Radeon RX 5000 シリーズから、ミドルレンジ向けのRadeon RX 5600 XTとRadeon RX 5500 XTが発売されました。上位のRadeon RX 5700シリーズがWQHD解像度ゲーミング向けとなっているのに対し、Radeon RX 5600 XTは「プレミアム」フルHD解像度ゲーミング向け、Radeon RX 5500 XTはフルHD解像度ゲーミング向けの位置づけとなっています。
今回はRadeon RX 5600 XTと弟分のRadeon RX 5500 XTが、ライバルと目されるGeForce GTX 1660 SUPER、GeForce GTX 1650 SUPERに対してどの程度の性能を持っているのかを、ベンチマークを通して見て行きます。
フルHDゲーミングにベストマッチのRadeon RX 5600 XT・Radeon RX 5500 XT
Radeon RX 5600 XTは、上位モデルのRadeon RX 5700 と同じGPUコア、ストリーミングプロセッサー数を搭載しつつも、動作クロックや動作メモリクロック、メモリバス幅を抑えることでフルHDゲーミング向けのミドルレンジモデルとなっています。
一方のRadeon RX 5500 XTは一段小さいコアを使用したGPUとなっており、ワットパフォーマンスに優れた製品として仕上がっています。ビデオメモリ容量も標準で4GB、8GBの2種類から選べるなど、ゲーミング向けGPUのエントリーレンジとしては豪華な仕様になっています。
Radeon RX 5700 XT | Radeon RX 5700 | Radeon RX 5600 XT | Radeon RX 5500 XT | GeForce GTX 1660 SUPER |
GeForce GTX 1650 SUPER |
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アーキテクチャ | NAVI | Turing | ||||
GPUコア | NAVI10 | NAVI10 | NAVI10 | NAVI14 | TU116 | TU117 |
製造プロセス | 7nm | 12nm | ||||
ストリーミングプロセッサ数 | 2560基 | 2304基 | 2304基 | 1408基 | 1408基 | 1280基 |
定格クロック | 1605MHz | 1465MHz | ※未公開 | ※未公開 | 1530MHz | 1530MHz |
ゲームクロック | 1755MHz | 1625MHz | 1375MHz | 1717MHz | – | – |
ブーストクロック | 1905MHz | 1725MHz | 1560MHz | 1845MHz | 1785MHz | 1725MHz |
メモリタイプ | GDDR6 | |||||
メモリ容量 | 8GB | 8GB | 6GB | 8GB | 6GB | 4GB |
メモリ転送レート | 14Gbps | 12Gbps | 14Gbps | 12Gbps | ||
メモリバス幅 | 256bit | 256bit | 192bit | 128bit | 192bit | 128bit |
メモリバス帯域幅 | 448GB/s | 448GB/s | 288GB/s | 224GB/s | 336GB/s | 192GB/s |
TDP | 225W | 180W | 150W | 130W | 125W | 100W |
推奨電源 | 600W | 550W | 450W | 350W |
ご覧の通り、Radeon RX 5600 XTは、Radeon RX 5700とRadeon RX 5500 XTとの隙間を埋めるよう、Radeon RX 5700をミドルレンジ向けに調整したモデルといった格好となっています。
なお、Radeon RX 5600 XTは発売の直前ギリギリまで性能向上のためスペックのアップデートの調整をしており、グラフィックスカードメーカー各社からアップデートパッチがリリースされています。当社で今回、検証したグラフィックスカードのスペックは以下の通りとなり、発売前に公式発表されているものより、動作クロックが向上し、パフォーマンスが上がっています。代わりに若干ですが、TDPが上がっています。
各社によって今後の製品化時点で仕様が若干異なる事が予想されますので、予めご了承頂きました上で本記事をご覧ください。
Radeon RX 5600 XT 検証時スペック |
Radeon RX 5600 XT 公式表記スペック |
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アーキテクチャ | NAVI | |
GPUコア | NAVI10 | |
製造プロセス | 7nm | |
ストリーミングプロセッサ数 | 2304基 | 2304基 |
定格クロック | 1235MHz | ※未公開 |
ゲームクロック | 1460MHz | 1375MHz |
ブーストクロック | 1620MHz | 1560MHz |
メモリタイプ | GDDR6 | |
メモリ容量 | 6GB | 6GB |
メモリ転送レート | 12Gbps | 12Gbps |
メモリバス幅 | 192bit | 192bit |
メモリバス帯域幅 | 288GB/s | 288GB/s |
TDP | 155W | 150W |
推奨電源 | 550W | 550W |
MSI Radeon RX 5600XT MECH OC の外観。OCモデルらしく大型のヒートシンクファンを搭載しています。
MSI Radeon RX 5600XT MECH OCの出力端子。DisplayPort×3、HDMI×1と今風の出力端子構成となっています。
MSI Radeon RX 5600XT MECH OCの補助電源端子。8Pinコネクタが1つあります。
それでは実際の性能はどれほどになるのか、早速ベンチマークテストで見ていきたいと思います。
ベンチマークテスト
比較対象として、上位モデルであるRadeon RX 5700、Radeon RX 5600 XTのライバルとなるGeForce GTX 1660 SUPER、Radeon RX 5500 XTのライバルとなるGeForce GTX 1650 SUPER、そしてGeForce RTX 2060を用意しました。テスト解像度はミドルレンジ向けである事から、フルHD(1920x1080)とWQHD(2560x1440)の解像度のいずれかにて行っています。なお、今回手配できたRadeon RX 5600 XT(ゲームクロック:1460MHz)、Radeon RX 5500 XT(ゲームクロック:1737MHz)はともにゲームクロックが引き上げられたOCモデルであるため、定格動作品よりも性能が高くなっています。
3D Mark「Fire Strike」
まずは、DirectX 11 の代表的ベンチマークとして、3D Mark 「Fire Strike」 のGraphics Score を見てみましょう。テスト解像度は、フルHDのFire StrikeとWQHD のFire Strike Extremeとなります。
Radeon RX 5600 XT、Radeon RX 5500 XTともに、ライバルとなるGeForce GTX 1660 SUPER、GeForce GTX 1650 SUPERに対して、フルHD解像度ではおおよそ20%、WQHD解像度ではおおよそ30%もの大差をつけて圧倒しています。それどころか、Radeon RX 5600 XT はGeForce RTX 2060 に対しても、10%近い差をつけています。Radeon RX 5600 XT、Radeon RX 5500 XTの素性はかなり良さそうです。
3D Mark「Time Spy」
次いで、DirectX 12の代表的ベンチマークとして、3D Mark 「Time Spy」 のGraphics Score を見てみましょう。テスト解像度は、WQHDとなります。
Fire Strikeよりも差が縮まっていますが、Radeon RX 5600 XTはGeForce GTX 1660 SUPERをおおよそ15%上回り、GeForce RTX 2060 に近接したスコアとなっています。また、Radeon RX 5500 XTもGeForce GTX 1650 SUPERをわずかながら上回っています。Time SpyにおいてもRadeon RX 5500 XT、Radeon RX 5600 XTの素性の良さが表れていると言えそうです。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
続いて、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークです。テスト環境設定は高品質・フルスクリーンで、テスト解像度はフルHDとWQHDになります。
3D Markとは全く趣の異なる結果となっています。FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONはNVIDIA GAMEWORKS対応であるため、Radeon系にとっては不利なベンチマークとなっていますが、Radeon RX 5600 XT、Radeon RX 5500 XTともにフルHD解像度でライバルの80%、WQHD解像度でライバルの90%にとどまっています。
とはいえ、Radeon RX 5600 XT、Radeon RX 5500 XTともにフルHD解像度・WQHD解像度で標準的な動作が見込まれる3000以上をクリアしており、ゲームプレイは問題なく行えそうです。
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク
最後に、ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークです。テスト環境設定は最高品質・DirectX 11・フルスクリーン、テスト解像度はフルHDとWQHDとなります。ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズについては、ベンチマークテストの詳細で平均fps(フレームレート)も確認できるので、合わせて掲示します。
ファイナルファンタジーXIVもFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONと同じくNVIDIA GAMEWORKS対応ですが、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONとは異なる結果となりました。Radeon RX 5600 XT、Radeon RX 5500 XTともにライバルであるGeForce GTX 1660 SUPER、GeForce GTX 1650 SUPERと互角の戦いを繰り広げています。
Radeon RX 5600 XTは、WQHD解像度でも70fps近いフレームレートを記録しており、WQHD解像度でも快適に遊ぶことができそうです。Radeon RX 5500 XTにおいても、WQHD解像度で非常に快適な動作の指標となる7000以上のスコアを優に超えており、WQHD解像度でも十分に遊ぶことができそうです。
フルHD解像度以上でも快適にゲームプレイができる魅力的な製品!
AMDの発表では、Radeon RX 5600 XT、Radeon RX 5500 XT ともにフルHD解像度ゲーミング用のグラフィックスカードとなっていますが、今回の検証の結果ではファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズで見られたようにRadeon RX 5600 XTはWQHD解像度での使用にも十分に応えられる性能を有していると言えそうです。また、Radeon RX 5500 XTもフルHD解像度では持て余すほどの性能を有していることを確認できました。
Radeon RX 5600 XTは3万円台、Radeon RX 5500 XTの4GBモデルなら2万円からと、価格的にも性能的にもユーザーにはうれしいグラフィックスカードとなっています。Radeon Software Adrenalin 2020 EditionによるImage SharpeningやRadeon Anti-Lagなどコンシューマーゲーム機で培ったノウハウを生かした機能によるゲームプレイ体験の向上も合わせると、低価格でもパフォーマンスの高いグラフィックスカードとして、非常に魅力的な製品に仕上がっているのではないでしょうか。
CPU | Core i9-9900K (3.6-5.0GHz/8コア・16スレッド/キャッシュ16MB/TDP95W) |
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マザーボード | ASUS Prime Z390-A (Z390チップセット) |
メインメモリ | DDR4-2666 16GB (8GB x2) |
ビデオカード | MSI Radeon RX 5600XT MECH OC (6GB GDDR6) ※ゲームクロック:1460MHz |
PowerColer AXRX 5500XT 8GBD6-DHR/OC (8GB GDDR6) ※ゲームクロック:1737MHz | |
PowerColor製 Radeon RX 5700 (8GB GDDR6) | |
ZOTAC製 GeForce RTX 2060 (6GB GDDR6) | |
ZOTAC製 GeForce GTX 1660 SUPER (6GB GDDR6) | |
ZOTAC製 GeForce GTX 1650 SUPER (4GB GDDR6) | |
ストレージ | Intel SSDPEKNW512G8XT (Intel 660p NVMe 512GB) |
電源 | Seasonic SSR-850FX (80PLUS Gold、850W) |
OS | Windows 10 Home 64bit (バージョン:1910) |
ビデオドライバ | Radeon Software Adrenalin 2020 Edition 20.1.3 Optional |
Radeon Software Adrenalin 2020 Edition 19.12.2 ※Radeon RX 5700用 | |
GeForce Game Ready Driver 441.66 |
※掲載のベンチマークは当社検証時のものです。OS、ドライバーのバージョン、その他の要因により同じ構成であってもベンチマーク値は変動いたします。あらかじめご了承ください。
Radeon RX 5600 XT単品発売開始
Radeon RX 5600 XTの単品発売が2020年1月25日(土)11時より開始されました。
Radeon RX 5600 XT搭載BTOパソコンについては後日発売予定
Radeon RX 5600 XT搭載BTOパソコンの発売は後日を予定しております。発売開始されましたら、こちらのページでも情報を配信していきますのでお楽しみに。
Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。