どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアニメーション作家の森りょういちさんです。ヴィレッジヴァンガードで話題になったDVD作品「Peeping Life」 の作者である森さん、実は大学卒業直後からフリーのアニメーション作家として活躍しています。それには学生時代からの活動と、森さんの戦略が影響していました!

クリエイター最終更新日: 20220404

アニメーション作家:「クリエイターは地味でカッコ悪い」地道に突き進むことで生まれる作品たち

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアニメーション作家の森りょういちさんです。ヴィレッジヴァンガードで話題になったDVD作品「Peeping Life」 の作者である森さん、実は大学卒業直後からフリーのアニメーション作家として活躍しています。それには学生時代からの活動と、森さんの戦略が影響していました!

森さんが携わった作品

『Peeping Life 12th anniversary』

2021年6月18日でDVD第一弾発売から12周年を迎えるにあたって公開した最新作。

数年ぶりのオタクくんでクスっと脱力していただける内容になっています。ファンの間ではオタクくんもこのコロナ禍を一緒に生きているんだ、と感動したというお声も!

『DON!DON!ドライブ PV』

教育×エンターテイメントの真骨頂!自動車教習所の学科教材として南福岡自動車学校様と共同制作した作品。ちょっと難しい学習内容をバラエティー番組形式にすることにより、楽しみながら見ていたら学べるよう工夫しています。

『育じーズ ダンディーパパの育児しまくって分かったこと』

子育てあるあるや、ためになる豆知識を教えてくれる子育てアニメ。育児を赤裸々に語るママ友の会話劇、可愛くて共感しちゃう10秒の1コマアニメ、『ダンディーパパの育児しまくって分かったこと』などなど、子育てをテーマにしたアニメーションコンテンツを展開中。

就職活動を止めて、個人アニメーション作家として活動

森さんが子供の頃に憧れていたのはどんな職業でしたか?

Mr.マリックさんです(笑)。80年代後半にマジックブームが起こり、マジシャンにとても惹かれたのを覚えています。普通の力ではない、魔法のような力に憧れました。

この頃から、「“自分にしか出来ないこと”が出来るようになりたい。そういう能力がほしい!」と思うようになりました。それって、意外と今の仕事に繋がっていると思います。

マジシャンに憧れていたんですね!そこからどの様な学校に進学しましたか?

僕は福岡県の出身なのですが、家から通えて3DCGが学べる大学が、九州産業大学しかなかったので必然的にそこへ進学しました。結果として、九産大に入っていなければ今の僕のキャリアは存在しなかったと言えるくらい、大きな学びと経験、人脈を得ることとなりました!

九州産業大学時代はどんな生活を送っていましたか?

1,2年生の頃は、いわゆる“キャンパスライフ”を満喫しました。というのも高校生時代は一人でPCを使い3DCGアニメを作るような陰キャな生活だったので、まったく明るく楽しい高校生ライフじゃなかったんです(笑)。しかし大学に入ると芸術学部なので、同じような趣味、価値観の学生ばかりだったんです。なので、まったく浮くことなく、それどころか、早くからCGをやっていたことがリスペクトされ、今までにない楽しい学園ライフが始まったんです!しばらくそれを純粋に楽しみました(笑)。

その後、3,4年生では180度切り替えて、とにかくCGアニメ作品を作りまくりました。1年間で12作品作り、その面白さに気づきました。「作りたいと思うモノが、こうやったら実現できる」と、やりたいこととスキルのバランスが取れてきた時からが、本当にクリエイターにとって面白くなる時です。学生時代にそこに行けたのは本当に良かったなと、過去の自分に感謝です。

学生時代にクリエイションのおもしろさに気づけるなんてすごいですね!今の仕事を目指すきっかけはありましたか?

学生時代に自分の作品制作が楽しくなってきた中で、積極的にコンテストに応募していました。そもそもなぜそこまでコンテストに応募していたかというと、就職活動に有利になると考えたからです。クリエイターは作品作りを通して、自分自身への理解を深めていきます。一般的な学生は、就職活動の面接の練習の際に初めて自己分析を行い「自分は何が好きで何が出来て、何を目指すのか?」と考え始めると思いますが、自分の場合は作品制作を通して、結果的に早い段階から向き合ってきました。ある時、「あれ? 自分は本当に就職でいいのか? 自分の作品を作りたいのではないか?」と考えるようになったのです。そこから就活を一切やめて、個人アニメーション作家として生きることを決めました。

就活をやめてしまうなんて大きな決断でしたね!アニメーション作家としての“仕事”を意識した時はありましたか?

東京国際アニメフェアに『クリエイターズワールド』という個人クリエイターにブース出展の機会が与えられるプログラムがあります。それに応募し奇跡的に出展への切符を手にしました。大学卒業後1年経った頃、アニメフェア最終日に新海誠監督の作品を手掛けるアニメーション会社兼DVD販売メーカーのコミックスウェーブフィルムさんと出会い、オリジナル商業作品を制作するきっかけを手にしました!

アニメーション作家としての道を開いた「Peeping Life」

森さんの代表作を教えてください

その作品が、代表作である脱力系CGアニメ「Peeping Life」です。実は、僕の大学卒業制作の作品「EACH LIFE」がベースとなっています。アニメフェアにて映像上映していた「EACH LIFE」を見て、コミックスウェーブフィルムの川口社長に「これおもしろいね!うちでやろうよ!」と言ってもらえました。

このPeeping Life、リリース当初はほとんど売れず、初週売上は全国で300枚でした。それがヴィレッジヴァンガードさんに置いてもらえることをきっかけに徐々に口コミで広がり、DVD累計販売本数60万本を超えるヒット作になったんです。

活動のターニングポイントとなった作品はありますか?

もちろん「Peeping Life」もそうですが、「自動車教習映像DON!DON!ドライブ」という今も続いている作品があります。これは自動車学校で学科教習の際に上映される映像コンテンツなのですが、つまらない自動車教習動画をこれでもかとエンターテインメントに振り切り、楽しんで観ていたら学びにもなっている作品です。“エンタメ”と“教育”という、それまで水と油だった関係の垣根をなくし、ボーダーレス化した革新的なアニメーションコンテンツとなりました。

アニメは、テレビや映画、DVDなどでしか世に出る機会がない閉鎖的な世界でした。しかしこの作品はそれまでの場所とはまったく違う活用の道を切り開き、ビジネス的にもサステナブルに成功した新しい事例となっています。

その仕事から、どんなことを学べましたか?

「業界」という枠を捨てる。その可能性と必要性を感じる機会となりました。

アニメ業界というのは一見すると盛り上がり拡大しているように映っていますが、制作しているスタジオ業界で見てみると、実はどんどん先細り、緩やかに衰退している世界でもあります。

その原因の一つが、「新しいこと」「変化すること」から遠ざかってきたことだと考えられています。“宣伝”以外に、本格的にアニメスタジオがYouTubeやSNSをビジネス活用している、ウィンドウとして利用している例はほとんどないことが物語っています。

変化を恐れずに今までとは違う世界に挑戦することの意義、従来の場所に留まることの危うさに気づかせてくれたのは、この作品の大きな実りだと思っています。

なるほど、それは業界の大きな課題ですね。森さんでも仕事で失敗したことはありますか?

現在「Peeping Life」は12周年記念を迎えており、スペシャル動画も公開しています。

そこでは人気キャラクターの「オタクくん」という昔ながらの秋葉系オタクの青年が出てきます。このオタクくんの声、実は僕自身が担当しているのですが、弊社制作アニメ「超爆裂異次元メンコバトル ギガントシューターつかさ」というNHKさんで放送した作品の中で、主人公の声優・山口勝平さんとゲストキャラとしてオタクくんが共演する回がありました。そこで、超ベテラン一級の声のプロの山口勝平さんと一緒に「ゴーーーギガントーー!!」と叫ぶシーンがあり、まったく自分の声が出ておらず、音響監督さんからも「森くん、腹から出して!」とNGを連発しました…。

負のスパイラルですね(笑)。ちなみに森さんが仕事で最も気持ちが高まる瞬間はどんな時ですか?

今では現場を離れて久しいですが、CGモデルをセットし終わって、レンダリングを掛け、その結果が思った以上のクオリティとなった時は、未だに興奮します。何度も見ちゃいますね(笑)。

森さんが仕事をする上で、普段心がけていることを教えてください。

「継続は力なり!」

これに尽きます。

質感にこだわったノートPCを愛用

現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?

普段はノートPCを使っています。

ディスプレイ 13.3インチ(IPSタッチディスプレイ)
画面解像度 フルHD
CPU インテル® Core™ i7-10510Y プロセッサー
メモリ 16GB
ストレージ 1TB SSD

この一風変わった筐体自体に本革を使用したノートPCを愛用しています。

PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。

自分は外に出ることが多いので、Core i5以上、メモリ8G以上のノートPCであることが大事と思っています。あとはバッテリーが長持ちすること。Windowsであること。オフィスでも外でも、どこでも同じような作業がいつでも出来るのはノートPCの最大の利点ですね。重い処理でなければ、最近のノートPCは普通に、3DCGソフト「3ds Max」や「Adobe CC」がストレスなく動きますから、本当にいい時代になりました。

森さんが密かに使っているアプリなどはありますか?

「KH DeskKeeper」です。これはwindowsのデスクトップ上のアイコンの位置を保存したり、復元したり出来るフリーソフトです。Windowsだとアイコンをこだわって配置したもの、新しいアイコンが増えたりすることで、そのレイアウトが自動で再配置されたりするので、このアプリを使って整理しています。オフィスも机もPCのデスクトップも散らかっていては、良い仕事は出来ませんから。

地味でカッコ悪いのが“クリエイター”

森さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?

表に出る部分を見ると、とてもかっこよく華やかでスマートに見え、憧れますよね。

でも実際はその裏の方が割いている時間的には長く、さらには地味でかっこ悪いです(笑)。じーっとPCの前に座って、カリカリとマウスやペンタブを動かし続けるのですから。でもそれこそがクリエイター仕事道なのだと思います。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

今やプロもアマも関係ない時代です。

自分で勝手に線引きを作らずに、やりたいようにやって、勝手に壁にぶち当たって、いい感じの抜け道を見つけ、また進みを繰り返していってください。僕もそうします。

人の心を動かすのは、地道なことの先にこそあります。長期戦で考え、ゆっくりと走り出しましょう。

森さん、ありがとうございました!

自ら道を切り開く、クリエイター仕事道

カルト的人気を誇る「Peeping Life」を手掛けた森さん。学生時代から戦略的に、そして精力的に作品を作ってきたからこそ、自分の得意とする部分に気づけたのです。そこから、就職はせず自らアニメーション作家としての道を切り開いた勇気は素晴らしいです!地道な活動と、勇気で可能性は一気に広がるのかもしれません。

クリエイタープロフィール

森りょういちさん
アニメーション作家
株式会社FOREST Hunting One代表取締役社長
企画構成、シナリオ、キャラクターデザインの他、アニメーション制作やさらにはキャラクター声優としても活躍。経営とクリエイティブの二つの顔を持つ。
2008年 自身の監督作品である『Peeping Life』を発表
2014年 NHKアニメ『超爆裂異次元メンコバトル ギガントシューターつかさ』を発表
2017年 自動車学校教習用映像『DON!DON! ドライブ』を発表
アニメーションコンテンツの新たな可能性広げることを目指し次々と既存の在り方に捕らわれない新企画を立ち上げ成功に導く。
アカデミー賞ノミネートを目指した短編アニメーションの最新作「MIA」の制作や子育てママさん支援コンテンツとして「育じーズ」プロジェクトを始動など現在もオリジナルコンテンツを鋭意制作中。

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG [ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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