どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはCGアーティストの小西芽衣さんです。哲学を学んでいた大学生が一念発起し、グラフィックを学ぶためダブルスクールに。会社勤めを経て独立後、フリーランスとして活躍しています。
小西さんは注目される若手CGアーティストのひとりですが、なぜここまで素晴らしい作品が作れるのでしょうか?そこには小西さんの仕事に対する哲学がありました。
小西さんが携わった作品
国内外の数々の賞を受賞している小西さん。2020年5月には「映像作家100人2020」に選出されています。
「COUNTDOWN JAPAN 19/20」ではイベント会場で流れた全478本の映像を担当。ターニングポイントとなる仕事のひとつだったそう。
小西さんが仕事をするうえで最も大切にしているのが“勉強”。勉強時間に比重を置き、インプットを怠りません。インプットした知識や技術は、後々大きな宝になります。
手に職をつけるため、ダブルスクールの道へ
小西さんは幼い頃、どんな職業に憧れていましたか?
小学生の頃は小学校の先生になりたいと思っていましたが、中学校・高校へ進学するとデザイナーという職業にも興味を持つようになりました。中学校・高校ではラクロス部に所属し部活に明け暮れる日々。そして高校時代にはAmebaブログで有名になり1日16万PVの有名ブロガーに!そこから多くの雑誌やメディアにでるきっかけになったんです。
そこからどんな学校へ進み、どんなことを学びましたか?
聖心女子大学の文学部に進学しました。2年生から学科を選択できたので、「自分の生きている意味が知れるのかもしれない!」と思い哲学科に進みました。しかしその後、「手に職をつけたいな」と思うようになり、大学と並行して大学2年の夏休みからダブルスクールでデジタルハリウッド大学のWebデザイナー専攻に通うことにしました。
大学在学中にダブルスクールとはすごいですね!今のお仕事を目指すきっかけはなんだったんですか?
父がアパレルブランドをやっていたのですが、そこでバッグのデザインをすることになったんですね。手描きのイラストをデザイナーさんにデザイン画として起こしてもらった時、「こんなふうに私も作ってみたい!」と感動しました。その経験がきっかけでデジタルハリウッド大学のIllustratorとPhotoshopの講座を受けることにしました。そこでトレーナーさんにwebデザイナーになれるよ!と言われたのをきっかけにWebデザイナー専攻というコースで半年間勉強しました。
デザイナーとして仕事を始めたきっかけはなんですか?
新卒で入社した会社でWebデザイナーとして仕事をしていました。バナーをGIFアニメーションで動かす画像をデザインしたことで、“モーショングラフィックス”に興味を持ち始め1ヶ月ほどAfterEffectsを学べる学校に通いました。そのあとオーストラリアに行き、「他の技術も身につけないとこの先厳しいな」と確信する挫折を味わいました…。帰国後は、映像ディレクターのアシスタントをしたり、映像制作会社で働いたりもしたのですが自分には合わなかったんですよね。
全ての仕事を辞め、フリーランスのWebデザイナーとしての仕事やデジタルハリウッド渋谷校での先生の仕事を少しずつ始めました。2017年ごろからモーショングラフィックスの仕事も増えてきました。モーショングラフィックスをやる中で、「もっとリアルなものを作りたい」とCinema 4Dを触り始め、難しさと完成した時の嬉しさに魅了され、勉強を始めました。それから3DCGにどっぷりハマり、仕事が増えていきました。2019年にはWebデザインの仕事から映像制作の仕事に100%切り替えました。
仕事の時間<勉強の時間=未来の自分
小西さんの代表作を教えてください
昨年末に幕張メッセで行われた『COUNTDOWN JAPAN 19/20』のメインループ映像とNEXT ARTIST映像、会場装飾映像の全478本をひとりで制作したお仕事です。全ての映像素材の数は1000本以上で、達成感と感動が他の仕事では味わえないものでした!
CGアーティストとして活躍するターニングポイントはありましたか?
直接的な仕事ではないですが、「COUNTDOWN JAPAN 18/19」の装飾映像コンテストで最優秀賞を受賞したことをきっかけに映像の仕事がどんどん増えていき、WebデザイナーからCGクリエイターになりました。2019年からはCGクリエイターからCGアーティストとして自分の表現したいものを仕事として世の中に受け入れてもらえるようになりました。
そこから何か得られましたか?
4日間で18万人以上を動員する幕張メッセの全ての会場・通路・ステージの映像が、私の作った映像ばかりになっていて、自分の作った作品の世界に包まれる感動はとても凄いものでした。大好きなアーティストを見ながら自分が作った年越しのカウントダウン映像を会場全ての人が見ている時にもすごく感動しました。最終日には1番大きいステージ上で紹介してもらい、私が立つことがないはずの場所でスポットライトを当てられていたのは想像もしないことでした。毎日コツコツやることがここまでのご褒美をくれるとは思っていなかったので、努力は無駄にならないんだと確信を得ることができました。
すごい経験ですね!逆に、仕事で失敗した経験はありますか?
オーダーされる修正を断らずにとことん付き合った結果、身体を壊してしまったことです。駆け出しのフリーランスは、どんな仕事でも受けるべきだとは思いますが、理不尽な要望を何度も言われることがないわけではありません。今は場合によりお断りする勇気も身につけられるようになりましたが、このような仕事で負った傷は忘れられません。
仕事をしていて、一番興奮する瞬間はどんな時ですか?
CGアーティストとして活動をはじめてから3年、毎日勉強を欠かさず作品としてアウトプットすることにしています。最近は技術を習得することのゴールがだんだん見えてきて伸びている感覚がなくなってきました。そこで『1week project』という1週間で1分間のストーリーのある作品を作ることをスタート。その作品ではサードパーティのものや、既にある素材を使わずに自分で一から制作することにこだわっています。その作品の素材を作り終え、一本の作品に組み立てて音楽と合わせ、想像していたものより良くなった時に、一番興奮し感動します。
仕事をするうえで、もっとも大切にしていることは何ですか?
普段の仕事では自分のことをアーティストとして正しく評価してくれる人との仕事のみの受注に絞り、1日の90%以上の時間を新しい技術のインプットや勉強の時間に充てるようにしています。今の技術で100万円の仕事をするよりももっと先を見て、勉強にしっかり時間を割くように心がけて、ブレずに自己の研鑽を怠らないようにしていければどこまでも先に行けると思っています。
愛用品は自作PC
現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?
オフィスには下記構成の自作PCを2台置いています。
PC1
CPU | AMD Ryzen 9 3900X |
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グラフィックカード | GeForce RTX 2080 Ti |
マザーボード | ASUS ROG Strix X570-E Gaming |
メモリ | G.Skill Trident |
PC2
CPU | intel Core i7 9700K |
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グラフィックカード | GeForce RTX 2080 Ti |
マザーボード | ASUS Prime |
マウスはロジクールのトラックボールマウス、モニターはLGの4K(解像度3840×2160)のものを使用しています。
PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。
最近新しいパソコンを買いましたが、GeForce RTX 2080が搭載されたノートパソコンを自宅用に買いました。制作する際はできるだけ高性能なグラフィックボードが良いと思っています。
オススメの裏技などはありますか?
最近iPadのNoteshelfというアプリで絵コンテやToDoリストを書いたり、勉強のメモをしたりして毎日使っています。描いたものをEvernoteで見ることができ、デスクトップPCで作業しながらすぐに見ることもできるので便利だと感じています。また、デザイナー時代からAdobe製品を使い続けて研究してきたので、Photoshopなどでショートカットを組み合わせて最速で作業をすることができます。
探究心を忘れず楽しめ!
小西さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?
仕事道は“どこまで上を目指すのか”という目標にも関わってくると思います。2015年頃は出社前に1〜2時間勉強していましたが、年々増やして、2019年には4時間勉強、3時間仕事という比率になり、2020年に入ってからは6時間勉強、1時間仕事という比率になりました。勉強時間を増やすことで後々、作業が物凄く効率的に早くなり、仕事の作業時間を減らして収入を増やすことができるようになります。仕事時間が減った分だけ勉強に回すことができるようになれば、「この先どんな仕事でもやっていけるのではないか」という自信にもつながります。
クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!
「やってみよう!」と決めてから最初の1ヶ月が1番辛いです。とても苦しいです。ただ、そこを耐えて乗り越えた人だけがその道のプロになれるチャンスを得た人だと思います。毎日少しずつ勉強していくうちに、1日目には出来なかったことがどんどんできるようになります。人と比べずに、前日の自分とだけ戦って、探究心を忘れず楽しむことが何よりも大切だと思います。頑張ってください!
小西さん、ありがとうございました!
大切なのは学びの時間を惜しまないこと
インプットとアウトプットを繰り返すことで、自身の鍛錬にもなり、また仕事に繋がるという小西さん。日々進化する分野だからこそ、学び続けることが重要なんですね。この考え方は、どのジャンルにも通じる“仕事道”だと感じました!
クリエイタープロフィール
小西芽衣さん
CGアーティスト
Yahoo! JAPAN、Amazon Japan(WEBデザイナー)を経て、現在フリーランスCGアーティストとして活動。 ROCK IN JAPAN FESTIVAL、COUNTDOWN JAPANなど国内最大級の音楽フェスのCG映像を担当。 スターバックスでの個展や、International art fairやSICF、上海ART BOOK FAIRなど国内、海外で展示を行う。 アジアデジタルアート大賞、CSS DESIGN AWARDS “SPECIAL KUDOS”、DESIGN AWARDS ASIA “DESIGN OF THE DAY”等 受賞歴多数。2020年映像作家100人選出。 新しい技術を習得すること自体に楽しみを見出し、毎日アートを制作する筋トレのようなプロジェクトを進行中。
HP : https://generativeartstudio.tokyo/
Instagram : https://www.instagram.com/mei_konishi/
[ネクスマグ] 編集部
パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。