どうしたら憧れのクリエイターになれるのか?  その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはCMプロデューサーの柳原一太さんです。

クリエイター最終更新日: 20210325

CMプロデューサー:熱量を持ち続け制作した作品はすべての人をハッピーにする

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか?  その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはCMプロデューサーの柳原一太さんです。
柳原さんが手がけるCMは、なぜ人の心に響くのか?その秘密を教えてもらいます。

柳原さんが携わった作品

リクルートポイントのCM「すべての人生が、すばらしい」編。人生をマラソンに例え、ランナーを演じる池松壮亮さんが多様な人生を後押してくれるメッセージ性の高い作品です。

柳原さんのターニングポイント作品となった、リクナビのCM「山田悠子の就職活動」。多くのサポーターが山田悠子の就職を応援する一方で、独り立ちする娘を思いこみ上げるものを抑えるお父さんの姿にグッときます。

新聞記者を目指す途中で見つけたCMプロデューサーの道

柳原さんが子どもの頃、何になりたかったですか?

う〜ん、、すごく野球に明け暮れていたわけでもないですが、プロ野球選手ですかね。あと、漫才ブームの時に漫才師にも憧れた時期がありました(笑)。なんとなく周りの風潮に同調するようにしか未来を考えていない、そんなに強くなりたいものがない平々凡々な子供でした。学校から帰って、テレビを観て、漫画を読んで、ゴロゴロする毎日でした…(汗)。

ご自身では“平々凡々”とおっしゃっていますが、そこからどんな学校へ進学しましたか?

まぁそんな感じの子供でしたので、進路も特に強い希望があるわけでもなく、漠然と受験勉強をしていました。しかし、大学受験に落ちて浪人している時期に、世の中の動向や政治に興味がわき、新聞記者になろうと新聞学科がある大学に進学しました。

新聞学科に進学されたんですね! どんな学生時代を過ごしましたか?

中学校ではサッカー部に入っていましたが、高校は帰宅部で毎日ゲームセンターに入り浸り。ハイスコアを塗り替える日々を過ごしていました(笑)。大学に入ると今度は夏はテニス、冬はスキーのサークルに入りましたが馴染めなかったんですよね。結局、昔の映画観たり、三島由紀夫と安部公房ばかり読んだりしていました。

新聞学科の学生が、なぜCM制作の世界を目指すようになったのですか?

新聞記者になるために就職活動していたとき、ふと「私的な視点や感情を抜くことが報道ではないか」と、迷い始めたんです。そんなときに、CMはフィルムを使用して撮影をしていると知り、“撮影現場”というものに興味を持ち始めました。ちょうどバブルがはじけた頃で、新卒採用しない会社が多い中、応募しているかも不明な会社に電話を1社ずつかけていったところ、会ってくれる人がいたんです。そこを糸口に多くの会社に伺うようになり、この業界や職について知りました。そして、企画にそって詳細なことを詰めていくディレクターよりも、大きな方向づけをするプロデューサーという仕事に面白味を感じるようになりました。

すごい方向転換ですね! CMプロデューサーにはどのようにしてなったのですか?

CMの現場は、プロダクションからプロデューサーとプロダクションマネージャーの2名と、演出家をはじめとする各部署のスタッフを集めて構成されるのですが、プロデューサーになる前の職であるプロダクションマネージャーという職の募集に応募したのがこの世界に入るきっかけとなりました。

伝わるCMは、“熱量”から生まれる

柳原さんの代表作を教えてください

株式会社リクルートホールディングス リクルートポイント「すべての人生が、すばらしい」篇
株式会社リクルートホールディングス リクナビ「山田悠子の就職活動」篇
ライオン株式会社 企業「白い部屋」篇
大塚製薬株式会社 soyjoy「スニーカーを洗った日」篇
株式会社LIXIL インプラス「窓辺の話」シリーズ など

特にターニングポイントになった仕事はありますか?

リクルートのリクナビ「山田悠子の就職活動」篇でしょうか。企画の内容は主人公の就職活動がなかなかうまくいかず、四苦八苦しながら、最後に内定をもらうというもの。ただ、そこにその姿を影ながら応援するサポーターがいるという内容に仕上げました。当初は、内定をもらってハッピーに終わるはずでしたが、一生懸命応援していたのでサポーターは嬉しいけど、同時に別れがせつないという風に変えました。そして、主人公も女性に変えました。最終の上がりを想像して、企画を発展させていけたのがとてもいい経験になりました。

そのお仕事から学んだことはありますか?

企画を見て、最後の仕上がりの映像を想像して、また企画に戻る…。同様に、スタッフィング、撮影までの準備、撮影、編集、絶えず、頭の中で最後と今を行ったり来たり。冷静に、そして熱量を持って変えていくことができるようになりました。

逆に、失敗を経験したことはありますか?

たくさんあります(汗)。撮影の進行をしながら、出演をしていたのですが、髪を切っていて、現場にいなかったこととか。スケジュールがきっちりしない監督に前日にスケジュール確認をしなかったため来てくれなかったとか。スタンドインで入っていてライトの熱さで眠ってしまったりとか。企画の打ち合わせの後に調べ物をするのを忘れていたとか。でも、失敗はするもので、それをどう取り返して挽回するかが重要だと思っています。なので、あまり気にしていません(笑)。

仕事をしていて、一番興奮する瞬間はどんな時ですか?

プロダクションマネージャー時代は撮影がうまくいき、良い絵が撮れた時がその時でした。その日の夜は興奮して眠れなかったですね。ただ、プロデューサーになってからは、撮影よりも、すべてがFIXになるオフライン編集が一番の山だと思っています。動的なものではありませんので、そこまでの感動はなかなかないですね。ただ、オンエアーされて、世の中で話題になり、商品が売れたり、賞をいただけたり、周りの人が幸せになる時が一番幸せです。あと、会社も赤字にはならいない時もうれしいです(笑)。

仕事をするうえで、もっとも大切にしていることは何ですか?

出来上がった映像を想像して、世の中や、自分自身がおもしろいと思うものになるように、なにか新しいやり方、やってない方法をなるべく使うようにしています。そして、すんなり進むことはないので、根気強く諦めず、熱を失わないで作っていくことが大切だと思っています。“人に伝わるなにか”とは、その熱量な気もしていて。そこを一番意識しています。

デスクトップで頭の中を整理整頓!?

現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?

27インチディスプレイ一体型のパソコンと、3年前に購入したノートパソコンです。

PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。

デスクトップとノートを両方使っていますが、画面の大きいデスクトップの方が仕事をまとめやすいです。頭に浮んだことに適したアプリケーションを次々と同時に広げることで、頭の中にちらかっていたことが整理されていきます。当然、スペックは最新モデルの方が動きは早いですが、アプリケーションとの互換性が同時にアップデートされるわけではありませんので、すぐ最新のものを使うようにはしていません。

柳原さんが使っている裏ワザはありますか?

裏ワザというわけではありませんが、スマートフォンのメモとボイスメモはよく使います。通勤途中や街をぶらついている時に、もしくは、お酒を飲みながら人と話したりしている時に思いついたことを書く、もしくは吹き込んでおくのに重宝します。

クライアントと消費者の幸せを繋ぐ仕事

柳原さんにとって“クリエイティブ仕事道”とはなんですか?

アーティストではないので、自分が好きなように作ることが仕事とは思っていません。依頼をもらうクライアント、広告代理店の方々、商品を買う消費者の全員が幸せになることを目指して作ることでしょうか。ただ、みんなの要求をそのまま形にしても、意外と人には響かないので、全員の必要十分条件を満たす一点を根気強く、熱量をもって探して、そこを追求することだと思います。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

自分が作ったもの、関わったものが、世の中の人に伝わる、または感情を動かすものにするためには、世の中や人を知ることが重要です。そして新しいことにチャレンジする姿勢もとても大切です。諦めずに、熱量をもって、自分が目指すところへ行く姿勢が必要だと思います。志をもって、努力することは一番簡単で難しいですが、誰でもできることなので頑張ってください!

柳原さん、ありがとうございました!

熱い志を持って、目標を目指す!

数々の有名CMを手がけてきた柳原さん。“世の中の人に伝わるCMを届けたい”という熱い思いがあるからこそ、人々の心に響く作品が作れるんですね。熱量をもって行動すれば、きっと道は開けるはずです!

クリエイタープロフィール

柳原一太さん
CMプロデューサー・パドル(株)代表
1969年生、東京都まれ。リクナビ、DHC、コニカミノルタなど数々の有名CMを手がける。またその実績が認められ、多くの賞を受賞。CMだけでなく、佐賀県のプロモーションビデオや天童木工のコンセプトムービーも制作。映像にまつわる幅広い分野で活躍している。

パドル(株)
http://www.paddle-inc.com/

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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