どうしたら憧れのクリエイターになれるのか?その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストは映像作家の端地美鈴さんです。

クリエイター最終更新日: 20220914

映像作家: 自分で見て、触れたものが、いつか自分の作品に

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか?その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストは映像作家の端地美鈴さんです。京都芸術大学を卒業後、助手として大学で一度働き、その後再び東京藝術大学大学院で学び直しをしたという端地さん。鉛筆と消しゴムを使った独特の映像手法でくるりのMV等で活躍しています。

端地さんが携わった作品

くるり「Remember me」MV

くるりの楽曲「Remember me」のMVは「鉛筆で描いたイラストを消しゴムで消す」という端地さんの代表的な手法で楽曲の世界観を表現しています。

田中ヤコブ「膿んだ星のうた」Official Music Video

田中ヤコブさんとヴァイオリンの亀谷希恵さんの楽曲「膿んだ星のうた」のMVも、端地さんの代表的な手法で制作されています。

「夜の道路工事」

東京藝術大学大学院映像研究科 アニメーション専攻 修了作品 。ひっそりと始まり、朝方には何事も無かったかのように終わる夜の道路工事をフロッタージュを使用してアニメーションで描いています。

エンドロールに表示されることを夢見て

端地さんは小さい頃、どんな仕事がやりたいと思っていましたか?

小さい頃は漫画のキャラクターを模写するのが好きだったので、漫画家に憧れていた記憶があります。高校生になると、劇場アニメーションをレンタルビデオ屋で借りてたくさん観ていたためか、自分の名前がエンドロールに表示されるような仕事に憧れを持つようになりました。

エンドロールに表示されるって憧れですよね。その夢に向かってどんな学校に進学しましたか?

具体的な夢は未定でしたが、京都芸術大学(旧・京都造形芸術大学)の情報デザイン学科のイラストレーションコースに進学し、イラストレーション、デザイン、アニメーション、絵本などを勉強しました。卒業後は一度社会人を経て、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻でアニメーションについて、再び学び直しました。

京都芸術大学時代はどんな学生生活を送っていましたか?

アルバイトをしながら課題提出に追われる学生生活を送っていましたが、その合間で展示を見に行くのが好きでしたね。

なかでも、現代美術家のウィリアム・ケントリッジの作品展に行ったことは卒業制作で鉛筆でのドローイングと、消しカスを使用した手法のアニメーションを始めたきっかけのひとつになりました。

ケントリッジの作品が端地さんの作品作りに影響を与えたんですね。今の仕事を目指すようになったきっかけは何ですか?

卒業後、母校の研究室で助手として働いていた時に、卒業制作を見てくれた大学の先生からMV制作の仕事をいただいたのが最初だったと思います。「個人制作のアニメーションが仕事になるのだな」と初めて実感しました。制作後から徐々に展覧会への出品や取材の際に肩書きを問われるようになり、「映像作家」として認知されたいなと思い始めました。

クライアントワークでも目標を持って挑む

端地さんの代表作を教えてください。

はじめに紹介した、くるり「Remember me」MV、田中ヤコブ「膿んだ星のうた」MV、「夜の道路工事」です。

端地さんにとってターニングポイントとなった作品はなんですか?

くるりの「Remember me」MV制作です。たくさんの方に見ていただける作品となりました。

その仕事には、どんな“学び”がありましたか?

初めての仕事として行ったアニメーション制作だったので、打ち合わせ→絵コンテ制作→撮影→編集という、自分以外の方を通したアニメーション制作の流れを体験しました。

MVを制作してから10年近く経った今でも「まだ見ているよ」「とても好きです」と声をかけてくださる方もいて、作品を長く大事にしてもらえることの喜びも初めて知りました。

初めての仕事で、大きな学びがあったんですね。仕事で失敗をしたことはありますか?

アニメーションの完成データを納品する〆切に間に合わなかったことです。

制作はとても時間がかかるものですが、自分の制作ペースが掴めず、関係者へ迷惑をかけることがありました。それ以降、作業工程ごとにスケジュール組んだり、残りの日数を工程表に記入して緊張感を持たせたり、スケジュール管理を心がけています。

作品へのこだわりと、スケジュールの間で悩みますよね。ところで、仕事で一番エモーショナルになる瞬間はどんな時ですか?

スケッチや絵コンテを描く工程が好きなので、その中で色々模索していく工程がふつふつと小さく興奮しているのかもしれません。歩いている最中や、お風呂やベッドの中など机以外の場所で解決策を思いつくこともあるので、その時は「やった〜!」という気持ちです。絵コンテ制作の段階では、ほぼ全ての流れを想像できるように描いているのですが、実際に撮影した際にそれ以上のものになっているととても嬉しいです。

端地さんが仕事で大切にしている事を教えてください。

クライアントワークであっても、必ず自分の中で課題のような、目標のようなものを持つようにしています。「このカットを全力で作りたい」「この描き方を試してみたい」「こういう雰囲気は絶対に伝えたい」など小さいことも含めて自分の中に到達点があると、制作後に振り返った時、何か得られているのではないかと思います。

長く使うのでスペックは積むだけ、積む!

現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?

ノートPC

CPU 3.2GHz 8コアCPU
メモリ 16GB
ストレージ 1TB
モニター 13インチ

撮影用ノートPC

CPU 2.4GHz Intel Core 2 Duo
メモリ 2GB
ストレージ 250GB
モニター 15インチ

編集用デスクトップPC

CPU 3.4GHzクアッドコアIntel Core i5プロセッサ
メモリ 32GB
ストレージ 1.9TB (外付けSSD: BUFFALO SSD-PG1.9U3-WA)
モニター 27インチ

絵コンテ・Vコン制作用タブレット端末

CPU 2.38 GHz 6コアCPU
メモリ 4GB
ストレージ 512GB
モニター 12.9インチ

PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。

パソコンにあまり詳しくないのですが、一度購入すると長く使い続ける傾向があるので、お財布と相談しながら、スペックは積めるだけ積むつもりで購入しています。

また、撮影用のノートPCは、撮影時にシャッターを押したり撮影したファイルを保存したりすることができる撮影用ソフトを使用する用途に限られるので、古いノートPCを利用しています。

ワクワクしたことは作品に繋がる

端地さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?

「道」なので、長く続いていないといけないような気がします。

長く続くにはどうすればいいのか?それはまだ模索中ですが、休憩を挟んだり、ゆっくりペースになったりしながらでも、続けることに意味があればいいなと思います。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

多くの人たちが既に言っていることですが、できるだけ自分の足で色んなものを見る、体験に行くというのはコロナ禍であっても大事なはずです。行動にともなった感情や考えは消えにくく、自分の中に深く残るのではないかと考えています。そして、わくわくするものに出会えたなら、自分の制作に活かすこともできるので、どこかに行ってみて損をすることは一つもないのではないでしょうか。

端地さん、ありがとうございました!

とにかく自分の足と目で作品に触れる

コロナ禍であっても、自分の足と目で多くのものを見たり体験したりすることが大切だという端地さん。特に若い頃に衝撃を受けたことは、生涯ずっと心に残ります。昨今は色々な手法でクリエイティブな作品に触れることができます。多くの作品に触れ、そして自分の作品に投影してみてはいかがでしょうか。

クリエイタープロフィール

端地 美鈴さん
肩書:映像作家
京都・横浜を拠点に活動する映像作家。紙への鉛筆でのドローイング、消しゴムの消しカスを使用したアニメーションを独自の表現方法として確立。身近な素材を用いて制作する手法で、ミュージックビデオ、 プロモーションビデオなどを制作し、アニメーションワークショップ、プロジェクションマッピングのためのアニメーション制作にも携わる。

HP:https://misuzuhashiji.com/

Twitter:https://twitter.com/su_hashiji

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG [ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる !」「みつかる!」記事を書いています。

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