どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはゲームデザイナーの濱田隆史さんです。ゲームデザイナーとして活躍している背景には、学生時代に世界を旅した経験が影響していました。

クリエイター最終更新日: 20210112

ゲームデザイナー:学生時代の経験を活かして、唯一無二のゲームを開発

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはゲームデザイナーの濱田隆史さんです。ゲームデザイナーとして活躍している背景には、学生時代に世界を旅した経験が影響していました。

濱田さんが携わった作品

アナログとデジタルのハイブリッドゲーム『アニュビスの仮面』。専用のVRゴーグルを着けてプレイする、世界初のVRボードゲームです。世界中にファンがいるのだそう。

Nintendo Switch用のゲーム『マドリカ不動産』は“印刷”が必要な、ちょっと珍しいゲーム。他にはないプレイスタイルが高評価で、コンスタントに購入される人気ゲームです。

ゲームに夢中になったのは“旅”がきっかけ

濱田さんは幼い頃、どんなお子さんでしたか?

段ボールを切ったり積んだりして、家っぽいものを作って遊んでいました。また、チラシの裏に住みたい家の間取り図をたくさん描いていた気がします。当時の夢は大工さんだったと思います。

大工さんに憧れていたんですね。その後はどんな学校に進みましたか?

進路を決めるときは、正直何になりたいのか全然わかりませんでした。だからゲームばかりやっていましたね(苦笑)。高校生の頃にたまたま出会った陶芸は好きでしたし、一方で勉強は好きになれなかったので、消極的な理由で美術系に進むことにしました…。とは言っても、美術系の学校に進むのも簡単なことではありません。数年間は必死に絵を練習してやっと大学に進めました。

大学時代はどんな学生でしたか?

大学に入ったものの、そこでも何をしたいのか良いのか分からなかったです。ためしに海外旅行に行ってみたら楽しかったので、その後色々な国へ長期の旅行に行きました。現地の言葉を少しでも覚えると、遊びに行ける地域がぐっと広がるのが「ゲームみたいで面白いなぁ」と思いました。

そこからどんなきっかけでゲームの世界に?

大学3年生のときに大手ゲーム会社のインターンとして参加したのがきっかけです。応募にはゲームのアイデアが必要でした。そのとき南米を旅行していたので「旅のゲーム」を考えてみました。南米は治安が悪く、街中で地図を見ているだけでヤラれます。長距離バスの中でガイドブックの情報を頭に叩き込み、到着したら目的地までダッシュしていました。「旅のゲーム」にも分厚いガイドブックが同梱される仕様です。ゲームをやっていないときに本から情報収集して、ゲーム中は全力で移動する。みたいな企画に仕上がりました。今でもチャンスがあれば作ってみたいゲームです。

おもしろそうな企画ですね!ゲームの世界でゲームデザイナーになった理由は何ですか?

ゲームを作るために様々な種類の仕事をしていますが、最近はプログラミングをすることが多いです。プログラミングの魅力を発見したのは、前に所属していた会社のプログラミングコンテストに無謀にも参加した時。コンテストの問題は、トラップを避けながらプレイヤーをゴールに導くというもの。ステージがどんな見た目か分からないと戦略も立てられません。地形に見立てた文字(#やx)をログに出力してステージの姿を視覚化し、見立てる文字を変えると出力されるログも変わります。最初は問題を解くために視覚化していたのですが、それがだんだん絵のように思えてきて最終的には素敵な模様を出力することが目的になっていました。

ログを視覚化するとこのように描かれます。まるで現代アートのよう。

世界で人気のVRボードゲームを開発

濱田さんの代表作を教えてください

『アニュビスの仮面』というボードゲームです。これはデジタルとアナログを組み合わせた商品で、箱の中にVRゴーグルが入っています。世界初のVRボードゲームで、他の国でもフォロワーが現れました。ほんの少しですが世界に影響を与えられた感触があって嬉しかったです。製造に成功したことも達成感がありました。以前、金型を作ったものの事業に失敗し、たくさんお金が無くなってしまったことがありました。この反省を活かしてリスクは低く、樹脂の駒を作る家庭内手工業のような仕組みを考えていました。この方法が上手くいって、収益的にも成功しました。

樹脂で作られたゲーム用の駒。

ゲームデザイナーとして活躍するターニングポイントとなった仕事は何ですか?

2018年に発売した『マドリカ不動産』というNintendo Switch用のゲームです。なんと遊ぶ前に間取り図を“印刷”しなくてはいけません! プレイヤーは印刷した間取り図にメモを書きながらオバケに取りつかれた物件の謎を解いていきます。実際の謎解きイベントを自宅で手軽に楽しめる感じのゲームです。家族や友人と一緒に遊ぶと盛り上がります。開発は少人数で8ヶ月。短期間で集中してプロジェクトを完了できたのも良かったです。

その仕事から得られたものはありますか?

定期的に入ってくるお金ですかね…(笑)。『マドリカ不動産』は独特のプレイスタイルが評価されていて、継続的に売れています。会社を設立して今年で6年目になりますが、お金が無いと工面することばかり考えてしまい辛いです。一方で預貯金に余裕があると、どっしりと構えて新しいゲームの開発に臨めます。自分を追い込んでパワーを出す人もいますが、余裕がないと新しいものを考えるのは結構難しいように思えます。

逆に、失敗を経験したことはありますか?

独立してからはたくさんのことに挑戦しました。そしてその殆どが失敗です。どの失敗も本来は忘れてはならないものですが、人間ですのでいずれ忘れてしまうでしょう。ですので、特にひどい失敗は生々しいかたちで自分や同僚の中に留めておきたいと思っています。今はその方法を模索しています。例えば“失敗記念日”をつくって供養するとか、変ですかね(笑)?

それはいいかもしれません!濱田さんが仕事で一番興奮する瞬間はどんな時ですか?

ズバリ、書いたコードが一発で動いたときです!!

濱田さんが仕事で大切にしている事、意識している事を教えてください。

集中とリフレッシュの切り替えです。「砂時計の砂が落ちている間は集中する」というルールを作ったら、気分良く仕事ができるようになりました。集中しているときは、ネットサーフィンはもちろんダメですし、トイレやお茶も原則禁止です。この砂時計は1時間用の巨大な砂時計で、落ちきったら同じ時間分休憩します。散歩や本屋に行ったり、昼寝したりしています。

この砂時計が落ちるまでは誘惑に負けず集中、集中!

ハイスペック&コスパ良しの自作PC

現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?

ゲーム開発には自作PCを使っています。長く使い続けたいので外装と電源、マザーボードはハイスペックなものを購入しました。
現状のスペックは下記のとおりです。

OS:Windows 10 Pro
CPU:Intel Core i5-8400CP
メモリ:16GB
ストレージ:500GB SSD

CPUとグラフィックボードは定期的に付け替える予定なので、そこそこの性能です。デスクトップPCは安定していて、スペック以上にスピードが出る印象です。それに加えてお財布にも優しいのも自作PCの魅力です。最近、ファンがうるさいので『虎徹 MarkII』という冷却装置を取り付けました。実際に静かになりましたし、達成感もありました。
次はCPUを替えようかな、と考えていますが、「どこを改造しようか…」と考えるのも自作PCならではの楽しみです。

Think Padキーボードの「赤ぽち」は、キーボードの真ん中になるマウスの代わりになる突起で、もう16年以上のお付き合いです。ここまで長いと「赤ぽち」で絵が描けるレベルに到達します。『マドリカ不動産』の間取り図も、この「赤ぽち」で描きました(笑)。

この「赤ぽち」で緻密な間取りを描きました!

PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。

様々なシチュエーションに対応できるよう「多様性」をテーマに選んでいます。上記の自作PCの他に、シリアルポートを備えた小型のWindowsマシン、Mac OSマシン、Chromebookを用途と状況に応じて使い分けています。

そのほか、オススメのツールなどはありますか?

スケッチアプリの『Paper by WeTransfer』を5年ほど前から使っています。アイディアから仕様書まで、だいたいこれで描きます。書き心地は最高です。

『Paper by WeTransfer』で描いた仕様書

人と人との繋がりで仕事が広がる

濱田さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?

「最後まで終わらせる力」でしょうか…。今までたくさんのプロジェクトを計画し、そして終わらせてきました。どんなプロジェクトも最後まで完成させるのは大変で、膨大な作業や期限に頭がクラクラするときもありました。そんな時でも冷静に終わらせるプランを考えて、淡々と1つ1つ実行していく粘り強さが必要な局面もあります。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

これから制作系の仕事を始めようとしている学生の方に向けてお話しします。会社を始めてからは、一緒にお仕事する方は過去にお会いした方や友人の紹介が多いです。いわゆるコネですが、コネが一番信用できる気がします。一般的な就職活動にこだわりすぎず、勉強会やパーティに出向いてコネを増やしてみる、気になった場所にはアルバイトで潜り込んでみる、など複数の選択肢を持っておくと気持ちが楽になると思います。

濱田さん、ありがとうございました!

若い頃の経験を将来に活かそう!

世界を旅していた時の経験をゲーム開発に活かしている濱田さん。若い頃の体験は、将来仕事をする時の軸になるのかもしれません。また新しいことにチャレンジし、失敗しても次に活かすことも大切なんですね。失敗を恐れず、やりたいことにまっすぐに挑戦しましょう!

クリエイタープロフィール

濱田隆史さん
ゲームデザイナー
1984年生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業。2009年、株式会社ハル研究所に入社(企画ディレクション職)。2014年独立し、ギフトテンインダストリ株式会社を設立。音や触覚をつかった玩具、デジタルとアナログを融合したボードゲーム、家庭用ゲーム機向けのデジタルゲーム等、を開発し販売している。新型コロナの感染拡大を機に、教育向けゲームの開発もスタート。
HP:https://gift10industry.myshopify.com/

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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