GIFクリエイター：ヒトが繋げてくれたクリエイティブの輪

伊豆見さんが携わった作品

可愛らしいイラストと絶妙な動きで大人気のLINEスタンプ「えっびっ」。LINEスタンプのダウンロードランキングでも1位を獲るなど伊豆見さんの代表的な作品です。

LINEスタンプで「えっびっ」とともに人気の「さっかっなっ」と、伊豆見さんがキャラクター制作を始めるきっかけとなった「いっぬっ」の原画。

ついついインパクトのある動きに目を奪われがちですが、こうして原画を拝見すると、キャラクター自体に人を惹きつける力があることが感じられます。

Twitterがきっかけで、LINEスタンプ制作の道へ

伊豆見さんが子供の頃に描いていた夢はなんですか？

小さい頃は「毛糸屋さん」になりたかったです。母がパッチワークをやっていて、私もそれに影響されて小さい頃は毛糸専門店に憧れていました。

「毛糸屋さん」を夢見ていた伊豆見さんですが、どんなきっかけでGIFクリエイターを目指すようになったのですか？

中学生の時はまだ「○○になりたい！」と、特に何も考えていなかったんですね。でも高校生になると、クラスメイトが進学のことを考えるようになって、いよいよ「私も考えなきゃなあ」と色々調べたり、両親に相談するようになりました。そんな時イラストと映像にとても興味があり母親に相談したところ「イラストじゃ食っていけない！」と言われて次に興味があった映像を学べる学部がある美術大学に進学しました。地元の沖縄にも美大はあったのですが、映像学科がなかったので、沖縄以外の大学を色々と探してAO入試ができる大学に決めました。

AO入試で早々に進学先が決まったので、高校卒業までは高校生限定のコンペに色々と作品を出したりしていました。その時は本当遊び半分で参加する感じでした。それでも、大阪芸大が主催する高校生限定のアートコンペ「世紀のダ・ヴィンチを探せ！」で賞をいただいたり、写真のコンテストで最優秀賞をいただいたりと、色々とチャレンジできたのはいい経験でした。

素敵な経験ですね！　大学生の頃はどんな学生でしたか？

大学の時は課題をやったり、色々なアルバイトをしたりしていました。大学の課題で１番楽しかったのは「ラブレターを作る」という課題でした。私は幼稚園の娘がお父さんに「おとうさん、いつもありがとう」という設定の家族ラブレターを制作しました。

アルバイトはパン屋さんや洋服屋さんなどいろんな職種を経験しました。その中でも自分にとって一番いい経験になったのは、教授に紹介していただいた『明和電機』でのアルバイトです。それまで平面のものしか作ったことがなかったので、鉄を削ったりやったことない作業をたくさんやらせてもらったことがとても刺激的でした。

それは貴重なアルバイトでしたね。そこから今の仕事を目指すようになったきっかけは？

学生時代は自分が本当になりたいものはなんなのか？全く考えてませんでした。毎日不安でどの仕事が自分に向いているんだろうと悶々としていたことを思い出します。大学卒業後はアーティスト所属の映像制作会社に就職したのですが、あまり自分には合った職場ではなかったので半年で退職し、地元の沖縄に帰りました。

沖縄に帰ってから、『明和電機』でのアルバイト時代に交流のあった方が「伊豆見さん沖縄に帰ったんだって」と気にしてくださり、その人から映像の仕事をいただいたりしていました。そこから、「沖縄にいても仕事はもらえないかも」とすぐに上京し、再び明和電機さんや紹介していただいた会社でアルバイトに行くようになりました。

それと並行して、大学の時からなんとなく続けていたSNSにGIFやイラストを投稿していたんですね。ある時『いっぬっ』というキャラクターをTwitterに投稿したところ、それがフォロワーの間で少しだけ盛り上がったんです。「LINEスタンプがあったらほしい！」という声があったので、作ったところ。思っていたより売れて…（笑）。「伊豆見さんのキャラクターおもしろいね」とコメントがつき、それが嬉しくて、そこからキャラクター制作を始めるようになりました。

作家として活躍するようになったきっかけを教えてください。

LINEスタンプの「さっかっなっ」を作った時、LINEの方から「ぜひ特集させてください」とオファーをいただきました。そこから、少しずつですが認知度が上がってきて、フォロワーも少しずつですが増えていきました。それが色々なお仕事をいただくきっかけになったんじゃないかなと思っています。

失敗から学んだ「自分の思い」の大切さ

伊豆見さんの代表作を教えてください

「えっびっ」が一番知ってもらえているんじゃないかなと思います。

現在のように活躍するターニングポイントはありましたか？

なんでしょう…（笑）。仕事というよりは、LINEスタンプが注目されたことが特に大きかったんじゃないかと思います。

その仕事から得られたことはありますか？

受けさせてもらった仕事は全部なんじゃないかと思うぐらい、「本当に人に恵まれてるな」と、改めて実感しています。「伊豆見さんLINEスタンプのキャラクター可愛いらしいよ」「このLINEスタンプ持ってます！」と知り合いが知り合いに、数珠つなぎで「じゃあ、伊豆見さんにこのお仕事お願いしよう！」と声をかけてくれる仕事がすごく多いんです。本当に周りの方にはお返ししきれないぐらいの感謝の気持ちがあります。

伊豆見さんが仕事で一番興奮する瞬間、感動する瞬間はいつですか？

「伊豆見さんに頼んでよかったです！」と喜んでもらえた時は本当に嬉しいです！

逆に仕事で失敗した経験はありますか？

それはもうたくさん後悔しています（笑）。最初に受けたお仕事では、「こうしたら良くなるんじゃないか？」と思っても、なかなか素直に意見を言えなかったです。でも何か自分らしさを伝えたいと思い、ラフをひとつだけ出せば良かったところ、３案出してみたら、「伊豆見さんの考えたものの方がいいですね！」と全部採用されました。それはとても嬉しかったですね。その時に、「自分の意見はちゃんと相手に伝えてみて、ダメだったら仕方ない。でも一度やってみよう！」と思うようになりました。

失敗から学ぶことは大きいですね！　伊豆見さんが仕事をする際、最も大切にしていることは何ですか？

誰が見ても傷つかないようなものを作りたいなと思っています。

メモリを多めに設定してストレス知らず

ふだんはどんなPCや周辺機器を愛用していますか？

パソコンは、27インチ 一体型デスクトップパソコン (メモリ:128GB) を使って作業中にアニメを見たりしています。
ペンタブはWacomのIntuos Pro。ラフの時はiPad Proを使ってます。

PCを選ぶ際のポイントはありますか？

制作している作品は簡単なアニメーションですが、メモリはあるに越したことがないので書き出しが早くなるように店員さんに相談しながら購入しました。

使用しているソフトウェアはなんでしょうか？

アニメーションはAdobe PhotoshopとiPad ProでCLIP STUDIOを使っています。動画を制作する際は、Adobe After Effectsを使っています。大体はこの3つのソフトを使って制作しています。

色々チャレンジすれば、自分の得意が見つかる！

伊豆見さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか？

私にとってクリエイター道は「人に感謝すること」「人を傷つけない作品を作ること」です。この2つは絶対に守りたいマイルールです。

クリエイターを目指す若者にメッセージをお願いします！

私も学生の時は何をしたらいいのか、正直わかりませんでした。もし不安になっているのなら、まず深呼吸しましょう！　そして色々チャレンジしてみて、「自分はこういうことが得意なんだ！」とか「これが好きかも！」と思える経験をたくさんしましょう。そうすると、色々と考え方や仕事の幅が広がるんじゃないかなと私は思っています。

最近は外出があまりできないと思いますが、そんな時こそ映画を見たり、散歩をしたり、絵を描いてみるなど、色々できることがあります。頑張ってください！

伊豆見さん、ありがとうございました！

自分の“好き”と“ヒト”を大切に

「自分はなにがしたいのか？」と迷い続けた学生時代を経て、進むべき道を見つけた伊豆見さん。そこから実直に仕事と向き合ったからこそ、人と人が繋がって仕事の幅が広がっていきました。仕事も人生も近道はありません。好きなことをコツコツと真面目に進めることが大切なんですね。

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部