説明します。
ボックスの中心を『ゼロ』として、縦・横・奥行きにプラス・マイナスの方向を持っています。

※アプリケーションによってXYZの表記が異なり、『Y(縦)・Z(奥行き)』となる場合と、『Y(奥行き)・Z(縦)』となる場合があります。
アプリケーションによっては表記の変更が可能です。

座標について

ボックスの中心点(ゼロ)からの位置を表すのが、XYZの『座標』となります。
XYZで表される座標には、『グローバル座標』と『ローカル座標』の2種類があります。

・グローバル座標(ワールド座標/世界座標)

3D空間ボックスのXYZ座標は、空間そのものが持つ唯一の座標です。
ワールド座標とも言われ、地球上の経度・緯度と同様で、空間内のある1点を指し示します。
例(画像左):3D空間の「X=10、Y=5、Z=-2」の位置

・ローカル座標(モデル座標/オブジェクト座標/ボディ座標)

グローバル座標を持つ3D空間ボックス内に作成されたオブジェクトは、自分専用の座標を持っています。

このオブジェクトが個別に持っている座標がローカル座標です。
ローカル座標はオブジェクトの数だけ存在し、オブジェクトの形状(位置や向き)を表します。

※カメラ座標(ビュー、視点座標)

このほかに、カメラ座標があります。
視点の位置を基準とし、2次元の平面(投影面)に描画する際に用いられます。

3Dデータ形式について

3Dデータ形式

3次元モデルのデータ形式は主に、以下の3つに識別されます。
サーフェスモデル ・ ソリッドモデル ・ その他

サーフェスモデル

サーフェス(サーフェイス)は、オブジェクトの「表面(surface)」のみの形状を表現したモデルです。

作成する「面」は厚みが「0」で、質量(内部情報)を持ちません。
表面のみで形状を表現をするため、閉じた形状である必要がなく、閉じた形状を作成したとしても体積はありません。
「面」は存在しているため、表面積の算出は可能です。

サーフェスモデルには、以下の表現方法があります。

ポリゴンモデリング・曲面モデリング(スプライン )・サブディビジョン

ポリゴンモデリング

『ポリゴン(Polygon)』は、直訳すると「多角形」という意味です。

ポリゴンは、3 次元のポイント(頂点)とそれらのポイントを接続する直線(エッジ)によって定義される、連続する辺からなるシェイプ(3 辺以上)です。
ポリゴンの内側の領域は、フェース(フェイス / 面)と呼ばれます。

ポリゴンの集合が、ポリゴンメッシュ(ポリメッシュ / メッシュ)と呼ばれます。
全ての多角形は必ず三角形群へ分割できます。
このようなポリゴンの集まりによって複雑で立体的な形状を表現します。

サーフェスは、オブジェクトの表面のみの形状を表現するため、以下の左画像のような形状をサーフェスと呼びます。

一方で、右画像がメッシュとなり、同じ形状でも『面が1つであるかどうか』の違いがあります。

曲面モデリング(スプライン)

曲面モデリングは、スプライン曲線やNURBS曲線などの様々な種類のカーブを用いて物体を表現する手法です。
このカーブは、複数の制御点を使い、ある順番で通るように定義しながら生成します。
制御点の間をつなぐ補間方法の違いに応じて、ベジェ曲線、NURBS曲線というように分けられます。

スプライン曲線(自由曲線):

2つの制御点と、その前後の制御点の座標を使って定義します。

  • B-スプライン曲線(Basis spline):
    スプラインとは異なり、制御点を必ずしも通りません。コンピュータグラフィックス等では、B-スプラインのほうが多用されています。
  • NURBS(Non-Uniform Rational B-Spline(非一様有理Bスプライン)):
    B-スプライン曲線をさらに一般化したものです。
    レンダリング時は、曲面を細かく分割し、多数の小さなポリゴンのようにして処理します。
    CAD系ツールでは、NURBSがサポートされていることが多く、工業・建築デザインなどで使用されます。

ベジェ曲線

2つの制御点と、それぞれの点におけるセグメントとの接線を使って定義します。

サブディビジョン

サブディビジョンサーフェス(細分割曲面)は、ポリゴンメッシュを規則的に分割することで、よりスムーズにする方法の1つです。
より複雑で精細なメッシュを作成するために新しい頂点が追加されます。

※スカルプトモデリング

この他に、3Dオブジェクトに彫刻(スカルプト)を施すような感覚で、直感的にモデルの形状を制作するスカルプトモデリングがあります。

モデリングソフトはZBrushなどが代表的で、CADやポリゴン系のソフトにもスカルプト機能がつくようになっています。

ソリッドモデル

ソリッドモデルは、体積があり、必ず閉じられた形状である必要があります。
使用する材料の密度を設定することができ、質量を算出することが可能です。

ソリッドモデルには、以下の表現方法があります。

CSG表現・境界表現(B-rep)

CSG表現

CSGは、Constructive Solid Geometryの略です。
プリミティブと呼ばれる基本立体(立方体、直方体、円柱、球、円錐、角錐など)の組み合わせで、視覚的に複雑な形状を表現します。

プリミティブを組み合わせることを、「ブーリアン演算」といいます。

その組み合わせ方には、和・差・積などがあり、ブーリアン演算による結果はツリー構造として記憶されます。
これらの基本形状を組み合わせることで、目的の形状を作ります。

境界表現(B-rep)

『境界表現』は、B-rep(Boundary Representation)とも呼ばれ、独立した複数の面(平面・曲面)で形状を表現します。

独立した面の状態では、サーフェスモデルになっており、これらのサーフェスを縫い合わせることで、空間から切り出され、ソリッドモデルに変換されます。
どの面が縫い合わされているかの接続関係(位相要素情報)は、データ内部に保存されます。
データが軽く、複雑なモデリングに向いています。

その他の3Dデータ形式

その他の3Dデータ形式として、以下の表現方法などがあります。

ワイヤーフレーム・ボクセル(ボリューム)表現・パーティクル表現・高さによる表現・パーティクル表現・メタボール(ブロブ)

ワイヤーフレームモデル

ワイヤーフレームモデルは、立体形状を「頂点」と「線(辺)」のみで表現されたモデルです。
ワイヤーフレームモデルは、データ量が少ないため表示速度に優れています。
表示速度に優れるため、ソリッドモデルで、ワイヤーフレームの表示にして作業を進めることもあります。

その他

ボクセル(ボリューム)表現:

2次元画像の最小単位ピクセル(pixel)に対し、厚さの情報を加えた3次元画像の最小単位がボクセル(voxel)です。
小さな正方形を縦横に並べて2DCGを生成するのと同様に、小さな立方体を縦横前後に積み上げて立体を表現します。

メタボール(ブロブ):

複数の球体に、隣接する球体との濃度(吸引)情報を付加して滑らかな形状を生成する表現方法です。曲面を描くときなどに用いられます。

3DCADと3DCGについて

3DCAD

CADは、『Computer Aided Design』の略で、コンピューター支援による『設計』という意味です。
機能の違いによりハイエンド・ミッドレンジ・ローエンドCADに分けられ、製図や機械設計の現場で使われます。
主にソリッドモデルが用いられるため、立体同士の和・差・積などの集合演算が可能です。
さらに、3Dモデルの体積・表面積・質量・重心などの情報を得ることもできます。
CADの周辺技術として、以下のようなものがあります。

CAM(Computer Aided Manufacturing / 機械加工):

CAMは、機械加工分野において、NC(Numerical Control / 数値制御)加工を行うために、NCデータを作成するシステムです。

CADで作成された形状に対し、使用工具・工具の動かし方・加工するスピード等の情報を設定し、ツールパスと呼ばれる工具の軌跡情報を作成します。

CAE(Computer Aided Engineering / 解析):

CAEは、「コンピュータ支援エンジニアリング」と訳され、コンピュータ上で製作する機械や部品の性能適正をシミュレーションします。
CADで製図に取りかかる前に行われ、製品が目的とする機能を発揮できるかどうかを事前に計算します。
強度剛性解析や機構解析など、技術分野に応じて多種多様なCAEがあります。

アセンブリ:

自分の設計した部品をコンピュータ上(仮想空間)で組み立てて、検証を行う仮想(バーチャル)試作が可能です。
モデルの面や軸を合わせたり、距離や角度を指定しながらスライドや回転する機構を設定していきます。

シートメタル:

シートメタルは、板金設計を行うための機能です。
板厚・材料・加工機等を設定すると、付加された属性を基に曲げ伸びを計算して展開図面を自動作成します。

3DCG

CGは『Computer Graphics』の略で、ゲーム・映像・キャラクターなどの制作が行えます。
3DCGアニメーションの制作は、以下のようなワークフローで行われます。

・モデリング

主にポリゴンモデリングで、生物や乗り物、建物などを制作します。

・マテリアル、テクスチャ

マテリアル(表面材質)の設定と、画像データを貼り付けるテクスチャ・マッピングでモデルに質感を付けていきます。

・セットアップ(リギング)

モデルを動かせるように設定をします。

モデルの形に合わせてスケルトン(骨格)を構築し、両者をスキニング(関連付け)します。
それにより、スケルトンを操作することでモデルにアニメーションを付けられます。
スケルトンは、球形のジョイント(関節)と、くさび形のボーン(骨)を組み合わせた階層構造となっており、ジョイントの回転によって操作されます。

・アニメーション

セットアップ後は、モデルを動かしてアニメーションにします。
キーフレーム入力(手打ち)によるものと、計算によって求めるモーション(IK (インバース・キネマティクス)、パーティクル、モーション定義 (ボーン・スケルトン)、物理計算 (ダイナミクス)、エクスプレッション (関数式))があります。

・ライティング

オブジェクトの配置、光源の配置、光源ごとのパラメーターを与える作業を行い、光の当たり方や影の有無などを調整します。

・カメラワーク

3次元空間内に配置された仮想カメラを制御し、構図や画角を調整します。

・レンダリング

リアルタイムレンダリングとプリレンダリングがあります。
制作物に合わせて書き出します。

まとめ

3Dデータ

最後に、3Dデータについて、簡単にまとめます。

3Dスキャナーや3Dプリンターを使用する場合:

3Dスキャンしたスキャンデータは点群状態になっています。
そのため、ポリゴン状態に変換し、修正作業(穴埋めなど)を行う必要があります。
修正したメッシュはソリッドに変換し、STLデータで書き出すことで3Dプリンターで出力可能です。

また、3DCG等で作成したサーフェスデータは、ソリッドに変換し、STLデータで書き出すことで3Dプリンターで出力できます。

CADとCG

CADとCGについても、簡単にまとめます。

今回は、3Dモデリングの基礎知識として、その一部ではありますがなるべくシンプルに表すことを意識して解説しました。
3Dモデリングの上達・挑戦の参考になりましたら幸いです。

ライタープロフィール Taiki YUZAWA

情報科学芸術大学院大学(IAMAS) メディア表現研究科 修了。
東京藝術大学 立体工房講師 / IAMAS プロジェクト研究補助員 / 株式会社コウワ企画 取締役 / 名古屋学芸大学 非常勤講師 / 名古屋造形大学 非常勤講師
Web: https://taikiyuzawa.com/

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