当記事では、価値ある生産性の高いオンライン会議を行うための進め方やコツを解説します。総務省「テレワーク先駆者百選」に選出され、『テレワーク環境でも成果を出す チームコミュニケーションの教科書』の著者、池田朋弘さんに話をうかがいました。

ITトレンド最終更新日: 20211229

テレワーク先駆者 池田朋弘氏が語る、オンライン会議の進め方とコツ

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2020年以降、テレワークが浸透しオンライン会議も定着してきています。一方で、対面での会議とは勝手が違い、便利だけれどうまく進行できない問題にも直面しがちです。当記事では、価値ある生産性の高いオンライン会議を行うための進め方やコツを解説します。総務省「テレワーク先駆者百選」に選出され、『テレワーク環境でも成果を出す チームコミュニケーションの教科書』の著者、池田朋弘さんに話をうかがいました。

「テレワーク先駆者百選」、池田朋弘さんについて

池田朋弘さんは、テレワークへの取り組みが評価されて、総務省「テレワーク先駆者百選」にも選出されるなど、近年はテレワークやチームビルディングに関する企業のコンサルティングに注力。YouTubeチャンネルも開設するなど、積極的に活動を展開中です。

<プロフィール>
池田 朋弘さん
株式会社メンバーズ 顧問、株式会社ポップインサイト 創業者。
総務省「テレワーク先駆者百選」に選出。
『テレワーク環境でも成果を出す チームコミュニケーションの教科書』(マイナビ出版・刊)著者
“テレワーク時代に活躍する秘訣~池田朋弘のリモート仕事術”.YouTube.2021.
https://www.youtube.com/channel/UCRNTuir40AFoXYn58mriIng

オンライン会議がうまくできない理由

―2020年以降、オンライン会議を利用する機会が増えている一方で、対面とは違った難しさを感じる人もいます。オンライン会議が失敗しやすい傾向や状況について、池田さんはどうお考えでしょうか。

池田:オンライン会議に悩んだり、うまく進行できなかったりする方は、今一度、足元から見直すといいと思います。大前提として、オンライン会議は「難しい!」です。直接相手と会わないのですから、対面のようには進められないのです。場所が離れた相手とも気軽に開催できて便利な半面、簡単ではないのがオンライン会議です。

そもそもオンライン会議が難しい、代表的な理由を列挙しましょう。

1 同時に1人しか話せない
話し出そうとしたら、他の人と重なって、どちらも話すのをやめてしまうことがあります。オンライン会議では、任意の話者が話し終えるのを確認した上で話し出さないといけません。そのため、会議に参加する人数が増えるほど難しくなります。

2 相手の様子がわかりづらい
映像や音声をオフにする参加者もいるため、対面なら感じられる表情や雰囲気、気配でわかることが察知しづらいです。相手の反応が感じづらいと、自分が話す際にハンディになります。

3 資料が使いづらい(補足しづらい)
画面共有は便利ですが、ツールの使いこなしが求められ、柔軟な対応には限界があります。対面ならホワイトボードを使って書き出したり、身振り手振りを交えたり自由度もある一方で、オンラインだと補足する手段が画面共有に限られます。

4 疲れやすい
ディスプレイの前でブルーライトを浴びっぱなしですし、同じ姿勢が続くので疲れやすいです。休憩などをあらかじめ決めておかないと、対面よりメリハリがつけづらくなります。

―その点では、進行役が1~4をいかにフォローできるかで、生産性の高さを左右するでしょう。

よくある失敗例に学ぶ

池田:つまりオンライン会議は、対面での会議とは別のスキル、配慮が必要です。うまくいかない問題の原因は、オンライン会議を成功するための準備ができていない点にあります。

みなさんも今までオンライン会議に参加してきた中で、以下のような失敗に出くわしたことはないでしょうか?

失敗例1 アジェンダが不明確(会議の全体像が不明)
失敗例2 事前準備不足で、話がわかりづらい
失敗例3 参加人数が多すぎて、話を振っても反応がない

池田:共通しているのが、あらかじめ準備ができていないことです。オンライン会議は環境の制約上、その場での軌道修正がしづらいです。常に相手に伝わりづらい条件であると認識し「きちんと準備をすること」を心がけましょう。

うまく進めるコツは3点

―オンライン会議で最低限わきまえておくべきことを挙げてください。

池田:オンライン会議で成果を出すには、ミーティングの議題が消化されて、意思決定や合意がなされ、会議を通じて複数のアイデアが出てくる状態にできるといいでしょう。「オンライン会議はうまくいかない」「会議はやっても無駄」といった負の連鎖は断ち切れます。特に以下の3項目を実践することから始めてみてください。

1 事前にアジェンダを作る
当たり前の話と思いがちですが、できていないことが多いです。仮に他社を交えた会議なら用意しても、社内の定例会議やちょっとしたミーティングの時にも欠かさず用意しているでしょうか?用意せずに流れのままにやっていないでしょうか?規模の小さな社内会議でも、必ずアジェンダは用意しましょう。

難しく考える必要はなく、会議のテーマとテーマに関連する項目を箇条書きして、事前に参加メンバーへ共有するだけで問題ありません。もう少し時間をかけるなら、各項目を出した背景や理由、根拠を書き添えておくとなおいいでしょう。事前の共有は参加者の理解度を高め、主催側の進行がはかどります。

2 会議は30分
私の過去の経験から、30分単位を推奨しています。1時間単位で考えることが多いですが、長々と時間を消化することが目的ではありません。マイクロソフトやトヨタなど、30分単位の会議を取り入れている大手企業もあります(※)。30分という制約があると、そのための準備も怠らず、会議そのものが引き締まります。30分単位だと、忙しいメンバーでも会議を組みやすくなります。

ただし、30分で会議を終えるには、会議進行スキルが必要です。もし30分が短すぎると感じる場合は、45分からスタートし、徐々に短くしていきましょう。

※ 例えば日本マイクロソフトは、自社実践プロジェクト「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」より、会議設定を「30分」としています。

出典:“「週勤 4 日&週休 3 日」を柱とする自社実践プロジェクト「ワークライフチョイス チャレンジ 2019 夏」を開始 – News Center Japan”.News Center Japan.2019.
https://news.microsoft.com/ja-jp/2019/07/23/190723-ms-worklifechoice2019/

3 画面ONで表情を活用する
特に5~6人までの会議なら、画面ONで相手の反応が画面から伝わる状態がいいでしょう。対面ほどの情報量がなくても、画面越しに相手の表情がわかるのは、話者にとって相手への伝わり方が表情や雰囲気から読み取りやすくなります。オンライン会議の場合、対面ほど音声の抑揚までうまく聞き取れなかったりするので、画面から伝わる情報は貴重です。

一方で、最近のアリゾナ大学が発表した研究論文に、カメラをOFFにした方がミーティングの生産性が上がり、疲れづらいという内容がまとめられています。

出典:The fatiguing effects of camera use in virtual meetings: A within-person field experiment.
The fatiguing effects of camera use in virtual meetings: A within-person field experiment.
https://psycnet.apa.org/fulltext/2021-77825-003.pdf

この論文はカメラOFFにしている自分に対する調査のため、(自分以外の)参加者側は未検証です。一概にカメラOFFが有利という意味ではないものの、一石を投じる内容でした。そこで、大人数の会議で明らかに発言機会がないメンバーは画面OFFを事前に認めておくなど、会議の規模や参加者の構成によって適宜判断できると、生産性が高まりやすいでしょう。

チャットツールが使えるとベター

―チャット機能が付いているオンライン会議ツールもありますが、チャットツールは使った方がいいでしょうか。

池田:会議によっては、スマートフォンで参加するユーザーもいらっしゃいます。スマホだとチャットに気づかないこともあるので、どうしても使うべきとは言いづらいものの、使えると有利なのは確かです。

参加者の反応を確認する手段としてリアクションアイコンを使ったり、相手に使ってもらったりするだけでも有効ですし、参加人数が多い会議ほど便利です。オンライン会議中は1人ずつしか話せないので、進行を妨げない形でアイデアや意見をチャットで募ったり、Q&Aを集めたりするのもいいでしょう。反応を可視化できるので、会議への参画感が出せます。

Microsoft Teamsの進化にも注目

―NEXMAGではMicrosoft Teams(以下Teams)を取り上げる機会が多いです。Teamsについてのご意見もお聞かせください。

池田:2021年9月9日に、マイクロソフトのリサーチャーが発表した興味深い論文があります。マイクロソフトからリリースが出ています。

“The effects of remote work on collaboration among information workers – Microsoft Research”.Microsoft Research.2021.
https://www.microsoft.com/en-us/research/publication/the-effects-of-remote-work-on-collaboration-among-information-workers/

マイクロソフトの6万人の従業員を対象にした調査によると、リモート化によってグループ間のつながりや、新たなつながり、人と人との緩やかなつながりに加えて、リッチなコミュニケーションが減少することへの警鐘を鳴らしています。テレワーク環境のソリューションを提供している立場のマイクロソフトが検証し、発表している点に要注目です。

この発表を受けて私は、今後Teamsが「つながり」を意識した機能を強化する可能性が高いと推測しています。リモート一辺倒でなく、オフィスに来る人もいればテレワークの人もいる中で、Teamsがハイブリッドに適した成長を遂げて、他ツールと異なるソリューションを提供する可能性を感じています。

オンライン会議に適したパソコンなどの環境

―オンライン会議にふさわしいパソコン環境についてもうかがいたいです。

池田:オンライン会議に限らず、スペックの高いパソコンを利用できると好ましいですよね。多少のスペックの差異より数万円出し惜しむことで、社員やスタッフへの投資が無駄になる可能性があります。支給したパソコンのスペックが低いことで、数時間分の作業がはかどらなかったり、検索作業が止まってしまったりすると、1カ月、1年スパンで考えた時の無駄にした時間の蓄積は膨大です。

パソコン本体だけに限らず、Webカメラやマイクも補強できる候補です。例えば、パソコン搭載型のWebカメラだと映し出された映像の質が落ちたり、映す角度がうまくはまらなかったりするなら、別途購入を検討したほうがいいでしょう。音質は良くても周囲のノイズまで拾いやすいマイクよりも、ノイズを拾いづらく音量を優先したものを選ぶなど、会議のニーズにあわせた補強をしましょう。

オンライン会議の回数が多いなら、ディスプレイはデュアル以上にして、会議中に別資料が見やすい環境を作る手もあります。この場合、視線が横向きでそっぽを向きやすくなるので、映り方には気をつけましょう。

会議スキルが身を助ける

―最後に、総括をお願いします。

池田:オンライン会議は便利である一方で、制約があり、リアルの会議以上に会議スキルが求められます。メンバーの中に1人でもテレワークがいれば、オンライン会議になる時代です。まだまだ会議が苦手な人が多いので、会議力を高めておくと、周りより一歩抜き出るチャンスです。

―このたびはありがとうございました!

ライタープロフィール 遠藤義浩

フリーランスの編集者/ライター。雑誌『Web Designing』(マイナビ出版)の常駐編集者などを経て、主にデジタルクリエイティブやデジタルマーケティング分野の媒体の編集/執筆、オウンドメディアの企画/コンテンツ制作などに携わる。

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