どうしたら憧れのクリエイターになれるのか?その秘密を現役で活躍するアートディレクターの舩越 愛さんに直接聞いちゃいます。

クリエイター最終更新日: 20200427

アートディレクター:日々の努力と探究心が生み出す効果的なクリエイティブ

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアートディレクターの舩越愛さんです。
数々の会社・商品のブランディングやアートディレクションに携わっている舩越さん。思わず手に取りたくなるようなパッケージデザインを手がけています。

舩越さんが携わった作品

丸由水産

福島県いわき市小名浜にある家族経営の水産加工場「丸由水産」のブランディングとパッケージデザインを担当。シンプルで力強いロゴは、いわき沖の「潮目の海」をモチーフとしています。干物商品のパッケージは圧倒的な存在感ですね。

HEPTA

北海道の「しんこう音別」が開発した「HEPTA」は、飛べない鳥エミューから採取した美容オイル。皮脂を構成する7つの脂肪酸をイメージした七角形をシンボルにしたロゴデザインです。

お絵描き好きの少女がグラフィックデザイナーに

舩越さんは子どもの頃、何になりたかったですか?

マンガ家、ファッションデザイナー、イラストレーターなど、絵に関連する仕事です。小さい頃からお絵描きが好きで、漠然とですが「何かを作る仕事がしたいなぁ」と思っていました。クリエイティブな仕事には色々な種類がありますが、当時思いついたのがこれらの職業だったのだと思います。

小さい頃から絵に関わる仕事を夢見ていたんですね。そこからどんな学校へ?

高校卒業後、東京の専門学校のグラフィックデザイン科に進学しました。地方で活躍しているデザイナーもたくさんいますが、高校生のときは「デザインや広告の仕事をやるなら、東京に行くしかない!」と思い込んでいましたね(笑)。当時は「早く自立したい!」という願望もかなり強かったので、早く社会人になれる専門学校を選びました。今となっては、大学進学など他の選択肢も含めてベストだと思う道を検討した方が良かったな、と思いますけど……。

専門学校ではどんな学生時代を過ごしましたか?

成績が良かったかは別にして(笑)、真面目に毎日授業に通っていました! デザイン科だったので課題も多く、苦しみながらデザインしていた記憶があります。友達とグループ展を企画したり、学校のイベントでは率先して運営係をやっていました。また、学校で紹介してもらったデザイン会社でアルバイトをしていたので、デザインやオペレーションを学びつつ、お小遣いも稼いでいました♪

しっかり者! そこから今の仕事を目指すようになった経緯は?

子どもの頃から絵に関する仕事に興味があったのですが、学生時代に自分はイラストがあまり上手ではないと気がつき、途方に暮れていました。そんなときに「グラフィックデザイナー」という職業を知りました。絵が描けなくても「デザインの仕事だったらできるかも!」という単純な考えから今の職業を目指すようになりました。

卒業後はどのような道に進みましたか?

アルバイト先のデザイン会社が私の卒業時期にちょうど人手不足で、運良くそのままアシスタント・デザイナーとして採用されました。就職活動は専門学校の2年生のとき、秋頃から少しだけしていたのですが、数社受けてどこも受からなかったので、アルバイト先のボスが引き取ってくれたようなものですね。ラッキーでした。

コンセプトを掘り下げることの大切さ

ターニングポイントになった仕事を教えてください。

丸由水産のお仕事です。最初にパッケージのデザインをしたのですが、クリエイティブ・ディレクターである弊社社長の西尾にアイデアを数案提案したら「コンセプトが弱い」と指摘されました。そこから再度、クライアントや地域のことをもっと深掘りしてコンセプトを組み立てたところ、もともと作っていたデザインがうまくコンセプトにハマりました。そこで、同じデザイン案でコンセプトを変えて提案したところ、OKをもらえました。この経験は私にとって大きな財産となりました。

その仕事から得られたことを教えてください。

デザインする上で、配色がきれい、整っているなどの見た目の美しさは、とても重要な要素だと思います。ですが「何を表現するのか?」という根本の部分をしっかり考える力がないと、デザインが薄っぺらくなってしまいます。丸由水産のお仕事を通じて、この考え方を学ぶことができました。まだまだ未熟なので「コンセプトを組み立てる力を得た!」とは言いにくいですが、考える力を育てる大きなきっかけになったと思います。

一方、仕事で失敗をしたことはありますか?

失敗は数え切れないほどしているので、何を話せば良いかわかりませんが……。イベント告知のポスターを制作したとき、タイトル部分の英語にスペルミスがありました。似た文字が並んでいたので誰も気がつかずに、印刷後にミスが発覚して刷り直しに(汗)! 一度刷ると修正できないのが印刷の恐いところなので、最近は特に英語はしっかり文字校正するようにしています。

仕事をしていて一番興奮する瞬間はいつですか?

私が関わっている仕事は消費者の声を直接聞けないので、クライアントが喜んでくれたときが嬉しいです。ある案件で、パッケージデザインが完成してしばらく経ってから「そこまで期待していなかったけど、パッケージひとつで売上がこんなに変わるなんてびっくりしましたよ」と喜んでいただけました。個人的にも気に入っていた仕事だったので、自分のデザインが狙ったように機能して、クライアントのプラスになったことがとても嬉しかったです。

仕事をするうえで、もっとも大切にしていることは何ですか?

私はものすごく個性的だとか、独創的なタイプではないので、とにかく「インプット」をするように心がけています。デザインやアートに関することはもちろんですが、今はどんなアイテムやスポットが流行っているのか、おしゃれなレストラン情報など、デザインに直接関係がなさそうなことでも、意外と仕事に役に立つこともあります。好みやセンスが近い人に話を聞いて、新しい情報を教えてもらうことも多いです。

環境は自分に合わせてカスタマイズ

お仕事ではどんなツールを使っていますか?

デスクトップパソコンをメインに、ノートパソコンをサブに使っています。ノートパソコンは打ち合わせにも持っていきます。ペンタブレットは必需品で、WacomのIntuos Proを使っています。

オススメの裏技などあれば教えてください

ハイスペックなものや便利なものがベストとは限らないので、自分に合うように環境をカスタマイズすることが大事だと思います。私の場合は、ペンタブレットは小さい方が使いやすいですし、ショートカットも必要なものだけわかれば良いと思っています。

舩越さんにとってパソコンとはどんな存在ですか?

パソコンがなければ仕事にならないので、なくてはならない存在ですね。昔は手作業でデザインをしていた時代もあったと思いますが、私の世代はパソコンが必須だったので……。パソコンがない環境は想像もできません!

努力と探究心を忘れずに!

舩越さんにとって「クリエイティブ仕事道」とは何ですか?

私はもともと好きなことを仕事にしている人間なので「クリエイティブ」が公私両面での価値基準になっているような気がします。プライベートでも「こっちの方がクリエイティブが良い」とか「クリエイターとしてはこうあるべき」といったように選択しながら考えることが多いです。「仕事を全て忘れてのんびりしたい!」というときでも「クリエイティブ」からはどうしても離れられないですね(笑)。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

クリエイティブな思考を常に持つことは、とても大変なことだと思います。ですが、私のような凡人であってもコツコツと努力を重ねていけば、自分も周りも納得できる仕事を世に送り出せます。探究心を忘れなければ、自分の目指す姿に少しずつでも近づけます。技術は後からついてきます! 日本のクリエイティブ業界を盛り上げてくれる若いパワーに期待しています。

舩越さん、ありがとうございました!

「天才」じゃないからこそできる仕事

「自分は天才肌ではない」と言う舩越さんですが、だからこそ熟考を重ねてクライアントや消費者の心を動かすデザインを生み出しています。考え抜いて、努力を続けていけば、きっと人々の琴線に触れる仕事ができるはずです!

クリエイタープロフィール

舩越 愛さん
アートディレクター
1985年生まれ、群馬県出身。
専門学校のグラフィックデザイン科を卒業後、デザイン会社2社を経て、TRACKS & STORESに入社。
現在アートディレクター/デザイナーとして様々なデザインに関わっている。

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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