どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストは朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』のオープニングアニメーションを担当した竹内さんです

クリエイター最終更新日: 20220627

アニメーション作家: インプットの時間がクリエイティブの力を育てる

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストは朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』のオープニングアニメーションを担当した竹内さん。なんとなくフリーランスになったと言いますが、実は幼い頃から信念を持って物事に向き合っていたようです。

竹内さんが携わった作品

NHK・朝のテレビ小説『カムカムエヴリバディ』のオープニングアニメーション。関係するスタッフも多く、1からコンセプトを決め、大きな成長となった作品です。

竹内さんが学生時代に作った『オオカミとブタ』。複数の写真をつなげて、写真の中と外をリンクさせる新たな手法を使っています。

学生時代に製作した作品がYouTubeでバズる

竹内さんが子供の頃なりたかった職業はなんですか?

小学校ではマジシャン、中学校ではゲームデザイナーになりたかったです。

どちらの職業も「その世界だけの独自のルール」というのが共通していると思います。マジックだと「カードが消える、移動する」、パズルゲームだと「同じ色をそろえたら消える」などのルール(現象)がありますが、それは日常生活では使わないわけで、そういう独自の世界ルールを作ることに面白さを感じていたんですよね。今でも、僕の映像でも他では見たことがない表現というのを目指しています。

幼い頃から同じ思いで持ち続けているんですね!その夢に向けてどのような学校に進学しましたか?

高校生3年生のときに「グラフィックデザイナーになりたい!」と思いましたが、デッサンの勉強はしてなかったので美大の受験はあきらめました。そこで九州芸術工科大学の芸術工学部という学科のある大学に進学。芸術も扱う理系の大学で、そこでは主にデザインを勉強しました。大学3年生のときにコマ撮りをはじめ、アニメーションの勉強をしたいと思って武蔵野美術大学院のアニメーションコースに進学しました。

そこではどんな学生生活を送りましたか?

大学ではサークルにいくつも入って、映像を作ったり雑誌やポスターデザインをしたり、学園祭の企画をやったり、一年中ずっと作品を作っていて忙しかったです。その中でコマ撮りも始めました。色んな作品を作ることで自分の好みや得意不得意が分かってきたと思います。

今のお仕事を始めたきっかけはなんですか?

もともとコマ撮りの仕事をどうやるのか分からなかったし、フリーランスという働き方も知らなかったので、卒業後は映像制作会社に就職するつもりでした。大学院を卒業してしばらく働かないで自主制作を作っていた時期があって、その間に大学時代の作品『オオカミとブタ』がYouTubeでバズったんです!それが2010年のことで、そこから仕事の依頼が来るようになりました。それをきっかけに、働き方もよく分からないままフリーランスの映像作家になりました。

仕事はポーカーゲームのように進める

竹内さんの代表作を教えてください

学生時代に作った『オオカミとブタ』です。

ジョイナー写真と呼ばれる、複数の写真をつなげてパノラマの風景をつくる写真作品を作ったときに「これをコマ撮りにしたら面白いのでは?」と思って作りました。

当時はコマ撮りといえば人形アニメやクレイアニメが多い印象でしたが、「もっと違うコマ撮りのやり方があるはず!」と思っていました。手法の新しさと、写真の中と外がリンクする演出が斬新だとウケました。

竹内さんにとってターニングポイントとなった作品はなんですか?

NHKの朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバデイ』のオープニング映像を作らせてもらいました。そのときアイデア出しを今までで1番がんばりました。撮影でも編集でもどうしたらもっと良くなるか考えて全力を出し切った作品です。

ドラマの放送が終わったばかりなので、この仕事の評価がどう僕に返ってくるか、つまり次の仕事に繋がるかどうか、その結果が出るのはまだ先だと思いますが、僕の知名度はあがりましたし、とても成長できた仕事でした。

その仕事には、どんな“学び”がありましたか?

『カムカムエヴリバデイ』では今まで以上にアイデア出しを頑張ったので、それ以来アイデアを出すのが早くなりました。良いアイデアが一発で出るわけではないですが、リラックスして多くのアイデアを出せるようになりました。筋トレと同じだと思います。アイデアを出す筋肉が鍛えられましたね。多くのアイデアを早く出せればその中から良いアイデアを選べるし、1つのアイデアから次のアイデアに繋げられます。作品もアイデアも質より量だと思いました。

それは大きな仕事で、大きな成長になりましたね。逆に仕事で失敗をしたことはありますか?

仕事仲間だった友人を怒らせて絶交されたことがあります。怒らせたこともですがその後の僕の対処が良くなかったと反省しています。そのおかげと言うとおかしいですが、人に接するときに気遣いをちゃんとするようになりました。どれくらい成功してるか分かりませんが…(苦笑)。

それは辛い経験でしたね…。そんな竹内さんが仕事で一番感動するシーンはどんな時ですか?

撮影して最初にプレビュー再生を見るときです。撮影ができるまでは本当に動くかなと心配しながら作業するので、実際に動いている様子を見ると興奮と同時に安堵の気持ちもあります。

面白いアイデアを思いついたときも興奮しますが、コマ撮りの面白いアイデアとはしんどい撮影するのが必須なので、アイデアを思いついたきは嬉しいと同時に「大変なやつだ」と疲れたりもします(笑)。制作期間の中で楽しいのは一瞬で、あとは苦しい気持ちが大きいです。

生みの苦しみですね。竹内さんが仕事で大切にしている事を教えてください。

広告の仕事では1つの案件にクライアントや広告代理店など様々な人が関わります。それぞれの要望があって予算や締め切りの都合で出来ないことも多いです。そういう状況で自分のやりたい事とその時の企画との最適な着地点を見つけることが重要だと思います。

これはポーカーや麻雀と似てると思います。最初に持ってるカードは自分が持っているスキル、後から手にするカードはその仕事の企画内容や一緒に仕事をするスタッフのスキルです。集まったカードの中で最高の役を完成させないと企画として成功しません。自分のカード(自分がやりたいこと)を大事にしすぎると役が完成しないこともあります。そのつど、最高の役をさがして納品していくことが大事だと思います。

容量やCPUを見ながらアップデート

現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?

ノートパソコン ディスプレイ:13インチ
プロセッサ 1.6GHz デュアルコアintel Core i5
メモリ 16GB
ストレージ 1TB
ペンタブレット Wacom Intuos Medium

PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。

使っていて楽しいという理由で学生時代から同じメーカーのものをずっと使っています。買いたいときのラインナップの中でCPUや容量をあげて購入します。

竹内さんが普段使っている裏技はありますか?

scansnap FI-IX100A

画コンテを手書きで描いてスキャンしてデータにするのですが、これはスキャンの速度が速いし、スキャン範囲を指定しなくてもいいのが楽です。

Dropbox

データ共有サービス。僕は常に全てのデータをDropboxにあげていて、持ってるPCはぜんぶDropboxに同期させています。2つのPCで同時に作業ができるし、PCがクラッシュしても新しいPCをDropboxにログインするだけでデータ復旧可能です。

むしろ“駄作”を作っていこう!

竹内さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?

「漁師は雨の日に網を繕う」という言葉を大事にしています。晴れの日は漁に出て、雨で漁に出れないときは網の修理をする。仕事ができない日は仕事のための準備をするという意味です。

クリエイター系の仕事でフリーランスになると仕事がない時期もあります。そういうときに自主制作を作る、PCソフトの使い方を調べて試す、インプット(映画、展示会、読書)をするなど色々なことをします。そうして仕事が来た時に備える、つねに鍛錬を続けることが大事だと思います。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

学生のうちにいろんな作品を作っておくべきです。駄作でもいいです。むしろ駄作を作るべきです。多く作品をつくるなかで自分の好みや得意なことがわかってきます。そして失敗作をつくると「あれはやってみたけどダメだったな」とわかるので次から失敗しないで済みます。仕事で駄作を作ると次の仕事が来なくなってしまいますが、学生時代なら駄作を作っても経験になるでしょう。

学生時代に様々なことに挑戦しておけば、大人になってから「あれもやってみたかったな」みたいな未練もなくなるし、自分の道に迷わなくなると思います。もちろん1つの道が決まっていたらそれを極めればいいと思います。

竹内さん、ありがとうございました!

学生のうちに失敗をたくさん経験しよう

「仕事はポーカーゲームのように進めていく」と言う竹内さん。幼い頃から仕事の本質を見抜き、その頃から仕事に対する信念は変わっていないようです。そんな竹内さんは「学生時代は失敗をすることで成長できる」と言います。ぜひ今からたくさん作品を作って、自分の得意なことを見つけてください!

クリエイタープロフィール

竹内泰人さん
アニメーション作家
1984年愛知県生まれ。学生時代に制作した自主制作『オオカミとブタ』が、YouTubeの10日間の再生回数100万回を突破し、世界中で話題になる。 その後、CMをはじめとした多数の広告映像を手がけ、2011年には、コマ撮りのHOWTO本『つくろう! コマ撮りアニメ』(ビー・エヌ・エヌ新社)を出版。日本を代表するコマドリスト(コマ撮り映像監督)として活躍中。シャチハタ「Xstamper 50th スペシャルムービー」はADFEST 2016 ブロンズ、ACC 2016 ブロンズなど多数の賞を受賞。

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG [ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる !」「みつかる!」記事を書いています。

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