2022年9月2日に承認されたWi-Fi 6Eについて、その特徴やWi-Fi 6からのアップグレード内容、注意点について解説します。

ITトレンド最終更新日: 20230316

無線LAN規格「Wi-Fi 6E(11ax)」とは

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2022年9月2日、総務省により電波法が一部改訂され、無線LANの6GHz帯周波数が使えるようになりました。
これにより、無線LAN規格「Wi-Fi 6」の拡張規格である「Wi-Fi 6E」が利用可能となっています。本記事では、Wi-Fi 6Eの特徴や、Wi-Fi 6からの変更点を簡潔に解説いたします。
※6GHz帯をご利用になる場合、最新のWindows 11と対応無線ルーターをご用意ください。

Wi-Fi 6EはWi-Fi 6に6GHz周波数帯を追加した拡張規格

Wi-Fi 6Eとは、現在普及している無線LAN規格「Wi-Fi 6(ワイファイシックス)」の拡張版です。6EのEは拡張の意味であるExtendを示します。
具体的な拡張内容は、Wi-Fi 6は2.4GHz帯と5GHz帯の周波数帯を使用していましたが、Wi-Fi 6Eは6GHz帯の周波数も使用可能となったことです。
下にWi-Fi 5・6・6Eの主要素をまとめていますが、Wi-Fi 6・6Eの差は、まさに「6GHz対応か否か」という点につきます。

Wi-Fi 6E Wi-Fi 6 Wi-Fi 5
規格名 IEEE802.11ax IEEE802.11ac
最大転送レート 9.6Gbps 6.9Gbps
実行スループット 1Gbps以上 800Mbps
利用周波数帯 2.4GHz/5GHz/6GHz 2.4GHz/5GHz 5GHz

~Wi-Fi 6E、Wi-Fi 6の違い~

6GHz周波数帯の追加によるメリット

上の表を見ての通り、Wi-Fi 6Eの通信規格はWi-Fi 6と同じIEEE 802.11axで、規格上の最大通信速度は同じです。
そのため何が変わったのか分かり難い人もいるかと思います。ここでは、「6GHz帯の追加」により生じる多くのメリットについて紹介いたします。

使用可能チャネルが増大し、混雑改善が期待

Wi-Fiに5GHz帯が追加されたのは、20年以上前の1999年です。この20年で2.4~5GHz帯の利用者やデバイスは増え続け、混線状態となっていました。
そこにがら空きに近い6GHz帯が加わることにより、使用可能チャネルが増えて通信状況が改善され、実効通信速度の向上が期待できます。特に、高速通信に最も重要なチャネルは160MHzですが、これまで2チャネルだったものが一気に5チャネルとなりました。

なお、周波数帯やチャネルを道路に例える事があります。今まで使っていた道路をGHzに合わせて国道「2.4」号線、「5」号線だとしたら、新たに「6」号線が開通したと考えると分かり易いでしょうか。しかもこの6号線は、車線幅が広く車線数も多いため快適な運転が可能です。

6GHz 5GHz 2.4GHz
周波数帯 5925~6425MHz
(500MHz幅)
5170~5330MHz
5490~5730MHz
(400MHz幅)
2400~2497MHz
(60MHz幅)
使用可能チャネル 20MHz × 24
40MHz × 12
80MHz × 6
160MHz × 3
20MHz × 20
40MHz × 10
80MHz × 5
160MHz × 2
20MHz × 3
40MHz × 1

~周波数帯ごとの使用可能チャネル数~

マウスや電子レンジ、DFSとの干渉が無くなり、待機時間が消滅

6GHz帯追加のメリットは、ただ道が広がるだけではありません。
2.4GHz帯は、ワイヤレスキーボードやマウス、さらにBluetoothや電子レンジの電波と干渉を受け、実行速度が低下する事があります。また、5GHz帯は気象レーダーや航空レーダーと干渉するため、該当設備の近くや航空機のルート下に住んでいる場合、「DFS(動的周波数スキャン)」が作動し、60秒間機能が停止することがあります。
ですが、6GHz帯にはこれらの干渉がありません。先ほどと同じく道路で例えるなら、干渉する要因は信号や踏切と言えるでしょう。6GHz帯は干渉がないため、ほぼノンストップで走ることができます。

Wi-Fi 6とは完全互換

Wi-Fi 6EはWi-Fi 6の拡張版のため、Wi-Fi 6の機能はすべて対応しています。
Wi-Fi 6で採用された主な機能である、
・複数の機器を接続時に通信を効率化するOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)
・スマートフォンなど子機側のバッテリー消費を抑える「TWT(Target Wake Time)」
といった機能はそのまま対応していますので、これからルーターを新規購入や買い替える人は、Wi-Fi 6E対応製品を選んでも問題はありません。

Wi-Fi 6E利用のための注意点

より快適な通信が可能になるWi-Fi 6Eですが、現状は以下の点にご注意ください。

・2023年3月1日時点では、Wi-Fi 6Eが使用可能なルーターは複数発売されていますが、無線LANアダプタ(子機)については、搭載している対応マザーボードを購入するか、PCI-EスロットなどPC内部への接続カードがほとんどで、USB接続の子機は未発売です。
・2022年9月2日まで発売されていた、搭載する無線LANチップがWi-Fi 6E対応のマザーボードやスマートフォンについては、ハードウェアが対応していても、対応周波数帯の変更といった「認証番号の修正や追記、更新」などの仕様変更を「メーカーが」行う必要があります※。そのため、該当機器を所有しているユーザーが変更することはできません(デジタル認証可能な一部機器を除く)。
※技適番号がシールや刻印などで物理的に表示されている製品

対応しているはずの機器を使用している、またこれからWi-Fi 6E対応マザーボードなどを導入予定の人は、メーカーの対応状況をご確認ください。
なお、パソコン工房のWi-Fi 6E特集ページでは、対応機器が登場次第掲載いたしますので、ぜひご覧ください。
※6GHz帯をご利用になる場合、最新のWindows 11と対応無線ルーターをご用意ください。

ライタープロフィール 職人13号

テクニカルライターから巡り巡ってパソコン工房にやってきました。「読みやすさ」をモットーに、文書作成やチェックを中心に担当していきます。趣味はレトロゲームの攻略動画投稿などです。

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