どうしたら憧れのクリエイターになれるのかを現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアニメ作家の名取祐一郎さんです。

クリエイター最終更新日: 20220125

アニメ作家:友人とロシア人作家が切り開いてくれたアニメ作家への道

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアニメ作家の名取祐一郎さんです。「動く絵画」をコンセプトに油彩、水彩、クレヨンなど多彩なタッチで作られる名取さんのアニメーション。そのコンセプトにたどり着くまでには、どんなできごとがあったのでしょうか?

名取さんが携わった作品

テレビ東京で放送中の乳幼児向け番組『シナぷしゅ』のコンテンツ『ヒカリの森の黒うさぎ』。好奇心旺盛な黒うさぎの赤ちゃんが、アリや蝶、カエル、リスなど森の生き物たちと出会い、一緒に遊んだり、競い合ってみたりする日常を描いています。

黒うさぎとその仲間たちの切り絵パーツは、表情の変化も楽しめます。

学生時代に見たロシア人作家作品に衝撃

名取さんは子供の頃、どんな仕事がしたいと思っていましたか?

特に何も考えていませんでしたね。ただ絵が好きで裏が白紙になっているチラシに描き続けていました。でも絵を描く事は自然なことで、仕事にするとか、そもそも絵を描いていられる職業についての知識もありませんでした。

そこからどのように絵を描く仕事をするようになったのですか?

高校の時に友達に誘われて入った芸大受験の予備校で美術系の大学があることを知り、今までしたことないぐらいの努力をしました。今まで自分の好きな絵を好きなだけ描いてきましたが、知らない西洋人の像、ティッシュ箱、蛍光灯など、なんの思い入れのないモチーフをひたすら描き続け、怒られ続ける毎日…。時には「絵を描くって何だろう?」と自問自答したり、絵を描くこと自体が嫌になった時期もあります。s3浪して東京藝術大学油絵科に入学しました。今となってはひたすら絵の筋トレをしていた感覚です。辛かった時期ですが基礎はしっかり鍛えられました!

相当努力されたんですね。藝大に入学し、そこからアニメ作家の道に進んだ理由は?

東京の小さなミニシアターでロシアのアニメ作家、ユーリ・ノルシュテインの切り絵アニメーションを見て衝撃を受けたからです。

もともとアニメは好きでしたが、それまでは一般的なテレビアニメしか知りませんでした。ところが「アートアニメ」というマイナーだけど変わった手法で作っているすごい作品が世界にはたくさんあることを初めて知ったのです。ノルシュテインの油絵が動いているような切り絵という手法によって、絵画の技術と大好きなアニメが結びついて「これだ!」と、自分に一番フィットして腑に落ちました。

ユーリ・ノルシュテインに衝撃を受け、どのようにアニメ作家になったのですか?

学生時代からアニメやイラストの仕事をし始め、卒業後も就職せずにフリーで活動していました。もちろん最初のうちはたくさん仕事があったわけではありませんが、徐々に仕事が増えていきました。

鑑賞者の声が原動力!

名取さんの代表作を教えてください

テレビ東京の乳幼児向け番組『シナぷしゅ』で現在放送中の『ヒカリの森の黒うさぎ』です。

大学卒業後に自転車で東京から九州まで行ったり、インドやネパールを1年くらい旅して、ヒマラヤに登りました。そこで土俗的な文化や自然がとても好きだと気づきました。多くの仕事をしてきましたが、その自然体験や子育ての人生経験を存分に生かせるコンテンツにやっと出会うことができました。月〜金のレギュラー放送で2分のアニメを月10本ペースで100話以上作りました。

その仕事から、どんなことを学びましたか?

それまではSNSをあまり信用していませんでしたが、TwitterやInstagramで直に作品の感想をたくさん頂けることがとても驚きでした。自分のことを全く知らない方々からの褒め言葉や意見、お子さんがどんな感じで見ていたのかなど、多く感想をいただけることがクリエイターとしてとても幸せで、作品作りのモチベーションにつながっています。

忘れられない仕事での失敗経験はありますか?

自分の力不足を痛感した思い出したくない仕事はいくつもあります…。全力で作りましたが、自分が納得するクオリティまで届きませんでした。仕事としては納品完了できてOKでも、そうなると精神的ダメージが数ヶ月続きます。

名取さんが仕事で一番感動する瞬間はどんな時ですか?

私はストーリーで作品を作っていくというよりは「こんなシーンを作りたい!」という絵画的欲求が原動力なので、作りたいシーンをうまく組み上がったストーリーで効果的に演出できた時が快感です。そして、その作品を見て頂いた方からの感想を読むのが好きです。

名取さんが仕事で大切にしている事、意識している事を教えてください。

「動く絵画」というコンセプトで作品作りをしています。「アニメ」を始める前に「絵画」から始めた自分の根底の部分なので大切にしています。

自分自身でカスタマイズしてハイスペックに!

現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?

・デスクトップパソコン(27インチ液晶ディスプレイ使用)

・wacom intious(ペンタブ)

・HDDが4つ入るHDDケース

自分でPCをこじ開けて、DVDドライブやHDDをSSDに換装したり、改造して早くするのが好きです。

PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。

ノートPCは使用せずデスクトップのみで作業するので、CPU、GPU、メモリはできる限り性能の良いものを積みます。

AdobeのAfter Effectsを一番使用するので、CPUはマルチコアの性能よりもシングルコアの性能を重視。レンダリング(動画の書き出し)時間が1番時間を取られます。締め切りギリギリでのレンダリング時間はかなり影響が大きいので、そこはお金で時間を買います。予算と相談して、自分で換装できる部分は低いスペックのものを買い、自分自身で付け替えたりもします。ディスプレイの色はadobeRGBをカバーしている良いものを選びます。

自分を掘り下げたことで気づいたプロのすごさ

名取さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?

「クリエイターというものは自分が全て生み出すべき」という風に思った時期もありましたが、自分の仕事を掘り下げれば掘り下げるほど、他の役割の方のプロフェッショナルぶりに感動するようになりました。時代の流れや人と人のつながり、そして自分の技術がうまく合致した時にいい作品が生まれると思います。その流れにうまく乗れるように日々努力するのが良いクリエイターだと思います。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

やりたいことが特になかったら、美術館、アートアニメ、演劇、舞踏、工芸、音楽、料理、ファッション、WEB・アプリ・ゲーム開発、プログラミング、なんでも良いから今までの自分の知らない世界をたくさんのぞいてみましょう。そうすると「こんなのに自分はワクワクするんだ」とか自分の知らない自分を発見できます。自分は海外を長期で旅して、自分の知らない文化に自分の身を置くことで気づくことができました。そして、やりたい方向性を見つけたらひたすら追求すること!

私もあなたもクリエイターはみんなライバル!共にがんばりましょう!

名取さん、ありがとうございました!

好き」なことに、ひたむきに向き合おう

絵を描くことが好きだった少年が、友人に誘われた芸大受験予備校でアートの特訓を受け、今はアニメ作家として活躍。天職への道は、自分の想像とは違ったところから導き出されるのかもしれません。「好き」と思ったことに、とことん邁進し、アウトプットすることが大切ですね。

クリエイタープロフィール

名取祐一郎さん
アニメ作家
ロシアの切り絵アニメ作家ユーリ・ノルシュテインとの衝撃的な出会いをきかっけに、アニメーション制作に情熱を注ぐ。素材に油画、水彩、版画、クレヨン、インクなどを使い、絵具のムラ、手描きだからこそ得られる「味」にこだわり「動く絵画」のコンセプトでアニメを制作。
現在では、テレビ番組のタイトル映像からイラスト、デザイン、企業CM、教育教材など、さまざまな場面で活動。

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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