Photoshopを使って写真合成の仕方を例を用いて説明します。トーンカーブ、レタッチ、マスクなどの機能を駆使して写真を合成する方法を詳しく説明します。

クリエイター最終更新日: 20190731

Photoshopで写真合成の仕方

今回は上級編として、Photoshopを使った写真合成の初中級編で学んだテクニックも使いながら、2つの写真合成にチャレンジします。仕事で使う写真だけではなく、プライベートで撮影した写真にもいろいろと適用できる機能トーンカーブを駆使してみます。

[応用編] 古い写真に人物を合成してみよう!

モノクロ写真には色が無いので、単純に明るさ・暗さをトーンカーブで調整することで比較的簡単に合成できます。そこで、応用編の1つ目では、古い風景写真と現在の人物写真との合成にチャレンジしてみましょう。

人物写真の明るさを「トーンカーブ」で合わせる

背景用になる古い写真と、そこに合成しようとする人物写真をPhotoshopで開きます。人物写真の方で、レイヤーウィンドウの右上のメニューから「レイヤーを複製」を選択します。

表示されるダイアログの、「保存先」>「ドキュメント」で、背景となる古い写真のファイルを選択します。

人物写真をコピーしたら、人物を切り抜きます。切り抜きには「クイック選択ツール」を使用しました。写真を切り抜くテクニックに関して詳しくは、「仕事に差がつくレタッチ術[初中級マスク編]」「画像切り抜きテクニック」の記事を参考にしてください。

切り抜きが完了したら、大体の位置と大きさを合わせましょう。

「レイヤー」>「新規調整レイヤー」>「白黒」で人物の写真をモノクロ写真にします。

ダイアログが表示されますので、「下のレイヤーを使用してクリッピングマスクを作成」にチェックを入れてください。このチェックを入れると、調整レイヤーを直下のレイヤーのみに適用することができます。

「レイヤー」>「新規調整レイヤー」>「トーンカーブ」と選択し、ワイシャツの白の明るさを下げ、スーツの黒の明るさを上げる調整を行います。

白黒の調整レイヤーと同様に、ダイアログで「下のレイヤーを使用してクリッピングマスクを作成」にチェックを入れてください。ダイアログでチェックを入れ忘れた場合は、レイヤーウィンドウの右上のメニューから「クリッピングマスクを作成」を選択しても、同様の処理を実行できます。

中島さん「白黒写真を違和感なく合成するコツは、人物写真の白と黒、そして背景写真の白と黒の、明るさの差をなくすことです」

例えば、同じ黒である「バイクの黒」と「スーツの黒」の明るさを近づけ、同じ布製の白である「少年のズボンの白」と「ワイシャツの白」も同じくらいにする、など、調整のポイントを見極めることで、合成を自然に見せることができます。

明るさを合わせるポイントを整理します。
・「バイクの黒」と「スーツの黒」
・「少年のズボンの白」と「ワイシャツの白」
・少年の肌の色」と「男性の肌の色」

上の画像のトーンカーブを参考に調整してみてください。

フィルターの重ねがけで古い写真の質感を出す

ここからは、いろいろなフィルターを使って人物写真をさらに背景に馴染ませる方法について説明します。

まず、人物写真、各調整レイヤーを「Shift」キーを押しながら全て選択し、レイヤーウィンドウの下にある「新規グループを作成」をクリックしてグループ化します。

次に、グループ化したレイヤーを「新規レイヤーを作成」アイコンにドラック&ドロップして複製します。

右上のメニューを開き「スマートオブジェクトに変換」を選択します。

中島さん「スマートオブジェクトに変換しておくと、馴染ませるために適用するフィルターの数値を、適用後でも変更できるようになるため、作業効率を向上できます」

1つ目のフィルターでは、ピントが合っていない背景に比べてはっきりし過ぎている人物写真を少しぼかします。

「フィルター」>「ぼかし」>「ぼかし(ガウス)」と選択し、「半径:1.0pixel」程度でぼかしを加えます。

2つ目のフィルターでは、背景写真のざらざら感を加えるために、「フィルター」>「ノイズ」>「ノイズを加える」でノイズを適用します。今回は「量:2.5%」に設定し、「ガウス分付」を選択、「グレースケールノイズ」にチェックを入れています。

さらに、今適用したノイズがシャープ過ぎてくっきり見えてしまっているので、ここにさらに「ぼかし(ガウス)」を「半径:0.3pixel」で適用しています。

最後に、背景写真のような画像の粗さを出すために、「アンシャープマスク」を適用します。「フィルター」>「シャープ」>「アンシャープマスク」を選択し、「量:100%」「半径1.0pixel」「しきい値:0レベル」の設定で適用します。

各フィルターの数値については、合成しようとする写真ごとにうまく馴染むよう調整してください。

中島さん「合成の仕上げとして、人物が荷台に乗っているように見せましょう」

全てのレイヤーを選択して「新規グループを作成」をクリックし、荷台と柵の形にマスクをかけます。

白黒写真は、色を気にせずに明るさだけを調整すればよいので、比較的簡単に合成できます。また、今回の合成では人物を荷台に乗せたので、足の接地面や影について気にする必要もなく、中島さんは10分程度で完成させていました。

中島さん「ここで紹介したテクニックには、アイデアひとつで面白い活用法もあると思います。是非、いろいろと試してみてください」

[応用編] フローリングを張り替えてみよう!

プロレタッチャーの仕事の中には、普段の生活に活用できるレタッチ術も存在します。例えば、自室を大きく模様替えする際、現在の部屋の写真をレタッチして模様替え後の部屋のイメージを検証できれば、思ったのと違う仕上がりでがっかり…という事態を避けることができます。

2つ目の応用編では、部屋のフローリング素材をレタッチを使って張り替えてみましょう。

「自由変形」でパースを合わせる

まずは白黒写真の合成と同様に、合成元の写真から素材を切り抜いて、合成先の写真にコピーします。

次に、床のパースに合わせてフローリング素材を変形します。

中島さん「変形の方法もいろいろあるので、各方法を試しながら自分なりにやりやすい方法を探してみるといいと思います」

今回はまず、「編集」>「自由変形」を選択して奥側の角度を合わせました。

角度を合わせたら、右クリックから「自由な形に」を選択してバウンディングボックスの四隅を動かし、元の写真と床のパースを揃えましょう。

パースを揃える際、レイヤーの不透明度を0%にするなどしてバウンディングボックスの形を細かく調整するときれいに変形できます。

変形が完了したら左上の梁が出ている箇所はマスクをとっておきましょう。

「トーンカーブ」は「明るさ」と「色」で分ける

この状態から、トーンカーブを使って元の写真に馴染ませていきます。先ほどの白黒写真の合成の際、「色が無いので合成しやすい」と言いました。まず使うのがこのテクニックです。

「塗りつぶしまたは調整レイヤーを新規作成」アイコンをクリックして「ベタ塗り」を選択します。

「H:0」「S:0」「B:50」を入力して50%のグレーのベタ塗りを作成し、描画モードを「カラー」に変更します。

※H(Hue)色相/S(Saturation)彩度/B(Brightness)明度を表します

「ベタ塗り」レイヤーの描画モードの「カラー」を選択すると、モノクロ写真を表現できます。白黒にすると明るさだけを見ることができるので、元の床と見比べながらトーンカーブを用いて明るさを調整します。

合成先の床の写真レイヤーのトーンカーブを表示し、レイヤーウィンドウの右上のメニューから「クリッピングマスクを作成」を選択しておきましょう。

中島さん「この機能は出番が多いので、『Ctrl+Alt+G』のショートカットは覚えておくと便利ですよ」

明るさ調整前

明るさ調整後
カラーではわかりにくい明るさの違いも白黒だとわかりやすい

この部屋には光源がいくつかあったり、複雑な影もありますので、これらは後ほど加工します。

窓際の明るさの調整が完了したら、一度調整レイヤーからトーンカーブを選択し色を調整します。今回は「レッド」を少し引いて、「ブルー」を少し足しています。

中島さん「もう一つ色用のトーンカーブを作って、別で調整しています。僕はこの方がやりやすいと思っています」

「レッド」を少し引いたトーンカーブ

「ブルー」を少し足したトーンカーブ

次に、窓際のハイライトや部屋の奥と右側の影の部分を、ブラシツールでマスクを作成してトーンカーブを適用します。

ハイライトのトーンカーブ

ハイライトのマスクをブラシツールで作成

※「Alt」キーを押しながらマスクをクリックするとマスクだけの表示になります。

部屋の奥と右側の影部分のトーンカーブ

部屋の奥と右側の影部分のマスク

部屋の中央の暗い部分のトーンカーブ

部屋の中央の暗い部分のマスク

これで床の合成が完成しました!

[ワンポイント!] トーンカーブを使って隠れた階調を見極める

最近はPhotoshopの機能もどんどん自動化され、かつては複雑だった作業もツールひとつで簡単に実行できるようになっています。例えば、以前なら画像に映り込んだゴミなどは一つひとつ「コピースタンプツール」で修正していましたが、現在では「スポット修復ブラシツール」で簡単に仕上げることができます。

中島さん「ただし、自動ではうまく修正・補正できないこともあり、その際は以前のようなレタッチが必要です。ここで一つ、『トーンカーブ』を使った便利なテクニックをご紹介します」

例として、先ほど合成に使用した部屋の写真を使います。この写真から天井の電灯などを消す場合、消したいものに近い場所を「コピースタンプツール」でコピーするのが一般的なやり方です。

しかし、Photoshopで「コピースタンプツール」を使った方なら誰でも経験があるように、コピー元となる場所を元画像を見た色だけで選ぶとうまく馴染まないことがあります。

馴染まない理由は、画像を普通に表示した状態では見えないグラデーションの階調にあります。これを回避するために、波状に変形させたトーンカーブを使って見えない階調を可視化します。

上のような状態の画像で作業すれば、階調が近い部分を選んでコピーペーストを行うことができます。プロレタッチャーが不要な物体を削除したりする場合は、この方法を使って一度でコピーペーストが馴染むようにしているのです。

トーンカーブで階調を確認しながらレタッチしたもの

[ワンポイント!] ひと手間かけてより視線が集まる逆光写真に

中島さん「よく撮れた逆光写真はそれだけで目を引くものですが、ほんの少し調整するだけでぐっと魅力的な画像に仕上げることができます。ここでは、レタッチャーがよく使う逆光写真の調整方法を一つ紹介します」

以下のような写真で、光源に合わせて顔の部分を明るくするのは一般的ですが、さらに周囲の明るさも調整と、見せたい部分により視線が集まる作品に仕上げられます。

下の画像のトーンカーブでは、子供の顔を明るくすると共に、右後ろの建物を少し暗くしています。

中島さん「この例のように、見せたい対象を明るくして前に出すだけではなく、『周囲を暗くして奥行きをもたせる』という観点を持つと、よりレタッチの幅が広がるかもしれません」

仕事の方も、趣味の方も是非レタッチ術をぜひ活用してください

プロレタッチャーにとって特に使用頻度の高い機能「トーンカーブ」。今回は上級編として、トーンカーブを使った写真合成のプロセス2つと、合成以外のシナリオにも使えるワンポイントテクニック2つを紹介しました。デザインや写真に関わる仕事をされている方はもちろん、趣味で写真を撮る方や、生活の中でレタッチ術を活かしたい方も、ぜひ中島さんが教えてくれた技を活用していってください。

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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