2022年1月5日に追加発表された第12世代インテル Core プロセッサーについて、ベンチマークテストを試してみました。

気になる製品最終更新日: 20220204

追加された第12世代インテル Core プロセッサー ベンチマークレビュー

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2021年11月4日22時に先行して発売された第12世代インテル Core プロセッサーのオーバークロックに対応したTDP125Wの「K」シリーズに続けて、今回、定格使用向けに最適なメインストリーム向けのTDP65Wとなる追加モデルが2022年1月5日に発表されました。本記事では、この追加モデルがどれほどの性能を持つのか、ベンチマークテストを試していきます。
第12世代インテル Core プロセッサーの特徴については、こちらのCore i9-12900Kのベンチマーク記事をご参照ください。

第12世代インテル Core プロセッサー 発売情報・ベンチマークレビュー

TDP65Wのメインストリーム向け第12世代インテル Core プロセッサーをベンチマーク

2022年1月5日に追加発表された第12世代インテル Core プロセッサーは、Core i9、Core i7、Core i5に加えて、Core i3、Pentium、Celeronと全てのシリーズがリリースされました。引き続き世界的な半導体不足の影響もあり、全てのモデルが同時に入手できるわけではないようですが、順次発売になるようです。
それでは、今回発売となったCPUから特に人気の高いCPUでベンチマークを実行していきましょう。ベンチマークで使用したのは、レビュアーズ・キットで提供されたCore i7-12700と、別途入手したCore i5-12600の2種類です。比較対象として、先に発売済みのK型番モデルからCore i7-12700KとCore i5-12600Kを、第11世代インテル Core プロセッサーからCore i9-11900とCore i7-11700を、Ryzen 5000 シリーズ デスクトップ・プロセッサーからRyzen 7 5800XとRyzen 5 5600Xを用意しました。

Core i9-
12900K
Core i9-
12900
Core i7-
12700K
Core i7-
12700
Core i5-
12600K
Core i5-
12600
コードネーム Alder Lake
製造プロセス 10nm
コア数 P-core 8 8 6
E-core 8 4 4 0
スレッド数 24 20 16 12
動作クロック P-core 3.2GHz 2.4GHz 3.6GHz 2.1GHz 3.7GHz 3.3GHz
E-core 2.4GHz 1.8GHz 2.7GHz 1.6GHz 2.8GHz
TurboBoost P-core 5.1GHz 5.0GHz 4.9GHz 4.8GHz 4.9GHz 4.8GHz
E-core 3.9GHz 3.8GHz 3.8GHz 3.6GHz 3.6GHz
TurboBoostMax3.0 5.2GHz 5.1GHz 5.0GHz 4.9GHz
Themal Velocity Boost
キャッシュメモリ L2 14MB 12MB 9.5MB 7.5MB
L3 30MB 25MB 20MB 18MB
PCI-Express Gen 5.0
レーン数 16
Gen 4.0
レーン数 4
メモリ 対応メモリ DDR5-4800 / DDR4-3200
最大容量 128GB
消費電力 基本 125W 65W 125W 65W 125W 65W
最大 241W 202W 190W 180W 150W 117W
GPU Intel UHD Graphics770
64bitコード intel64
SIMD命令 SSE SSE4.1/4.2
AVX AVX2.0
対応ソケット LGA1700
対応チップセット インテル 600シリーズ

主なCPUスペック比較一覧

Core i9-12900とCore i7-12700は、先行のCore i9-12900K・Core i7-12700Kと同じコア構成となっていて、K型番との違いは動作クロックと消費電力のみとなります。消費電力は基本と最大の2パターンがスペック上インテルより公開されており、TDP65Wと言いつつも例えばCore i9-12900では最大202Wまでブーストしており、発熱や電力に余裕がある限り最大限性能が発揮されるように調整されているようです。
Core i5ではCore i5-12600Kが上位モデルと同じP-core + E-core構成、Core i5-12600はP-coreのみの構成と明確な違いが表れています。このコア構成の違いがどのように影響してくるのか、ベンチマークを通して見ていきたいと思います。

なお、ベンチマークを行うにあたり、第12世代インテル Core プロセッサーのメモリはDDR5-4800、第11世代インテルCore プロセッサーとRyzen 5000シリーズ デスクトップ・プロセッサーのメモリはDDR4-3200となっています。
また、OS環境については第12世代インテルCoreプロセッサーへの最適化状況を考慮し、第12世代インテル Core プロセッサーのみWindows 11となっています。
※検証時の構成については記事最後尾に記載しております。

Passmark PerformanceTest

まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassmarkの『CPU Benchmarks』を用いて、CPUの総合的な演算性能を見てみましょう。

Passmark CPU MarkPassmark CPU Mark

Core i5-12600がCore i9-11900を20%以上上回るなど、第12世代 Core プロセッサーが第11世代 Core プロセッサーを圧倒しています。Ryzen 5000 シリーズと比べても、Core i5-12600がRyzen 7 5800X に近いスコアを示すなど、第12世代インテル Core プロセッサーの性能が大きく向上していることが良く分かります。
また、Core i5-12600KとCore i5-12600のスコア差は少なく、Passmarkの CPU Benchmarksについては、シングルスレッド性能の比重が比較的大きく、E-coreの有無による影響は小さいようです。
Core i7-12700KとCore i7-12700の差も大きくは離れておらず、上位、下位のグレードで逆転するということも無く順当な結果となっています。

3D Mark CPU test

次いで、3D Mark「Fire Strike / Physics Score」と「Time Spy / CPU Score」を用いて、CPUの演算性能を見ていきます。「Fire Strike / Physics Score」「Time Spy / CPU Score」共に、CPUに物理演算をさせてその処理速度を数値化したもので、CGレンダリングや動画のエンコードと同じくCPUのコア数やスレッド数の多さが有利に働くテストです。なおベンチマークテストには共にWQHD解像度(2560×1440)のFire Strike Extreme とTime Spyを使用しています。

3D Mark Fire Strike3D Mark Fire Strike

Core i5-12600KとCore i5-12600のスコア差(約15%)が、Core i7-12700KとCore i7-12700の差(約2.5%)よりも明らかに大きいことから、Fire StrikeではE-coreを含んだ「コア数」の影響が有ると見てよさそうです。「コア数」が大きく影響するこのベンチマークにおいても、P-Coreのみで6コアのCore i5-12600が8コアのCore i7-11700と同程度のスコアを示しており、P-coreの性能向上の大きさが見て取れます。

3D Mark Time Spy3D Mark Time Spy

Core i5-12600KとCore i5-12600の差が約25%とFire Strikeよりも広がっている一方、Core i7-12700KとCore i7-12700の差(約2.5%)はFire Strikeとほとんど変わっておらず、Time SpyにおいてもE-coreを含んだ「コア数」の影響がより強く表れています。

TMPGEnc Mastering Works 6

続いて、動画編集ソフトのTMPGEnc Mastering Works 6を用いて、QuickTimeファイル(3840x2160/2分50秒)をh.265に変換するのに要した時間(単位:秒)を測定しました。グラフの短い方がより高速に処理を行っている事になります。

TMPGEncTMPGEnc

TMPGEnc Mastering Works 6においても、Core i5-12600KとCore i5-12600の差(約15%)が、Core i7-12700KとCore i7-12700の差(約5%)よりも大きいことから、E-coreの効果が有るようです。また、Core i5-12600がコア数/スレッド数の多いCore i9-11900と遜色ない時間で処理を終えており、P-core自体の処理能力の高さを確認できます。

Windows 10環境での第12世代インテル Core プロセッサーの挙動

第12世代 Core プロセッサーの特徴であるP-coreとE-coreを適切に使い分けるためのインテルスレッド・ディレクターに対応できていないWindows 10環境で使用すると、いったいどのようなことが起こるのか、をCore i7-12700で試してみました。
結果としては、Windows 11とWindows 10で差が無い場合もあれば、大きな性能差がある場合もありました。例えば、E-coreがほとんど影響しないPassmarkではスコア差はありませんし、3D MarkやTMPGEncでも大差はありませんでした。他方、大きな差の出たプログラムをWindows 11とWindows 10環境下で動作させたときのCPU負荷率をタスクマネージャーで確認したところ、以下の様な違いが表れていました。なお、タスクマネージャーでのP-coreとE-coreの見方ですが、左上を起点にしてP-core、E-coreの順番で並んでいます。Core i7-12700では、上3段と最下段の一番左の16個がP-core、最下段の残り4つがE-coreとなります。

タスクマネージャーでのP-core、E-coreの見方タスクマネージャーでのP-core、E-coreの見方

左:Windows 11環境、右:Windows 10環境左:Windows 11環境、右:Windows 10環境

ご覧の通りで、Windows 11環境は全スレッドが動作し100%のCPU使用率となっていますが、Windows 10環境ではE-coreの4コアしか動作していません。この挙動の違いが大きな性能差を生んでいました。使用するアプリケーションソフトによっては、OSの違いによってこのような差を生んでしまう可能性が有るようです。もし、Windows 10環境で以前と比べて極端に性能が出ない場合はこのような状況になっているものと思われます。
さて、このような状況が発生してしまった場合の対処方法ですが、使用するマザーボードによってはBIOSの設定でE-coreを無効化するという事ができます。今回使用したASUS Z690-Pでは以下の方法でE-coreを無効化する事ができます。
1. BIOSメニューに移動したのち、‘F7’キーでAdvanced Modeに移行
2. Advanced メニューからCPU Configurationを選択
3. CPU Configuration メニュー内のActive Efficient Cores の値を「All」⇒「0」に変更
この内容でBIOSを保存した後、OSを起動するとP-coreのみが認識された状態となります。

BIOS設定画面BIOS設定画面

P-coreのみが認識された状態P-coreのみが認識された状態

P-coreのみが認識された状態のWindows 10環境で、E-coreのみで動作していたプログラムを動作させると、上の通りにP-core全部を使用するようになりました。Windows 10環境で極端に性能が出ない場合は、上記のようにE-coreを無効化する方法を試してみてはどうでしょうか。
とはいえ、Windows 11では上記のような挙動はありませんでしたので、特に支障が無ければ第12世代インテルCoreプロセッサーはできるかぎりWindows 11で使用することをおすすめします。

順当な性能向上を確認できた第12世代インテル Core プロセッサー

ベンチマークの結果から、第12世代インテル Core プロセッサーのP-core自体の性能が、第11世代インテル Core プロセッサーから大幅に強化されていることが確認できました。それに加えてE-coreが有効に機能すると、さらに一段・二段と性能を向上させてくれることが確認できました。OSやアプリケーションの対応が必要となりますが、パフォーマンスを重視したP-coreと効率を重視したE-coreという2種類の異なる性質のコアを統合した第12世代インテル Core プロセッサーのコア設計は、今後のパソコン用CPUの進むべき方向のひとつを示しているとも言えるでしょう。
先行して登場したCore i9-12900KなどK型番のモデルは冷却面で取り扱いの難しさが有りましたが、今回登場したモデルはそこまで極端な発熱はなく、取り扱いやすいCPUとなります。とはいえ、発熱や電力に余裕があれば自動的にブーストするCore i9やCore i7の性能を最大限に生かすために水冷クーラーの使用は引続きおすすめとなります。
Core i5では、前世代のCore i7に匹敵する性能を見せつつも、空冷クーラーで十分冷却が可能なため、MicroモデルやMini-ITXモデルといった容量の小さなケースでも対応でき、発熱の関係であきらめていたユーザーには、ぜひ試して頂きたいCPUとなっています。

第12世代Core 第11世代Core Ryzen 5000 シリーズ
CPU Core i7-12700K
Core i7-12700
Core i5-12600K
Core i5-12600
Core i9-11900
Core i7-11700
Ryzen 7 5800X
Ryzen 5 5600X
マザーボード ASUS Prime Z690-P MSI Z590-S01 ASUS Prime X570-PRO
メインメモリ DDR5-4800 32GB (16GB x2) DDR4-3200 32GB (16GB x2)
グラフィックスカード ZOTAC GeForce RTX 2080 SUPER (ビデオメモリ 8GB)
ストレージ Samsung 980 PRO 1TB (MZ-V8P1T0B) PCIe Gen 4.0 M.2 NVMe SSD
電源 Seasonic SSR-850PX (80PLUS Platinum、850W)
OS Windows 11 Home 64bit
(バージョン:21H2)
Windows 10 Home 64bit (バージョン:21H1)
ビデオドライバ GeForce Game Ready Driver Ver496.13

テスト環境1:ベンチマーク比較用

CPU Core i7-12700
マザーボード ASUS Prime Z690-P
メインメモリ DDR5-4800 32GB (16GB x2)
グラフィックスカード ZOTAC GeForce RTX 2080 SUPER (ビデオメモリ 8GB)
ストレージ Samsung 980 PRO 1TB (MZ-V8P1T0B) PCIe Gen 4.0 M.2 NVMe SSD
電源 Seasonic SSR-850PX (80PLUS Platinum、850W)
OS Windows 11 Home 64bit (バージョン:21H2)
Windows 10 Home 64bit (バージョン:21H1)
ビデオドライバ GeForce Game Ready Driver Ver496.13

テスト環境2:OS環境比較用

ライタープロフィール 職人5号

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。

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