どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現在活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアートディレクターの佐藤圭さんです。エグゼクティブ向けホテル旅館予約サイト『Relux』や官公庁、NPO、企業が集まって地域や社会の活性化を目指す『コクリ!キャンプ』のアートディレクションを手掛ける佐藤さん。デザインで企業をブランディングするおもしろさとは何なのか? お話をうかがいました。

クリエイター最終更新日: 20210325

アートディレクター:丁寧に仕事と向き合うことが未来へとつながっていく!

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現在活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアートディレクターの佐藤圭さんです。エグゼクティブ向けホテル旅館予約サイト『Relux』や官公庁、NPO、企業が集まって地域や社会の活性化を目指す『コクリ!キャンプ』のアートディレクションを手掛ける佐藤さん。デザインで企業をブランディングするおもしろさとは何なのか? お話をうかがいました。

佐藤さんが携わった作品

全国で90店舗以上展開しているヘアカラー専門サロン「fufu」。親しみやすいイエローとヘアカラーをイメージするブラウンをテーマカラーにし、街中でもすぐ目に入るようにデザインされています。佐藤さんは、ロゴや販促ツールのデザインだけでなく、ブランドのビジョンやミッションなど企業の骨子になる部分から携わっています。

佐藤さんが会社員時代に携わったプロジェクト「コクリ!キャンプ」。様々な色と太さ、長さが集合体になり1本の木になったデザインは、官公庁・地方自治体・NPO・企業など多種多様な団体が一緒に活動する「コクリ!プロジェクト」を体現しているようです。このクリエイティブは、海外の数々のデザイン賞を受賞しました。

福田繁雄氏に衝撃を受けた美大時代

佐藤さんは子どもの頃、どんな仕事を夢見ていましたか?

漠然とですが、サラリーマンにはなりたくないなと思っていました。父親が建築士で、独立して自分の事務所を構えてやっていたので、少なからずその影響を受けていたのだと思います。小・中・高で考えると、医者、プロボクサー、考古学者など、やはり会社勤めではない職業に憧れていました。特段絵を描くことや作ることが好きなわけでも無かったので、まさか美大を目指すとは思いもしませんでしたね(笑)。

そこからなぜ美大に進学したんですか?

高校2年生のときに「本当にやりたいことは何なのか?」と考え、子どもの頃からゲームが好きだったので「ゲームクリエイターになろう!」と思い至りました。そこから進路を調べ、専門学校か美術大学かで迷いましたが、親に大学進学を勧められ美術大学を目指して勉強と実技(鉛筆デッサン・平面構成)の向上に励みました。そして運良く現役で武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科へ入学することができました!

すごいですね! 美大時代はどんな学生生活を送りましたか?

授業は真面目に出て単位を取得し、サークルはセーリング部と軽音楽部に入り、良く学び良く遊び良く飲むという青春時代を過ごしていました。美大はとにかくお金がかかるので、親の負担を減らそうとアルバイトも結構やっていました。貯めたお金を車とバイクの免許取得費用に充てたり、バイクを購入したのは良い思い出です。

よく学び、よく働いたんですね! その後どんなきっかけでアートディレクターを目指すようになったんですか?

美大受験をする過程でさまざまなグラフィックデザイナーを知り、中でも福田繁雄氏の「VICTORY」のポスターを見たときに衝撃を受けました。アイデア、ビジュアル、メッセージ、すべてがミニマルに集約されてひとつの強いメッセージになっていて、「自分もこんな凄いものを作ってみたい!」というのが、アートディレクター・グラフィックデザイナーを目指したきっかけです。すでに入学前に、夢はゲームクリエイターからグラフィックデザイナーへと変わっていました。

今のお仕事を始めた経緯を教えてください。

就職活動時に広告代理店を目指していたのですが採用ならず、そのときに株式会社リクルートが自社ブランドのプロダクト・プロモーションデザインを手がけるアートディレクター候補を募集しており、そこに運良く採用されたことがきっかけです。そこでは商品やサービスのコンセプト・ネーミング・ロゴといったプロダクトの要素、そしてそのプロダクトをどのように世の中に伝えるかというプロモーションの要素、大きくはその二つを学び、実践し、ディレクターやデザイナーとしての力をつけることができました。お陰様で、いまでもその延長線上で仕事をすることができています。

企業・団体のブランディングを幅広く手掛ける

佐藤さんの代表作を教えてください

日本全国に展開している「ヘアカラー専門店 fufu」のブランディングです。立ち上げのときから現在も携わっており、ブランドのビジョン・ミッション・バリューの言語化、ネーミング、ロゴ、店舗サイン、ポスターやチラシ、その他プロモーションや販促ツール一式をトータルに手掛け、いまでは90店舗以上を展開する大きなブランドになりました。

特にターニングポイントになった仕事があれば教えてください。

前職時代に携わった「コクリ!キャンプ」というイベントのクリエイティブです。ロゴデザインを始め、パンフレット、リーフレット、ポスター、サインなどのグラフィックデザインを手掛けました。当時はディレクターとしての立ち回りが多く、自分で手を動かしてデザインをすることはあまり無かったのですが、この仕事ではほとんどを自分でデザインをしました。(ロゴタイプデザインは五十嵐淳子さん)

そのお仕事から得られたことはありますか?

時間的・予算的制約があるなかでも“やり切る”ことの大切さを学びました。イベントが盛況で終わったことが一番なのですが、おまけとして「コクリ!キャンプ」のクリエイティブが海外でたくさんのデザイン賞を受賞したこともとても励みになりました。2015年に台湾国際グラフィックデザインアワード審査員特別賞を受賞したのですが、それがきっかけで独立の意志を確固たるものにしてくれたような気がします。

仕事で失敗をしたことはありますか?

まだ社会人として駆け出しの頃は細かいミスがあったような気がします。でも、「人生終わった…」と感じるほどの失敗は無いですね。

仕事をしていて、一番興奮する瞬間はどんな時ですか?

デザインするものによりますが、アイデアが降ってきた瞬間は「キタッ!」と思います。感動する瞬間は、手掛けたもので売り上げが上がるとか集客が増えるとか、クライアントの事業に貢献できている感じたとき、街中でふと自分のデザインを見たとき、利用してる人を見たとき、これ知ってると言われたとき、サイトがローンチしたとき、受賞のお知らせメールをもらったとき、など色々あります。

仕事をするうえで、もっとも大切にしていることは何ですか?

アートディレクターとかグラフィックデザイナーとかよりもまず、社会人の一人として当たり前のことを当たり前にやるということです。締め切りを守る、ミスをしない、丁寧な応答や対応、素早いレスポンス、ビジネスマナーなど、疎かにならないように気を付けています。

容量を多めにし、作業効率アップ!

今使っているPCや周辺機器を教えてください。

打ち合わせなどで楽に持ち運びができるようにと13インチのノートパソコンを使い始めたのですが、そのサイズでのデザイン作業にも慣れてしまい、かれこれ7〜8年くらい使っています。

ストレージ 256GBSSD
プロセッサ 2.3 GHz Intel Core i5
メモリ 16 GB 2133 MHz LPDDR3
外付けHDD USB 3.0 2TB ポータブルHDDバスパワー 5400rpm

PCを選ぶ際の基準は何ですか?

動画制作をするわけではないので、超ハイスペックなパソコンは求めていません。ただ、写真データの処理は重かったりするので、メモリはなるべく大きめの容量を積むようにしています。そろそろ買い換えようか検討しているところです。モニタサイズは人それぞれの好みで決めれば良いかなと思います。ストレージは250GB~500GBあれば十分で、外付けHDDと役割を分けてデータ保管しています。

丁寧に仕事を突き詰めるのがクリエイター

佐藤さんにとって“クリエイティブ仕事道”とはなんですか?

デザインするものは多岐にわたりますが、いかにカスタマーを動かして、そのクライアントの事業に貢献できるかという点に思考と技術を注ぎ込むことだと思います。アートディレクターやグラフィックデザイナーはアーティストではなく、あくまでも商業的なことを考えてクリエイティブ制作をする存在です。カッコいいもの、カワイイものをデザインしても売れなかったり人が来なかったら意味がないので、常に主観と客観の視点で捉えることを意識しています。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

一つひとつの仕事を丁寧に頑張っていると、それを見てくれている人が必ずいます。その積み重ねで信頼が生まれて、よりたくさんの機会をいただくことができます。どのようなクリエイターになりたいか、クリエイターでいたいかを突き詰めて考えて、自分のありたい姿に向かうために機会をひとつも無駄にしないようにしましょう!

佐藤さん、ありがとうございました!

企業とカスタマーをつなげる立役者

デザイナーはアーティストではなく商業的な仕事をする人。これは、現在仕事をしている人でもつい忘れがちなことです。企業ブランディングやデザインと実直に向き合う佐藤さんだからこそ、企業からの信頼も厚く業績アップにもつなげられるんですね。企業から信頼されるアートディレクターを目指しましょう!

クリエイタープロフィール

佐藤圭さん
アートディレクター・グラフィックデザイナー
2006年に武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業後、株式会社リクルート(現:株式会社リクルートコミュニケーションズ)へ入社。インハウスのアートディレクター/グラフィックデザイナーとして、リクルートおよび同グループ企業のコミュニケーションデザイン全般に従事。2016年に株式会社ナンバーエイトクリエイティブを設立、同代表を務める。
<受賞歴>ドイツデザインアワード2018 受賞/レッドドットアワード2016 受賞/金門国際和平ポスターアワード 銀賞/A’Design Award 2018 銀賞/Indigo Design Award 金賞・銅賞/台湾国際グラフィックデザインアワード2015 審査員特別賞/HKDA香港世界デザインアワード2018 優秀賞など。
http://number8creative.co.jp/

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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