どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイター、名古屋造形大学 准教授 外山貴彦さんに直接聞いちゃいます。

クリエイター最終更新日: 20191225

デジタルアーティスト:どうしたら憧れのクリエイターになれるのか?

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストは、文化財に投影するプロジェクションマッピングや、子どもから大人まで楽しめるインタラクティブアートなどの作品を手がける外山貴彦さん。名古屋造形大学メディアデザインコースでは准教授として教鞭をとっています。

外山さんが手がけたデジタルアート作品

「デジタルアート」とは、コンピューターで作り出す現代アートのひとつ。その中でも外山さんは、観客のアクションに作品が反応・変化する「インタラクティブアート」を得意としています。

「宵街映写」/CENTUM

愛知県のテーマパーク「博物館明治村」で毎年上映しているプロジェクションマッピング作品。観客がスマートフォンで専用サイトへアクセスして画面を操作すると、上映される映像の組み合わせが変化する。

『「宵街映写」/CENTUM 2019』上映の様子(博物館明治村、2019年)『「宵街映写」/CENTUM 2019』上映の様子
(博物館明治村、2019年)

まわる、うつる、ひろがる

木製の独楽(こま)を回すと、その位置を上部のカメラが捉え、独楽の動きに合わせた映像がステージ上に投影される。展示する場所や季節に応じて映像が入れ替えられる。

『まわる、うつる、ひろがる』展示の様子(文化庁メディア芸術祭 愛知展「CODE」、2014年)『まわる、うつる、ひろがる』展示の様子
(文化庁メディア芸術祭 愛知展「CODE」、2014年)

なげる、あてる、ひろがる

壁に向かってボールを投げると、36枚のセンサー付きパネルがボールの当たった位置を認識して、そこからさまざまな色・柄の映像と音が広がる。

『なげる、あてる、ひろがる』展示の様子(魔法の美術館、2017年)『なげる、あてる、ひろがる』展示の様子
(魔法の美術館、2017年)

映像表現のおもしろさに惹かれてデジタルアートの世界へ

子どもの頃は何になりたかったですか?

車や飛行機などの乗り物が好きだったので、パイロットになりたいと思っていました。地元の中学校に進学してから絵を描く楽しさに目覚めて、いつか絵の仕事をやりたいと考えるようになりました。

何がきっかけで絵に興味を持つようになったのですか?

ベタですけど漫画ですね。パイロットの夢は諦めましたが、漫画の世界ならパイロットの物語も作れると思ったんです。当時は『超時空要塞マクロス』や『王立宇宙軍 オネアミスの翼』といったSFアニメを夢中になって観ていました。それと中学3年生のときに父が突然、NECのPC-9801というパソコンを買ってきたんです。そのパソコンで『上海』や『大戦略』といったゲームをよくやっていて、今思うとそれがパソコンやパソコンゲームに触れた初めての経験でした。

そこからどのような道に進んだのですか?

美術系の高校を受験したいと学校の美術の先生に相談したら、個人レッスンをしてくれることになったんです。生活指導も担当する先生でめちゃくちゃ怖かったんですけど、特別なデッサンプログラムを組んでくれて。必死にその課題をこなしたおかげで、奈良県にある橿原学院高等学校の美術科に進学することができました。入学してみると、そこにはいわゆるアニメオタクやゲームオタクがたくさんいて「こんなに趣味の合う仲間がいっぱいいる!」と、すごく刺激になりました。ちょうどその頃、マイケル・ジャクソンの『Black or White』のミュージックビデオを見て、そのCG技術の高さにびっくりしました。特に物体がなめらかに変化していく「モーフィング」という技術に感動して、映像表現のおもしろさに惹かれました。それから映像の世界に興味が湧いて、高校卒業後は滋賀県の成安造形大学に進学しました。

成安造形大学ではどのような学生時代を過ごしましたか?

よくサボってましたね(笑)。それでも授業では、デザインの基本からMacromedia(現Adobe)のDirector(マルチメディアコンテンツを制作するソフトウェア)の使い方、映像編集の方法など、制作の基礎を学びました。ゲーム制作会社でアルバイトもしていたので、そこでAdobe Photoshopなどの使い方はひと通り習得できました。大学ではCGクラスを専攻していて、3DCGで作る映像表現のおもしろさや、当時はまだ先進的だった映像のノンリニア編集にハマりました。ゆくゆくは映像に関わるクリエイティブなことをやっていきたい、と漠然と思っていたのですが、ZKM(ドイツにあるメディアアートの研究所)出身の先生の授業で、メディアアートの存在を知りました。そして、ゼミの先生から岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(現岐阜県立情報科学芸術大学院大学、IAMAS)を紹介されて、そのままIAMASへ進むことになりました。

そこからどのように今のお仕事を始めることになったのですか?

IAMAS時代の友人は卒業後フリーランスとして活動する人たちが多く、私も同じように独立して働いていました。26歳のときに京都の専門学校で急遽、代打講師をすることになり、それがきっかけで京都芸術デザイン専門学校と成安造形大学の非常勤講師を務めることになりました。さらに、名古屋造形大学の特任講師だった友人に誘われて、名古屋造形大学の非常勤講師に。その後、情報デザインコース(現デジタルメディアデザインコース)設立時に常勤講師になりました。先生を目指していたわけではなく、気づいたら先生になっていた感じです(笑)。

先生として教鞭をとりながらデジタルアートも制作していますが、どういった経緯があるんですか?

それまでの名古屋造形大学は淡々と授業を積み上げていくスタイルが中心でした。自分自身の経験としてIAMASのようなゼミ形式の授業が楽しかったので、常勤講師になったタイミングで取り入れることにしました。さらに「みんなで作ろう!」という雰囲気を作りたかったので、学生たちと「スイッチ」というユニットを結成しました。スイッチで制作したインタラクティブ作品を初めてお披露目したのが、愛知県児童総合センターで開催された『エキゾチック―ひかりのまち』という展覧会。そこで独楽を使った『まわる、うつる、ひろがる』を展示しました。これがきっかけで、さまざまな場所で作品を展示することになりました。

デジタルアートは作って終わりじゃない

外山さんの代表作を教えてください

全部!と言いたいところですけど(笑)、やはり『まわる、うつる、ひろがる』でしょうか。この作品はハロウィンの季節ならオバケやカボチャが登場したり、冬には雪が出てきたり、展示するごとに進化している作品なんです。ボールを使った『なげる、あてる、ひろがる』という作品も、同じように現在も進化しています。デジタルアートは季節や状況に応じて動きや絵を変化させたり、進化させたりできるので、作って終わりじゃない。しかも、美術館で展示すれば“アート作品”だし、イベントに参加すれば“催しツール”になる。そこもおもしろいと思います。

ターニングポイントとなった作品はありますか?

「electropti」というグループに参加したときに制作した『WAFT』です。東京・青山の「スパイラル」で展示したのですが、たくさんの人に観てもらえて「この方向に進んで間違いない!」という自信につながりました。このときの経験が印象に残っていて、グループ制作の楽しさを今の学生たちにも体験してほしいと思って、スイッチの立ち上げにつながりました。デジタルアートは映像、プログラミング、音楽とやることが多岐に渡ります。それをすべて一人でやろうとすると、すごく大変です。でも、一人ひとりの得意技を集結させたら、きっとおもしろいことができます。そのためにはチームワークが大切なんです。

作品を作る際、一番感動する瞬間はいつですか?

まずは、作品が思い通りに動いたとき。そして、作品に触れた観客が良い反応をしてくれたり、どよめきが起こったときです。それと「感動」とは少し違うかもしれませんが、納期ギリギリになると、変なアドレナリンが出るのか興奮します。『ドラゴンボール』の孫悟空が「ワクワクすっぞ!」と言っているときみたいな(笑)。

普段作品を作るうえで、大切にしていることはありますか?

妥協はしたくありません。とことん突き詰めたいんです。でもグループで作品を作る以上、自分の一存だけでは進められません。その折り合いにはいつも葛藤していますし、もっとも意識しているポイントです。

パソコンはデジタルアートを生み出す魔法の画材

作品を制作する際に使用しているアイテムを教えてください。

最近は作品に用いる映像のレンダリング(≒生成)にWindowsのゲームエンジンを使用しているため、グラフィック性能の高いWindowsパソコンを採用することが増えています。
具体的には、グラフィックカードがGeForce RTX2060以上のスペックのもの、CPUはIntel Core i7かi9で最新のもの、メモリは32GB以上、ストレージは512GB以上のSSDと、Dドライブに2TBか3TBのHDD、といったところです。
インタラクティブ作品を制作するときには、Max8やopenFrameworksなどのソフトウェアを使うこともありますね。

外山さんにとって「パソコン」とはどんな存在ですか?

画家にとっての画材です。筆や絵の具と一緒で、表現するための道具。しかも1台で絵も描けて、音楽や映像も作れる、魔法のような魅力を持っています。その道具を巧みに使いこなして表現する人が、クリエイターなのではないでしょうか。

作品へのダメ出しや批判を受け入れる自信を持ってほしい

外山さんにとって「クリエイティブ仕事道」とはなんですか?

独りよがりではなく、誰かのために作品を作ることでしょうか。作品である以上、誰かを楽しませなくてはいけない。その責任が伴うと思っています。その点ではアートもデザインも一緒です。もちろんダメ出しや批判もあると思います。でもそれは当たり前のことだから、否定的にならず、ポジティブに捉えることも大切。学生たちには「インタラクティブ作品やプロジェクションマッピングを発表したときは、必ずお客さんにまじって鑑賞するように」と言っています。お客さんの生の声を聞いてほしいからです。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

自分の考えや作品を、自信を持って発表してほしいです。否定的なものも含め色々な声が耳に入ってくるけど「否定はされて当たり前」と思いましょう。その否定すらも受け入れるくらいの自信を持ってほしい。そのためには、自信の裏付けとなる技術力や考え方を身につけることが大事です。

外山さん、ありがとうございました!

若いうちは失敗を恐れず色々なことにチャレンジを!

若いうちは失敗しても取り返しがきくから、気になることはどんどん挑戦すべき」と語る外山さん。失敗から新たな発見も生まれるし、次の課題へのヒントにもなります。外山さんも学生たちと一緒に、新しい表現や技術に日々挑戦しています。失敗を恐れず、色々なことにチャレンジしましょう!

クリエイタープロフィール

外山貴彦さん
名古屋造形大学 准教授
1972年、奈良県生まれ。2009年より教員・学生によるユニット「スイッチ」を結成し、作品制作・研究発表を行っている。主な作品は『まわる、うつる、ひろがる』『なげる、あてる、ひろがる』『Motion』など。
https://www.nzu.ac.jp/teachers/rd/toyama/

編集部注:
外山さんはプロジェクションマッピングの作り方に関する記事執筆にもご協力いただきました。あわせてご覧ください!
「ミニプロジェクションマッピングに挑戦」
https://www.pc-koubou.jp/magazine/16865
「ミニプロジェクションマッピングに挑戦・テクスチャ―編」
https://www.pc-koubou.jp/magazine/18774
「ミニプロジェクションマッピングに挑戦・サウンド編」
https://www.pc-koubou.jp/magazine/19018

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ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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