第 11 世代インテル Core プロセッサー・ファミリー(開発コードネーム:Rocket Lake-S)と第10世代インテルCoreプロセッサー(開発コードネーム:Comet Lake-S、Comet Lake-S Refresh)に対応するチップセットとして登場したインテル 500 シリーズ・チップセットには、 いくつか種類がありそれぞれの機能や価格が異なります。ハイエンド向けのインテル Z590 チップセット、ミドルレンジ向けのインテル H570 チップセット、コストパフォーマンスクラスのインテル B560 チップセット、エントリー向けのインテル H510 チップセットの、4種類のチップセットがリリースされており、これらの種類ごとの違いについてご紹介させて頂きます。
なお、今回ご紹介するのはチップセットの仕様の比較となり、実際にマザーボードに搭載される機能はマザーボードメーカーや製品ごとに細部やオプションが異なりますのでご注意ください。
第 11 世代インテル Core プロセッサー・ファミリーに対応した「インテル 500 シリーズ・チップセット」
インテル 500 シリーズ・チップセットは、第 11 世代インテル Core プロセッサー・ファミリーおよび第 10 世代インテル Core プロセッサー・ファミリーに対応する最新のチップセットです。
インテル 500 シリーズ・チップセットより、PCI Express 4.0の対応やWi-Fi 6E 、USB 3.2(20G)といった新たな機能が備わっています。
インテル 500 シリーズ・チップセット比較表
インテル 500 シリーズ・チップセットは、型番によりPCI-Expressのレーン数などが異なります。オーバークロックに対応するのは、インテル Z590 チップセットのみとなります。また、上位クラスのチップセットZ590、H570ではCPU、チップセットのバス幅が従来の倍のDMI 3.0 16GT/sとなっており、USB 3.2(20G)ポートなどのサポートに生かされています。
※下記の表は第 11 世代インテル Core プロセッサー・ファミリー搭載時の最大値となります。
Z590 | H570 | B560 | H510 | |
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サポートCPU | 第11世代インテルCoreプロセッサー(Rocket Lake-S) 第10世代インテルCoreプロセッサー(Comet Lake-S、Comet Lake-S Refresh) |
|||
ソケット | LGA1200 | |||
PCI Express レーンの最大数 | 24 | 20 | 12 | 6 |
サポートされるプロセッサー PCI Express ポートの構成 |
1×16+1×4 or 2×8+1×4 or 1×8+3×4 |
1×16+1×4 | 1×16 | |
PCI-Express | 3.0 | |||
CPUバス | DMI 3.0 16GT/s(※) | DMI 3.0 8GT/s | ||
USB 3.2 (20G)ポートの最大数 | 3 | 2 | 2 | 0 |
USB 3.1 (10G)の最大数 | 10 | 4 | 4 | 0 |
USB 3.0 (5G)の最大数 | 10 | 8 | 6 | 4 |
USB2.0の最大数 | 14 | 14 | 12 | 10 |
SATA 6.0 Gb/s ポートの最大数 | 6 | 6 | 6 | 4 |
RAID構成(PCIe) | 0/1/5 | × | ||
RAID構成(SATA) | 0/1/5/10 | × | ||
画面出力数 | 3 | 2 | ||
CPUオーバークロック対応 | ○ | × | ||
メモリーオーバークロック対応 | ○ | × |
インテル 500 シリーズ・チップセットより、PCI-Express 4.0に対応し、USBポートの強化や、ネットワーク機能の強化など改良されたポイントがいくつかありますが、搭載するCPUにより仕様が異なります。
また、従来からのレガシー I/O 向け LPC (Low Pin Count)が廃止され、シリアルポート、パラレルポート、フロッピーディスクコントローラ、TPM、PS/2用のキーボード、マウスなどのレガシーポートが標準で使用できなくなります。ただし、eSPI(拡張シリアルペリフェラルインタフェース)経由や、USBなどによる外部オプション類により引続きサポートは可能となっています。
インテル 500 シリーズ・チップセットの主な変更点
インテル 500 シリーズ・チップセットから追加された機能について、先述しました搭載するCPUにより、仕様が異なる点についてもご紹介いたします。
PCI Express 3.0(Gen 3)の2倍の帯域幅を実現するPCI Express 4.0(Gen 4)に対応
PCI Express 4.0は、従来のPCI Express 3.0の1レーン当たりの帯域幅が8GT/sから16GT/sと2倍になっています。
このPCI Express 4.0はCPUから直結でグラフィックスカード用のPCI Express x16(グラフィックスカードスロット)と、ストレージ用のPCI Express x4(M.2スロット)に対応していますが、これは第 11 世代インテル Core プロセッサー・ファミリー(Rocket Lake-S)を搭載した場合のみ有効となります。
帯域幅の向上によりCPUとチップセット間のDMI 3.0の帯域幅もx4からx8になり、高速なデータ転送を実現します。
6GHz帯の高速転送を実現するWi-Fi 6Eに対応
Wi-Fi 6Eは、従来のWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)の周波数帯 2.4GHzと5GHzに加え、6GHzにも対応する新たなWi-Fi規格です。Wi-Fi 6Eの「E」は「拡張された」を意味する英語の「Extended」の頭文字となっています。
※Wi-Fi 6E対応の有無や搭載しているネットワークコントローラーの種類はマザーボードごとに異なります。
※Wi-Fi 6Eは日本国内でも準備ができ次第順次使用可能になる予定です。
高速転送を実現する2.5GbE(2.5Gigabit Ethernet)有線LANに対応
ギガビットLAN(1GbE)よりも高速な2.5GbEに対応したネットワークコントローラーに対応しました。高速で安定したネットワーク構築は大容量ファイルのやり取りが必要になるクリエイティブ用途など様々な分野でメリットを得ることができます。
※2.5GbE対応の有無や搭載しているネットワークコントローラーの種類はマザーボードごとに異なります。
20Gbpsの高速転送を実現するUSB 3.2に対応
USB 3.2 Gen 2x2は転送速度 20Gbpsの高速転送を実現するUSB 3.2規格で、インターフェイスはUSB Type-Cポートです。
USB 3.0 | USB 3.1 | USB 3.2 | |
---|---|---|---|
名称 | USB 3.2 Gen 1×1 | USB 3.2 Gen 2×1 | USB 3.2 Gen 2×2 |
転送速度 | 5Gbps | 10Gbps | 20Gbps |
インターフェイス | USB Type-A、USB Type-C | USB Type-A、USB Type-C | USB Type-C |
8K出力が可能なThunderbolt 4に対応
Thunderbolt 4は従来のThunderbolt 3と同様に転送速度(映像用の帯域とデータ用の帯域の合計値)は最大40Gbpsですが、PCIeを利用したデータ用の転送速度が16Gbpsから32Gbpsに向上しました。
また、4Kディスプレイの同時接続数も1台から2台に増え、さらに8Kディスプレイへの接続にも対応しました。
※2つの4Kディスプレイまたは1つの8Kディスプレイのサポートとなります。
転送速度 | データ用転送速度 | 4Kディスプレイの 同時接続数 |
8Kディスプレイへの サポート |
|
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Thunderbolt 4 | 40Gbps | 32Gbps | 2台 | 対応 |
Thunderbolt 3 | 40Gbps | 16Gbps | 1台 | 非対応 |
※Thunderbolt 4対応の有無や対応している機能はマザーボードごとに異なります。
サポートが終了した機能について
インテル 500 シリーズ・チップセットでは、レガシーポート、レガシーBIOSおよび、インテルSGXのサポートが終了となりました。
レガシーポートについては代替手段があるため、すぐに使えなくなるわけではありませんので、必要になる際はマザーボードを選ぶ際にポート類をご確認ください。
LPC(Low Pin Count)、eMMC、SD3.0、SDXCのサポートが終了
LPC(Low Pin Count)のサポートが終了し、レガシーポート(FDDやシリアルポート、パラレルポート、PS/2用のキーボード、マウスなど)などが標準では搭載されなくなります。これらのポート、機能は、eSPI経由や外部チップ、USB経由での接続が必要になります。※マザーボードメーカーの仕様によります。
また、ストレージのeMMCや、SDカードのサポートも同様に終了となります。こちらもUSB接続のアダプタなどを使用することで引続き使用することができます。
レガシーBIOS(Legacy BIOS)、VBIOS、Free DOSのサポートが終了
レガシーBIOSはOS(Windows 10)を起動するために設計された古いファームウェアインターフェイスです。以前まではBIOSとUEFIのどちらかでOSを立ち上げるよう設定(CMSモード)できましたが、インテル 500 シリーズ・チップセットからUEFIのみとなりました。BIOSを使用するFree DOSについても起動できなくなります。
同時に、VBIOSのサポートもできなくなり、古いグラフィックスカードを使用している場合にBIOS画面が表示できなくなります。GeForce GTX 10シリーズ、Radeon RX 5000シリーズ以降のグラフィックスカードを使用するとよいでしょう。
インテルSGX(Software Guard Extensions)のサポートが終了
インテルSGX(Software Guard Extensions)のサポートが終了し、SGXを使用したUltra HD Blu-Rayの再生や同機能を使用していた高画質映像配信コンテンツなどの再生などができなくなります。
インテル 500 シリーズ・チップセットに第 10 世代インテル Core プロセッサー・ファミリーを搭載した場合の制限
インテル 500 シリーズ・チップセット搭載マザーボードには、先述しました新しい機能が備わっていますが、搭載するCPUによって使用できる機能が制限されます。
制限される機能としては第10世代インテルCoreプロセッサーであるComet Lake-SおよびComet Lake-S Refreshの場合、CPU側にPCI Express 4.0(Gen 4)を搭載していないことから従来と同様にPCI Express 3.0(Gen 3)接続となり、DMI 3.0の帯域もx4となります。
また、メモリに関しても第11世代インテルCoreプロセッサーのRocket Lake-S搭載時はDDR4-3200(PC4-25600)まで対応しますが、第10世代インテルCoreプロセッサーのComet Lake-SおよびComet Lake-S Refresh の場合はDDR4-2933(PC4-23400)までとなります。
加えてUSB 3.2(20G)の機能も第11世代インテルCoreプロセッサーのRocket Lake-S搭載時のみとなります。
インテル 500 シリーズ・チップセットの特徴
インテル 500 シリーズ・チップセットの各チップセットの特徴をご紹介します。
チップセットの種類には、ハイエンド向けのインテル Z590 チップセット、ミドルレンジ向けのインテル H570 チップセット、コストパフォーマンスクラスのインテル B560 チップセット、エントリー向けのインテル H510 チップセットがラインナップされています。
先述しました搭載CPUによる機能の制限を除き、どのチップセットとの組み合わせでも、搭載するCPUの性能は変わらず発揮されますので、大きな違いはそれぞれのチップセットとマザーボードに搭載される機能の差となります。
エントリー向けのインテル H510 チップセット
インテル H510 チップセットは最も低コストでインテル Core プロセッサーを搭載したパソコンを構成することが可能な、コストパフォーマンスに優れたエントリークラスのチップセットです。
RAID構成非対応になっているなど機能面でもシンプルな構成となっており、CeleronやPentium、Core i3といった安価なクラスのCPUとの組み合わせがおすすめです。
コストパフォーマンスクラスのインテル B560 チップセット
インテル B560 チップセットもコストパフォーマンスを重視したチップセットです。インテル H510 チップセットと比べ、USB 3.2 (20G)ポートに対応となり、ストレージ回りの拡張性を持つ点がインテル B560 チップセットを選択する上でのポイントとなります。
ミドルレンジ向けのインテル H570 チップセット
インテル H570 チップセットはUSB 3.2(20G)ポートへの対応に加えSATAだけでなくNVMeでのRAID構築にも対応しており、ストレージ回りの高速化および冗長化が可能なミドルレンジモデルです。
どのクラスのCPUの組み合わせにも最適で、第 11 世代インテル Core プロセッサー・ファミリーの新機能を生かしつつ、標準的な構成のパソコンを組む場合に最適なチップセットです。
ハイエンド向けのインテル Z590 チップセット
インテル Z590 チップセットはインテル vPro プラットフォームやインテル PTTといったサーバーや企業向け機能を除く、ほぼすべての機能に対応し、インテル 500 シリーズ・チップセットで唯一、オーバークロックに対応しているのが特徴です。
チップセットでサポートするPCI-Expressのレーン数も多く、グラフィックスカードに加えてPCI-Expressに搭載する超高速なストレージや2.5GbEネットワークカードなど柔軟な組み合わせにも対応しています。
各マザーボードメーカーからも注力した製品が多く展開され、オーバークロックに強かったり、USBなどのポート数が多かったりといった多機能なものが数多くある一方で、高価になる傾向があります。「K」つきのCPUと組み合わせてオーバークロックによるさらなるパフォーマンスを求める方や、多機能を求める方におすすめのマザーボードとなります。
第 11 世代インテル Core プロセッサー・ファミリーの新機能を実現するインテル 500 シリーズ・チップセット
コンシューマ向けのZ590、H570、B560、H510の4種類のチップセットについてご紹介いたしました。これらのインテル 500 シリーズ・チップセットを搭載したマザーボードを選ぶ際に、最適なチップセットをお選びいただく際の一助になれば幸いです。
パソコン工房ではインテル 500 シリーズ・チップセット搭載のマザーボード単体はもちろん各種BTOパソコンも取り扱いを開始しております。
360度どこからみても凡人、職人番号ラッキー7!職人7号です。主に写真撮影、動画編集を担当。パソコン工房ECサイトのBTOPCや自作パーツ等ひろく手掛ける。店舗部門出身。