

どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアニメーション作家の鋤柄真希子さんです。大学院でアニメーションを制作し、そのまま生業として現在に至ります。クリエイティブな作品を産み続けるには、日常の中のある気づきが大切なんだとか。その秘密を教えていただきました。
鋤柄さんが携わった作品
深海で暮らすマッコウクジラとダイオウイカを描いた『深海の虹』。蓄光塗料や蛍光塗料を使い、様々な光を表現しています。
制作パートナーの松村康平さんと初めての共同で制作した『雪をみたヤマネ』。鋤柄さんがオリジナルの脚本制作に初めて挑戦した作品です。
夜間コースで出会った様々なバックボーンを持つ人たち
鋤柄さんは幼い頃、どんな大人になりたいと思っていましたか?
具体的になりたい職業はありませんでしたが、漠然と絵を描きたいなと思っていました。通っていた保育園で自由にたくさんお絵描きをさせてもらえ、それが楽しかったからかもしれません。小さい頃はあまり遠い未来のことは考えていなかったように思います。
そこからアニメーション作家を目指すようになり、どのような学校へ進学しましたか?
高校を中退したので大学進学は無理かなと思っていました。でも、やはり「絵を描きたい!」という思いがあり、大検取得後、デザインや建築が学べる大学の夜間コースに進学することにしたんです。夜間コースには様々な経歴を持つ人がいて、年齢層も幅広く、生きていくにはいろんな方法があるのを知ることができました。その後大学院へ進学したので結局10年ほど大学に在籍しました。
大学ではどんな学生生活を送りましたか?
大学生活の前半は、普通に友人たちとのキャンパスライフを楽しんでいました。学校という場に戻って来られたことが嬉しくて、いろんな授業を受講していたんです。
アニメーション制作をするようになってからは、近隣の芸大の図書館に通ってアニメーション関係の書籍やDVDを物色していました。小中高とずっと通信簿に「意欲が無い」と書かれていたので、アニメーションに対する情熱は自分でも驚きました。
大学で本当に好きなものに出会えたんですね。そこからアニメーション作家を目指すようになったのには、何かきっかけがあったのでしょうか?
大学3回生の時に映像の課題があり、初めてアニメーションを制作したことです。それまでアニメーション作品は好きでよく観ていたのですが、実際に作ってみて「あれ?アニメーションって作れるんだ!」とびっくりしました。自分で作れることを発見してからは、作りたいものが次々と溢れてきました。アニメーションを生涯の仕事にしようと決意したことはありませんが、気がつけば15年以上制作を続けています。自分の中に溜まった感情や思考をアウトプットするのに、アニメーションというツールは私にピッタリだったんだと思います。
制作パートナーとの共同作業で感じたモノ作りの楽しさ
鋤柄さんの代表作を教えてください
2019年に完成した『深海の虹』です。深海を舞台にマッコウクジラとダイオウイカを描いた作品です。蓄光塗料や蛍光塗料で素材を作り、マルチプレーン撮影台を使って、様々な光の表現を試みました。それまでもマルチプレーン撮影台を使って制作していたのですが、この作品でこれまで積み重ねてきた技法が成果を生んだと感じました。
鋤柄さんにとってターニングポイントとなった作品はなんですか?
2010年制作の『雪をみたヤマネ』です。制作パートナーである松村康平さんとの初めての共同制作作品です。冬眠中のヤマネが目を覚まし、生まれて初めて雪を見るというオリジナル脚本の作品です。1人では能力的に限界を感じていた部分(主に機材関連)をパートナーの松村さんに補ってもらえてからは、表現の幅が一気に広がりました。
その仕事には、どんな“学び”がありましたか?
脚本を書く上で、ふたりでたくさん話をし、互いの価値観や経験が溶け合い、物語が紡がれていく面白さはなんとも形容し難く、他者と作品を作る面白さが発見できました。さらに20カ国以上で上映され、いくつか賞もいただいたことで、アニメーションを続けていけるかもしれないという手応えを感じた作品でした。実際に制作を続けることはとても難しいことでしたが…。
共同作業で手応えを感じたのは大きな経験ですね。ちなみに仕事で失敗したことはありますか?
アニメーション制作を始めた頃、作品を作ることにばかり専念していました。そのため完成した作品をどうやって人々に届けるかという部分がおざなりになっていました。映画祭での上映はたくさんの人に観てもらえる良い機会なのですが、私の身近な人々(アニメーションにあまり興味がない人たち)には届かなかったんです。その現状をなんとかする努力を、もっと前から始めていれば良かったと後悔しています。
なるほど。そこで色々と発信していくようになったんですね。鋤柄さんが仕事で一番感動する瞬間はどんな時ですか?
アニメーションは何枚もの静止画の積み重ねです。描いている時は静止画なので、動きは想像の中にしかありません。撮影を経て実際に初めて動きを見る瞬間が1番興奮します。自分で描いておきながら、誰かが作ったもののように感じるので不思議です。思うような動きにならなくて苦しむことも多いですが、まれに想像を飛び越えた動きになっていることがあります。
鋤柄さんが仕事で大切にしている事を教えてください。
ちゃんと食べて寝ることです。昔は徹夜で制作したりしていたのですが、今は年齢のせいかコンディションが悪いと全く頭が働きません。学生の頃とは生活も変わり制作にかけられる時間も限られているため、短い時間でもグッと集中できるよう体調管理に気をつけています。
基本はアナログだけど、メモリ&CPU重視
現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?
私は基本アナログですが、13.3インチノートPCと12.9インチタブレットPCで簡単な絵や動画を描くことがあります。
ノートPC
ディスプレイ | 13.3インチ |
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メモリ | 8GB |
ストレージ | HDD 500GB |
タブレットPC
ディスプレイ | 11インチ |
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メモリ | 8GB |
ストレージ | 256GB |
撮影や編集はパートナーの松村さんが担当で、スペックは以下の通りです。
ノートPC
ディスプレイ | 16インチ |
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メモリ | 16GB |
ストレージ | 1TB |
PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。
あまり「これ!」というこだわりはないのですが、しいて言えばメモリとCPUを重視しています。
様々なサポートを受けて作品作りを!
鋤柄さんにとって“クリエイター仕事道”とは何ですか?
“考える”ことだと思います。
日常の些細なことの中に永遠の課題が潜んでいることがあります。心に引っかかるものがあるのに、「まあいいか」と済ませてしまうと何も見えないままです。“考える”ことで見えていなかったものが見えてくることがあります。私にとって作品を作るということは、見えなかったものを発掘し、作品として目に見えるものへと昇華させることなのだと思います。
クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!
私の場合、アニメーション制作はお仕事ではなく、自主制作という形になります。自主制作作品で生活費を得ることは、とても難しいのが現状です。しかし制作資金を得るには助成金やクラウドファンディングといった方法があります。社会に出てから自主制作を続けるのは難しいですが、助成金などをうまく活用して、作品を作り続けて欲しいです。
鋤柄さん、ありがとうございました!
暮らしの中の小さな発見を大切に
クリエイティブ=考えること。と言う鋤柄さん。日常のあらゆることを、いろんな角度から観察することで、新しい発想が生まれるとのことでした。暮らしのなかのちょっとした“気になること”に注目して、新しい発見をしつづけましょう!
クリエイタープロフィール
鋤柄真希子さん
アニメーション作家
大阪在住。京都工芸繊維大学後期博士課程単位取得退学。大学在学中よりマルチプレーン技法による手描きアニメーション制作を開始。2008年、処女作『蜉蝣』でNHKデジタルスタジアム今敏セレクション。『雪をみたヤマネ』(2010)、『やまなし』(2011)が国内外の映画祭で上映。2013年、『カラスの涙』で文化庁メディア芸術祭新人賞受賞。5年をかけて制作した『深海の虹』(2019)が世界各国の映画祭で上映されている。現在最新作『LUNATIC PLAN(e)T』を鋭意製作中。
SUKIMAKI ANIMATION主宰。

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる !」「みつかる!」記事を書いています。