どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現在活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。第15回のゲストはアートディレクターの富田美智子さんです。
看護師を夢見ていた少女がアートの道を目指すきっかけとなったことは?アートディレクターの醍醐味とは?
様々なシーンで活躍する富田さんに、仕事の楽しさなどについて教えてもらいました!
富田美智子さんが携わった作品
代々木上原にある和菓子屋さん『和のかし 巡』のブランディングからプロダクトデザインなど、トータルでディレクション。卵、乳製品、小麦粉、添加物なし、甘みはアガべシロップを使用するなど身体にやさしい和菓子を体言するように、シンプルでナチュラルなパッケージはおもたせにもぴったり。
北欧風のエッセンスも取り入れつつ、和のテイストを大切にしたデザインになっています。
看護師志望が、ある写真集がきっかけでアートの道へ!
富田さんが子どものころ憧れていた職業は何ですか?
看護師です。理由はナイチンゲール、そして看護師をしていた母親に憧れていたからです。
夢に向かって、どんな学校へ進学しましたか?
看護師になると漠然と考えていたのですが、高校一年の時に写真集で倉俣史朗の『変形の家具』を見て、将来の夢がデザイナーに変わりました! 看護師を目指していたし、数学が得意だったので迷うことなく理系に進んでいましたが、夢がデザイナーに変わってからは、文系にシフトし志望校も美術系に決定。受験に向けて美術系の予備校にも通い始めました。その方向転換は、親が意見する間もないくらいスピーディーだったと思います(笑)。結果、第一志望だった筑波大学芸術専門学群デザイン科に進学することができました。
大学時代はどんな学生でしたか?
美大ではなく総合大学だったので、その環境を強みにしたいと思い、学部を超えた活動を積極的に行っていました。特に長野県乗鞍で行なった地域活性の活動は、学生らしく泥臭いことを長く続けていました。具体的には、地域に足繁く通い、学生が考えるアイデアを住民にぶつけるというもの。非現実的なアイデアも多かったと思いますが、学生の作品設置やサマーキャンプの誘致など、実現したことも沢山ありました。
大学卒業後はどんな仕事をしましたか?
大学卒業後は地元広島に戻り、2年間作家活動をやりました。そのとき、どうしても作りたい作品があり、2年間と期間を決めて活動しました。作り上げた作品を、様々な場所で展示していく中で、「作って展示するだけでは全く世の中に響かない」と、ふと考えるようになったんです。自分が考えるコンセプトで世の中にインパクトを与えるため、社会に出てビジネスの勉強をしたいと考えるようになりました。これが、私が企業で仕事をしようと思ったきっかけです。
そう思うようになり、どうしたのですか?
アートディレクターを目指しリクルートに就職しました。クリエイティブに理解があり、優秀な人が多い会社なら、総合商社でもメーカーでもどこでも良いと考え就活していましたが、結果的にリクルートに入社。リクルートは、まさに多様な価値観の集まりです。その中で、「自分の価値観を大切にしよう」というスタンスを築くことができました。また、アートとサイエンスの両面を重んじる考え方も、アートディレクターとして大変学びが多かったです。
人と人が直接関わる仕事は面白い!
富田さんの代表作を教えてください
『ゼクシィBaby』のアートディレクションです。ブランドの立ち上げ、サービスの立ち上げ、各サービスを横断したクリエイティブディレクションを担当しました。子ども2人を出産し、復職後すぐに担当した仕事で、自分の経験や感性を信じながらも、データ分析を取り入れて作り上げたブランドになりました。
ターニングポイントになった仕事はなんですか?
2019年の秋にフリーに転身しましたが、そのきっかけになった仕事が『和のかし 巡』のアートディレクションです。リクルートでアートディレクターとして勤めながら、副業として和菓子屋さんのアートディレクションを始めました。個人でお店をやられている方は、「こうしたい」という意志が強くあり、クリエイターとしてその気持ちに応え、デザインを作っていくことにとてもやりがいを感じましたし、純粋に楽しかったんです。大企業では担当者と決裁者が異なることも多く、個人が強い意思を持っていなくても事が進むこともある一方で、確固たる意思を持った方とコツコツ作り上げていくことに面白みを感じました。
その仕事から得られたことはあれば教えてください。
「デザイン、おもしろい!」という純粋な思いです。企業のクリエイティブは、自分のやりたいようにできないところも当然あります。しかし個人同士のものづくりは、両者が納得するまでとことん追求できます。自分で「こんなイメージを作りたい」というものを、手を動かしてデザインしていく作業は、やはり面白いです。
一方、仕事で失敗をしたことはありますか?
すぐには思い浮かばないですが……。強いていうなら、印刷費をケチったことです(苦笑)。個人でお店をやられている方は、クリエイティブにかける予算をできるだけ抑えたいという方がほとんどです。その要望に応えようとするあまり、紙質を落とし、仕上がりのクオリティに少し後悔したことはあった気がします。予算と品質のマネジメントもアートディレクションの重要な仕事だと痛感しました。
仕事をしていて、一番感動する瞬間はどんな時ですか?
同業者から仕事を褒められたときです!
仕事をするうえで、もっとも大切にしていることは何ですか?
自分の感覚を信じて、自分の価値観を大切にすることです!
自分の感性をアップデートしよう!
富田さんにとって“クリエイティブ仕事道”とはなんですか?
自分のスタイルを常にアップデートしていくことだと思います。先ほど「自分の感性を信じることが大切」と述べましたが、その感性は常にアップデートしていくことがとても重要だと思います。自分の感性は、生活の中でしか磨かれません。つまり自分の生活を大切にし、丁寧に生きる……。それに尽きると思います。
クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!
これからの時代、クリエイティブが力を発揮しない業界はないと思います。一方でクリエイターだけがクリエイティブな仕事をする、というわけにはいかなくなります。どんな職業でもクリエイティブな視点が必要となりますし、逆にクリエイターもそれ以外の知識が必要になるのではないでしょうか。
クリエイターになる道が、美大進学やデザイン職への内定だとは決して思わず、広い視野で考えてほしいですね。
富田さん、ありがとうございました!
新しい時代の新しいクリエイター像とは?
クリエイターたるもの、自分自身のアップデートが必要。新しい価値観や情報をインプットし、それを仕事でアウトプットする。これからはハイブリッドな能力が求められる時代になるはず! ひとつの職業にとらわれず、広い視野を持つようにしましょう。
クリエイタープロフィール
富田 美智子さん
アートディレクター
1984年生まれ。筑波大学芸術専門学群デザイン科卒業、東京芸術大学院美術研究科デザイン専攻終了。2011年リクルート入社(アートディレクター職)、2019年フリーランスに転身。現在は、「和のかし 巡」「森山清次兵衛」「Marian」「Trois coffee」などのアートディレクションや各企業のデザイン受託、自身のベビー服ブランド「annebaby」のプロデュースなどを行う。今後は、リノベーションした自宅を、ホステルとして運用していく事業も展開予定。
[ネクスマグ] 編集部
パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。