どうしたら憧れのクリエイターになれるのか?その秘密を現役で活躍するグラフィックデザイナーの安藤一生さんに直接聞いちゃいます。

クリエイター最終更新日: 20200608

グラフィックデザイナー:黒子に徹してクライアントの思いを落とし込む

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはグラフィックデザイナーの安藤一生さんです。クライアントの思いを第一に考え、熟考を重ね、グラフィックに落とし込むという安藤さん。若い頃の失敗がきっかけで、丁寧に考える作業を行うことの大切さを学んだそう。さて、その失敗とは……?

安藤さんが携わった作品

おかやま国際音楽祭

1994年からスタートした『おかやま国際音楽祭』のパンフレットやグッズ。ジャンルや年代を超えたアーティストが出演し、岡山市を盛り上げている同イベント。安藤さんはこのパンフレットデザインを7年連続で担当しています。

博士審査展

東京造形大学で開催されている『博士審査展』のポスター。極限まで無駄を省き、グラフィックでメッセージを込めたデザインです。

アートの今 風景をこえて

岡山にゆかりのある作家を紹介する展覧会『アートの今 風景をこえて』のパンフレット。日本画を彷彿させる色使いで、圧倒されます。

ペンキ屋さんに憧れた少年は、写真家を目指しグラフィックデザイナーに

安藤さんは子どもの頃、何になりたかったですか?

小さい頃は、単純に絵の具で何かを塗るのが好きだったので、ペンキ屋さんになりたいな、とぼんやり思っていました。両親が美大出身だったので、家には画材が豊富にあって、それで色々と描いていました。成長するにつれて、ロゴタイプやシンボルマークに面白さを感じるようになって、そういったものを作る人に憧れました。それが無理だとしても、とにかく何かを作る人になりたかったです。

それからどんな学校に進学しましたか?

大学受験の頃には、映像やアニメーションに興味があったのですが、グラフィックデザインも学びたかったので、当時は入学後に専攻を選べた東京造形大学に入りました。入学時点では、映像、アニメーション、グラフィックデザインのどれかに絞り切れていない、曖昧な学生だったと思います。

大学ではどんな学生時代を送りましたか?

悩みの多い学生時代でした……。作品制作と社会の繋がりがよく分からず、暗闇の中を友人と彷徨っている感じでした。先の見通しが利かないことへの単純な焦りがあったような気がします。そんな中、写真の楽しさを知って、写真専攻を選びました。結果的に写真を仕事にすることにはなりませんでしたが、自由に写真を撮るのは好きなので、今でも趣味で撮っています。また、当時の友人や先輩たちとは今でも会ったり、仕事で繋がったりしています。大学時代の友人たちは、大切な存在ですね。

写真専攻だった安藤さんは、なぜグラフィックデザイナーに?

大学でしっかり写真を学んでみて、自分は写真を仕事にするのは難しいかもしれない、と感じました。その時に、もし仕事にするんだったら、グラフィックデザインがいいな、と原点に戻りました。そのためにはパソコンが使えないとダメだと思ったので、先輩に使い方を教えてもらいました。当時は就職超氷河期だったため、最初から就職活動は諦めて、卒業後は建築模型をつくるアルバイトをしていました。

そこから今のお仕事を始めるきっかけは?

たまたま、本当にたまたまなんですけど、友人のお父様からのご紹介で、グラフィックデザインの事務所に弟子入りすることになりました。そこで10年間、しっかりと修行をさせていただきました。師匠には感謝しかありません。事務所のアシスタントの人たちは、数年したら独立する人が多かったので、自分もいずれは独立しようと思いながら修行を続けました。その後、一生堂として独立して、2年間東京で活動してから、2011年に出身地でもある岡山に拠点を移して、現在に至ります。

自身は黒子に徹し、クライアントの思いを具現化する

ターニングポイントになった仕事を教えてください。

2012年に岡山県内の美術館を3箇所回る『アートの今・岡山2012 風景をこえて』展のポスターやフライヤーなどをデザインしました。岡山に拠点を移してから初めての大きな仕事だったので、とても緊張したのを覚えています。ポスター、フライヤー、DM、カタログとアイテム数も多かったので、しっかりと取り組みました。

そのお仕事から得たものは何ですか?

出身地とはいえ高校までしかいなかった岡山で、どうにかやっていけるかもしれない、という手ごたえが得られました。その後ありがたいことに、徐々に岡山での仕事も増えて、現在の基盤を築くことができました。

仕事で失敗をしたことはありますか?

独立直後のお仕事で、オリエンテーションの内容を完全に履き違えて、まったく別の方向に解釈した上に、浅い考察で見当違いなものを提案してしまいました。この失敗はたぶん一生忘れません。今はクライアントの話を何度も反芻し、慎重に制作を進めています。この姿勢は当たり前なんですが、当時の自分はとにかく緊張感が足りなかったと反省しています。

仕事をしていて、一番興奮する瞬間はどんな時ですか?

一番はお客さんに喜んでもらえたときです。そのためにデザインの仕事をしているとも言えます。それと、ごく稀なんですが、とてもいいアイデアが生まれたときは、テンションが上がります。そのアイデアがお客さんに選ばれないこともありますが、自分としては次につながる手ごたえを感じます。

安藤さんが仕事をするうえで、もっとも大切にしていることは何ですか?

自分のデザインしたものはお客さんのものだと強く意識して、なるべく自分の色が出ないようにしたいです。とにかく黒子に徹したいと思っています。とは言え、得意不得意もあるので、傾向のようなものが出てしまうこともあります。もしかしたら、それが自分の個性なのかもしれません。

安定性を求めるならメモリは多めに

今使っているパソコンや、周辺機器を教えてください。

メインマシンはデスクトップパソコン(Intel Core i5プロセッサ、メモリ32GB)を使用していて、外出時の作業用としてノートパソコンも持っています。周辺機器はタブレットを使用しています。

パソコンを選ぶ際の基準はなんですか?

Adobeの IllustratorとPhotoshop、InDesignが主に使うアプリケーションなので、そこまでハイスペックじゃなくてもいいと思っています。ただ、メモリはなるべく多くするようにしています。もちろん予算ありきですが……。メインマシンはだいたい5~6年を目安に買い換えています。

クリエイティブの力で人を喜ばせたい!

安藤さんにとって“クリエイティブ仕事道”とはなんですか?

お客さんに喜ばれるように全力を尽くすことかと……。自分にとってデザインワークはお客さんの問題解決のためのもの。なので、お客さんの要望に合わせて自分を変化させて、柔軟に対応することを目標にしています。まだまだ研鑽を続けなければならないのですが、この道は一生続くと思っています。そして、仕事はやった数だけ自分が広がると考えて、ルーティーンに陥ってしまわないよう心掛けています。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

とにかく仕事を楽しんでください。素晴らしい作品を目にできることを楽しみにしています!

安藤さん、ありがとうございました!

黒子に徹することは意外と難しい

クライアントのお仕事である以上、自意識は極力抑えて相手の希望に沿う。当たり前のようでいて、実はなかなか難しいものです。安藤さんはクライアントを第一に考え、真剣に向き合ってデザインしています。社会人になったときには、この安藤さんの考え方がきっと参考になるはずです!

クリエイタープロフィール

安藤一生さん
グラフィックデザイナー
1976年岡山市生まれ。東京造形大学造形学部卒業後、有限会社スタジオ福デに入社。10年間の修行ののち、2009年に一生堂として独立。2011年に拠点を岡山に移す。

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

記事を
シェア