無線LAN規格「Wi-Fi 6(11ax)」についての特徴や従来との性能比較をご紹介いたします。

ITトレンド最終更新日: 20200528

無線LAN規格「Wi-Fi 6(11ax)」とは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

無線LAN規格「Wi-Fi 6」に対応する機器が新たに登場しました。Wi-Fi 6は、11axとも呼ばれていた無線LANの規格で、パソコンだけでなくスマートフォンや、スマート家電などのIoT機器を含めた多数の端末が無線接続される環境が考慮された規格となります。
Wi-Fi 6ではデータ送受信の安定性、低遅延を実現する技術が採用され、複数バンド接続やスループットの向上により無線での通信速度も向上しており、10Gや5G、2.5Gといった高速光回線などのインターネットサービスへの対応も可能となっています。

「Wi-Fi 6(11ax)」とは

Wi-Fi 6(ワイファイシックス)の「6」は第6世代を指しており、従来の呼び方でいうと11ax(イレブンエーエックス、IEEE802.11ax)の名称になります。
11ac、11n、11a、11b、11gなどいくつか無線LANの規格がありますが、種類が増えてきたため、どれが新しい規格なのか、最適な規格はどれなのかといった混乱を避け、また新しいWi-Fiの普及を図るため、新たに世代を明記した呼称がIEEE(アイトリプリイー、Institute of Electrical and Electronics Engineers、米国電気電子学会)とWi-Fi Alliance(ワイファイアライアンス)という業界団体により定められました。

IEEE802.11ax以前の規格もWi-Fi 4、Wi-Fi 5と呼称が変わり、無線LANルーターなどの製品パッケージにも表示されるようになりました。一覧をまとめると下記のようになります。

Wi-Fi 規格名 新呼称
IEEE 802.11a
IEEE 802.11b
IEEE 802.11g
IEEE 802.11n Wi-Fi 4
IEEE 802.11ac Wi-Fi 5
IEEE 802.11ax Wi-Fi 6

Wi-Fiの世代と規格名・呼称の一覧

IEEE 802.11n 以前の無線LAN規格に関しては、新たな呼称がつけられていません。

Wi-Fi 6とWi-Fi 5の性能を比較すると以下のようになります。

  Wi-Fi5 Wi-Fi6
規格名 IEEE802.11ac IEEE802.11ax
最大転送レート 最大 6.9Gbps 最大 9.6Gbps
実効スループット 800Mbps 1Gbps以上
利用周波数帯 5GHz 2.4GHz/5GHz
変調方式 256QAM 1024QAM
チャネル幅 20/40/80/80+80/160MHz 20/40/80/80+80/160MHz
最大空間ストリーム 4 8
多重方式 OFDM OFDMA
MU-MIMO 下り 上り/下り 双方向
Spatial Reuse

Wi-Fi 6、Wi-Fi 5性能比較

Wi-Fi 6は、Wi-Fi 5と比べて最大転送レートや、実効スループットが向上しています。
また、周波数においてもWi-Fi 5では5GHz帯のみでしたが、Wi-Fi 6では2.4GHz帯と5GHz帯の両方(デュアルバンド)で処理できるようになっています。

それでは、Wi-Fi 6のメリットとして特に大きなポイントを個別にご紹介していきたいとおもいます。

Wi-Fi 6は多数の端末が快適に繋がる

Wi-Fi 6には、対応した多くの機器を同時に利用した場合でも通信速度の低下を防ぐ機能が採用されています。
先述のとおり、通信デバイスの爆発的な増加やIoTの進展に伴って、多くのユーザー(多数の機器)が同時に接続し、無線電波の飛び交うような混雑した環境になりつつあり、こうした無線LAN環境のさらなる最適化が求められている状況となっています。
Wi-Fi 6では、こうした混雑した状況でも通信品質を向上させるための三つの改善ポイントが挙げられます。

通信環境の効率化を実現するOFDMA

従来では、1つのチャネルをいくつかのサブキャリアに分けて通信を行うOFDM技術が採用されていましたが、1つの機器で通信を占有してしまうことから、Wi-Fi6ではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)技術を採用し、複数の機器が同時に利用できるにようにサブキャリア毎に通信を行い、順番待ちが発生しない仕組みになりました。

OFDMA比較グラフOFDMA比較グラフ

複数台利用の品質を向上するMU-MIMO

Wi-Fi 6では、MU-MIMO(Multi User Multiple-Input and Multiple-Output)が上下通信双方向に対応し、最大接続数も倍の数となりました。
MU-MIMOは1台の無線LANルーターが同時に複数の端末へデータを送受信することで、データの転送速度が下がることなく安定して通信することができるようになります。

Wi-Fi規格名 MIMO使用時の最大接続数 周波数
Wi-Fi 5 4 5GHz 帯
Wi-Fi 6 8 2.4GHz 帯 / 5GHz 帯

Wi-Fi 6で強化されたMIMOの比較表

Wi-Fi 5(11ac)でもMU-MIMOには対応していましたが、下り通信(ルーター側からクライアント側への通信)のみとなっていました。

混み合った環境での品質を向上するSpatial Reuse

同エリア内で、2つ以上の機器が通信を行う際、無線上での混信を避けるため、その他の無線通信がないか確認を行い、一方の通信が完了するまで通信を待っていましたが、Spatial Reuse(スペーシャル リユース)技術により、他の無線通信に影響を与えない場合もしくは影響を与えないよう出力調整を行い(BSS Coloring)、同時に通信を行うことが可能となりました。
これにより、混み合った環境でも効率的に通信が行えるようになりました。

Spatial Reuse
・Wi-Fi 5:非対応
・Wi-Fi 6:対応

・変わったポイント:混み合った環境での品質向上

データ送受信の高速化

実効スループット(実際に通信や計算を行ったときの単位時間あたりの処理能力やデータ転送量)の向上により、Wi-Fi 6では1Gbps以上の数値を実現。Wi-Fi 5の800Mbpsと比べて1.2倍の数値となり、データ送受信が高速化されました。
それに伴い、最大通信速度もWi-Fi 6から9.6Gbpsとなり、Wi-Fi 5の6.93Gbpsより約1.4倍速くなることで10G光回線の速度を最大限に活かせるようになりました。

Wi-Fi規格名 最大通信速度 実効スループット
Wi-Fi 5 6.9Gbps 800Mbps
Wi-Fi 6 9.6Gbps 1Gbps以上

従来Wi-Fi規格との実効スループット比較

これにより、今まで一般的な有線の光回線速度である1Gbpsという速さを無線LANでも実現できるようになりました。

Wi-Fi 6対応機器(スマホ等)のバッテリー消費を節約する

Wi-Fi 6では、Wi-Fi 6に対応した機器を使用することで対応機器(スマホ等)のバッテリー消費を節約する機能が採用されています。

対応機器のバッテリー残量を節約するTWT

Wi-Fi 6では1つのチャネルの帯域幅を複数のユーザーで分け合い、効率よく通信できるTWT(Target Wake Time)という技術が採用されています。
これにより、従来は常にWi-Fi通信が行われていた機器に対し、使用していない(スリープモード)時は端末ごとにWi-Fi通信を行わず、Wi-Fi使用時における消費電力を抑えることが可能となりました。

TWT(Target Wake Time)
・Wi-Fi 5:非対応
・Wi-Fi 6:対応

・変わったポイント:対応機器のバッテリー残量を節約

最新パソコンと合わせてWi-Fi 6対応ルーターの用意がおすすめ

無線LAN対応機器を多く使用する場合は、特にWi-Fi 6への更新がおすすめです。
上記で、ご紹介いたしましたWi-Fi 6に対応するパソコンをパソコン工房で多数展開しておりますので、最新のパソコンへお買い替えの際に合わせてWi-Fi 6対応無線LANルーターや、機器もご検討いただければと思います。
Wi-Fi 6に対応していないパソコンでも、USB接続や内蔵無線LANカードを取り付けることで対応が可能になります。デスクトップパソコンなどでWi-Fiを利用する方法についても別記事でご紹介しておりますので、ぜひご参考にしてみてください。

ライタープロフィール 職人7号

360度どこからみても凡人、職人番号ラッキー7!職人7号です。主に写真撮影、動画編集を担当。パソコン工房ECサイトのBTOPCや自作パーツ等ひろく手掛ける。店舗部門出身。

記事を
シェア