活躍中のクリエイターにお話を聞く『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアニメーション作家で現在は法政大学デザイン工学部システムデザイン学科の准教授としても活躍されている大西景太さんです。

クリエイター最終更新日: 20220401

アニメーション作家:信頼できる相手には真摯に、そして新しい方法を必ず取り入れる

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストは映像作家の大西景太さんです。さまざまなMVやARを使ったインスタレーション作品を発表している大西さん。現在は法政大学デザイン工学部システムデザイン学科の准教授としても活躍されていますが、明確な夢があって映像作家を目指したわけではないそうです。なぜここまでクリエイティブな仕事ができるのか?そこには制作への熱いこだわりがありました。

大西さんが携わった作品

ミュージックビデオ「地下鉄の動態/ハイスイノナサ」(2012)。大西さんが初めて3Dアプリケーションを使用した作品。第16回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門新人賞。
https://www.nhk.jp/p/ts/Z6Z2KGJYLV/episode/te/R828MM7J4R/

NHK名曲アルバムプラス「パッヘルベルのカノン」(2018)。3つの旋律が追いかけ合うカノン構造を視覚化。

Audio Architecture(2019)。音のアーキテクチャ展のため、ミュージシャンの小山田圭吾(Cornelius)が書き下ろした『AUDIO ARCHITECTURE』を大西さんが独自の視点で解釈し、生み出した映像作品です。

“AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展”.21_21 DESIGN SIGHT.2018.
http://www.2121designsight.jp/program/audio_architecture/

高校時代のラクガキを褒められて、東京藝術大学へ

大西さんは子供の頃、どんな仕事がしたいと思っていましたか?

あまり職業のイメージを描けず、卒業文集のアンケートなどで苦労した記憶があります。

そうだったんですね。そんななか、進学先はどのようなところを選んだのでしょう?

夢というほど大きなものは思い描いていませんでしたが、高校の時に描いていたラクガキを友人に褒められてその気になり、美大系予備校に通い1浪して東京藝術大学デザイン科に入学しました。

藝大入学後は、どんな学生生活を送りましたか?

あまり優秀な学生ではありませんでした。考えすぎて課題に手をつけはじめるのが遅く、締切までに作品を完成させることが苦手でした。音楽が好きでバンド活動もしていたので、音楽と映像を組み合わせて作った最後の卒業制作だけはうまくいきました。

そうだったんですね。映像作家を目指すきっかけは何かあったんですか?

目指したわけではなかったので、具体的なきっかけはありません。音楽が好きだったのでそれに関係したグラフィックや映像には興味がありました。

大学でもグラフィックや映像系の作品を作っていましたが、グラフィックデザイン事務所や広告代理店、映像制作会社に入りたいとはどうしても思えないままに卒業しました。その後プロダクトデザインの事務所で働かせてもらったり、大学で助手をしたりするうちに映像の仕事を頼まれることがあり、そちらのほうに進み現在に至ります。

では、映像作家になった具体的なきっかけは??

あまり覚えていません。今思えば、卒業後にお世話になったプロダクトデザイン事務所で、製品ブランドのコンセプトムービーのようなものを作らせてもらったのが仕事としては最初かもしれないです。

毎回新しい技術を取り入れていく

大西さんの代表作を教えてください

“ミュージックビデオ「地下鉄の動態/ハイスイノナサ」”.Youtube.2012.

“NHK名曲アルバムプラス「パッヘルベルのカノン」”.NHK.2018.
https://www.nhk.jp/p/ts/Z6Z2KGJYLV/episode/te/R828MM7J4R/

展示/ミュージックビデオ「Audio Architecture / Cornelius」(2018-19)
“Audio Architecture”.Youtube.2019.

“AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展”.21_21 DESIGN SIGHT.2018.
http://www.2121designsight.jp/program/audio_architecture/

の3点です。

ターニングポイントとなった作品はありますか?

2011年に行ったインスタレーション展示をバンド関係者が見てくれたことがきっかけでMV「地下鉄の動態」を制作しました。この作品が文化庁メディア芸術祭で新人賞を受賞するなどして認知され、他の仕事につながりました。初めて3Dアプリケーションを使用したので技術的にも転機になりました。

素敵な繋がりですね。その仕事で得られたものはありますか?

音と映像の同期はよくある技法ですが、細かく積み上げるとある種の迫力が出ることを実感できました。これは、他の人はなかなかやらない技法です。また展開と抑揚の多い音楽だったので映像も自然とそうなり、自分の性格には無い“強さ”が生まれました。これがきっかけで“コラボレーション”の面白さを知りました。また、ある程度評価されたので自信にもつながりました。

自信は、次の仕事にも影響しますよね。逆に失敗を経験したことはありますか?

この質問で久しぶりに思い出してしまったのですが、ライブでVJをした際、最も大事な曲で映像が激しく点滅したことがありました。
ライブ後SNSをチェックしたところ、褒められているコメントばかりでミスには誰も言及しておらず、SNSの感想は一切信用できないなと思いました。

怪我の功名ですね!大西さんが仕事をしていて、一番エモーショナルになる瞬間はどんな時ですか?

ノートを広げてアイデアを考えるのは常に一定の興奮があります。細かく映像と音の同期具合を作っていくのは小さい感動の積み上げという感じがします。

大西さんが仕事をする上で、普段心がけていることを教えてください。

毎回少しだけ新しい方法を取り入れて作ります。

そして、依頼者からの信頼を感じられた場合は、相手の想像を上回るように作りたいと思います。逆にそうではない方からの仕事はなるべく受けないことを意識しています。

ノートPCとデスクトップのW使い

現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?

ノートパソコンとデスクトップパソコンを併用しています。

ノートパソコン

ディスプレイ 15インチ
プロセッサ Intel Core i7 3.1 GHz
メモリ 16GB
ストレージ HDD 1TB

デスクトップパソコン

外部ディスプレイ BenQ PD3220U 31.5インチ
プロセッサ Intel Core i9-9900K 3.60GHz
メモリ 32GB
ストレージ HDD 1TB

PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。

その時々のノートPCのなるべく良いものを買う、というくらいです。3DCGのためにWindowsのデスクトップパソコンを買いましたがあまり重いレンダリングをしないので、使用頻度は低いです。

褒めてくれる人を見つけて自信をつける

大西さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?

「道」というのは苦手ですが、なるべく自分なりのものを作りたいと思っています。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

作ったものをほめてくれる友達がいるといいと思います。
いない場合は私が褒めますので見せてください。

大西さん、ありがとうございました!

作品はいろんな人から評価されよう!

映像作家を目指すきっかけはなかった。という大西さん。自分の進んでいく方向や仕事がだんだん認知されるようになり、細かな積み重ねのもとに面白さを感じられるようになったようです。作品が人から評価されることで自信につながります。結果が伴えば周りの人に作品を見てもらうことはもちろん、SNSなどを利用して多くの人に作品を知ってもらうことは、未来の仕事への道標になるのかもしれないですね。

クリエイタープロフィール

大西景太さん
映像作家
音楽の構造や音の質感をアニメーションで表現する手法を用いて、映像インスタレーション作品やミュージックビデオを制作する。また CM、コンセプトムービー、モーション CI など広告表現やTVコンテンツ制作にも携わる。法政大学デザイン工学部システムデザイン学科の准教授。

HP:https://www.keitaonishi.com/

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG [ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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