Ryzen Threadripper 3990X を徹底ベンチマークレビューいたします!「64コア/128スレッド」を搭載した、第3世代Ryzen Threadripperの最上位モデルの実力をRyzen Threadripper 3970X や 3960Xと比較しレビューしますので、ぜひご覧ください。

気になる製品最終更新日: 20200208

Ryzen Threadripper 3990X 速攻ベンチマークレビュー

Ryzen Threadripper 3990X が新たにRyzen Threadripperシリーズに加わりました。既にリリースされている第3世代 Ryzen Threadripper 3970X / 3960Xの2モデルを更に超える「64コア/128スレッド」を搭載しています。
Ryzen Threadripperシリーズは、超強力なCPU処理性能を必要とするHEDT(ハイエンドデスクトップ)向けのプロセッサーとなります。AMDの位置付けとしても”Serious Creator”向けとしており、少しでも高いパフォーマンスを必要としているユーザーに向けた製品に位置付けしています。第3世代Ryzen Threadripperの最上位モデル、Ryzen Threadripper 3990Xがどれほどの性能を持つのかをベンチマークで見ていきます。

Ryzen Threadripper 3990X は「64コア/128スレッド」を搭載

64コア/128スレッドを搭載するRyzen Threadripper 3990Xは、先に登場した 32コア/64スレッドのRyzen Threadripper 3970Xと24コア/48スレッドのRyzen Threadripper 3960Xの2モデルの上位モデルにあたります。

Ryzen Threadripper 3990X最大の特徴はコンシューマー市場向けのデスクトップ用CPUとして初めて64コア/128スレッドに対応したことでしょう。Windows 10 Proがサポートするプロセッサー数は2ソケット/256スレッドまでと推測されており、計算上ではRyzen Threadripper 3990Xを2個搭載するとWindows 10 Proのこの上限に達してしまうほど贅沢な仕様となっています。

そのほかの特徴はRyzen Threadripper 3970XやRyzen Threadripper 3960Xと同じく、対応するチップセットは「TRX40」チップセット、メモリは4チャンネル対応で最大8枚256GB(マザーボードによる)、PCI-Express 4.0のサポートなどがあります。

  Ryzen Treadripper
3990X
Ryzen Treadripper
3970X
Ryzen Treadripper
3960X
Ryzen
3950X
Ryzen
3900X
コアアーキテクチャー Zen2
製造プロセス 7nm
コア/スレッド 64/128 32/64 24/48 16/32 12/24
動作クロック 2.9GHz 3.7GHz 3.8GHz 3.5GHz 3.8GHz
Boostクロック 4.2GHz 4.5GHz 4.5GHz 4.7GHz 4.6GHz
L2キャッシュ 32MB 16MB 12MB 8MB 6MB
L3キャッシュ 256MB 128MB 128MB 64MB 64MB
メモリ 対応メモリ DDR4-3200
チャネル数 4 2
PCI-Express Gen 4.0
レーン数 64 16
TDP 280W 105W
64bitコード AMD64
対応ソケット Socket sTRX4 Socket AM4
対応チップセット AMD TRX40 AMD X570・X470など

Ryzen Threadripper 3990X スペック比較一覧

第3世代Ryzen Threadripperの特徴まとめ

・7nm製造プロセスの「Zen2」アーキテクチャーを採用
・Zen世代から15%のIPC向上
・最大72レーンのPCI-Express Gen 4.0対応(※マザーボード側のレーン数を含む)
・第2世代EPYCのチップレット設計を使用し、12nm I/Oダイを介してすべてのコアから4チャンネルDDR4およびPCI-Expressへのアクセスが可能
・新たにsTRX4ソケットと、TRX40チップセットへ対応
・チップセットとCPU間が従来の4倍の帯域(133GB/s)
・4チャンネルDDR4-3200メモリに対応、最大256GBに対応
・ECCメモリに対応(マザーボードによる)
・最大12系統のUSB 3.2 Gen2(USB 3.1)をサポート(マザーボードによる)

Ryzen Threadripper 3990Xのパッケージ

Ryzen Threadripper 3990X パッケージの中身

パッケージの中身は透明なプラスチックカバーで覆われています。

プラスチックカバーを外したRyzen Threadripper 3990X

プラスチックカバーを外してRyzen Threadripper 3990Xとご対面。UNLOCKと書かれた下のレバーを動かしてCPUを引き出します。

CPUパッケージの裏側

スペック表や下記のブロック図を見ての通り、Ryzen Threadripper 3990Xは、1つのI/Oダイに対し8コアのCPUダイ(CCD)が8つ接続されている形となり、ZEN2アーキテクチャーを採用したコアのほぼフルスペックの仕様となります。

それでいながらTDPはRyzen Threadripper 3970Xと同じ280Wとなっているため、動作クロックはやや抑えられた仕様となっていますが、その差はわずかとなっています。これは、I/Oダイを採用することで以前の世代と比べI/Oなどの共通部分を一本化し、その分コアに電力を割り当てることができるようになったためです。

Ryzen Threadripper 3990Xブロック図イメージ

I/Oダイを介してメモリやPCI-Expressへの接続が行われる形となり第2世代EPYCで採用された構造が採用されています。これは下位のRyzen Threadripper 3970XやRyzen Threadripper 3960Xも同様です。

なお、Ryzen Threadripper 3990Xを使用するにあたっては、Ryzen Threadripper(sTRX4ソケット)に対応する専用のヘッドを持った水冷クーラーや大型の空冷クーラーを使用することをお勧めします。

また、マザーボードもEPS8ピン×2が必要となっているため、変換ケーブルなどでは対応せずEPS8ピンを2本もつ、12V出力系統を持つ850Wなどの大容量の電源を使用することを強くお勧めします。

それでは、第3世代Ryzen Threadripper 3990Xの実力を、ベンチマークを通して見て行きましょう。

ベンチマークテスト

PassMark PerformanceTest

まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassMarkの『CPU Benchmarks』を用いてCPUの演算性能を見てみましょう。

PassMark PerformanceTest

Ryzen Threadripper 3990Xが頭一つ抜けた性能を示しています。Ryzen Threadripper 3970Xに対して20%、 同じZen2アーキテクチャーのRyzen 9 3950Xと比べると70%以上スコアが増加しており、第3世代Ryzenの上位に位置するRyzen Threadripperにおいて最上位に位置するに相応しい性能となっています。

なお、CPU Mark はマルチスレッドに対応したベンチマークとシングルスレッド専用のベンチマークが混在しているため、コア数/スレッド数が倍になっても単純にベンチマークスコアが倍になるわけではありません。Ryzen Threadripper 3990Xのマルチスレッド性能の威力を確認するため、CPU Markを個別のテスト内容ごとに見てみましょう。

まずは、基礎体力ともいえる整数演算と浮動小数点演算から。

PassMark PerformanceTest / 整数演算

PassMark PerformanceTest / 浮動小数点演算

整数演算については、Ryzen Threadripper 3990XはRyzen Threadripper 3970Xのほぼ2倍になっています。浮動小数点演算でも1.6倍となっており、Ryzen Threadripper 3990Xのコア数/スレッド数の多さが威力を発揮しています。

続いて、マルチメディア処理のSSE演算の結果を見てみましょう。

PassMark PerformanceTest / SSE演算

浮動小数点演算と似た傾向となりました。Ryzen Threadripper 3990Xは、Ryzen Threadripper 3970Xの1.6倍強、Ryzen Threadripper 3960Xの2倍強、Ryzen 3950Xの3倍強となっていて、Ryzen Threadripper 3990Xのマルチスレッド性能の高さが確認できます。同様の傾向が、圧縮・暗号化・並べ替え処理でも見られました。

PassMark PerformanceTest / 圧縮・暗号化・並べ替え処理

最後にシングルスレッド性能を見てみると、ほぼ横一線ながらもわずかに動作クロックの差が出ており、Ryzen Threadripper 3990Xが最下位となっているものの、その差はわずかとなっています。

PassMark PerformanceTest / シングルスレッド

以上のように、Ryzen Threadripper 3990Xはマルチスレッド環境では比類なき性能を示していることが確認できます。

TMPGEnc Mastering Works 6

続いて、動画編集ソフトのTMPGEnc Mastering Works 6を用いて、QuickTimeファイル(3840x2160/2分50秒)をh.265に変換するのに要した時間を測定しました。グラフの短い方がより高速に処理を行っている事になります。(※単位は 秒 です)

TMPGEnc Mastering Works 6

意外なことに、Ryzen Threadripper 3990XよりもRyzen Threadripper 3970Xの方が早く処理を終えていました。Windowsのマスクマネージャー上でCPUの使用率を見てみたところ、Ryzen Threadripper 3990XではCPUの使用率が高くても40%程度となっていて、使用率0%とまったく負荷のかかっていないスレッドが半数近く存在していました。

タスクマネージャー 理論プロセッサー表示

現時点でのTMPGEnc Mastering Works 6では、Ryzen Threadripper 3990Xの全てのコアが使われていなかった為、Ryzen Threadripper 3970Xに及ばない結果となりました。動画のエンコードでは特に、Codecによって使用できるコア数の上限が決まっている場合があり、今回のテストの場合は最大で64スレッドまでが処理の上限となっていたようです。

こういった場合は、エンコード処理を同時に2本走らせるなどすることでCPUを最大限活用できるようになりますが、Ryzen Threadripper 3990X「64コア/128スレッド」の恩恵を得るには、使用するソフトやCodecなどのサポートするコア数にも注意する必要がありそうです。

さらに、「64コア/128スレッド」になったことで、使用するメモリ量が増加したり、書き出し先のストレージの速度が足りず、書き込みが終わるまでCPUが処理を待ってしまったりと、CPUの性能だけではない問題も発生し得ます。性能が発揮しきれていないなと感じたら、タスクマネージャー等を見ながら原因をひとつずつ解決してくとよいでしょう。

マルチスレッド環境では比類なき性能を示すRyzen Threadripper 3990X

Ryzen Threadripper 3990Xは、PassMarkで見たようにマルチスレッド性能を生かせる環境下では比類なき性能を発揮してくれます。CGレンダリングや科学技術演算といったCPUの処理性能が影響する場面で高い性能が期待できます。一方で、Ryzen Threadripper 3990Xのマルチスレッド性能を生かしきれないような状況下では、せっかくのパワーが宝の持ち腐れとなってしまいますので、使用する環境には注意する必要がありそうです。

とはいえ、第2世代Ryzen Threadripperであったような扱いの難しさが改善されており、ソフトウェアさえサポートしていればRyzen Threadripper 3990Xの圧倒的なCPUコア数を生かすことができるようになっています。

64コア/128スレッドという莫大なパワーが生かせる環境で、是非ともRyzen Threadripper 3990Xのもつ比類なきマルチスレッド性能を体感して下さい。特に今までRyzen Threadripperを使用している方ならば、ぜひとも乗り換えることをお勧めしたいCPUとなっています。

  第3世代Ryzen Threadripper 第3世代Ryzen
CPU Ryzen Threadripper 3990X
Ryzen Threadripper 3970X
Ryzen Threadripper 3960X
Ryzen 9 3950X
マザーボード ASUS PRIME TRX40-PRO ASUS PRIME X570-PRO
メインメモリ DDR4-2666 64GB (16GB x4)
ビデオカード GeForce RTX 2080 SUPER (ビデオメモリ 8GB)
ストレージ Samsung 970 EVO 500GB NVMe M.2 (MZ-V7E500B)
電源 Seasonic SSR-850PX (80PLUS Platinum 850W)
OS Windows 10 Home 64bit (バージョン:1909) 
ビデオドライバ GeForce Game Ready Driver Ver441.08

Ryzen Threadripper 3990Xの検証に使用した構成

ライタープロフィール 職人5号

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。

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