アニメーション・ビデオ作家の大谷たらふさん。芸術系ではなく理系の大学を卒業し、アニメーション作家として活躍しています。どのように活動を続けていったのか紐解いていきましょう。

クリエイター最終更新日: 20220506

アニメーション作家:進学した学校は関係ない。理系大学を卒業し、アニメーション作家の道へ

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアニメーション・ビデオ作家の大谷たらふさんです。クリエイターには珍しく、理系の大学を卒業した大谷さん。それには意外な理由がありました。その後も決して恵まれた状況とはいえない中、自分が活躍できる方法を見いだし活動されています。その秘訣とはいったいなんなのでしょうか?

大谷さんが携わった作品

yuichi NAGAO「ハルモニア feat. Makoto」は、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門にて優秀賞を受賞。

Serph – sparkleは大谷さんのキャリアの中で大きなターニングポイントになった作品。

芸術職に対して周囲から反対を受け、理系の大学へ進学

大谷さんは子供の時、どんな仕事に憧れていましたか?

絵が好きだったので、絵を描く仕事がしたいと漠然と思っていました。一方で、父が彫刻家だったため、その反動で周囲の親族が芸術職には否定的でした。ですから、その夢からは遠ざけられることが多く、一番なりにくい職業だと子供心に思っていました。

ある意味難しい環境にいたんですね。そこからどのような学校へ進学しましたか?

美術は好きでしたが、家族含め反対意見も多く、10代の自分はまだ「仕事にする」という情熱も未熟だったので、「絵は自分で勉強すればいいか」と芸術系の大学へは進学しませんでした。

芸術系の大学には進学しなかったんですね!どのような大学へ進み、どのような学生生活を送りましたか?

理工系の大学だったので平日は実験とレポートに追われ、休みはその頃沼にハマっていた競技スキー(旗の間を速く滑るもの)のために雪山にこもるという生活でした。絵については変わらず好きで、何処にいても描くことは続けていました。

大学後期になると音楽、デザイン、プログラミングなどをやっている友人達とチームで短編アニメーションを作るようになりました。

芸術と距離のある環境にいながらも、絵は描き続けたんですね。現在の仕事を目指すきっかけはなんだったのですか?

最初のきっかけは上記のチームでの活動です。友人達とチームで短編アニメーションを作り海外の映画祭などにも参加するようになると、当時の超就職氷河期の中で無理に就職するよりも、しばらくアニメーション作りを進めてみたいという考えになっていました。

卒業後はチームでの作家活動を続けながら、軌道に乗るまでの数年は円谷プロダクションでCGチームの契約スタッフとして働いていました。

そこから現在のフリーランスというスタイルになったきっかけはありますでしょうか?

チームでの作家活動が20代いっぱいで終わった頃、難病になったことが大きいです。定期的な平日の通院などもあるので自分でスケジュールを決められる仕事でないと難しく、免疫系の理由で満員電車などに載ることも厳しくなってしまったので自宅でフリーランスとして生きていく道を選びました。

2種類の「仕事」のバランスを大切に

大谷さんの代表作を教えてください

Serph-Sparkle MV(2018)

大谷さんにとってターニングポイントとなった作品はなんですか?

Serph-fether MV(2016)

その仕事には、どんな“学び”がありましたか?

当時、抽象と音楽に興味が行っていたのでSerphの楽曲にMVで関われたことは自分の価値観を再確認する上でとても大きな出来事でした。

「MVの依頼をいただけるきっかけになった」という仕事としてのターニングポイントでもありますし、チームが解散した後で、自分として追及したいものが少し見えたという事も自分自身の中では大きかったです。

仕事自体、そしてマインドの部分でも大きな変化があった仕事だったんですね。仕事で失敗したことはありますか?

必要なバックアップが取れていなかったりHDDが壊れたりして莫大な時間を無駄にしたとき「何やってんだろう」ってなりますね。

それはショックが大きいですよね…。大谷さんは仕事をしていて、どんな時に気持ちが高まりますか?

難しいのですが、仕事が終わった後でその仕事と関係ない日常とその仕事がリンクした時です。

依頼された仕事でも個人的な作品制作でも、自分のパーソナルな部分からアイデアを出して出発して「私はこう感じたのですが、どうですか?」という事をクライアントや見てくれる人に投げた時、当然否定的な答えが返ってくることもあるわけです。

そんな時は不安定な気持ちになったりもするのですが、そういう違いとか否定も含めて包括的な答えが見えるのは仕事が終わった後しばらく経ってからだと思うんです。

悪く言ってしまえば表現というものは、みんな独りよがりなものから始まってるんですよね。だからこそ何気ないときに昔の仕事が新しい繋がりを作ってくれて、そういう瞬間に感動しています。

大谷さんが仕事で大切にしている事を教えてください。

「仕事」には大きく分けて「自分として作る仕事」と「依頼されて作る仕事」の2種類あると思うのですが、その2つの両輪のバランスを取ることを意識しています。意識していないと、新しいインプットやトライがないままであっという間に1年経ってしまうので…。

アニメーションは時間がかかる仕事ですので、お金にならない基礎研究の部分や日常生活を犠牲にしてしまう事が多いんです。でもそのための時間を作らないと、絵を描く気持ちもどんどん痩せてしまうので気をつけるようにしています。

PC選びはシンプルに

現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?

CPU Intel Core i7@3.60GHz
メモリ 32GB
ストレージ 100GB/SSD + 930GB
モニターインチ数 24.1型
ペンタブレット INTUOS PTK840

PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。

AfterEffectsなどの映像編集ソフトが動くことでです。

美術系の学校に進まない道もある

大谷さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?

作者不詳なのに現在まで残っている作品ってやっぱりすごいと思うんです。

自分はまだまだ煩悩まみれですが、純粋にいい作品を作りたいです。根源的には剣道や茶道と同じ、無の中に問いを続ける道だと思います。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

進学で悩んでいる方は、美術の大学へ行く道も素晴らしいし、行かない道もそれはそれで良いと思います。こういうルートじゃないとクリエイターになれないという決まりはないと思うし、いろんなバックグラウンドの人がいるからこその世界です。感じるままに今の環境で今しか作れない作品を作り続ければ必ず繋がると思います。

大谷さん、ありがとうございました!

自分で環境はいくらでも変えられる

彫刻家のお父様の元育った大谷さん。紆余曲折あり、理系の大学に進学するものの大好きだった絵を描き続け、それがアニメーション制作に繋がっていきました。大病を患いながらも、自分が活躍できる方法を模索し、現在はフリーのアニメーション作家として活躍されています。どんな環境でも、好きなことを続けていれば道は開けることを教えてくださいました。

(クリエイタープロフィール)

クリエイタープロフィール

大谷たらふさん
アニメーション・ビデオ作家
東京都生まれ。音楽家やプログラマーと作家集団6ninで活動。国内外での作品上映、テレビ、PV、CMや展示用映像などに関わる。現在はアニメーション・ビデオ作家として活動中。抽象形や音を軸にした作品を主に制作。

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG [ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる !」「みつかる!」記事を書いています

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