2021年11月4日22時より発売された第12世代インテル Core プロセッサーについて、ベンチマークテストを試してみました。

気になる製品最終更新日: 20211105

第12世代インテル Core プロセッサー 発売情報・ベンチマークレビュー

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【11/5 更新】第12世代インテル Core プロセッサーのベンチマーク記事を追加いたしました。
【11/5 更新】第12世代インテル Core プロセッサー・マザーボード・メモリ・BTOパソコンの発売を開始いたしました。
デスクトップ向け第12世代インテル Core プロセッサーはアーキテクチャーの変更によるCPUコアの強化だけでなく、PCI-Express Gen 5.0やDDR5-4800メモリへの対応など、足回りの強化にも取り組んだ意欲的なCPUです。今回はレビュアーズ・キットを入手することが出来ましたので、どれほどの性能を持つのかベンチマークテストを試していきます。

第12世代インテル Core プロセッサー・マザーボード・メモリ・BTOパソコン発売開始!

第12世代 インテル Core プロセッサー及び、対応マザーボード・メモリ、そしてBTOパソコンについて、パソコン工房での発売を開始いたしました。詳細は特集ページをご覧ください。

パソコン工房で第12世代インテル Core プロセッサー特集を見る

第12世代インテル Core プロセッサーについて

第12世代インテル Core プロセッサーは、インテル製デスクトップ向けCPUとしては久々に製造プロセスが変更(14nm→10nm)され、大幅な技術革新が数多く採用されました。

第12世代インテル Core プロセッサーの特徴まとめ
・第12世代インテル Core プロセッサーは開発コードネーム「Alder Lake」(アルダーレイク)で知られ、製造プロセスが10nmスケーラブルアーキテクチャとなり、IPCが第11世代インテル Core プロセッサー(開発コードネームRocket Lake)から約19%向上
・大小異なるCPUコアを1つのCPUに搭載する複合アーキテクチャを採用
  Performance-core (パフォーマンスコア、P-core):従来同様の役目となるコア。強力なシングルスレッドを誇りHTにも対応します
  Efficient-core (高効率コア、E-core):マルチスレッド処理に特化したコア。バックグラウンドタスクなどを主に処理する小コアの集合体です
  この複合アーキテクチャにより、OSのバックグラウンドタスクはE-coreに割り振り、ゲームやクリエイティブのよりヘビーなタスクはP-coreに全力で割り当てることが可能になります
・インテル Iris Xeグラフィックスアーキテクチャーによるグラフィックス強化。最大4画面出力、HDMI 2.1、DP1.4aに対応
・Socketが新規格のLGA1200→LGA1700に変更
・PCI-Express Gen 5.0に対応
・DDR5-4800およびDDR4-3200メモリに対応 ※対応状況はマザーボードメーカーによります。

第12世代インテル Core プロセッサー・レビュワーズ・キット開封写真

インテルより特別に第12世代インテル Core プロセッサー・レビュワーズ・キットをお借りすることができました。

第12世代インテル Core プロセッサー レビュワーズキットインテル様よりお借りした第12世代インテル Core プロセッサー・レビュワーズ・キット。

現実のアルダー湖を撮影したパネルが同梱キットには現実のアルダー湖を撮影したパネルが同梱されています。

長方形となった第12世代インテル Core プロセッサーCPUを取り出して形状を確認。長方形となっています。

左:Core i9-12900K、右:Core i9-11900K左:Core i9-12900K、右:Core i9-11900K 形状が大きく異なります。

左:Core i9-12900K、右:Core i9-11900K 背面左:Core i9-12900K、右:Core i9-11900K の背面写真です。

第12世代インテル Core プロセッサーの性能を最大限発揮させるインテル600 シリーズ・チップセット

インテル600 シリーズ・チップセットは、第12世代インテル Core プロセッサーの性能を引き出すために用意された新しいチップセットです。 PCI-Express Gen 4.0の2倍の帯域を持つPCI-Express Gen 5.0 に対応し、高速・高性能なデバイスの性能を余すところなく引き出す事が出来ます。DDR5-4800メモリ(DDR4も引き続き対応)に対応するなど、CPU周辺の足回りも確実に強化されています。
ソケットはLGA1700に変更となったため、従来のLGA115x/1200対応クーラーを流用の際は、別途マウンタが必要になります。

第12世代インテル Core プロセッサー スペック情報

第12世代インテル Core プロセッサーのスペック情報は以下の通りです。
※メーカー等による事前情報です。最終スペックと異なる場合があります。

Core i9-
12900K
Core i9-
12900KF
Core i7-
12700K
Core i7-
12700KF
Core i5-
12600K
Core i5-
12600KF
コア数 P-core 8 6
E-core 8 4
スレッド数 24 20 16
動作クロック P-core 3.2GHz 3.6GHz 3.7GHz
E-core 2.4GHz 2.7GHz 2.8GHz
Turbo
Boost
P-core 5.1GHz 4.9GHz 4.9GHz
E-core 3.9GHz 3.8GHz 3.6GHz
TurboBoost Max3.0 5.2GHz 5.0GHz
キャッシュ
メモリ
L2 14MB 12MB 9.5MB
L3 30MB 25MB 20MB
PCI-Express Gen 5.0
レーン数 16
Gen 4.0
レーン数 4
メモリ 対応メモリ DDR5-4800/DDR4-3200
最大容量 128GB
GPU Intel UHD
Graphics 770
Intel UHD
Graphics 770
Intel UHD
Graphics 770
消費電力 基本 125W
最大 241W 190W 150W
対応ソケット LGA1700
対応チップセット Z690

 

第12世代インテル Core プロセッサー ベンチマーク情報

それでは、第12世代インテル Core プロセッサーのCPUベンチマークを実行していきましょう。ベンチマークで使用したのは、レビュアーズ・キットで提供された Core i9-12900K、Core i5-12600Kの2種類です。比較対象としては、第11世代インテル Core プロセッサーのCore i9-11900K、Core i7-11700Kと、Ryzen 5000 シリーズ デスクトップ・プロセッサーのRyzen 9 5950X、Ryzen 9 5900X、Ryzen 7 5800Xを用意しました。

今回、第12世代インテル Core プロセッサーからその役割に合わせてP-core、E-coreに呼称上分かれていますが、OS上からはP-core、E-coreがどれで、どう動いているかがWindowsの標準のモニタリングツールでは判別できなかったため、便宜上、下記に示すスペックシート上ではコア数は合算した数値で記載しております。

  Core i9-12900K Core i7-12700K Core i5-12600K Core i9-11900K Core i7-11700K Core i5-11600K
コードネーム Alder Lake Rocket Lake
製造プロセス 10nm 14nm
コア/スレッド 16/24 12/20 10/16 8/16 8/16 6/12
動作クロック P-core 3.2GHz 3.6GHz 3.7GHz 3.5GHz 3.6GHz 3.9GHz
E-core 2.4GHz 2.7GHz 2.8GHz
TurboBoost P-core 5.1GHz 4.9GHz 4.9GHz 5.1GHz 4.9GHz 4.9GHz
E-core 3.9GHz 3.8GHz 3.6GHz
TurboBoostMax3.0 5.2GHz 5.0GHz 5.2GHz 5.0GHz
Themal Velocity Boost 5.3GHz
キャッシュ
メモリ
L2 14MB 12MB 9.5MB 4MB 4MB 3MB
L3 30MB 25MB 20MB 16MB 16MB 12MB
PCI-Express Gen 5.0
レーン数 16
Gen 4.0 4.0
レーン数 4 20
メモリ 対応メモリ DDR5-4800 / DDR4-3200 DDR4-3200
最大容量 128GB 128GB
消費電力 基本 125W 125W
最大 241W 190W 150W 未公開
GPU Intel UHD Graphics770 Intel UHD Graphics750 Intel UHD Graphics730
64bitコード intel64 intel64
SIMD命令 SSE SSE4.1/4.2 SSE4.1/4.2
AVX AVX2.0 AVX2.0
対応ソケット LGA1700 LGA1200
対応チップセット インテル Z690 インテル 500 / 400(※)シリーズ
(※B460・H410除く)

~主なCPUスペック比較一覧~

Core i9同士を比較すると、Core i9-12900Kのコア数/スレッド数は、Core i9-11900KにE-core分の8コア/8スレッドを追加した格好となっています。このアーキテクチャーの変更がどのように影響してくるのか、ベンチマークを通して見ていきたいと思います。

なお、ベンチマークを行うにあたり、第12世代インテル Core プロセッサーのメモリはDDR5-4800、第11世代インテル Core プロセッサーとRyzen 5000シリーズ デスクトップ・プロセッサーのメモリはDDR4-3200となっています。
また、OS環境については第12世代インテル Core プロセッサーへの最適化状況を考慮し、第12世代インテル Core プロセッサーのみWindows 11となっています。
※検証時の構成については記事最後尾に記載しております。

Passmark PerformanceTest

まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassmarkの『CPU Benchmarks』を用いて、CPUの総合的な演算性能を見てみましょう。

~Passmark CPU Mark~~Passmark CPU Mark~

一目瞭然に第12世代 Core プロセッサーが第11世代 Core プロセッサーを圧倒しています。Core i9-12900Kが Core i9-11900Kを70%以上上回り、Ryzen 9 5950Xに対しても10%以上上回りました。それにとどまらず Core i5-12600Kでも Core i9-11900Kを10%以上上回り、Ryzen 7 5800Xに匹敵するスコアを示しています。メモリの速度の差もあり、足回りを含めて第12世代インテル Core プロセッサーの性能が大きく向上していることが良く分かります。

次にP-coreの性能が端的に表れるシングルスレッドの項目について見てみると、これも見事に謳い文句どおりの性能を示していて、Core i9-12900KがCore i9-11900Kを40%近く上回り、Core i5-12600KもCore i9-11900Kを30%以上上回っています。

~Passmark シングルスレッド~~Passmark シングルスレッド~

続いて、マルチスレッド性能の影響の大きい浮動小数点演算を見てみると、これも第12世代 Core プロセッサーが第11世代 Core プロセッサーを圧倒しています。

~Passmark 浮動小数点演算~~Passmark 浮動小数点演算~

以上の様に単純にCPUの演算性能だけを見る限りでは、第12世代 Core プロセッサーは第11世代 Core プロセッサーから大幅に性能が向上している事が確認できます。最大で160%も性能が向上しているという謳い文句もまんざらでも無さそうです。

3D Mark CPU test

次いで、3D Mark「Fire Strike / Physics Score」と「Time Spy / CPU Score」を用いて、CPUの演算性能を見ていきます。「Fire Strike / Physics Score」「Time Spy / CPU Score」共に、CPUに物理演算をさせてその処理速度を数値化したもので、CGレンダリングや動画のエンコードと同じくCPUのコア数やスレッド数の多さが有利に働くテストです。なおベンチマークテストには共に4K解像度(3840×2160)のFire Strike UltraとTime Spy Extremeを使用しています。

~3D Mark Fire Strike~~3D Mark Fire Strike~

ちょうどPassmarkのCPUMarkと似た格好となりました。Core i9同士の比較ではCore i9-12900Kが Core i9-11900Kをおおよそ40%上回り、Ryzen 9 5950Xとほぼ互角のスコアとなっています。また、Core i5-12600KはCore i9-11900Kをおおよそ6%上回り、Ryzen 7 5800Xとほぼ互角のスコアとなっています。

~3D Mark Time Spy~~3D Mark Time Spy~

Time Spyにおいては、Passmark の浮動小数点演算に似た傾向となっています。

TMPGEnc Mastering Works 6

続いて、動画編集ソフトのTMPGEnc Mastering Works 6を用いて、QuickTimeファイル(3840x2160/2分50秒)をh.265に変換するのに要した時間(単位:秒)を測定しました。グラフの短い方がより高速に処理を行っている事になります。

~TMPGEnc~~TMPGEnc~

全体的な順位としては、Passmarkの浮動小数点演算と同じ順で処理時間が短くなっています。Core i9-12900KがCore i9-11900Kより180秒、割合にしておおよそ40%処理時間が短く、Core i5-12600KはCore i9-11900Kより50秒、割合にして10%以上処理時間が短くなっています。

PCMark 10

最後に、PCのパフォーマンスを総合的に判断できるPCMark 10を見ていきましょう。

~PCMark 10 Extended~~PCMark 10 Extended~

一般的なPCの日常的作業の性能を表した「PCMark 10」でも、Core i9-12900KはCore i9-11900Kにおおよそ10%ほど上回っており、Core i5-12600KはCore i9-11900Kとほぼ同等のスコアを示しています。ゲーム性能だけでなく日常的作業において第12世代Coreシリーズは優れたパフォーマンスを発揮してくれそうです。

大幅な性能向上がみられた第12世代インテル Core プロセッサー

ベンチマークの結果から、第12世代インテル Core プロセッサーの性能は、第11世代インテル Core プロセッサーから大幅に強化されていることが確認できました。PassmarkのCPUMarkや3D MarkのPhysics、CPU Scoreといったベンチマークプログラムでの演算性能の高さはもちろん、実アプリケーションでの性能の高さもTMPGEnc Mastering Works 6のエンコード時間やPCMark 10の結果から十分に覗うことが出来ます。
第12世代インテル Core プロセッサーではとにかくシングルスレッド性能の向上が目覚しく、この強力なシングルスレッド性能をさらに生かすため採用した、パフォーマンスを重視したP-coreと効率を重視したE-coreという2種類の異なる性質のコアを統合するという新たなコア設計の効果は、非常に大きいと言えるでしょう。今後のパソコン用CPUの進むべき方向を示したともいえる存在になりえるだけの素質は十分にありそうです。
半面、今回検証したインテル Core i9-12900Kプロセッサーの消費電力は基本125W、最大241Wとなっており、発熱量が大きいためCPUの冷却には今まで以上に気を使う必要が有りますが、それを補って余りあるだけの性能の高さを示しています。第12世代インテル Core プロセッサーを使用するためにはマザーボードから一新する必要はありますが、これだけの性能を示してくれた第12世代インテル Core プロセッサーは、パフォーマンス重視のユーザーには非常に魅力的なCPUであることに疑う余地はないでしょう。

テスト環境

  第12世代Core 第11世代Core Ryzen 5000 シリーズ
CPU Core i9-12900K
Core i5-12600K
Core i9-11900K
Core i7-11700K
Ryzen 9 5950X
Ryzen 9 5900X
Ryzen 7 5800X
マザーボード ASUS Prime Z690-P MSI Z590-S01 ASUS Prime X570-PRO
メインメモリ DDR5-4800 32GB (16GB x2) DDR4-3200 32GB (16GB x2)
グラフィックスカード ZOTAC GeForce RTX 2080 SUPER (ビデオメモリ 8GB)
ストレージ Samsung 980 PRO 1TB (MZ-V8P1T0B) PCIe Gen 4.0 M.2 NVMe SSD
電源 Seasonic SSR-850PX (80PLUS Platinum、850W)
OS Windows 11 Home 64bit
(バージョン:21H2)
Windows 10 Home 64bit (バージョン:21H1)
ビデオ
ドライバ
GeForce Game Ready Driver Ver496.13
ライタープロフィール 職人5号

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。

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