両親の「イラストレーターという仕事があるよ」という一言でイラストの道を目指、変わらない情熱でアニメーション作家として活躍しているぬQさん。クリエイターとしての働き方や思いに迫ります。

クリエイター最終更新日: 20220401

アニメーション作家:「中学時代にGIFアニメを作っていた頃と楽しい瞬間は一緒」

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアニメーション作家のぬQさんです。幼い頃から絵を描くことが好きで、ご両親の「イラストレーターという仕事があるよ」という一言でイラストの道を目指したというぬQさん。現在はアニメーション作家として活躍していますが、その頃と描くことへの情熱は変わらない様です!

ぬQさんが携わった作品

多摩美術大学大学院修了作品『ニュ〜東京音頭』

2012年に発表したオリジナルアニメーション作品で、鉛筆ツールで全て描き、秒間24〜30枚で動かしています。

2018年『PARCOグランバザール』のCM用アニメーション。お正月の縁起物とファッションアイテムの中をオリジナルキャラクターのふたこがクルクル飛び回りますPARCOグランバザールのワクワク感を、細かな動きと豊かな色彩で演出しています。

『グランスタ東京』のリニューアルOPENに向けたビジュアル。シャッター広告に使用するイラストは3m程あり、作風を根本から見直すきっかけになったんだとか。

必須授業の「アニメーション」がそのまま仕事に

ぬQさんは幼い頃、どんな子どもで何になりたかったですか?

イラストレーターです。幼少の頃から絵を描くことが好きで、それが「仕事になれば良いな」と思っていました。でも当時は、絵を描く仕事といえば“画家”しか思いつきませんでした。そんな時に両親から“イラストレーター”という職業があり、「自分で描いたイラストが文房具に使われたりするんだよ」と教えてもらったんです。子供の頃、可愛い文房具集めも大好きだったので、「それいい!」と思いました。ちなみに、絵を描く以外では、食べ物とショッピングとジュエリーの光沢感が好きでした(笑)。

ご両親のおかげで目指す道が明確になったんですね。その後どんな学校に進学しましたか?

中学生の頃に美術の道を志し、近所の絵画教室から大手の美大向けの予備校の中学コースに通い、都立芸術高校のデザイン科(現:都立総合芸術高校)に進学しました。その流れで多摩美術大学グラフィックデザイン学科、同大学院のアニメーションの研究室に入りました。

イラストレーターを目指しつつ、大学院ではアニメーションを学んだんですね。

入学した大学ではアニメーションが必須科目でした。世界中の芸術的なアニメーションを鑑賞して衝撃を受けました。また課題として作品を制作することで、その魅力に取り憑かれていきました。当時のトップクリエーターの方々が仕事のあれこれを話してくれる特別講義を聞くのがとても楽しみでしたね。その頃から『ぬQ』というペンネームでホームページを好き勝手に更新するのは趣味でずっと続けていました。まさか『ぬQ』であることが本業になるとは夢にも思いませんでした!

職業としてアニメーション作家を意識するようになったのはいつ頃ですか?

広告コースで学んだり、また就職活動したりする中で「本当は就職せず、この先も好きな絵を描いて生きていきたい」という、本当の大事な自分の気持ちがわかってきました。そして「本当の自分の気持ちを無視したら、この先苦しいのでは?」という予感がありました。かといって作家になる勇気はなく、ずっと迷っていました。そんな時、東日本大震災が起きたり、恩師の突然の不幸があったり、「やりたいことを後回しにしない、心の声に従おう」と作家の道を歩み始めました。という言い方はカッコよ過ぎなのですが、要は就活をやめたのです…。

とはいえ、フリーランスの作家として活動するようになったんですよね。

修了制作の『ニュ〜東京音頭』というアニメーションが、嬉しいことに国内外で評価を受け、その後の仕事につながりました。MVや雑誌の挿絵、個展のお話などをいただき、そのまま今に続きます。

中学時代と変わらない“楽しい”瞬間

ぬQさんの代表作を教えてください

オリジナル作品では大学院修了制作の『ニュ〜東京音頭』です。秒間24〜30枚のコマをコツコツ描き続け、大学院時代に2年間かけて作りました。

仕事では『パルコ』『グランスタ』での作品です。

『グランスタ』のシャッター広告は3mほどあり、映像用のサイズと全く違います。作風を根本から見直すきっかけになりました。そのおかげで1〜15mくらいの絵も対応できるようになり、サイズの大きな仕事もよくいただくようになりました。サイネージ用のアニメも制作し、アニメとイラスト両方を作れることが強みになりました。

ターニングポイントとなった作品はありますか?

優等生的な答えになってしまうのですが、私にとっては一つ一つが大切なのでこれといったターニングポイントはありません。大きな規模の華やかな仕事はたくさんの方に見ていただけますし、小さなものは細部が個人的に気に入っていたり、特別大事にしてくれる人が現れたり、新しいご縁を持ってきてくれたりすることもあるんです。コンペに落ちたとしても、一生懸命コンペに望んだ姿を誰かがみてくれているわけで、きっとどこかでまた実を結ぶだろうと思っています。

一つ一つの積み重ねですね。逆に失敗を経験したことはありますか?

あります。その都度教えていただき、直したり助けていただいたりしています。

同時に世の中のいろんな不備や失敗も大らかに捉えられるようになってきました。私の過ちをいろいろ教えていただいたように、誰かが間違ったり困ったりしていたら、お互い助け合おうと思っています。

素敵な考え方ですね!ぬQさんが仕事で一番気持ちがアップする瞬間はいつですか?

クライアントや、実際に仕上がったものを目にしたお客さんが楽しんでいるのを直に見た時です。些細なことで言えば、動画チェックの時に予想を超えるというか、予想をはみ出た不思議な動きができた時は一人で大笑いしています。中学生の頃にPhotoshopで変なGIFアニメを作っては、夜な夜な爆笑していた頃と何も変わっていませんね(笑)。

ぬQさんが仕事をする上で、普段心がけていることを教えてください。

自分らしさが出ていること、クライアントの意図を汲んでいること、その両方ができているか見ます。両方のバランスがとても大切で、片方だけだとうまくいかないんです。

外出先でも作業できる様、軽量重視!

現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?

タブレットPC、ペン、ノートPCです。
素材はタブレットPCに入っているイラスト制作アプリで描きます。
ノートPCは主に編集で、Photoshop、Premiere、Illustratorなどを使っています。

PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。

出先や移動中でも描くことが多いので、とにかく軽量であることを重視しています。

“好き”を磨き続けると見えてくるもの

ぬQさんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?

道といえるくらいまだ進んでいないのですが、先程もお伝えした通り自分らしさと、クライアントの意図の両方を大切にし、実現していくことが重要ではないかと思っています。この両方の比率や合体のさせ方については、万能の正解があるわけではありません。1つ1つの機会と、心の声にその都度あわせながら、ずーっと考え続けることになると思います。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

自分の“好き”を大切にして磨きつづけていると、誰かが見て楽しんでくれる瞬間があります。そこに“好き”を仕事にすることの鍵があるように思います。一緒に頑張りましょう!!

ぬQさん、ありがとうございました!

“楽しい”瞬間を忘れない

幼い頃から絵を描くことが好きで、イラストレーターを目指していたぬQさん。現在はアニメーション作家として活躍していますが、絵を描く楽しい瞬間は、今も変わらないようです。幼い頃の情熱と、成長した感覚を両立して新しい道を切り開いていきましょう!

クリエイタープロフィール

ぬQ
アニメーション作家
アニメーション作家。ポップでカラフルな作風でキャラクター『一郎』と『ふたこ』が動き回るアニメーション作品を中心に、CM、MV、キャラクターデザイン、装画など幅広く活動している。
HP:http://nuq.o.oo7.jp/

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG [ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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