

どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストは映像ディレクターの二瓶剛さんです。テレビのニュース番組からドキュメンタリー、ファッション映像まで幅広く手掛ける 映像作家です。
二瓶さんが携わった作品
conception
坂牛卓氏設計のリサイクル工場(リーテム東京工場)にフォーカスしたコンセプトムービー。工場を定点観測した映像から、工場と人の日常が繋がり、循環していることを垣間見ることができる。
minakumari – Rehena
シタール奏者minakumari(ミナクマリ)さんのミュージックビデオ。スイートボイスとシタールが融合しているように、海や森といった有機物とデジタルの映像が重なり合う美しい映像。
宇宙飛行士に憧れた少年は映像の申し子だった!?
二瓶さんが子どもの頃、憧れていた職業はなんですか?
今の仕事とは全然違うんですけど、子どもの頃は宇宙飛行士になりたかったです!
宇宙飛行士に憧れて、どんな学校に進学しましたか?
高校を卒業する頃になって、なぜか音響に異常に興味が沸き、レコーディングのミキサーになりたいと専門学校に入りました。ところが、入学前に想像していた内容と違っていたので、早々に専門学校を辞めてしまいました……。その後、漠然と「物書きにでもなるかなぁ~」と文系の大学を目指したものの希望校に落ちて、特に望んでいなかった美術の大学へ行くことになりました。
大学ではどんな学生時代を送りましたか?
中高の頃は、ハンドボール部で部長を務めるスポーツマンだった一方、小説や映画にも没頭していました。文化的な話題を共有できる友人は皆無でしたが。大学でやっと黒澤明の話ができる仲間と出会って、一緒に映画を作ったりしていました。大学ではサッカー部にも入りました。雑多で様々な価値観に触れることを、無意識的に求めていたのかもしれません。
今の仕事を目指すきっかけは何だったんですか?
美術の大学に入ったものの、絵や彫刻を学んできたわけではないので、消去法で映画学科を選びました。そこで、ファインダーを通して見ると、映るものが嘘だとしても、ある一定の真実のようなものが見えることに気づき、フレームの中の世界の魅力に惹かれました。でも、仕事にすれば辛いだろう、と生業にする気持ちはありませんでした。職業となったのは、たまたま声がかかるようになり、それを続けてきたからです。
今のお仕事を始めたきっかけを教えてください!
大学の時に開催されたライブイベントに自分も含めて学生が10人ほど呼ばれて、その様子を映像で撮る機会をもらいました。それから1年後にその映像を見たプロデューサーから電話があって「君は才能がある」とおだてられて(笑)、紹介されたファッションデザイナーの映像制作を手伝ったりしていくうちに、色々なところからお話を頂くようになったんです。今は構成、演出、編集などが主な担当ですが、当初はカメラマンとしての能力を求められていました。
映像だからこそ伝えられることを、繊細に捉える
二瓶さんの代表作を教えてください
代表作かわかりませんが『conception』と題した、リサイクル工場のプロモーションビデオです。内容も完全に任せてもらい、撮影と編集も一人で担当したということもあるのですが、音楽家の大友良英さんから、映画『風花』の大好きな曲を頂戴したことが自慢です。あとは『日経スペシャル 私の履歴書』というテレビ番組です。世界的に有名なファッションデザイナーや芸術家、俳優などの方々に長期密着取材して、ずいぶんと力を試されました。
特にターニングポイントになった仕事を教えてください。
なんといっても『私の履歴書』です。放送後、取材させていただいた芸術家の方から大説教を受けました。「君にはこういうものを作りたいという理想があったのに、それを通さなかったのはなぜだ?」と……。あらかじめ決められた構成に則ったことによるつまらなさと、なんでも説明してしまう短絡さに対しての怒りでした。すべてに当てはまるわけではないですが、本質的なところではその通りだなと、現在も肝に銘じています。
仕事で失敗をしたことはありますか?
テレビのニュース番組を担当していた時、ナレーション原稿を短縮するよう指示を受け、反映したものを放送したところ、視聴者に誤解を与えるような表現だと取材先からご指摘を受けたことがありました。複数のチェックも受けていましたが、いくつかの文節を切ったことで意味が変質していたことを自分が気づいていなかったことに、とてもショックを受けましたし、情報を伝える難しさも学びました。
仕事をしていて、一番興奮する瞬間はどんな時ですか?
映像でしか伝えることができないものを捉えられた時です。人や景色、対象は何でもいいのですが、一瞬でも対象の本質に迫ることができると感動します。情報だけであれば、文章や静止画でもかまわないですが、日の傾きや、人の繊細な変化のような「機微」は、連続性のある映像だからこその強みで、対象の多層性が表現できた時は嬉しいです。そんなことはたまにしかありませんけどね(笑)。
二瓶さんが仕事をするうえで、もっとも大切にしていることは何ですか?
一つの価値観だけで判断しないこと。事前に資料などを読み込むけど、そこに書かれていることは可能な限り扱わないこと。表面だけを取り繕わないこと。完全な設計図を作らず、現場での直感を大事にすること。周囲のスタッフをまずは信用すること。嫌なやつとは仕事をしないこと。小さな声に耳を傾けること。
護身のためのHDD管理
今使っているパソコンや、周辺機器を教えてください
ノートパソコンとUSB-Cのハブです。ハブは発熱しないところが気に入っています。あとはUSB-C接続の有線マウス。編集環境によっては無線だと電波が干渉して、飛ぶことも多々あるので、いざというときは有線が強いですね。
パソコンを選ぶ際の基準はなんですか?
一番は「軽さ」です。カバンの中が資料や周辺機器でパンパンになるので。最近のノートパソコンはずいぶん軽くなったので隔世の感があるなと……。次に処理能力です。メモリは32GBで、プロセッサは最新のものを、グラフィックボードはワンランク下のものを選び、より負荷の高い案件が発生すればeGPU(外付けGPUボックス)でも購入すればいいかなと今は思っています。
誰にも教えたくないツールがあれば教えて欲しいです!
HDD管理ソフトを入れています。自身のHDDがクラッシュした経験があるのですが、外部から提供されたHDDの中にも程度が悪いものがあるため、それが制作のスピードに影響したり、トラブル時の責任を転嫁される可能性があります。HDD管理ソフトでHDDの性能やライフサイクル、仔細な状況を把握できるので、護身のためというか、安心材料になっています。
アマチュアリズムを忘れずに、タフに突き進め!
二瓶さんにとって「クリエイティブ仕事道」とはなんですか?
古きを尊び、新しいものがどこかにないかなと探し続けることです。
クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!
ドメスティックすぎるので自分を「クリエイター」とか言わないほうがいいのでは?と思います。「プロフェッショナリズム」を声高に唱える人を信用しすぎず、アマチュアリズムを忘れず、タフに、根拠のない自信で独自に突き進めばいいのではないでしょうか。いろんな人を見てきましたが、有り様に決まった形はないですからね!
二瓶さん、ありがとうございました!
古いものを尊び、新しいことを探求する
やんちゃな文系少年が辿り着いたのは「映像作家」という道でした。その道は険しくも、人生の先輩方が道しるべとなって、二瓶さんの作品にも影響を与えているようです。「古きを尊び、新しいものを探す」という二瓶さんの言葉には、先人達へのリスペクトと、自分が若者の道しるべになるという思いが込められていました!
クリエイタープロフィール
二瓶 剛さん
映像ディレクター
1975年、北海道生まれ。東京造形大学在学中より様々なプロジェクトに参加。領域問わず演出・撮影・編集・投影を手掛ける。
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[ネクスマグ] 編集部
パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。