

どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアニメーション作家でイラストレーターのいよりさきさんです。テレビ東京の人気幼児番組『シナぷしゅ』のアニメーションなどを手掛けています。「クリエイターは作品を作り続けることが大切」と言いますが、そこには多摩美大時代の恩師からかけられた言葉が大きく影響していました。
いよりさんが携わった作品
テレビ東京で放映されている幼児番組『シナぷしゅ』でのアニメーション「べびちゅ」はSNSでも話題になったコンテンツ。
幼児番組『シナぷしゅ』では「マンマタイム」というアニメーションも手掛けています。
だいたひかるさんのエッセイ集『生きるために、捨ててみた。』(幻冬舎|2021)の表紙イラスト。だいたさんが自分らしく生きるために、捨てたモノ・コトをイラストで表現しています。
多摩美時代の授業でアニメーションに没頭
いよりさんは子供の頃、何になりたかったですか?
本当に小さい頃はお花屋さんに憧れていましたが、それ以降は特に将来の夢を持てませんでした。
高校生になると得意な教科が社会だったこともあり、漠然と法学部へ進学しようと思いました。
そこで高校2年生の時に、幼馴染とオープンキャンパスへ行ってみたんです。
体験授業を受けたのですがしっくりこなくて、その様子に気づいた友人が、帰り道に「さきちゃんは昔から絵ばっかり描いていたから、そっちなんじゃない?」と言ってくれて、「確かに!」と気が付きました。ちょうどその時期、別の友達が美大受験予備校に通い始めたころだったので、色々と教えてもらい、私も同じ予備校に通う事になりました。
あの時の幼馴染の言葉がなかったら全く別の道に進んでいたかもしれません。そう思うと…本当に感謝です。
お花屋さんから絵を描く仕事を目指す様になったんですね。夢に向かってどんな学校へ進学しましたか?
多摩美術大学の情報デザイン学科に進学しました。
多摩美術大学ではどのような学生生活を送りましたか?
ひたすら何かを作っていました。頭に思い描いた世界を表現して、先生や友達に「いいねぇ~」と褒めてもらえる事が嬉しくて、作ることに夢中でした。できた作品を展示や上映会に出品したり、少しだけお仕事させてもらったり、発信する面白さも経験していきました。また友達といろんな土地を旅行して、これまで会ったことのないような人や文化に接することも楽しかったです。
今のお仕事を目指す様になったきっかけはありましたか?
大学2年生の時に、授業の課題で初めてアニメーションを作りました。音や動きや時間、いろんな要素があって、見る人を引き込む力がとても大きい事を知り、もっと作りたいと思うようになりました。国内外の映画祭に出品したり、アニメーション作家の水江未来さんのお手伝いをするようになったりして、アートアニメーションの世界に浸っていきました。
仕事を始めて気付いた恩師の言葉の大切さ
いよりさんの代表作を教えてください
全ての作品に思い入れがありますが、テレビ東京の子ども番組『シナぷしゅ』で放送された「べびちゅ」はSNSなどで嬉しいメッセージをたくさんいただきました。
いよりさんにとってターニングポイントとなった作品はなんですか?
フジファブリックの『Green Bird』のMVです。誰かのお手伝いではなく、ほぼ初めて自分に依頼されたお仕事だったので、とても思い出深く残っています。高校生の時から聴いていた彼らの音楽に触れられたことが本当に嬉しくて、言葉にできない感動がありました。
その仕事には、どんな“学び”がありましたか?
ひとつの作品を作るのに、とても多くの方が関わっているんだということを知り、1人1人の「本当にいいものを作りたい」という純粋な熱い想いを感じました。そして自分もプロとしてこの仕事を続けて、もっと技術を磨きたいと思いました。
クリエイティブな現場を体感できたんですね。逆に仕事で失敗をしたことはありますか?
クロアチアのシベニクという街で行われた映画祭に1人で行った時、現地には日本人が1人もいないくて、英語がほとんどできない私はどこかの質問で答え間違えて、ベジタリアンだと勘違いされてしまい、滞在中ずっとサラダしか出してもらえませんでした(笑)。
それもいい思い出ですね(笑)。いよりさんが仕事で一番感動する瞬間はどんな時ですか?
作品が完成した時と公開された時です。さらにそれを見た人の反応がわかると感激してしまいます。以前はとにかく「自分が作りたいものを作りたい!」という気持ちが大きかったのですが、今はそれと同じくらい「自分が作るものが僅かでも誰かの役に立てたらいいな」という気持ちが大きくなりました。
特に子育て中ということもあり、子ども達が気に入って何度も見てくれたり、親子で楽しんでもらえている様子をSNSやお手紙で伝えていただいたりすると、日々の育児をほんの少しお手伝いできたような気持ちになってやりがいを感じます。
それはとてもやりがいが感じられますね。いよりさんが仕事で大切にしている事を教えてください。
大学時代の恩師である原田大三郎さんに言われた「手を動かさないと何も始まらない」という言葉です。授業中の何気ない場面で何度か出てきた言葉でしたが、仕事として作品を作る様になってからは、さらにその大切さを強く実感する機会が多くなりました。プランを練る時もペンを片手に絵や字を描きながら、良いかもと思ったらすぐ本描きしてみてダメなら最初からやり直し…。そのような作品作りの進め方をしています。
育児中は軽いノートPCが便利!
現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?
以下のノートパソコンです。
ディスプレイ | 15inch |
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メモリ | 16 GB 2133 MHz LPDDR3 |
プロセッサ | 2.9 GHz クアッドコアIntel Core i7 |
グラフィックス | Radeon Pro 560 4 GB Intel HD Graphics 630 1536 MB |
ペンタブ | WACOM Intuos CTL4100WL |
サブディスプレイ | BenQ PD2700Uディスプレイ27inch |
PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。
今は子どもが小さく、仕事用のデスク以外の場所でやむをえず作業しなければいけない状況が突如発生する事もあります。なので身軽さを重視して、どこでも作業できるようなノートタイプや小さめのペンタブを選んでいます。
ただ、ノートパソコンの画面は小さいので、普段は27インチのモニタに繋いでいて、小さな画面だけで納品まで進めることはないようにしています。
いよりさんが普段使っている裏技はありますか?
友人に教えてもらったWhat FontというChromeの拡張機能がとても便利でした。
折れそうな心も作品が癒してくれる
いよりさんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?
作っている最中は、複数の納期が重なったり、予想以上の作業ボリュームになったりして「もう無理かもしれない…」と心折れそうな瞬間も正直あります。でも、無事納品して少しでも誰かに喜んでもらえると、やめたい気持ちは吹っ飛んで、気づいたら次のお仕事をしている。そんな無限ループですね。
クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!
たくさん作って、たくさん発信して、たくさん人に会ってみると、作品が今まで見た事のない場所に連れて行ってくれるはずです!
いよりさん、ありがとうございました!
作り続けることでクリエイティブの力をつける
いよりさんの仕事道はシンプルに「たくさん作って、たくさん発信して、たくさんの人に出会うこと」!作り続けることの大切さは、恩師の言葉である「手を動かさないと何も始まらない」そのもの。自分の作品を作り、発信し続けていけば、きっとその作品が琴線に触れてくれる人が現れるはずです!
クリエイタープロフィール
いよりさきさん
アニメーション作家・イラストレーター
多摩美術大学を卒業後、同大学副手、DRAWING AND MANUALを経て、現在はフリーランスとして活動中。ミュージックビデオやテレビ番組のアニメーション、ロゴデザインを数多く手がけている。2018 年に娘を出産。

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる !」「みつかる!」記事を書いています。