AMD Ryzen Threadripper PRO 3000WX シリーズ プロセッサーは、日本時間で3月26日19時より一般ユーザーに向けて発売されるプロフェッショナル・ワークステーション用CPUです。Ryzen Threadripper PROは、Ryzen Threadripperの強力な演算処理性能と、サーバー向けCPUであるEPYCの信頼性や堅牢性、拡張性を併せ持ちます。今回はRyzen Threadripper PRO 3000WX シリーズ プロセッサーの中からミドルクラスのモデルとなる、Ryzen Threadripper PRO 3975WXがどれほどの性能を持つのかをベンチマークで見ていきます。
Ryzen Threadripper PRO とは
AMD Ryzen Threadripper PRO 3000WX シリーズ プロセッサー(ライゼン スレッドリッパー プロ)は、日本時間の3月26日19時より一般ユーザーに向けて発売されるプロフェッショナル・ワークステーション用CPUです。
第3世代AMD Ryzen Threadripperプロセッサー(ライゼン スレッドリッパー)と同じZen 2コア・ アーキテクチャーを採用し、優れたパフォーマンスと電力効率を両立します。同時にサーバー向けCPUであるEPYC(エピック)の遺伝子を受け継いでおり、最大で2TBもの広大なメモリー空間や、柔軟なシステム構築を可能とする最大128レーンのPCI-Expressを実現しています。
さらにCPU内にセキュリティ専用の独立したプロセッサーとして封入された「AMD Secure Processor」により、セキュリティ性にも優れたCPUとなっています。
Ryzen Threadripper PROの特徴まとめ
■7nm製造プロセスのZen2コア・アーキテクチャーを採用
■最大8つのCCDと、I/Oダイのチップレット構成を採用
■企業向けセキュリティ機能であるAMD PROテクノロジーに対応
■システムメモリー全体での完全なメモリー暗号化を行うAMDメモリー・ガードに対応
■最大128レーンのPCI-Express Gen 4.0対応
■最大DDR4-3200の8チャネルメモリーアクセスにより、最大204.8GB/s のメモリー帯域幅を確保
■Non-ECC、ECC、Buffered(RDIMM)、Un-Buffered(UDIMM)、LRDIMM、3DS RDIMMなど様々なメモリーに対応(対応予定も含む)
■最大2TBのメモリー容量に対応
■専用のsWRX8ソケットと、AMD WRX80チップセットへ対応
Ryzen Threadripper PRO 3995WX |
Ryzen Threadripper PRO 3975WX |
Ryzen Threadripper PRO 3955WX |
Ryzen Threadripper PRO 3945WX |
Ryzen Treadripper 3990X |
Ryzen Treadripper 3970X |
Ryzen Treadripper 3960X |
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コアアーキテクチャー | Zen2 | Zen2 | ||||||
製造プロセス | 7nm | 7nm | ||||||
コア/スレッド | 64/128 | 32/64 | 16/32 | 12/24 | 64/128 | 32/64 | 24/48 | |
動作クロック | 2.7GHz | 3.5GHz | 3.9GHz | 4.0GHz | 2.9GHz | 3.7GHz | 3.8GHz | |
最大ブースト・クロック | 4.2GHz | 4.2GHz | 4.3GHz | 4.3GHz | 4.3GHz | 4.5GHz | 4.5GHz | |
L2キャッシュ | 32MB | 16MB | 8MB | 6MB | 32MB | 16MB | 12MB | |
L3キャッシュ | 256MB | 128MB | 64MB | 64MB | 256MB | 128MB | 128MB | |
メモリー | 対応メモリー | DDR4-3200 | DDR4-3200 | |||||
チャネル数 | 8 | 4 | ||||||
最大容量 | 2TB | 256GB | ||||||
PCI-Express | Gen | 4.0 | 4.0 | |||||
レーン数 | 128 | 64 | ||||||
TDP | 280W | 280W | ||||||
対応ソケット | Socket sWRX8 | Socket sTRX4 | ||||||
対応チップセット | AMD WRX80 | AMD TRX40 |
スペック表を見ての通り、Ryzen Threadripper PROと第3世代Ryzen Threadripperはとても良く似た仕様となっており、Ryzen Threadripper PROが第3世代Ryzen Threadripper譲りのCPUであることが分かります。
それでいながらメモリーチャネル数は8、最大メモリー容量は2TB、PCI-Expressは128レーンと第3世代Ryzen Threadripper から大幅に強化されており、この辺りはEPYC譲りの仕様と言えるでしょう。まさに第3世代Ryzen ThreadripperとEPYCの特徴を併せ持つCPUであると言えます。
それでは、Ryzen Threadripper PRO 3975WXの実力を、ベンチマークを通して見て行きましょう。比較用CPUとしては、同じコア/スレッド数のRyzen Threadripper 3970Xと下位モデルとなるRyzen Threadripper 3960Xを用意しました。
なお、メモリーはともに8本構成ですが、Ryzen Threadripper PRO 3975WXはオクタチャネル(8チャネル)、Ryzen Threadripper 3970Xと3960Xはクアッドチャネル(4チャネル)動作となります。
ベンチマークテスト
PassMark PerformanceTest
まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassMarkの『CPU Benchmarks』を用いてCPUの演算性能を見てみましょう。
Ryzen Threadripper PRO 3975WXが頭一つ抜けた性能を示しています。同じコア数/スレッド数のRyzen Threadripper 3970Xに対して10%以上もスコアが増加しています。
動作クロックを比べるとRyzen Threadripper PRO 3975WXよりもRyzen Threadripper 3970Xの方が高くなる予測ですが、結果はRyzen Threadripper PRO 3975WXの方が高くなりました。
それではいったいどのテスト項目でRyzen Threadripper PRO 3975WXとRyzen Threadripper 3970Xの差がついていたのか、CPU Markを個別のテスト内容ごとに見てみると、素数演算および物理演算で差がついていることが確認できました。
いずれも演算結果をキャッシュするなど比較的メモリー負荷の高いテストとなり、8チャンネルを搭載するRyzen Threadripper PROに軍配が上がる結果となったようです。
TMPGEnc Mastering Works 6
続いて、動画編集ソフトのTMPGEnc Mastering Works 6を用いて、QuickTimeファイル(3840x2160/2分50秒)をh.265に変換するのに要した時間を測定しました。グラフの短い方がより高速に処理を行っている事になります。(※単位は 秒 です)
Ryzen Threadripper PRO 3975WX がRyzen Threadripper 3970Xよりも20秒ほど早く処理を終えました。すべてのコアに高い負荷がかかる状況であれば、同じコア数/スレッド数の場合、メモリー帯域が広くなる分Ryzen Threadripper PRO 3957WXの方がボトルネックが解消されコアの性能をより発揮しやすくなり、早く処理を終えたものと思われます。
PCMark 10
最後に、PCのパフォーマンスを総合的に判断できるPCMark 10を見ていきましょう。
一般的なPCの日常的作業の性能を表した「PCMark 10」では、Ryzen Threadripper PRO と第3世代Ryzen Threadripperの間に有意的な差はありませんでした。
さすがにワークステーション用CPUであるThreadripper PROを一般的なPCの日常的作業に使用する事はないと思いますが、Ryzen Threadripper PROの特徴を活かすには使用するアプリケーションソフトなどにも注意する必要がありそうです。
メモリー帯域幅で有意な差を見せたRyzen Threadripper PRO
Ryzen Threadripper PRO 3975WXは、PassMarkの物理演算や素数演算、TMPGEnc Mastering Works 6で見たようにメインメモリーの帯域幅が影響する場面において、第3世代Ryzen Threadripper に対して有意な差を見せてくれました。
CGレンダリングや科学技術演算などメインメモリーの帯域幅が影響する場面で高い性能が期待できます。
もちろん、AMD PROテクノロジーやAMDメモリー・ガードといった優れたセキュリティ機能は、信頼性の高いアプリケーションを実現できるRyzen Threadripper PROの大きな魅力となるでしょう。
Ryzen Threadripper PROは、性能の高さだけでなく高い信頼性と優れた拡張性を必要とするワークステーション用途に優れた性能を提供してくれるCPUとして、遺憾なく活躍してくれる事でしょう。
Ryzen Threadripper PRO | 第3世代Ryzen Threadripper | |
---|---|---|
CPU | Ryzen Threadripper PRO 3975WX | Ryzen Threadripper 3970X Ryzen Threadripper 3960X |
マザーボード | ASUS Pro WS WRX80E-SAGE SE WIFI | ASUS TRX40-PRO |
メインメモリ | DDR4-3200 256GB (32GB x8) | |
ビデオカード | GeForce RTX 2080 SUPER (ビデオメモリ 8GB) | |
ストレージ | Samsung 970 EVO 500GB NVMe M.2 (MZ-V7E500B) | |
電源 | Seasonic SSR-850PX (80PLUS Platinum 850W) | |
OS | Windows 10 Pro 64bit (バージョン:20H2) | |
ビデオドライバ | GeForce Game Ready Driver Ver461.72 |
Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。