どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはグラフィックデザイナーの兵頭将勝さんです。

クリエイター最終更新日: 20210324

グラフィックデザイナー:東京と徳島を行き来し、幅広いグラフィックデザインを手がける

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはグラフィックデザイナーの兵頭将勝さんです。
デザイン会社の社長として、名刺やリーフレット、WEBやUIのデザインまで幅広く手がけています。

兵頭さんが携わった作品

兵頭さんの代表作「にぎやかそ」は、徳島県美波町の地域振興プロジェクト。町長と何度も議論を重ねて完成したロゴは、街のシンボルになりました。

徳島県美波町のラーメン店『藍庵』のロゴ、および名刺、のれん、リーフレット、のぼり旗。丼にもこのロゴが印字されています。

2011年に京セラから発売された携帯電話ブランド「DIGNO」のロゴ。シリーズブランド 「DIGNO DUAL DIGNO S」も兵頭さんがデザインしました。

父の背中を見て、デザイナーの道へ

兵頭さんは子どもの頃、どんな職業に憧れていましたか?

子どもの頃からデザイナーを目指していました。というのも父がデザイン会社を経営していたから。当時父は自宅で仕事をしており、その姿を見て育ったからでしょうか…。色々な道具を使い、墨の細い線で文字をデザインしている姿が絵を描く延長のように感じていたのかもしれません(笑)。また父がデザインした文字やロゴが商品に印刷され世に出ているのを見て、父の仕事に憧れるようになりました。「ヨチヨチ歩きの頃から、文字版下のレタリングを足の裏につけて歩いていた」と両親から昔話をよく聞かされたものです(笑)。“きっかけ”というよりは、“環境”が大きな理由ですね。今でも「仕事が楽しくて仕方ない!」と背中で語る、父の様子を思い出します。

幼い頃からデザイナーを目指していたんですね! デザイナーになるために、どんな学校へ進学しましたか?

美大でデザインを学びたかったので、高校生になって美大予備校に通いました。毎日高校の授業が終わると電車に乗って浦和の教室に通い、デッサンを描いていました。あの頃は楽しくて仕方なかったですね! その後1年浪人して東京造形大学の造形学部デザイン学科に入学。大学には多くの分野があり、その中で興味があったのが広告デザインでした。当時はまだまだ浅はかな学生でしたが、デザインの力で人に伝えることを学ぶことができました。

美大生時代は、どんな学生でしたか?

筋トレにハマって、そればかりしていました(笑)。朝1番にトレーニングしてから通学するんです。大学ではサークルの友達・先輩後輩と共に学んだり、議論したり、バスケを楽しんでいました。今でも大学時代の仲間とは交流が続いていて、仕事も通じて一生の大切な仲間です。学生時代一番多くの時間を割いたのは授業の課題です。周りから「すごい!」と言ってもらうために寝ないで課題をこなしていました。

デザイナーとして仕事を始めたきっかけはなんですか?

大学卒業後は徳島のソフトウェアメーカーに就職し、業務用アプリのインターフェイスデザインをしていました。その後広告代理店でデザイナーとして広告デザインを経験し、父の経営する会社に入社しました。兵頭デザインは文字をデザインすることを主とし、版下製作やロゴタイプデザインがメインの業務がメイン。私が入社した後はその強みを生かし、ロゴデザインを中心に名刺・HP・カタログ・動画製作などのコミュニケーションツールのデザインをしています。2014年より弊社代表取締役に就任しました。

地方だからこそ味わえる仕事の醍醐味とは?

兵頭さんの代表作を教えてください

サテライトオフィスを置く徳島県美波町の魅力発信キャッチフレーズ「にぎやかそ」ロゴです。美波町は少子高齢化や人口流失による深刻な過疎化対策として、美波町らしさを生かした地域振興が成功し、“にぎやかな過疎の町”になることができました。「にぎやかそ」のロゴは、この成功をシンボル化したものです。美波町長が徳島から東京にいる私に会いにくるほど町の未来をかけたプロジェクトということで、何度も議論を重ねた上でようやく完成。このプロジェクトの住民発表会では、私と町長でロゴに込めた意味を説明させていただきました。

デザイナーとして活躍するターニングポイントはありましたか?

徳島県美波町でのサテライトオフィスの開設(新会社設立)をしたことです。新卒で就職した徳島県の企業の同期に勧められたことがきっかけで開設しました。事業内容は県内企業のブランド力アップのコンサルティングや地域ブランドを強化するためのデザインの提供です。都会に比べてマーケットが小さい分、私が提供したデザインの反響が大きいことに驚きました。地方の小学校や中学校にデザインの出前授業も何度か行いました。デザインした“モノ”や“コト”が、新聞に掲載されたり、テレビに放映されたり、マスコミや行政との距離が近いことにも驚きました!

そこから何か学んだことはありますか?

地域の方との交流です。現在は月に1度程度徳島県美波町の弊社オフィスに行くのですが、地域の方が「おかえり!」と暖かく迎えてくれるんですよ! また、地元企業の方との交流や協業などを通して仕事の幅や人脈・友達を多く手に入れることができました。自然が多い地域で、釣りやサーフィンなどのアクティビティを楽しむことができ、私の中で第2の故郷になっています。不思議なことに、徳島での出会いが東京での仕事にもつながっています。

素敵な出会いですね! 逆に、仕事で失敗した経験はありますか?

広告代理店で働いていた頃、キオスク用広告ツール(のぼり広告)のデザインを担当していました。印刷会社へデザインデータを入稿するのですが、なんとポジフィルムを入れ忘れてしまったんです…。現在は全てデジタルデータで入稿することがほとんどかと思いますが、当時はレイアウトデータには解像度の低いラフ画像を配置し、別でポジフィルムを添えて入稿。ところがポジフィルムを入れ忘れたことにより画像の荒い画像がのぼりに印刷、そのままキオスクに設置されてしまいました…。営業さんから連絡があり、確認した瞬間「人生終わった…」と顔面蒼白になりましたね(汗)。もうあんな思いは二度としたくありません(笑)。

仕事をしていて、一番興奮する瞬間はどんな時ですか?

手がけたデザインがクライアントに喜んでもらえた瞬間です。デザインプレゼンの際に相手の受け取った印象が良いと興奮して、つい余計なことまで話してしまいます(笑)。また、デザインの検討中に全てのパズルがハマった瞬間です。商品のコンセプトとターゲット、世界観や製品イメージや未来展望などにデザインが“ピタッ!”とくる瞬間があるんですよ。たくさん考えて何周もして、出るかでないか、とてもワクワクします!

仕事をするうえで、もっとも大切にしていることは何ですか?

クライアントとの最初の打ち合わせで、先方の考えを理解するため自分の中で予習をします。そうすることにより、相手の話や説明がすっと入ってきます。その場でどうすれば良いかある程度アイデアが湧きますし、デザインの方向性が定まってくるので無駄な作業時間がなくなります。また、クライアントの人柄に興味を持ち、リスペクトすることも仕事の進行上大切なことだと思います。

ノートPCは出張族の強い味方

現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?

「ノートPCを利用、周辺機器は外付けハードディスクとモバイルルーターです」

PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。

「出張や移動が多いので、基本的にノートPCを使用しています。また、移動中のメールや仕事のやりとりをするためモバイルルーターは常に持ち歩いています。主にAdobeのIllustratorとPhotoshopを使っているので、スペックも必要です。今までもこれからもノートPCを使い続けると思います」

“一生懸命”を貫けば、きっと好きな仕事に出会える!

兵頭さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?

「デザインという仕事をしていく上でアイデアって大切ですよね! でもそのアイデアって最初のひらめきではなく、方向性が決まった後の徹底的なブラッシュアップにより、真のアイデアに生まれ変わると思います。ロゴデザインでいうと、微妙な線の太さや角度、Rの大きさや文字間の調整などを毛筋1本にこだわって作業します。また、媒体によって印字される大きさが違うので、全てに対応できる線の太さになっているかなどは検証が大事になります。少し職人的な話になってしまうのですが、同じ方向性のデザインでも細かなこだわりをもって仕上げることで最終的に大きな差になります。そこは手を抜かない仕事をし続けていきたいです」

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

「『好きこそものの上手なれ!』という言葉がありますが、最初に与えられた仕事に一生懸命に取り組んでください。クリエイティブな職場でも、自分が想像もしなかった仕事をすることもあるでしょうし、一見興味のなさそうなことでも仕事を通して好きになることもあります。色々なことに一生懸命になった人間だけが本当に好きな仕事に出会えると思うのです。何事にも諦めずに楽しみながら取り組んでいってください!」

兵頭さん、ありがとうございました!

がむしゃらになって天職を探そう!

グラフィックデザイナーになるきっかけは、楽しく働くお父さんの姿。しかし兵頭さんは、ただお父さんの後を追うのではなく、自分らしいデザインの道を切り開いています。兵頭さんの言葉通り、諦めずに楽しみながら自分の道を探し続ければ、きっと転職に出会えるはずです!

クリエイタープロフィール

兵頭将勝さん
グラフィックデザイナー・(株)兵頭デザイン代表取締役社長
1972年生まれ。東京造形大学卒業。ソフトウェアメーカー、広告代理店勤務を経て父が経営する兵頭デザインに入社。2014年より代表取締役社長に就任。ロゴやフォントのデザインを中心に、名刺・リーフレット・フライヤーといったコミュニケーションツールから、WEB&UIデザインまで幅広く手がけている。
http://hyodo.co.jp/

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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