活躍中のクリエイターにお話を聞く『クリエイター仕事道』。今回はアニメーション作家、イラストレーターとして活躍する堀ケイキさんにお話を伺います。

クリエイター最終更新日: 20210820

アニメーション作家/イラストレーター:小さなターニングポイントを積み上げて、着実にステップアップ

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活躍中のクリエイターにお話を聞く『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアニメーション作家、イラストレーターとして活躍する堀ケイキさん。クリエイターが大切にするべき“心”とは?

堀さんが携わった作品

「とらや 和菓子の原理展」で展示されたアニメーション。繊細な和菓子の製造工程をアニメーションで紹介しています。

懐かしいヒット曲をトークで楽しむ「甦れ!青春ポップス」(BS朝日)のオープニングアニメーション。

授業中に描いたマンガで、絵を描く喜びを再認識

堀さんの幼少期は、どんなお子さんでしたか?

小さい頃から他人と接する事が苦手で、いつも新聞の折込広告の裏に落書きをして、一人の世界に没頭していました。好き勝手に想像して描くのが好きで、何時間でも描いていられたんですよね。でも、写実的に描くことは苦手で、図工や美術の成績は良くありませんでした。友達からのウケが良かったのですが、大人に褒めてもらった事がなかったんですよね。ですから、長い間絵を描く事が職業に結びつかなかったですね。

友達からのウケは良かったんですね!

ノートや教科書の余白にクラスメイトや教師の似顔絵をマンガのキャラっぽく描いてましたね。特に発表の場はないのですが、たまたま教科書を貸した友人に見つかって予想以上にウケたんです。自分の机にもたくさん描いていたので、席替えの時にちょっと話題になったりすると、すごく充実した気分になれました。だって、勉強もスポーツも出来なかったから…(苦笑)。

そこからどんな学校へ進学したのですか?

画を描くのは好きなのですが、先生からのウケが悪かったので、美術部にも興味がわきませんでした。そのせいで美大という存在すら知らず、将来の事とか何も考えていませんでした。高校を卒業する頃、ちょうど世の中が空前絶後の“平成の大バブル”に突入しようとしていた時で、別に夢など持たなくても「テキトーに生きてても、どーにでもなるでしょう」という淀んだ空気が日本中に充満していました。私も何も考えずにたまたま合格した地元の大学の商学部に進学し、ぼんやり4年間を笑ってすごしました。

商学部に進学して、そこから何がきっかけで今の仕事を目指すようになったのですか?

大学の卒業を控えているにも関わらず、やりたい事もなく、ただボーーっと講義を受けていたある日、どこからともなくA6サイズのぶ厚いメモ帳が回ってきました。見ると、ページ毎に皆がそれぞれ好き勝手に落書きをしていたんです。私も一番新しいページに、大好きだったボクシング漫画のパロディを2、3コマ描いて「つづく!」と締め、後ろの席に回しました。しばらくするとメモ帳が戻ってきて、なんとそこには私が描いたマンガの続きが何ページも出来上がっていたのです! 私はその場で続きの話を考え何コマか描き足し、またメモ帳を回しました。メモ帳は回っていった先々で、クスクスと小さな笑いを巻き起こし、進展した数ページとともに、再び私の手元に戻ってきました。気がつくと私は夢中でペンを走らせていました。授業後みんなの中で、一番上手な絵を描く友人が「お前、話をまとめるのが上手いな!」と褒めてくれたんです。しばらくの間、授業中のリレーマンガが仲間内で盛り上がっていました。

翌春マンガを描いていた学友たちは、地元の不動産や金融や広告業に就職していきました。私はぼんやりと、好きな画を描いて仕事に出来ないかと思い、一人あてもなく上京するのでした…。

なんだか展開が気になってきました!上京後はどうされたんですか?

週2回のイラスト教室に通うかたわら、昼間は当時建築中の東京都庁舎の建設現場で日雇いの肉体労働に汗を流し、夜は赤坂の飲み屋で給仕のバイトをしていました。そこのマスターがカウンターにいた常連さんに「この子、絵の勉強してんだってさ、〇〇さんとこで雇ってやってよー」と斡旋してくださったお陰で、赤坂にあった映像編集スタジオに就職することが出来ました。

7年ほど勤めた頃、ちょうどコンピューターの性能と映像系のソフトウェアが急速に進化してきて、それまで一部の資本と特殊技術を持った組織でしか出来なかった映像制作が個人レベルで手が出せる時代になってきました。良いご縁とタイミングも重なって「じゃあ、自分でやってみるかな」と30歳ぐらいの時に独立しました。

仕事とクライアントには、真摯に向き合う

堀さんの代表作を教えてください。

代表作と言えるものはまだありません。
今後胸を張ってそう言える仕事をしていきたいですね。

お仕事の中での大きなターニングポイントはありましたか?

そうですね、「この仕事をきっかけに!」と言った劇的な案件があったわけではありませんが、徐々に自分が望む方向に進んで行く道標的な「小さなポイント」は、いくつも思い当たります。「今にして思えば」って感じですけどね。

そういったお仕事からどんなことを学びましたか?

会社勤めをしていた頃は、ディレクターが進行し、いかに早く正確に指示通り映像を組み立てる能力が求められる仕事がほとんどでした。しかし、フリーランスになると自分できることは「その仕事を受けるか、断るか」の選択ぐらいで、それ以外は思い通りに制作できる訳ではありません。しかし次第に広告映像がTVからWebに広がっていき、案件あたりの予算が細かくなり、その分小さな仕事が増えていきました。その結果、アニメの作画からディレクションまでさせてもらえる機会が増えてきて、俄然仕事が面白くなりましたね。

堀さんが仕事をするうえで一番高揚する瞬間はどんな時ですか?

私は生まれながらに人前でのライブパフォーマンスが死ぬほど苦手な人間。
そのような現場では実力の2割も出せない、生粋の裏方人間です。
誰も見ていないところで、コソコソとひとり仕事をし、出来上がったモノを偶然見た誰かが、喜んでくれる。
その反応を物陰からこっそり見ている時に
足がガクガク 
心の臓はバクバク
鳥肌が…。
という感じです。

感動できる瞬間ですよね。逆に、忘れられない失敗はありますか?

仕事の失敗は多々ありますが、あとあと尾を引くのは圧倒的に人間関係での失敗ですね。つい調子に乗って、相手に礼や仁を欠いてしまった時。本当に人間が未熟でした。

堀さんが仕事で最も大切にしていることは何ですか?

まずは、仕事場とデータの整理整頓。次に、案件ごとのキチンとした計画と実行。あとは、取引先との礼節をわきまえたやりとり。これが出来ていれば、フリーでも最低限食べてはいけると思っています。逆にどんなに仕事ができても、才能に溢れていても、この3つが出来ないと生き残れないと思います。

ふだんはどんなPCや周辺機器を愛用していますか?

パソコンは、27インチ 一体型デスクトップパソコン(CPU:3.6GHz 8コアIntel Core i9. メモリ:64GB.ストレージ:2TB) を使っています。ソフトウェアは、Adobe After Effects,Adobe Illustrator,Adobe Photoshop, Final Cut Pro X を入れています。

あきらめず努力を継続すれば道は開く

堀さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?

自分の好きな事、得意な事、つまり自分の能力を最大限にいかして生きていく事。
ですね。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

それが見つかったら、次はあきらめずに努力して継続する事が大切です。その中の1〜2割の人が「自分が目指すモノ」になれるんじゃないでしょうか。「2割かよ!」と思われるかもしれませんが、何もしなかったり途中でやめたら、絶対に目指すモノになれませんからね。「ゼロ」ですからね。

それにあきらめずに努力を続けられれば、目指すモノになれなくても、別の何かになれます。それは「ゼロ」ではなくカタチは違ったとしてもキチンとした「モノ」になっているハズです。ズバ抜けた才能がなくても大丈夫です。私を含めほとんどの人は凡人で、この世界はその凡人たちで成り立っているのですから。凡骨な才能をしっかり見極めてコツコツ磨いて行けば良いのです。計画性と実行力を持って。あとは礼儀と仁義です。これをしっかり守っていれば、この国では生きて行けますよ、多分…。

堀さん、ありがとうございました!

努力の積み重ねと、相手を重んじる心

クリエイターはズバ抜けた才能がないとやっていけないと思われがちですが、コツコツと積み重ねた努力が必要。そのことを堀さんは教えてくれました。そして、当たり前ですがお仕事をするうえで礼儀と仁義はもっとも大切。このふたつを胸に刻んでがんばりましょう!

クリエイタープロフィール

堀ケイキさん
アニメーション作家、イラストレーター、凡骨のフリークリエイター
1967年生れ、愛知県出身。ビデオ編集スタジオに7年勤めフリーランスに。商業アニメーション、イラストレーションの制作を中心にマイペースで活動中。無罰無償。
https://keikihori.myportfolio.com/

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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