

長年、複数の大学で講師として教鞭に立っていると、パソコン操作に不慣れな学生たちがとても多いことに気づきます。スマートフォン操作に慣れているためか、特に目立つのが、ファイルの拡張子についてよくわかっていない人たちや、ファイルを保存する場所を意識していない人たちです。ここでは、これらの内容をわかりやすく解説。少しでもパソコン操作の基本を身につけて、“パソコンが苦手”という状態から抜け出しましょう!
拡張子について
拡張子とは、ファイルの種類を識別するために使われる、ファイル名の次に付加されているピリオド(ドット)に続く英数字1~4文字の部分のことです。この部分は修正してはいけない箇所で、修正できるのは(リネーム作業は)ファイル名の箇所だけとなります。
ファイル名:半角に加えて全角英数字も利用できて、手動で変更可能(※)
ピリオド(ドット):半角文字で手動変更(全角不可)、削除不可
拡張子:半角文字で手動変更(全角不可)、削除不可
※ ファイル名やフォルダー名で利用できる記号類は「-」(ハイフン)と「_」(アンダースコア)だけです。一部の海外製ソフトウェアでは、フォルダー名も含めて半角英数字(だけ)でないと認識しないものもあります。htmlやcss、JavaScriptなど、Webやプログラム系では「半角英数字」厳守です。
拡張子のさまざまな形式
拡張子は、データごとにさまざまな形式があります。それぞれの特徴や機能にあわせて使い分けます。以下は主な拡張子について、筆者がまとめた表です。
ただし、Windowsの初期設定では拡張子が非表示となっているので、パソコン初心者は注意しましょう(デフォルトで拡張子が非表示となっていても、拡張子を表示するファイル形式も一部あります)。
Windowsのエクスプローラーで、ファイルをアイコン表示にしていると、使用中のパソコンで未対応のアプリケーションで作成されたデータはアイコンが白紙になります。以下は、検証用にファイル名をすべて「my_data」にした画面です。
パソコン利用者には、ファイルネームと拡張子について理解を深めて、きちんとデータ管理できることが望まれます。
拡張子表示のススメ
拡張子が非表示だと厄介なのが、データの種類が視認できない場合が出てくることです。もちろん、「詳細」表示で、「種類」を確認すれば最低限の情報を把握できます。
しかし、データが多く画像をアイコン表示にしていると、不明なファイルのアイコンを右クリックして表示される「コンテキストメニュー」から、「プロパティ」でわざわざ確認する必要があります。
そこで、Windowsパソコンを購入した場合、最初の利用時点でファイルエクスプローラーの上に表示される「表示」をクリックして、表示されるメニューの1番下にある「表示」から「ファイル名拡張子」にチェックを入れておきましょう。パソコンに慣れているユーザーでも、拡張子の非表示が作業効率の低下を招く要因になりかねないからです。
圧縮ファイルの扱いには要注意!
また、インターネット経由で受け取ったzip圧縮ファイルの取り扱いにも混乱が発生します。圧縮ファイルを解凍したい場合、圧縮ファイルを選択して右クリック後、コンテキストメニューを表示して「すべて展開」を選ぶと解凍可能です。
例えば、受け取った圧縮ファイルが「my_site.zip」だった場合、解凍したフォルダーは「my_site」になりますが、拡張子を非表示にしていると、どちらも「my_site」のまま表示されます。拡張子を表示していれば、解凍前の圧縮ファイルには「.zip」が表示されているので、(アイコンの見え方の違いに加えて)圧縮の前か後であるかを気づきやすくなります。
ここで勘違いをして、解凍前の「my_site」ファイルをダブルクリックしても、一応中身を確認できてしまいますが、すべてを正しく表示されるわけではありません(ダブルクリック=展開ではないので要注意です!)。そこから、表示された内容をさらにダブルクリックして開いても、該当ファイル(データ)の編集ができません。
注意してほしいのは、間違ってダブルクリックをしても、展開しないまま表示されてしまう点です。ここまでの説明を以下の通り図示しました。
上の、赤の囲みで説明している箇所が、正しく解凍した場合の表示です。問題は、拡張子を非表示にしたことで、解凍せずにダブルクリックした下(青囲み)の場合です。上下を比べるとわかる通り、下のまま進めてしまうと、正確にデータの内容を確認できず、編集もできません。拡張子の表示によって、こうしたミスを防ぎやすくなります。
ファイル保存時の拡張子の扱いにも要注意!
さらにファイル保存時も気をつけてください。
任意のWordファイルを例に説明します。「ファイル」タグをクリックして「別名で保存」を選ぶと、最近利用した場所への保存画面となります。以下が該当の画面です。
この画面では、右上で「ファイル名」と「ファイルの種類」を設定しますが、拡張子の表示・非表示にかかわらず、デフォルトでは「Word文書(*.docx)]と表示されます。
ところが、左下の「参照」で新しい保存場所を指定すると「ファイルの種類」は、
拡張子を表示する場合 「Word文書(*.docx)」
拡張子を非表示の場合 「Word文書」
と変更されます。変更された「拡張子を非表示の場合」を見てみましょう。
拡張子の表示・非表示のいずれにしても、上側の「ファイル名」には、拡張子を付けずに保存するのが安全です。拡張子は下側の「ファイルの種類」で指定したモノが自動的に付加されます。
ただし、拡張子を表示している場合、「ファイル名」に拡張子を付けて保存しても問題は発生しません(その点からも、拡張子を表示した状態にすることをお勧めします)。拡張子を非表示にしている場合、上側の「ファイル名」に拡張子を付けて保存すると、二重拡張子になってしまいます。
具体的に見ていきましょう。拡張子の表示の有無で、ファイル保存時の対応が思わぬ結果になります。特に二重拡張子になると、インターネットの世界ではスパム扱い(相手が望んでいない、迷惑な状態のこと)とされますので、必ず避けてください。
対象データを右クリックした圧縮ファイルの場合も見ておきます。結論を言えば、パソコン利用やデータ管理に少しでも不安があるユーザーは、(繰り返しになりますが)最初から「拡張子」表示の設定をしましょう。これで、保存時の「ファイル名」で悩むことが少なくなります。
ファイルの保存先、保存場所にも要注意!
もう1つ、パソコン利用者にとって大切なことが、ファイルの保存先についてです。
冒頭でも触れた通り、パソコン慣れしていないユーザーの、ファイルの保存先がわからなくなる人たちの多さが気になります。背景には、自動保存に慣れて、自分がどの場所にデータを保存しているかを意識する習慣がないからだと思われます。
ファイル保存時には、自分がどこに何を保存しているのかを必ず確認する癖を付けましょう。ローカルなのか(=自分が利用するパソコン環境への保存でOK?)、クラウドなのか(=自分が利用中のパソコン本体と異なる場所への保存でOK?)? ファイルの種類によって何をどのフォルダーに保存するのか? 保存行為を流れ作業化せず、その都度、保存場所を確認しながら保存しましょう。
また、Microsoft Officeなどで左上の「自動保存」が「オン」になっていると、保存場所がOneDrive上に固定され、「上書き保存」や「名前を付けて保存」が選べません。状況にあわせて「オン」と「オフ」を切り替えましょう。
Windowsパソコン環境の注意事項
筆者環境(Windows)を例に、もう少し具体的に考えていきましょう。
Windowsパソコンを利用すると、デフォルトで5MB利用可能な「OneDrive」(無料版)を付加していますが、Microsoft 365 Personalを導入すると1TBの「OneDrive Personal」が自動的に組み込まれます。他にも、容量無制限の「OneDrive Business」まで家庭向けに4種類、法人向けに4種類あります。
筆者の場合、デフォルト環境に加えて「OneDrive Personal」と「OneDrive Business」の2種類も含めて使い分けています。特に複数のOneDriveを使い分けているなら、どのクラウド環境(or ローカル環境)のどこのフォルダーに保存しているかを確認することは重要です。
例えば、「ドキュメント」フォルダーなどのように、フォルダー名だけで判断すると、異なる階層の同名フォルダーに誤って保存してしまう可能性が出てきます。それぞれの階層を確認して、保存しましょう。筆者環境の場合を整理すると、以下になります。
cドライブ>ユーザー>user>Documents(※)
cドライブ>ユーザー>user>OneDrive Personal>ドキュメント
cドライブ>ユーザー>user>OneDrive Business>ドキュメント
※ 使用する環境の都合で、どうしてもフォルダー名の表記が英語になります
また、複数のパソコンや複数のOne Driveなどを横断して利用している場合、特に気にかけておきたいのが、ファイルエクスプローラーの「状態」です。
OneDriveのファイルオンデマンドが有効になっていると、各データに対して、「状態」の欄にアイコンが表示されます。これらの表示によって、各データの状態を確認できます。緑色のチェックアイコンが付いたファイルを開くと、利用中のパソコンにダウンロードされ、ローカルで使用可能なファイルになります(ローカルとオンラインの両方に保存された状態に)。つまり、インターネットにアクセスしなくても利用可能ということです。
青のクラウドアイコンが付いたファイルは、オンラインで使用できるファイルです。オンラインファイルは、コンピューターの容量を占有しません。保存しているクラウド環境へアクセスできれば、利用中のパソコン環境(ローカル)にファイルがなくてもいいのが、こちらです。
最後に
日頃パソコンに慣れて利用するユーザーだと、無意識に使い分けていることが、ここまでに取り上げた拡張子やファイルの保存場所ではないでしょうか。あまりパソコンを使わないユーザーからすると、日頃のスマートフォン操作の感覚でやってしまうと、失敗しかねません。
パソコン初心者にとって迷いやすい拡張子や保存場所について、ここで理解を深めることをお勧めします。その他、パソコン初心者を意識して、マウス操作の基本をまとめたコンテンツが以下になります。あわせて参考にしてみてください!
“パソコン初心者必読。基本的なマウス操作の使い方ガイド | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2023.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/80319

グラフィックデザイナー、イラストレーター、大学非常勤講師(跡見学園女子大学、二松學舍大学)。毎日blogにてソフトウェア手法に加え、日曜大工ネタや撮影などのTipsをアップロードする。2006年から月例セミナーを開催中。
http://www.kaizu.com/