

どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアニメーターでアニメーションディレクターの野中晶史さんです。好きが高じて、アニメーターとして活躍している野中さん。現在の活躍には、ある野中流「クリエイティブの哲学」が影響していました。
野中さんが携わった作品
野中さんの代表作『めかくれ』。自主制作によるホラーアニメーションです。
ホラーや、キャラクターの緩急をつけた動き、地元をロケーションするなど、新しい試みを実験的に取り入れた作品。
授業での課題でアニメ制作の魅力を知る
野中さんが子供の頃憧れていた職業はなんですか?
強く「これ!」といったものは特に無かったように思います。その時々で好きだったものから想像してイラストレーターやゲームクリエイターやスポーツ選手などを「将来の夢」として書いていました。
学校はどんなところに進学しましたか?
高校時代は絵を描く事と数学が好きだったので、大学への進路選択ではその両方を活かせる分野を探し「芸術工学部」というデザインを芸術と工学の両面から学べる学部に進みました。
大学時代はどんな生活を送っていましたか?
大学1年の頃は大学から始めた卓球にハマっていたので、よく卓球部で練習していました。2年以降は学部の課題や自主制作で忙しくなり、ほぼ毎日大学内で何かしらの制作をしていました。
そこからアニメーターを目指すようになったきっかけを教えてください
大学2年の時に取り組んだアニメーション制作の授業課題です。そこでアニメを作る楽しさを知りました。それまで何を専攻していくかをずっと悩んでいたのですが、自分の描いた絵がアニメになり動いている様子にとにかく引き込まれまれ、もっと作りたいという気持ちが強くなりました。
実際に活動するようになったのはどんなきっかけがありましたか?
大学院にいた頃から、知人のツテで少しずつアニメーターとしてのお仕事をいたただけるようになりました。大学院修了時に就活をして一度会社員を経ていますが、1年で退職しフリーのアニメーターとして活動するようになりました。アニメーションディレクター業はここ2年ほどで増えてきたもので、アニメーター活動の延長にあったものです。
MV制作で作品の幅が大きく広がった!
野中さんの代表作を教えてください
2019年に制作した自主制作ホラーアニメーション『めかくれ』です。元々興味のあったホラーにチャレンジしたり、動きの緩急を実験的に試したり、自分の地元を舞台にしたりと、これまでの制作でやってこなかった事を取り入れた作品になっています。
仕事としてターニングポイントになった作品はありますか?
清水翔太さんの楽曲『Friday』のMV(ミュージックビデオ)でのアニメーション制作です。それまではかわいいキャラが登場する作品やシンプルなモーションで構成される作品のアニメーションを担当する事が多かったのですが、線画や実写映像やデザインモチーフをコラージュのように構成して画面を作っていく手法がとても刺激的でした。手書き作画やモーションなど、これまでに自分が培ったアニメート技術を総動員しています。
その仕事から、得られたことはありましたか?
扱える作風の幅が大きく広がりました。最近では新規でお仕事をいただく際「どんな作風のプロジェクトかな?」とワクワクしながら打ち合わせに入る事も多いです。また、作り方を考える事自体を楽しめるようになりました。
忘れられない仕事での失敗談はありますか?
プロジェクトのスタート時に自分のスケジュール感をしっかり伝えられないまま「何とかなるだろう」とフワッと始まってしまったことです。他の仕事と重なってしまい周囲に大きく迷惑をかけ、自分自身もかなり無理をした経験があります。自分の作業スピードなども把握できていなかった部分もあったので、スケジュール管理に対して強く反省しました。
野中さんが仕事で一番テンションが上がる瞬間はどんな時ですか?
初めて取り組んだ作風や技術を使用した作品が完成し、形になった時です。そういうプロジェクトは大抵の場合、途中で試行錯誤し苦戦するので、苦労した分自分の中に新しい要素が作られた気がして嬉しいです。
野中さんが仕事で大切にしている事、意識している事を教えてください。
時間の使い方は気をつけています。皆さんそうだと思いますが、締め切りに追われてバタバタするのが嫌いなんです。また、睡眠時間も削りたくありません。どうすれば余裕を持ってスムーズに進行できるか?という事は常に強く意識しています。
パソコン周りはシンプル設計
現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?
・ディスプレイ一体型パソコン
・intel Core i7、
・メモリ32GB
・ディスプレイ1:27インチ
・ディスプレイ2:24インチ
・内蔵HD2TB 外付けHD4TB
・Wacom Intuos Pro
PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。
あまり詳しくないのでこだわりはありません。After Effectsがまともに動いてくれれば、というぐらいでしょうか。
野中さんがこっそり使っている裏技があれば教えてください。
作業時の手元がペンタブ、キーボード、マウスを横に並べて左手でペンタブ、右手でマウス、両手でキーボードが使える配置になっています。ちなみに、左利きです。
大学等にある共有PCのマウスはほぼ右側におかれているために自然と左手でペンタブ、右手でマウスを使うようになりました。制作時はペンタブとマウスを作業内容に合わせて無意識に使い分けているので、僕にとってはこの配置が一番作業しやすく効率的です。
作る+学ぶの繰り返しがクリエイティブに繋がる
野中さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?
僕にとってアニメーション制作は趣味の延長にあるものです。ゲームにハマって卓球にハマって、次はアニメーション制作にハマって、それが今もずっと続いているというイメージでしょうか。趣味は本気で取り組んでこそ一番楽しめると考えているので、今後も趣味のアニメーション制作に全力を出し続けたいです!
クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!
現在の自分のスキルやセンスなどはひとまず気にせず、とにかく作る+学ぶを繰り返す事が大切だと思います。作ってみれば自分の得意な部分や苦手な部分もわかるし、作品があれば人に見てもらって意見を得る事もできる。そうすれば次に学ぶべき事もわかってきます。僕自身、20代は作る+学ぶを繰り返して、30歳を過ぎたあたりからやっと作りたいものが作れるようになってきたなと感じています。
野中さん、ありがとうございました!
若いうちはとにかくチャレンジ!
ハマったことをとことん突き詰めたことで、アニメーターという仕事への道が開いた野中さん。まずは「やってみることが大切」、そして「仕事は趣味の延長」と言います。作ることと学ぶことを何度も繰り返すことで自分自身のことも理解できるし、新しい扉が開くのです。悩む時間があれば、まずはチャレンジしてみることが未来への近道かもしれません!
絵を描くことが好きだった少年が、友人に誘われた芸大受験予備校でアートの特訓を受け、今はアニメ作家として活躍。天職への道は、自分の想像とは違ったところから導き出されるのかもしれません。「好き」と思ったことに、とことん邁進し、アウトプットすることが大切ですね。
クリエイタープロフィール
野中晶史さん
アニメーター、アニメーションクリエイター
1985年生まれ。静岡県出身。名古屋市立大学芸術工学部卒業。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。フリーランスで活動中。

[ネクスマグ] 編集部
パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。