どうしたら憧れのクリエイターになれるのか?その秘密を現役で活躍する映像ディレクターの山本ヨシヒコさんに直接聞いちゃいます。

クリエイター最終更新日: 20200423

映像ディレクター:話題のご当地PR動画やWebCMで体現するオリジナリティ

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現在活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。第7回のゲストは映像ディレクターの山本ヨシヒコさんです。話題になった大分県のPR動画『シンフロ』の演出を手掛けた山本さん。その他にも数々の名作CMにも携わっています。

山本さんが携わった作品

シンフロ

ご当地PR動画のパイオニアとも言うべき『シンフロ』。温泉でシンクロナイズドスイミングをするユニークな演出は海外でも注目され、英語、中国語、タイ語など6か国語のバージョンが公開されました。山本さんのご実家が銭湯、さらに奥様は大分出身ということもあり、気合いの入った作品とのことです。

THE PROFESSIONAL OF JAPAN

日産自動車のプロフェッショナル向けビジネスバン「NV350キャラバン」のWebCM『THE PROFESSIONAL OF JAPAN』。日本の「現場」を支える職人たちの神業がぎっしりとつまった1分13秒。比較的身近なものから、普段は目にできないレアな神業まで、思わず「すげー!」とつぶやいてしまう動画です。

実家の銭湯を継ぐと思っていた山本少年

山本さんが子どもの頃に描いていた夢は何ですか?

長男ということもあって、実家の銭湯を継ぐと思っていました。小学生の頃から番台を手伝って、常連さんから勉強を教えてもらったり、お菓子をもらったり、裸の付き合いということもあって、すごく仲良くしてもらいました。中学・高校ではバスケ部のキャプテンをやっていたので、教師になってバスケ部の顧問になるのもいいな、と思うようになりました。

学校の先生になりたかった山本さんですが、その後どんな学校に進んだんですか?

教員を目指していたにも関わらず、情報系の大学に1期生として進学しました。というのも、推薦狙いでとにかく定期テストの勉強を頑張っていたのですが、高校3年生のときに大失敗しちゃって、教育系の大学の推薦が取れなかったんです……。それで、推薦がもらえた情報系の大学へ進学することにしました。

進学した大学ではどんなことを学びましたか?

うーん、勉強もほどほどに、遊んでばかりいました(笑)。1期生で生徒数も少なかったので同期はとても仲が良くて、さらに一人暮らしだったので、毎日が宴会のようでした!

そんな学生時代を経て、映像ディレクターを目指した理由は?

実は教員への道を諦めたときに「大学への道」と「アニメーターへの道」を天秤にかけたんですよね。そのことを大学3年のとき、将来のことを考えていて思い出しました。アニメーターに興味を持ったのは、12歳のときに初めて観た大友克洋監督の『AKIRA』の影響です。

アニメーターを目指しながらも、なぜ映像ディレクターになったのですか?

きっかけはベタなんですけど、自分が学生だった頃の広告ってイケてたんですよ。特に箭内道彦さんが作る広告がカッコよくて、広告業界に憧れていました。それで大学卒業後、広告制作会社に就職しました。広告代理店ではなく制作会社に入ったのは、単純に入りやすかったからです(笑)。

プロだからこそ期待以上の企画を!

山本さんの代表作を教えてください

大分県のPR動画『シンフロ』と日産自動車のWebCM『THE PROFESSIONAL OF JAPAN』です。
『シンフロ』は自治体PRムービーの成功事例として当時たくさんのメディアに取り上げられました。そのおかげで、県外からの依頼が増えました。また、ACCゴールド、OCCグランプリ、FCCグランプリ、ギャラクシー賞などをいただきました。
『THE PROFESSIONAL OF JAPAN』は海外のOneShow、Clio、SPIKES、ADFESTなどを受賞したので、それでまた仕事が増えました!

それらの仕事から得たことは何ですか?

どちらも準備・撮影・編集でトライ&エラーを繰り返して、作品の精度を上げていきました。その結果、誰も見たことがないような作品に仕上がったので、そういった地道な過程が大事なんだと知りました。

逆に仕事で失敗をしたことはありますか?

撮影前日にお酒をたくさん飲んでしまい、二日酔いのコンディションで撮影に行ったことがあります……(汗)。プロデューサーにめちゃくちゃ怒られて、レギュラーの案件から外されてしまいました。今でも反省していて、携帯電話の待受画面にも「断酒」と書かれています。「量を減らす」くらいの意味で解釈していますけどね(笑)。

仕事をしていて、一番興奮するのはどんな瞬間ですか?

面白い演出コンテを描けたときが一番興奮します! 漫画家が面白いネームを描けた感覚に近いのかな? とにかく早く世に出したい気持ちでいっぱいになります。それと地味な話ですが、エゴサーチして、たくさんの人の良い反応を見ると「あー、この仕事がんばって良かった!」と感動します。

普段作品を作るうえで、もっとも大切にしていることは何ですか?

企画からジャンプアップさせる演出コンテを描くことですね。企画を生かすも殺すも、まずは演出コンテです。それと、自分で考えたアイデアは何かのマネになってないか? リファレンスがある企画でも何か一つでもオリジナリティはあるか?と、何度も確認します。せっかく苦労して作った映像も、パクり疑惑などで台無しになる世の中ですから。

パソコンはふたつの「そうぞう」を生み出す

お仕事ではどんなツールを使っていますか?

映像編集をするパソコンと、演出コンテを描くタブレットがメインです。スタッフとのメッセージや仕事メールのやり取りにはスマホを使っています。外出先でも制作進行を確認できるので助かります。それから、タブレット用のノートアプリもよく使います。とにかくサクサク作業できるので重宝してますし、このアプリのおかげでペーパーレスな環境で仕事ができています。

パソコンを選ぶときは何を基準にしていますか?

レンダリングなどで時間がかかると、その積み重ねがロスになるので、スペックを重視しています。編集室やMAV(Multi Audio Video)スタジオなども、スペックが低い機材を使っているところは、なるべく選ばないようにしています。

山本さんにとってパソコンはどんな存在ですか?

「想像」と「創造」を生み出すツール。17年前から映像業界にいますが、CGや編集機能やプラグインの進化スピードの速さを体験してきました。ディレクターとして表現できる幅が広がったのは、その進化のおかげです。

クリエイターは「唯一無二」を目指せ!

山本さんにとって「クリエイティブ仕事道」とはなんですか?

プロ意識を持って、オリジナリティを追求することです。誰かの真似は素人にもできますが、新しい表現を模索すること、誰にも真似できない自分だけの得意分野を持つことが結果につながりました。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

僕は演出職に就いたのが32歳と遅い方でした。何事もやり続けるとチャンスは巡ってきます。まずは自分の得意なスタイルを見つけてください。そして、そのジャンルを徹底的に研究してください。どのジャンルも絶対に未開拓な表現は残っていて、その気づきが最強の武器になります。僕は武器を手にするのに時間はかかりましたが、そのおかげでどこに行っても戦えています……多分(笑)!

山本さん、ありがとうございました!

好きなことをやり続ける!

遅咲きだったという山本さんですが、自分の得意なジャンルを突き詰めたことで、社会に影響を与える作品を次々と世に出しています。好きなことをやり続けることは、時に挫折しそうになることもありますが、諦めずに突き進むことできっと実になるでしょう!

クリエイタープロフィール

山本ヨシヒコさん
映像ディレクター
1979年生まれ。広島県福山市出身。実家が銭湯。広告制作会社を経て、2018年よりフリーランス。「何が一番面白いか」「何が一番価値があるか」を取捨選択し、アイロニーな映像表現を得意とする。大分県のPR動画『シンフロ』や日産自動車『THE PROFESSIONAL OF JAPAN』を演出。
http://l-mg.jp/member/yoshihiko_yamamoto/

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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