

先日発売された第8世代インテル Core プロセッサーで、Linuxが動作するかどうか検証をやってみました。 個人的には、事前にLinuxをインストールする際はインターネットでまず情報収集を行いますが、発売から間もないため詳しい情報が少なく、海外サイトの情報に目を向けてもごくまれにしかヒットしなかったので、それではと自分で色々と試してみました。
Intel Z370 チップセット搭載のパソコンにLinuxをインストールしてみた
いつもパソコン工房インターネット通販ショップへご来店いただき、誠にありがとうございます。職人9号です。
先日発売された第8世代インテル Core プロセッサーですが、今回Linux検証をやってみろと、親方より指令が下されました。
個人的には、事前にLinuxをインストールする際はインターネットでまず情報収集を行いますが、発売から間もないため詳しい情報が少なく、海外サイトの情報に目を向けてもごくまれにしかヒットしませんでした。
「LANさえ認識してくれれば何とかなるでしょう!」と思いつつ検証を始めてみました。
今回検証に使用したデスクトップパソコンについて
検証機:第8世代Core i7プロセッサー搭載 「STYLE-R037-i7K-UHS」
検証機はiiyama STYLE∞の第8世代Core i7プロセッサーを搭載する 「STYLE-R037-i7K-UHS」を用意しました。
エディション名 | 用途 |
---|---|
CPU | Core i7-8700K プロセッサー (3.70-4.70GHz/6コア/12スレッド/12MBキャッシュ/TDP95W) |
マザーボード | Intel Z370 |
メモリ | DDR4-2400 4GB×2枚 |
ストレージ | 512GB Serial-ATA SSD |
光学ドライブ | 24倍速DVDスーパーマルチドライブ |
グラフィックカード | オンボードグラフィック インテル UHD グラフィックス 630 |
電源ユニット | 700W 80PLUS 認証 ATX電源 |
検証機「STYLE-R037-i7K-UHS」のスペック
※ストレージのみ512GBの物を使用しています。
※OS無しのモデルを用意しました。
Linuxのインストール
インストール後の条件は以下の通りです。
※OSインストール後はアップデートをすべて行った後に実施しております。
Ubuntu/mint Linux
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get upgrade
$ sudo apt-get dist-upgrade
$ reboot
CentOS
$ sudo yum update
$ reboot
それでは実験を始めましょう。
Ubuntu 16.04 の場合
DVDインストールメディアから起動してインストールは完了しました。ただし、OS起動直後にリフレッシュレートの数値が正常ではなく、描画速度が非常に遅い状態でした。
アップデートを実行後再起動すると、問題は解決しました。
Youtube・ブラウジング・負荷テスト等正常に動作しました。
Ubuntu 16.04インストール完了
Ubuntu 16.04でブラウジング実行
Ubuntu 17.04 , 17.10 の場合
Ubuntu 16.04と同じくOS起動直後にリフレッシュレートのトラブルが発生しました。
こちらはアップデートを行っても修正できなかったため、検証はここで中止になりました。
Ubuntu 17.04 , 17.10インストール完了
Ubuntu 17.04 , 17.10でリフレッシュレートのトラブルが発生、検証中止
Linux mint 18.2(MATE) の場合
DVDインストールメディアから起動してインストールは完了しました。
VGAドライバが更新されていないため適用不可でした。
Fedora 26 (workstation) の場合
DVDインストールメディアから起動してインストールは完了しました。
こちらもVGAドライバが更新されていないため適用不可でした
結果と考察
ここまで5種類のインストールを実験した結果が下の表になります。
チェック項目 | チェック内容 | ubuntu | linux mint | Fedra | ||
---|---|---|---|---|---|---|
16.04 | 17.04 | 17.10 | 18.2(MATE) | 26(workstation) | ||
インストール | 特別な設定無しでインストールが完了する | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
作成パーティションの確認 | partedコマンドで全領域の使用を確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
X Window System の動作 | マウス/キーボードの機能確認、モニターの解像度確認 | △※1 | △※2 | △※2 | △※2 | △※1 |
有線LANポート | ドライバーのチェック後、1GBのファイル転送を行う | ○ | ・ | ・ | ・ | ・ |
ハードドライブ | ファイルコピーを確認 | ○ | ・ | ・ | ・ | ・ |
負荷ランニング | 負荷を掛け、停止/再起動が起こらないこと | ○ | ・ | ・ | ・ | ・ |
再起動 | 10回連続で繰り返し確認を行う | ○ | ・ | ・ | ・ | ・ |
スリープからの復帰 | 10回連続で繰り返し確認を行う | × | ・ | ・ | ・ | ・ |
CPUの認識 | 物理構成との一致を確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
メモリーの認識 | 物理構成との一致を確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
VGAの認識 | 物理構成との一致を確認 | × | × | × | × | × |
※1:解像度変更不可でした。
※2:GUIのパフォーマンスに影響あり。表示が遅すぎる症状が発生しました。
チェック項目 | チェック内容 | ubuntu | linux mint | Fedra | ||
---|---|---|---|---|---|---|
16.04 | 17.04 | 17.10 | 18.2(MATE) | 26(workstation) | ||
youtube | パソコン工房WEBの動画再生テスト | ○ | ・ | ・ | ・ | ・ |
WEB | パソコン工房通販WEBサイト閲覧 | ○ | ・ | ・ | ・ | ・ |
lspci | デバイス確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
OSについて | OS確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
検証機「STYLE-R037-i7K-UHS」(インテルZ370搭載)でのlinux検証結果
インテル UHD グラフィックス 630オンボードのドライバがまだリリースされていない
今回テストを行ったデスクトップパソコンの「STYLE-R037-i7K-UHS」では、各種ディストリビュージョンを試してみましたが正常動作するまでには至りませんでした。
どうやらオンボードグラフィックのドライバがまだリリースされていないようです。GUIではカクカクした状態になるので操作に極めて難ありといった状態になりました。
・・・と潔く諦める訳にはいきません。
親方にアドバイスをいただき、「オンボードVGAが引っかかるなら、グラフィックカード有りでやってみては?」と天啓をいただきましたので、早速GPUを調達しました。
NVIDIA GeForceGTX1050Ti で再度試してみた
GTX10xx番台であれば、ubuntuの動作確認は取れていますので、再実験用のグラフィックカードにはNVIDIA GeForceGTX1050Tiを使用しました。
Ubuntu 16.04(2回目) の場合
■グラフィックドライバのインストール方法
NVIDIAのドライバはリポジトリを登録してインストールしました。
$ sudo add-apt-repository ppa:graphics-drivers/ppa
$ sudo apt update
インストールするバージョンの候補を検索します。いくつかバージョンが表示されます。
$ apt-cache search ‘nvidia-[0-9]+$’
LinuxのGeForce GTX1050Tiは384.98が対応していますので、384をインストールします。
$ sudo apt-get install nvdia-384
※2017年11月現在、387までリリースされていますが、GTX1050Tiの場合「384」が対応ドライバでしたので「384」のバージョンをインストールします。
インストールが完了したら再起動してドライバの確認を行います。
$ reboot
$ nvidia-smi
写真のような表示が出ていればドライバインストールが完了です
NVIDIA GeForceGTX1050TiでUbuntu 16.04(2回目)ドライバインストールが完了
■動作状況
特にトラブルなくインストールできました。
Youtube動画再生・音声出力・WEB表示すべて問題なく動作できました。
NVIDIA GeForceGTX1050TiでUbuntu 16.04(2回目)インストールが完了
NVIDIA GeForceGTX1050TiでUbuntu 16.04(2回目)テストが完了
Ubuntu 17.04(2回目) の場合
Ubuntu 17.04 (Zesty Zapus)ですか、こちらもすんなりとインストールは完了しました。
しかし、テスト項目の「スリープからの復帰」ができませんでした。スリープモードに入ろうとする寸前で勝手に起動してしまうため、スリープは使用できませんでした。
NVIDIA GeForceGTX1050TiでUbuntu 17.04(2回目)インストールが完了
NVIDIA GeForceGTX1050TiでUbuntu 17.04(2回目)テストが完了
また、dmesgでのカーネルメッセージの確認を行ったところ、ACPI関係のエラーが出ていました。
どうやらUSBブートに関する項目についてのエラーのようです。OS起動後では特に影響は有りませんでした。
NVIDIA GeForceGTX1050TiでUbuntu 17.04(2回目):ACPI関係のエラー
Ubuntu 17.10(2回目) の場合
Ubuntu 17.10 (Artful Aardvark)になりますが、こちらも問題なくインストールできました。
アップデートも少量で検証中1番短い時間でセットアップできました。
NVIDIA GeForceGTX1050TiでUbuntu 17.10(2回目)インストールが完了
NVIDIA GeForceGTX1050TiでUbuntu 17.10(2回目)テストが完了
また、Ubuntu17.04と同様で、こちらもdmesgのメッセージで同じエラーが発生していました。
NVIDIA GeForceGTX1050TiでUbuntu 17.10(2回目):ACPI関係のエラー
Linux Mint 18.2 (Sonya)の場合
MATE版を使用してインストールを行ってみました。Ubuntuの派生なのでインストールも簡単です。
NVIDIA GeForceGTX1050TiでLinux Mint 18.2 (Sonya)インストールが完了
NVIDIA GeForceGTX1050TiでLinux Mint 18.2 (Sonya)テストが完了
一見問題無いにも思えましたが、dmesgのメッセージに温度関係のエラーがありました。
NVIDIA GeForceGTX1050TiでLinux Mint 18.2 (Sonya):温度関係のエラー
温度関係に問題があるようなので、負荷テストを行ってみました。
■speed sslを使用した負荷テスト方法
・CPUの使用率をグラフィカル見るため、htopをインストールします。
$ sudo get-apt install htop
$ htop
・CPUのコア数に応じてopen sslで負荷を行うコマンドを実行します。
$ openssl speed -multi `grep processor /proc/cpuinfo|wc -l`
温度関係のエラー:左画面がopensslの負荷テストログ、右画面がhtop
左画面がopensslの負荷テストログ、右画面がhtopになります。
実行後2~3分で強制再起動になりました。熱暴走の可能性もありましたが、3回中3回発生したため、検証上×と判定しました。OSが落ちてしまうので使用するには難ありといった状態です。
Fedora26 workstation(2回目)の場合
LiveDVDを起動後にインストールを選択しましたが、2~3秒ごとにマウスカーソルが止まる現象が発生し、極めて操作に支障がでました。このため検証は中止になりました。
CentOS7 (7.4-1708) (代打)の場合
Fedoraのインストールが失敗しましたので、代打としてRedHat系のCentOS7を選択しました。
GUI環境構築のため「KDE plasma workspaces」を選択・インストールしてみました。
NVIDIA GeForceGTX1050TiでCentOS7 (7.4-1708) (代打)インストールが完了
NVIDIA GeForceGTX1050TiでCentOS7 (7.4-1708) (代打)テストが完了
NVIDIA GeForceGTX1050TiでCentOS7 (7.4-1708) (代打)ログ・その1
NVIDIA GeForceGTX1050TiでCentOS7 (7.4-1708) (代打)ログ・その2
インストールは問題なく完了、WEB・youtubeもバッチリ再生できました。
負荷テストも安定して動作しています。
Ubuntu の時にあったACPI回りでエラーが発生しているようです。OS起動後は特に問題ありませんでした。
サスペンドも動作確認できました。
インストールがやや長いこと・NVIDIAのドライバインストールでは、リポジトリではなくrunファイルから実行するので、少々手間がかかる点がありました。
なお、ここまでの実験で気付いた点として、このZ370チップセット搭載のマザーボードは、デバイスとしてはintel 200シリーズのチップセットとして動作しているようでした
検査結果一覧
それでは、ここまでの実験結果をまとめてみます。
チェック項目 | チェック内容 | ubuntu | linux mint | Fedra | CentOS | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
16.04 | 17.04 | 17.10 | 18.2(MATE) | 26(workstation) | 7.4-1708 | ||
インストール | 特別な設定無しでインストールが完了する | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ |
作成パーティションの確認 | partedコマンドで全領域の使用を確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ・ | ○ |
X Window System の動作 | マウス/キーボードの機能確認、モニターの解像度確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ・ | ○ |
有線LANポート | ドライバーのチェック後、1GBのファイル転送を行う | ○ | ○ | ○ | ○ | ・ | ○ |
ハードドライブ | ファイルコピーを確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ・ | ○ |
負荷ランニング | 負荷を掛け、停止/再起動が起こらないこと | ○ | ○ | ○ | ×2 | ・ | ○ |
再起動 | 10回連続で繰り返し確認を行う | ○ | ○ | ○ | ○ | ・ | ○ |
スリープからの復帰 | 10回連続で繰り返し確認を行う | ○ | ×1 | ○ | ○ | ・ | ○ |
CPUの認識 | 物理構成との一致を確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ・ | ○ |
メモリーの認識 | 物理構成との一致を確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ・ | ○ |
VGAの認識 | 物理構成との一致を確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ・ | ○ |
×1:サスペンド→勝手に復帰してしまう現象あり。
×2:2~3分程で強制再起動になります。CPU温度が計測できない問題の可能性があります
チェック項目 | チェック内容 | ubuntu | linux mint | Fedra | CentOS | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
16.04 | 17.04 | 17.10 | 18.2(MATE) | 26(workstation) | 7.4-1708 | ||
項目 | SS画面 | ubuntu | linux mint | Fedra | CentOS | ||
16.04 | 17.04 | 17.10 | 18.2(MATE) | 26(workstation) | 7.4-1708 | ||
youtube | パソコン工房WEBの動画再生テスト | ○ | ○ | ○ | ○ | ・ | ○ |
WEB | パソコン工房通販WEBサイト閲覧 | ○ | ○ | ○ | ○ | ・ | ○ |
lspci | デバイス確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ・ | ○ |
OSについて | OS確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ・ | ○ |
GTX 1050 Ti 搭載検証機「STYLE-R037-i7K-UHS」(インテルZ370搭載)でのlinux検証結果
まとめ
Intel UHD 630のグラフィックスドライバが2017年11月の検証時点ではリリースされていないため、内蔵グラフィックスでGUI環境を構築するには問題がありました。 動作実績のあるグラフィックカードを増設することでこの問題は回避できることも分かりましたが、ACPI周りのエラーもあったので完全とは言えません。。
今後のOS側のアップデートでの改善に期待したいところですが、現時点、CoffeeLakeでLinuxを動かしたい場合は、グラフィックボードの増設がおすすめです。

EコマースのPCパーツ・周辺機器担当です。元店舗出身でPC修理全般と中古品関係を得意としていました。主に商品のレビューや規格・技術関係のまとめを書いております。趣味はゲームと自転車の整備です。